撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯
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一筋縄でいかない青春小説でもあり、伏線がここかしこに張られた読み応えあるミステリでもあり、横溝正史の作品へのオマージュが随所に感じられる佳作です。かなりの長さでしたが、文章も読みやすくテンポよく読了できました。作中におけるさまざまな「因果」が、凄惨な事件へとつながり、多くの不幸を紡ぎだしていきます。「自分という楔からは逃れられない」人間の弱さが痛切に感じられました。 | ||||
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著者のプロフィールに横溝 正史を尊敬しているとある。そして2000年横溝 正史賞を受賞してデビューした。受賞作は『葬列』。これは先に読んだがクライムロマンと言ったところで、横溝 正史とは相反する内容だった。でもこの本は内容的には尊敬しているとある横溝 正史の世界に似たもので、岡山県のある地方の寒村を舞台にした殺人事件と、それを調べ犯人を明らかにする探偵の物語。横溝 正史を尊敬しているとアドバルーンを上げるのは、例えそれが作家としての足固めの手段の一つとして利用しているとしても、自分のスタンスを明確にしているので、読み手としても収支選択が取りやすいので不都合は無い。つまり同好の志は集まれと手を上げて居る訳だから。さて、この作品は丁寧に散りばめられた伏線と探偵が読み解く真相が破綻無く書き込まれ、主人公的な中二の男子 阿久津 智明の多感な時期の心情がきめ細かく描写されていてとても物語の世界に入り込み易い。事件の三日前から物語が始まるが、じっくりと村とそこで暮らす人々を書き込んでいく。事件の背景となる過去の出来事なども人物描写と絡めてうまく書かれている。個人的な話だがミステリーを読むときに、さあ名探偵よりも先に謎を解いてやろうと一言一句見逃さずに目を皿のようにして読む・・・。そんな読み方は私はしません。むしろ騙される楽しみを味わいたくて読むほうです。ですからハイこれが伏線ですよとミエミエな書き方のものは作者の力量が無いのだなと切り捨てます。上手く読者を騙してくれる作品を愛してやみません。これはそう云った意味からも合格点を付けられるものです。複雑な人間関係とその人物の想いなどがキチンと描かれていて、猟奇的な犯罪の意味もなるほどと合点がいくものです。ただ、隠された部分をもってアンフェアだと言う読者もいるかもしれませんが、そう何もかも明らかにしていてはミステリーは成立しません。足りないピースは推理で補うしかないのです。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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今までに何冊も「横溝正史の遺鉢を継ぐ」と名づけられた作品を期待とともに読んできましたが、どちらかといえば失望することが多かったです。ところがこの小説は、雰囲気や登場人物がかなり横溝作品に近く、そう呼ばれる資格が充分にあると感じました。現代であの雰囲気を再現することはむずかしいのではないかと思っていましたが、これはなかなかのものです。 この小説の舞台ともなる岡山の田舎で起きたおどろおどろしい話といえば、津山三十人殺し事件を題材に取った西村望「丑三の村」や岩井志麻子「夜啼きの森」、また同じく岩井志麻子作でホラー大賞を取った「ぼっけえきょうてえ」などがあります。そのためか、自分の中では岡山の村と言えばなんだかそんなイメージが定着してしまっているのですが、そのような場所を背景にすれば、現代でもここまで雰囲気を出せるものなんだと思いました。(住んでいる人は複雑な気持ちでしょうが(^^;)また、ラストは二転三転のどんでん返しがあり、最後まで気が抜けません。おもしろかったです。 お話は事件が起きる3日前から始まります。その3日間だけで187ページ分も取ってあり、そのあたりは地元の中学生たちの日常がややユーモラスに淡々と描かれていきます。なので最初は「あれ?ミステリだと思って読み出したのだけど、これは?」と??になってしまいました。その後は猟奇的な事件がきっちりいくつも起きるのですが、この小説は甘酸っぱい青春小説としても成り立つのではないかと思います。なかなか自分に自信が持てず、まわりの状況もうまく読めなくて、友達や片思いの相手の間で右往左往する微妙な思春期の頃がうまく描かれています。 それにしても、岡山弁はかなり関西弁に近いのでしょうか?関西人の自分は、ここに描かれている方言をまったく抵抗なく自分の日常の言葉のように読めました。地方色もよく出ていて、なかなか味があると思います。この作者の作品は初めて読んだのですが、思わぬめっけものとなりました。 | ||||
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タイトル通り、読後にはすっきりしない感覚が残りました。ミステリとしての仕掛けや回収はいいと思うんですが、物語としては「え、そんなもん」というくらい、がっかりな落ちでした。オカルトちっくな要素をちりばめておいてからの、イヤに現実感のある展開に少々脱力してしまったんです。二転三転する事実の露見はいかにも本格ミステリといった匂いがするので、そちらを期待して読むのがいいかと思います。 | ||||
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この作者がアーティストMORRIEの曲名をタイトルによく使っているのは解る人には解ること。 この「iの遠近法的倒錯」(オリジナルのタイトルは「愛の遠近法的倒錯」)というのはMORRIEのソロアルバムの2枚目、「ロマンティックな、余りにロマンティックな」に収録されている「破壊しよう」が、CD音源化される以前にライヴ゙で演奏された際の、いわば仮タイトルである。 このマニアックさが、知らない人には解らない秘密なのだと思う。 | ||||
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ミステリーの部分が複雑というほどでもないが面倒くさい。ミステリーをメインにしたのがやや失敗か。ミステリーはおまけ程度にして、それ以外(人物とか)に力を入れた方が良かった。探偵キャラもあと一歩という感じ。岡山弁?は良かった。 | ||||
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学生、特に中学生がメインで登場する作品には、大きく分けると二種類ある。 ひとつは、あの頃は良かった。 また、あの頃に戻りたい、と読者に思わせるものである。 そういう作品は、品行方正というか、道徳観の正しい学生達が多数登場する。 もちろん、一部はそうではない者もいるが。 そして、もうひとつが、あの頃は嫌な時代だった。 あんな時代には戻りたくない、と思わせるものである。 本作は、この後者の部類に属する、実にいやな中学生の生態が描かれている。 まあ、これは作品のテーマ的に必然性があってのことなのだが、あまり良い感じではない。 さて、そういう背景ではあるが、本作は著者には珍しい本格ミステリである。 舞台は岡山の田舎、ということで、いかにもという横溝ワールドの雰囲気満載だ。 ただし、横溝作品よりは、メインで登場するのが中学生たちということで、ずいぶんとジュヴナイルにシフトしている感じである。 しかし、背景となっている人間関係は、まさに横溝ミステリも真っ青のドロドロ状態である。 著者が本作の執筆にあたって、横溝ミステリを十分に意識していたことは明確だし、ある点ではそれがミスディレクションにもなっている。 ただし、探偵役の造形に金田一のイメージがチラチラするのまでは、少々やり過ぎのようである。 本作のキーワードは、多分ネタバレにはならないと思うが、「ニセモノ」である。 実は・・・実は・・・というのが終盤に繰り返される。 まるで、白土「ワタリ」第四部の終盤を見ているようである。 分かりにくいたとえだが、分かる人には分かってもらえるだろう。 本叢書はけっこう力作が多く、まったくの“はずれ”はない。 本作も、伏線の張り方とその回収、そして終盤のロジックなど、ミステリとしての完成度はかなり高い力作である。 しかし、本作に登場する中学生たちに、終盤までほとんど好感が持てないままだったことが、残念である。 確かに、自分のことを振り返ると、そんなこともあった。 しかし、そんなこと“ばっかり”ではなかった。 だから、もう少し好感の持てる描写があったら、もっと評価が高くできたのだが、と思う。 ただし、この好感の持てないところが伏線として機能している。 さまざまな感情の交錯の中に、さりげなく伏線を忍ばせているのだから、何とも評価のしづらい作品である。 読後感がけっして良いとは言えないあたり、著者の持ち味なのだろう。 | ||||
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