(短編集)
人形
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本で綺麗でした。 | ||||
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ダフネ・デュ・モーリアの(幻の?)初期短篇集。20~30頁ほどの14篇の話を収録。解説によると表題作の「人形」は作家デビュー前21歳のときに書かれたものらしい。「レベッカ」のマンダレーを思わせる夢の描写がある話(「幸福の谷」)、シリーズものを意識したのか?同じ名前の登場人物が出てくる短篇など、興味深いものがあるが、全体的にいえることは、習作?というようにも思えてしまうこと。先に「鳥」、「いま見てはいけない」など、後年の小説を読んでいると、ちょっと物足りなく感じてしまう。とはいえ、デュ・モーリアらしさは出ているので、楽しめるとは思う。この短篇集の位置づけとしては、デュ・モーリアをだいたい読んだ人が、こんな初期短篇があったんだ!と幻の発掘感にワクワクしながら手に取るものなのかなと思った。これからデユ・モーリアを読もうという人は、後回しでもいいんじゃないかなと思う。 | ||||
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『人形』は、ダフネ・デュ・モーリアの14編からなる短編集だ。 解説によるとデビュー以前、デュ・モーリア21歳頃に書かれた「人形」を含む初期の作品が収められているとのことである。 全編ともに明るい未来をすかっと裏切ってしまうバットエンディング(サッドエンディングか)で、デュ・モーリアっぽいのだが、20歳そこそこから暗澹たる作品を書きつられている、その人となりに興味を覚えてしまう。ひとの心のねじくれた闇の部分やエロッチックな感情を、第三者的になぞっているようなじれったさが気にいった。 14編のうち、著名な神父の俗物さを描いた「いざ、父なる神に」、「天使ら、大天使とともに」と、堕ちていく女性の独白「ピカデリー」と「メイジー」はそれぞれ前後関係があり、シンクロしているようにも思えるが、その他の作品には関連性は見いだせない。 ベスト3を選ぶとしたら、以下のようになるだろうか。 ■人形 恋に焦がれる男性が、垣間見た女性の秘密とは... 具体的な何かは明示されていないのだが、とても淫靡なものを想像せざるを得ない。女性の名前レベッカは、解説にあるとおり、長編「レベッカ」への底流にあるものを探りたくなる。 ■飼い猫 寄宿学校を出た娘が帰郷すると、母の態度はいつしか冷徹に変化し... 母娘の間の女性の嫉妬が、娘の独白により浮彫にされていくのだが、娘の無垢さはどこか確信犯的なものを匂わせている。 ■笠貝 ひとに依存しひとをコントロールし続ける女性の生きざまは... 善意でコーティングした欲望を活写した作品。それでも自身の不幸を嘆き続ける女性にうすら寒いものを覚える。 読書に勧善懲悪的な爽快さを求めると外してしまう作品集ではある。比較的、心穏やかな時に読むのをオススメしたい。 | ||||
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人間の暗い性を描かせたら天下一品のゴシック・ロマン小説の大家デュ・モーリア女史が20代の若き日に著した14編を収める初期秀作短編集です。本書を一読して感じたのはよくぞこんなに悲惨で遣る瀬なく救いのない不幸な人々の人生物語をこれでもかとばかりに書き続けられるなあという感嘆の念でしたね。まあ読み手はこれらの物語から喜びを得る事は難しい(人の不幸は蜜の味といった意地悪な感情は別にして)にせよ、もうここまで徹底して人間の醜悪な一面を見せられるとこれは「反面教師」的な読み方をするべきなのだろうなと思ってしまいますね。本当に人としてまっとうに生きる事や忍耐心や思い遣りの心の大切さが痛い程に胸に沁みて来ますし、こんな風な嫌らしい行いを為して惨めで悲痛な人生を歩まない様にと自分自身を戒める意味で貴重な一冊になるだろうと思いますね。あまりにも生真面目で道徳的な事を書いて大変申し訳ありませんが、どうにも私の性分ですのでそこはご容赦下さいます様にとお願いさせて頂くとしまして、著者もこういう不幸な物語を綿々と書き連ねながらも心の何処かに今を生きる人々に対して反省を促したい思いがあったのだろうと信じたいですね。 『東風』七十人にも満たない少数の人々が暮らす島に初めて外からブリッグ船がやって来た事でそれまでの穏やかな暮らしが崩壊し一変する。善良な人々の中に突然悪魔が忍び寄り狂乱その物の悲劇が!おそらく彼が法で裁かれる事はなさそうですが既に充分な報いを受けて罰せられていると言えるでしょうね。『人形』海辺で見つかった手記に記されていたのはある男が経験したあまりにもアブノーマルな愛の形だった。この物語から愛にのめり込み過ぎるのは危険で冷静な判断力を失うと身を滅ぼしかねないという決して甘くない人生の教訓が得られる事でしょう。『いざ、父なる神に』カリスマ牧師の隠された薄情で冷酷な人間性に慄然たる想いを禁じ得ませんね。非常に困難ではありますが人を見る目を養う事の大切さを痛感しましたね。『性格の不一致』少なくとも最初は惚れあって結婚した筈なのにね、この夫婦の諍いには心が暗澹としますね。我を張らずに相手を思い遣る心を持てればいいのに、それともいっそ腐れ縁の一蓮托生さと割り切るユーモア感覚も時には必要ですかね。『満たされぬ欲求』こんなに噛み合わないカップルは珍しく多分に著者の仕掛けた意地悪を感じますがこの二人には何事にもめげずに愛を貫いて欲しいですね。本編を読み終えて何となくオー・ヘンリー作「賢者の贈り物」を思い出しましたね。『ピカデリー』威勢の良い女メイジーが新聞記者に語る悪い奴と知りつつ惚れちまったヒモ男との半生の物語。オチは落語みたいで洒落ていますし、何よりもメイジーが自分を哀れんでいない意地っ張りな心意気に救われましたね。『飼い猫』大人になって実家に帰って来た娘を迎えたのは年寄りのマミーと彼女の飼い猫みたいな昔からいるジョンおじさんだった。何とも気の滅入る様な未来予想図が嫌なのならば即今すぐに家から飛び出るべきでしょうね。『メイジー』同業者の女ドリーの呆気ない死に内心で動揺し落ち込むメイジーだったが・・・・、ああ!「がんばれ、メイジー」と懸命に耐えて不安な気持ちに負けまいとする彼女を励ましてあげたいですね。『痛みはいつか消える』三ヶ月振りに夫がベルリンからロンドンの我が家へ帰って来る日が来て妻は朝から大きな幸福感に包まれるのだが・・・・、心変わりは突然に訪れるのでしょうか、人生には過度な期待は抱かずに大層に考え込まないでちょっとした変化を受け入れる寛容さも時には必要でしょうね。『天使ら、大天使らとともに』あのカリスマ牧師が再び登場して貧しい弱者の味方の若き牧師の芽を無慈悲に摘み取ります。著者はこういう無法な仕打ちが堂々とまかり通る世の中の異常さ不公平さを静かに皮肉っているのでしょうね。『ウィークエンド』愛し合う男女二人きりの幸せ気分一杯の週末旅行の筈だったのに次第に雲行きが怪しくなって来て・・・・。読み進むにつれてもうどんどん気持ちが暗くなる一方ですが、でも調子が良い時も悪い時にも互いを思い遣れるそんな真実の愛も確かにあるのだと信じたいですね。『幸福の谷』何時もぼんやりとして夢見がちな女性が歩行中に車との接触事故に遭い運転手の男性と恋に落ちて結ばれるのだが・・・・。著者には珍しく「幸福」という言葉が入ったタイトルですが、夫の夢と幻の男の子の残した「お墓」の意味がどうにも気になり「もしかするとこれは未来視なのでは?」と不吉な予感がしきりに込み上げて来てどうしても頭から離れてくれませんね。『そして手紙は冷たくなった』中国に赴任するX氏が英国に半年の休暇旅行に来て早々にミセス・Bに送った熱烈な愛の手紙の数々。熱しやすく冷めやすいプレイボーイ野郎の典型的且つ確信犯的な手口でガラリと態度を豹変させるその調子の良さ変わり身の早さには唯々嫌悪感を催しますね。『笠貝』周囲の人にくっついて離れずに何時の間にか不幸をもたらしてしまう幸薄い女の物語で、本人は良かれと思ってした事が全て裏目に出るなんてもう不運としか言い様がありませんが、せめてこの先の人生で彼女に真実を教えてあげて反省を促す親切な人が現われる事を祈りたいですね。 | ||||
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