■スポンサードリンク
撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
■スポンサードリンク
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
| ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一筋縄でいかない青春小説でもあり、伏線がここかしこに張られた読み応えあるミステリでもあり、横溝正史の作品へのオマージュが随所に感じられる佳作です。かなりの長さでしたが、文章も読みやすくテンポよく読了できました。作中におけるさまざまな「因果」が、凄惨な事件へとつながり、多くの不幸を紡ぎだしていきます。「自分という楔からは逃れられない」人間の弱さが痛切に感じられました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
著者のプロフィールに横溝 正史を尊敬しているとある。そして2000年横溝 正史賞を受賞してデビューした。受賞作は『葬列』。これは先に読んだがクライムロマンと言ったところで、横溝 正史とは相反する内容だった。でもこの本は内容的には尊敬しているとある横溝 正史の世界に似たもので、岡山県のある地方の寒村を舞台にした殺人事件と、それを調べ犯人を明らかにする探偵の物語。横溝 正史を尊敬しているとアドバルーンを上げるのは、例えそれが作家としての足固めの手段の一つとして利用しているとしても、自分のスタンスを明確にしているので、読み手としても収支選択が取りやすいので不都合は無い。つまり同好の志は集まれと手を上げて居る訳だから。さて、この作品は丁寧に散りばめられた伏線と探偵が読み解く真相が破綻無く書き込まれ、主人公的な中二の男子 阿久津 智明の多感な時期の心情がきめ細かく描写されていてとても物語の世界に入り込み易い。事件の三日前から物語が始まるが、じっくりと村とそこで暮らす人々を書き込んでいく。事件の背景となる過去の出来事なども人物描写と絡めてうまく書かれている。個人的な話だがミステリーを読むときに、さあ名探偵よりも先に謎を解いてやろうと一言一句見逃さずに目を皿のようにして読む・・・。そんな読み方は私はしません。むしろ騙される楽しみを味わいたくて読むほうです。ですからハイこれが伏線ですよとミエミエな書き方のものは作者の力量が無いのだなと切り捨てます。上手く読者を騙してくれる作品を愛してやみません。これはそう云った意味からも合格点を付けられるものです。複雑な人間関係とその人物の想いなどがキチンと描かれていて、猟奇的な犯罪の意味もなるほどと合点がいくものです。ただ、隠された部分をもってアンフェアだと言う読者もいるかもしれませんが、そう何もかも明らかにしていてはミステリーは成立しません。足りないピースは推理で補うしかないのです。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|