葬列



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葬列
葬列 (角川文庫)
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初公開日(参考)2000年04月
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長編小説

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葬列 (角川文庫)

2003年04月30日 葬列 (角川文庫)

不幸のどん底で喘ぐ中年主婦・明日美としのぶ。気が弱い半端なヤクザ・史郎。そして、現実を感じることのできない孤独な女・渚。社会にもてあそばれ、運命に見放された三人の女と一人の男が、逆転不可能な状況のなかで、とっておきの作戦を実行した―。果てない欲望と本能だけを頼りに、負け犬たちの戦争がはじまる!戦慄と驚愕の超一級品のクライム・アクション!第二十回横溝正史賞正賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.33pt

葬列の総合評価:7.15/10点レビュー 13件。Bランク


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全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(7pt)

狂乱者たちの宴

葬列。
そのタイトル通り、死屍累々の山が築き上がる。その有様は実に壮絶。

小川勝己氏が横溝正史賞を射止め、その年の『このミス』でも第16位にランクインした鮮烈なデビュー作がこれ。現在の奥田英郎作品の『邪魔』、『無理』のような、社会の底辺で貧困にあえぐ下層社会の人々が一世一代の大勝負に出るピカレスク小説だ。

これは宴である。
狂乱の宴だ。
性格破綻者の小市民たちとやくざとの抗争と云う名の宴だ。

ただただ一攫千金と云う無謀な夢を描くだけのように見えた中年女性2人と若い女性1人の3人組が落ちこぼれやくざの史郎と邂逅するしてから俄然現実味を帯びてき、明日美の勤めるラヴホテルの経営者の街金業者への襲撃からB級ヴァイオレンスアクション小説の色合いを濃くしていく。

そして街金襲撃から史郎の復讐譚へ移る九條組襲撃計画のプロセスの段になってもはや読者の心の中には明日美、史郎、しのぶ、渚4人が生き生きとした人物として刻まれ、彼女たちがもはや無謀な素人犯罪集団ではなく、プロの武装強盗集団に見えてくるから実に面白い。心を閉ざして他者の介入を容易に赦さない謎めいた女性、藤並渚も壮絶な過去が次第に明かされていくうちに稀代の無敵な悪女強盗になってくるのだ。

そして史郎、明日美、しのぶ、渚の4人組がいよいよ九條の別荘に乗り込む420ページからの約40ページは新人の作品とは思えないほどの勢いと迫力に満ちている。息を呑んでページを繰る手が止まらない自分がいたことを正直に白状しよう。

さてやくざが絡む大金を巡る下流社会の人々の抗争と云えば馳作品を想起させるが小川作品と馳作品とではテイストが全く異なる。馳氏の物語は人間の卑しいどす黒い負の衝動を物語が進むにつれて肥大させ、それが破裂して破滅の道を辿るという、終始暗いムードが漂うが、小川作品は登場人物たちの設定ゆえにどこか滑稽でこれら頼りない社会の底辺で生きる面々をいつのまにか応援してしまうのだ。

それは馳作品での殺戮は自業自得で泥沼に嵌ってしまった主人公がキレて自暴自棄になって人を殺しまくるという、同情も共感がどこにも得られない行動理由で起きているので、全くテイストは違うのだ。

小川作品での殺戮はそのゼロ時間へ向けて着々と準備が整えられ、殺された家族への復讐と一攫千金という目的のために動くというベクトルがはっきりしているところにある。

従って惨たらしい殺戮シーンながらもどこか爽快感とカタルシスが残り、主人公と同様のひと仕事を終えた心地よい疲労感が得られる。

それはひとえに小川氏の描く登場人物造形のユニークさがあるからだろう。白いマンションに住むことを夢見て過去にマルチ商法に嵌って夫を身体障害者にしてしまった三宮明日美。
明日美をマルチ商法に誘い、一攫千金を願いながらも上手く行かない人生を儚み、全身整形を施した人造美人の葉山しのぶ。
高校の先輩に誘われて極道の世界に入ったものの、生来の気の弱さからやくざになりきれない小心者、木島史郎。
アメリカ滞在時に両親をミリタリーマニアの学生らにゲームさながらに殺され、自身も輪姦されながらも唯一生き残った心をどこかへ置き忘れた帰国子女、藤並渚。

そして彼らを筆頭に敵役の九條、堺、海渡と云った極道連中と癖のある刑事隅田ら脇を固める面々一人一人が戯画的なキャラクターでありながらドラマを形作る。
どこかマンガを読んでいるような感覚と妙に詳細な銃器の説明と小道具となるラヴホテルの従業員たちの仕事の内容と、パロディとリアルが同居した奇妙なノワールの世界がこの作品にはあり、それが一種独特な雰囲気を醸し出している。

そして最終章に訪れる驚愕の真相と荒廃感漂う仲間共の理不尽な最期。
誰もがどこか狂っている。やはりこれは狂乱者たちの宴の物語だ。

正直、馳作品を読んだ後にまた人が大勢死ぬ作品を読むのはどうにも辟易だったが、案に反して実に面白く読むことが出来た。
馳作品を深作欣二監督の映画のように例えるならば、小川作品はクエンティン・タランティーノ監督作品のようなテイストを持っている。
アクの強い人物たちが最後に華々しく銃撃の花火を放って散りゆく。それは迫真に迫りながらもどこか滑稽で爽快感が漂う。

この鮮烈なデビュー作の後、『彼岸の奴隷』、『眩暈を愛して夢を見よ』といった話題作を放ちながら、昨今ではなかなか世の中の評価が高まらない小川勝己氏だがこのような不思議な読後感が残るパルプ・フィクション小説を書ける作家は非常に貴重なので再起の花火を打ち上げる様な作品を期待したい。


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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

葬列の感想

横溝賞受賞作。こういうクライムノベル系をあまり読んだことがなかったので、ドキドキしながら新鮮に愉しめた。

ジャム
RXFFIEA1
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

葬列の感想

世の中の片隅に住む、負け犬4人が出会って無茶苦茶な計画を企て実行して大金をせしめるが・・・。
簡単に書くとそんな話だ。うだつのあがらないヤクザ。妻に逃げられ小さな女の子と二人暮らし。夫が障害者で必死に働く中年女。その障害は自分が原因だった。何をやっても上手く行かず家族に見放されて、ねずみ講のマルチ商法に嵌まり更に転落していく女。自分の存在にリアルさを感じられない帰国子女の若い女。その過去には家族を惨殺され自身もレイプされた暗い出来事があった。ひとつのきっかけで動き出した計画。
だが、最後の最後で思い込みをひっくり返される別なエピソードが明らかになる。
横溝 正史賞を受賞したデビュー作だが文章は上手い。「これは戦争だ」と言い武装した4人がヤクザの幹部の別荘を襲うところは、銃の細かな説明の描写など大藪 春彦のハードボイルド小説を思い起こさせる。
選評にもあるように最後の一行がこの話の全てで結局彼女の物語だったということか。テンポのよい展開とスピーディさで一気に読み進めることが出来る面白さはある。

ニコラス刑事
25MT9OHA
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未読の方はご注意ください

No.10:
(3pt)

もう少し狂気があれば、、、

序盤は、細かく場面が切り替わり、結構、淡々と進んでいたのになぜかそんなに退屈はしなかったです。
4人が出会い、物語がひとつになってからどんどんスピードアップして楽しめました。
ただ、史郎の豹変の過程が飛んでたり、明日美のキャラクターが少しぶれてたりと若干のフラフラ感は目をつぶりますが、、、。ちょっと狂気が物足りなかった。
明日美やしのぶももっと狂って、そしてもっと凄惨な描写があれば。
先に「彼岸の奴隷」を読んでいたので、少し残念に感じました。
でも、そこそこ楽しめました。
葬列 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:葬列 (角川文庫)より
4043706014
No.9:
(3pt)

人が死にすぎ

OUTに似てるという意見が多いようですが、そうでもないです。
ノワールものが好きでいろいろ読んでますが、やくざ物は食傷気味で
あまり読まないのですが、これは女性たちが活躍する話と知って
OUTレベルを期待して読みましたが、いろいろありえない点は多く、
小説ではまあ何を書いても許されるのでしょうから、
ただの娯楽として考えれば面白いのかもしれないですね。
とにかくどんどん人が殺され、主人公らしき人(結局誰に感情移入したらいいかわからなくなりますが)も
殺されていき、もうドラマもなにもすべて死んで終わりになってしまう、
ちょっとがっがりします。
「葬列」だからしかたないか〜。
葬列 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:葬列 (角川文庫)より
4043706014
No.8:
(5pt)

小川勝巳のデビュー作

負け犬たちの戦争。文章が上手くて面白かった。夢中になって一気に読める。ここまで夢中になれる小説も珍しい。
白いマンションがケーキに見えるという最初のつかみがよかった。彼岸の奴隷では頭のおかしい女キャラが失敗してたが、今作では頭のおかしい女、渚のキャラが大成功してる。男たちの挽歌のチョウ・ユンファ並にかっこいい。
葬列 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:葬列 (角川文庫)より
4043706014
No.7:
(5pt)

爆走、暴走の果てに驚愕の最終章へ

思わず数えてしまった。名前のある登場人物が、ほんの端役をふくめ43名。うち25人が殺される。ほとんどが惨殺で、楽には死なせてもらえない。その他、名の無い死体は数え切れず。
矛盾や疑問描写は数多いが、中でもターゲットとなるヤクザ組織があまりにも過激で、現実にあり得ないというより、フィクションの中でもこんなんじゃ組織持たないだろうにと思わされてしまう。あるいは、何の信頼感もなく結びついて暴走しまくる主人公集団と相似にしたかったのだろうか。
5章構成で、後へ行くほど短くなり、最終第5章はエピローグ程度の分量だ。実際、第4章までで小説として十分成り立っている。が、この第5章がとてつもなく濃いのだ。えっ、ひょっとしてこれって実は本格推理小説だったのか、と驚かされるアッパーカット(まもなく勘違いと判る)を浴びせたあと、もう終わったつもりでいた物語が再び怒涛の進撃。もうひとつの「狂気の集団」の末路から目が離せない。
最後の一行は本当に凄い。場をわきまえないギャグ調会話の数々も、切々と織り込まれるセンチメンタルな家族の描写も、凝りに凝った伏線(第一襲撃と最終襲撃の照応には舌を巻いた)も、すべてこの1行を目指している。

葬列 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:葬列 (角川文庫)より
4043706014
No.6:
(5pt)

面白い!

ページをめくる手がとまらず、1日で読み終えてしまいました。障害のある夫を持つ三宮明日美、整形を繰り返し借金を抱える葉山しのぶ、冴えないヤクザ木島史郎、自己の存在にリアリティを感じられない藤並渚。明日美としのぶは元友人でしたが、別々に生活していた彼ら4人が偶然出会わしそれぞれの動機はともかく暴力団の金を奪おうと一致団結します。明日美・しのぶ(後に渚が加わる)と史郎の別々の話が一つに収斂されていく様が気持ちよい。そして、最後には「事実はこうだったのか!」と驚きの連続。「一杯、いや、二杯も三杯もくわされたぜ」という気分になります。最後の場面では映画「トゥームレイダー」のラストシーンを思い出してしまいました。話の内容は全然違うけどね。タイトルの意味はやたらと大勢の人が死んでいくからかな?
葬列 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:葬列 (角川文庫)より
4043706014



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