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(短編集)
鳥
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鳥の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.93pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 21~30 2/2ページ
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デュ・モーリアという人は本来中間小説家であって、映画「鳥」等の成功は専らヒッチコックの手腕によるとの世評がある。その辺の真偽の確認、特に「鳥」の原作を読んで見たいとの想いで本短編集を手に取った。 まずその「鳥」。確かに異色作で、鳥が突然大量発生して人間を襲うというアイデアは素晴らしい。だが、映画を観た時に受けた以下の様な恐怖源は感じられなかった。あたかもヒロインが街に来た事が大量発生の原因であるかの様な感覚を与えるキリスト教"原罪"的ムード、大量発生が起こった場所がその街だけ(らしい)というカミュ「ペスト」的隔絶感、大量発生の原因が結局最後まで不明という不条理感...。アイデアの膨らませ方が物足りないと思った。 「モンテ・ヴェリタ」も綺想の産物だが、こちらはその神秘性と丹念な書き込みとで根源的な恐怖を引き起こす。本作で一番の出来だと思う。「林檎の木」も皮肉と苦味が利いた幻想譚。「動機」は珍しく探偵物だが、内容は秘蹟的と言って良い。一方、冒頭作「恋人」は、サイコ・ホラーとなり得る素材なのだが、アッサリ纏め過ぎていて、戦争批判を絡めた単なる「Boy Meets Girl」物という印象が強い。惜しいと思う。「写真家」、「番」、「裂けた時間」と併せ、もっと濃密さが欲しかった。 読んで見て、作者が中間小説でもなくサスペンス小説でもなく、幻想譚・奇譚に手腕を発揮するとの印象を持った。「鳥」もその一環なのだと思う。 | ||||
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「レベッカ」の作者だという事は知っていましたが、 短編にもここまでのストーリーテラー振りを 発揮している人だとは知りませんでした。 「恋人」には、突然頭を殴られたような衝撃を与えられ、 衝撃度が最高でした。「鳥」は、また映画の方とは違う 恐ろしさを感じさせます。もう物語最初の頃の窓の 描写で、すでにぞっとさせてくれます。 「林檎の木」は、不気味な話でありながらも、 嫌っている林檎の木に対する男の反応が、 どこかユーモラスでさえもあります。 「写真家」は、予想がついてしまうような展開で、 いまいちでした。 「動機」は一番後味が悪く、哀切さを感じさせる話です。 デュ・モーリアの短編では他に「破局」と「真夜中すぎでなく」が 邦訳されているようですが、「真夜中すぎでなく」も絶版になって しまっているようで残念です。絶版になってしまった「真夜中すぎでなく」の復刊や、 彼女の他の短編の邦訳も希望します。 | ||||
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著者のデュ・モーリアは、英国でも再評価されつつある作家ですが、この短編集を読み、その理由がある程度理解できた気がします。 物語の構成や登場人物たちの描写など、緻密で緊張感のある文章により、一種独特な世界に引き込まれるような魅力があります。 どれもがハッピー・エンドとはいかない、ほろ苦い話ばかりですが、積み重ねられた心理描写や人々の行動からは、リアルな人間模様だけではなく、 (世界を裏側からのぞくような) 不思議な情景が浮かび上がってきます。 映画館で知りあった、どこか謎めいた彼女との会話のやりとりがおもしろい 「恋人」 。 鳥の襲来に淡々と対処する主人公を描きだす 「鳥」 。 美しい夫人の気まぐれが、退屈なバカンスを一変させてしまう 「写真家」 。 とほうもない精神世界の深淵をかいま見せる、不可思議な体験談 「モンテ・ヴェリタ」 。 屋敷の貧弱なリンゴの木が、次第にその存在感を増すようになる 「林檎の木」 。 1つの謎が、隠された人間模様を次々と浮き彫りにしていく 「動機」 。 ゴシック,スリラー,サスペンス,ミステリー,ロマン,心理小説など、バラエティに富んだ作品集。 どれもが、小説を読むという体験を満足させてくれる、良質な短編ばかりです。 この短編集のテイストに近い作品集では、ウィルキー・コリンズ 「夢の女・恐怖のベッド」 のほか、 「ヘンリー・ジェイムズ短篇集」 などが思い浮かびました。 | ||||
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今はもう映画をあまり観ないのだが、学生の頃はヒッチコックの映画は何度も繰り返し観ていた。深夜テレビでやっていたヒッチコック劇場も観ていた。だけど、誰が脚本だとか原作が誰かということにあまり興味がなく、ただ、ヒッチコックの作品ということで観ていた。 さらに、翻訳小説も、あの独特の比喩や言い回しが苦手なので、めったに読まない。読めばおもしろいのは分かっているのだが、なかなか手が出ない。 だから、映画の「鳥」に原作があり、しかも「レベッカ」の原作者と同じということを最近まで知らなかった。この本も書店で偶然見つけて購入した。 ここに収められているどの短篇もそうだが、文章が読みやすい。翻訳もいいのかもしれないが、端正で簡潔な文章だ。だからといって紋切り型ではない。海外作家の小説でこういった文章は初めてに近かった。内容も短篇らしい。本当はもっと情報量を詰め込むことができるのに、それ削ぎ落として物語に必要なことだけが綴られている。 「鳥」もそうだ。描かれているのは一つの家族の姿だけだ。家族の住んでいる町の様子も殆んど描かれていない。本当はイギリス中がパニックに陥っているのだが、それはラジオを通じて僅かに断片的に伝えられるだけである。しかも、そのラジオ放送自体も中断されてしまう。「鳥」で描かれている「事柄」は、断片的(言い換えれば局地的)な事柄だ。町や国がどうなっているかは書かれていない。結末すらも書かれていない。しかし、それが、かえって恐ろしさを際立たせている。想像する恐怖あるいは見えない恐怖と言えばいいのだろうか。 デュ・モーリアの作品はこれが初めてだが、映画の「レベッカ」にもレベッカ本人が登場しないことを考えると、彼女は書かないことによって作品に奥行きを持たせることに成功した作家のような気がする。 いずれ「レベッカ」も読んでみようと思った。 | ||||
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『レベッカ』と同様アルフレッド・ヒッチコックによって映画化された『鳥』を中心とする短編集です。創元推理文庫が彼女の作品を刊行するのはこれが初めてですが、彼女の作品を全作読んでみたいと思わせる絶妙の1作目となりました。見事な様々なタイプの作品が並んでいますが、どの作品も謎に対する明確な回答を避けて、読者に想像させるような手法をとっていることが印象的で、一般的な推理小説の手法とは大きく印象が異なります。ヒロインの孤独感や夜の描写がウィリアム・アイリッシュの作品を想起させる『恋人』(原題ではこれが表題作)、“タイムトラベル・ホラー”とでも呼ぶべき分野を開拓した『裂けた時間』、幸せの絶頂にある女性の自殺の原因を夫に雇われた探偵が究明していく『動機』などが特に気に入りました。『レベッカ』と『鳥』(本書のことではなく、本書の収録作である短編のこと)だけで語られるのは惜しい作家です。 | ||||
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バラエティの楽しめる作品集だ。 収められている8編には今となっては良く知られているプロットの作品もあるのだが、一人称の心理描写や情景描写が優れていることと、ホラーやサスペンスさらにファンタジーやSF作品もあったりして厭きさせない。一編毎に感心しながら、あっという間に読み切った。それは「ヒッチコックの映画『鳥』の原作も含みます」と言い添えておけば充分なぐらい各作品のレベルが高いと言うことだと思う。 この作者への興味が非常に増してきて、嬉しい収穫という気持ち。 | ||||
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ヒッチコックの映画であまりにも有名な表題の「鳥」も、映画とはまた違うヒタヒタと迫りくるような恐怖感と閉塞感に身の毛がよだちますが、収録作の「モンテ・ヴェリタ」が突出して素晴らしい。コーヒーショップで読み始めてやめられなくなり、2杯もお代わりしながら最後まで読みました。そんな小説は今のところ、この作品だけです。あまりの感動に、このサイトでのニックネームに表題を拝借しています。ぜひ、お勧め。 | ||||
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一篇一篇がかなり詰まった内容なので一気読みは息切れ必至。女性とは思えぬ骨太な筆力で、純朴な青年、うだつの上がらない中年男性に若き美貌の人妻、神経質な未亡人と描き出す人物も世界もまさに変幻自在。個人的に、怖くてちょっとセンチメンタルな「恋人」、表題の「鳥」もかすむほどの完成度「モンテ・ヴェリタ」がとっても拾い物でした。 | ||||
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「ページをめくるのさえもどかしい」、「右ページを読んでいるのにちらと左ページを窺ってしまう」、そんな生粋の物語作家です。奇抜さや難解さとは無縁なので表だって注目されにくいようですが、悲恋、神秘、恐怖と作品の性格によってこれだけ見事に書き分けられる作家にはそうそうお目にかかれません。「鳥」「モンテ・ヴェリタ」は必読です。 | ||||
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翻訳物にありがちな読みにくさがまったくない。短編でありながら、濃い内容で(当然か)まどろっこしくなく、突飛な人物が主人公でないのがよけい内容をきわだたせる。 | ||||
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