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撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯



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撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯の評価: 8.00/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(7pt)

撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯の感想


 1997年、岡山県の小さな集落・撓田。 土地の旧権力者・朝霧家と遠縁の桑島家との古い派閥の残る村で中学生の阿久津智明はドライな学生生活を送っていた。 世の中を俯瞰したような思春期らしい壁に直面し悶悶とする一方で、村内で過去の伝説に見立てたような下半身切断死体が見つかる・・・。 横溝正史をリスペクトしつつ、そこに中学生の青春を織り込んだ挑戦作。

 非常にテンポは悪い。 青春小説らしく人物の描写に筆を傾けすぎた結果、事件の発生から解決までの道のりはスローペース。 しかし待つに値するぐらいのとんでもない真相はあるので一読の価値は多大にある。 タイトルと表紙のおどろおどろしさに対して結構青春してるのでそこは考慮されたし。 ★は7つ。

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りーり
9EDFH0HC
No.2:
(9pt)

因果は巡る

 一筋縄でいかない青春小説でもあり、伏線がここかしこに張られた読み応えあるミステリでもあり、横溝正史の作品へのオマージュが随所に感じられる佳作です。かなりの長さでしたが、文章も読みやすくテンポよく読了できました。作中におけるさまざまな「因果」が、凄惨な事件へとつながり、多くの不幸を紡ぎだしていきます。「自分という楔からは逃れられない」人間の弱さが痛切に感じられました。

▼以下、ネタバレ感想

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tacu
GWKVNW0Y
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯の感想

著者のプロフィールに横溝 正史を尊敬しているとある。そして2000年横溝 正史賞を受賞してデビューした。受賞作は『葬列』。これは先に読んだがクライムロマンと言ったところで、横溝 正史とは相反する内容だった。でもこの本は内容的には尊敬しているとある横溝 正史の世界に似たもので、岡山県のある地方の寒村を舞台にした殺人事件と、それを調べ犯人を明らかにする探偵の物語。横溝 正史を尊敬しているとアドバルーンを上げるのは、例えそれが作家としての足固めの手段の一つとして利用しているとしても、自分のスタンスを明確にしているので、読み手としても収支選択が取りやすいので不都合は無い。つまり同好の志は集まれと手を上げて居る訳だから。さて、この作品は丁寧に散りばめられた伏線と探偵が読み解く真相が破綻無く書き込まれ、主人公的な中二の男子 阿久津 智明の多感な時期の心情がきめ細かく描写されていてとても物語の世界に入り込み易い。事件の三日前から物語が始まるが、じっくりと村とそこで暮らす人々を書き込んでいく。事件の背景となる過去の出来事なども人物描写と絡めてうまく書かれている。個人的な話だがミステリーを読むときに、さあ名探偵よりも先に謎を解いてやろうと一言一句見逃さずに目を皿のようにして読む・・・。そんな読み方は私はしません。むしろ騙される楽しみを味わいたくて読むほうです。ですからハイこれが伏線ですよとミエミエな書き方のものは作者の力量が無いのだなと切り捨てます。上手く読者を騙してくれる作品を愛してやみません。これはそう云った意味からも合格点を付けられるものです。複雑な人間関係とその人物の想いなどがキチンと描かれていて、猟奇的な犯罪の意味もなるほどと合点がいくものです。ただ、隠された部分をもってアンフェアだと言う読者もいるかもしれませんが、そう何もかも明らかにしていてはミステリーは成立しません。足りないピースは推理で補うしかないのです。
昭和の時代の地方の静かな村を舞台にした、思春期真っ只中の少年と仲間。そして起きた哀しい事件。
清々しい読後感も気に入りました。

ニコラス刑事
25MT9OHA

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