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玻璃の天
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玻璃の天の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.36pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全33件 1~20 1/2ページ
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注文履歴に「配送状況が分からない」と表示されていますが、商品は受領済みです。表示通りのきれいな本が届きました。版元にも在庫がない本なので頼んで正解でした。 ありがとうございました。 | ||||
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「街の灯」に続くベッキーさんシリーズ2冊目。1冊目でなんという美しい物語だろうと思いファンになりました。 富裕な家庭で、進んだ考えを持つ父と優しい母、おっとりした兄という恵まれた家族の中で育ち、学習院に通うお嬢様花村英子。そして当時はまだめずらしかった女性の運転手ベッキーさんこと別宮みつ子を中心とする連作集です。 皇族や華族が混じる昭和初期の上流社会の様子が美しいです。時代考証がしっかりしているので安心して読め、時代のレトロな雰囲気を楽しむことができます。それでも上流には上流の苦労や不自由さがあったこともわかります。 一見、絵空事の世界に見えながら、軍部の力がだんだんと増してゆく様や右翼化していく世相が背後にちらほらと伺われます。 「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3作が収められていますが、2つ目の「想夫恋」だけがちょっといまひとつでした。英子の同級生で公家華族の綾乃さん、彼女との本を介した交流を楽しみながら読んでいたら、いきなり後半になって駆け落ちの話になるのが唐突で違和感がありました。 英子はまだまだ世間知らずながら、しっかりと自分で考える力を持ち、状況に臆せず立ち向かえる強さがあるのがいいですね。このシリーズあと1冊で終わってしまうようで読み終わるのが今からとても残念です。さらに続編を期待したいです。 | ||||
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ベッキーさんシリーズ第2巻です。お嬢様とその運転手の昭和初期を舞台にしたミステリーです。 連作短編になっていますが、第1巻から読んだ方がより楽しめると思います。 前作「街の灯」が素晴らしかったので、期待して読みましたが、古典や漢文からの引用が私には難しかったです。 ミステリーとしても難しく、特にこの2巻の2番目の話が、暗号の意味がさっぱり分かりませんでした。 ただ、登場人物が暗い時代に入ろうとする中、前を向いて生きようとする姿には心打たれるものがあります。 | ||||
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「ベッキーさん」シリーズの第二弾で、「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の 三つの短編で構成されている。 宝塚の男役を思わせる颯爽としたベッキーさんは、まだ謎の部分を多く 抱えた女性だ。この作品ではベッキーさんと桐原大尉、そして、私こと 花村英子と若月少尉との間に恋らしきものが芽生えてくる。 「幻の橋」は絵画消失事件の謎を解き、「想夫連」では失踪した友人を探し、 「玻璃の天」ではステンドグラスの天窓から転落し、命を落とした思想家の 死の謎に挑むもので、三編を読み進むうち、ベッキーさんの隠れていた 素顔が次第に明らかとなってくる。 今回も帝都のホームズとワトソンの活躍が楽しみだ。 | ||||
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何事が起ころうとも、うまい具合に落ちつくトコに落ち着くんだろうな、という安心感があるので終始穏やかに上品な語り口を楽しみました。 「何物?」の種明かしもされたんで、続巻では「事件後どういう経緯で今に至ったか」も書いてくれてるのかな?の期待感。 | ||||
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とても楽しかった。円紫さんシリーズから読んでいます。すごい筆力です。 | ||||
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ベッキーさんシリーズ第二弾。 全部で3編のミステリー短編が収録されています。 北村薫さんの作品らしく、ミステリ要素のほか、ストーリー設定の昭和初期の日本の時代背景や空気感も味わえる作品。 個人的には、ミステリというよりも、ミステリ的要素が加わった時代小説を読んでいるかんじ。 昭和初期という暗い空気感のある時代のなかで、人々がどのようなことを感じ、考え、生きてきたか、繊細な描写で描かれています。 若干重いテーマを抱えつつも、一方で主人公とそれを取り巻く人々のやりとりは楽しく描かれているので読みやすいです。ちょうど良いバランス。 北村薫さんの作品は、どんなテーマを掲げていても、とても優しい気持ちになるのが一番の魅力だと思います〜。 オススメです。 | ||||
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良家の子女英子とそのお抱え運転手ベッキーさんが 様々な事件を解決していく探偵小説文庫本第2弾。 今回は、恋愛にまつわる事件が3篇。 第1話「幻の橋」は日本版ロミオとジュリエット。 結果はハッピーエンドだけれど、両家が敵対した背景には、 その時代ならではの哀しいものが。。。 第2話「想夫恋」は身分違いの恋の物語。 暗号での恋文。 この二人の恋は。。。 第3話この本の題名にもなった「玻璃の天」 やはりこれも身分違いの恋の物語ではあるのだが、 ただ、身分以上に時代が二人の間に、そして、 その家族の間に大きな影を落とす。 そして、それはベッキーさんにも。 この話の中でベッキーさんの素性が明らかになる。 この話はとっても悲しい物語で、それは、 最後に主人公の英子がベッキーさんに 「ベッキーさんの願う道は、時間を元に戻して・・・ でもそんなこと、誰にもできない。 私達が進めるのは前だけよ。なぜこんなことになったのか、 このことを胸に刻んで、生きていくしかないんだわ。」 という言葉に収斂される。 そう、どんな時代にも私達は前に進むしか生きてはいけない。 未来は作れるけれど、過去は消せないのだから。 | ||||
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この人の描く世界と女性は、その時代に関わらず、日本の美しさを表現したものだと思う。円紫師匠シリーズの「私」も、このベッキーさんシリーズの花村英子も。特に英子は上流階級のお嬢様だから、言葉遣いも美しく、その精神も淑女そのもの。これぞ、日本の美だと感じる。今はただの金持ちが”セレブ”ともてはやされ勘違いをしている輩も多いが、本物のセレブというのはこういう人たちのことを言うのだ。 『街の灯』を読んだときは、なるほどベッキーさんというのは謎めいた女性で、これからどんな風に謎解きをしていくのかという、序章的な作品だなと思ったが、本作に来て一気に物語が加速する。謎解き自体も面白くなっているし、ベッキーさんの過去も徐々に明らかになり、嫌が応にも次に作品への期待が高まるところである。 円紫師匠シリーズは謎解き以外にも人の少しくらい部分や影の部分も描き出し、それでもやはり人は捨てたもんじゃないでしょう?という円紫師匠の温かさを感じる作品であるが、こちらはこの時代背景が特殊なせいか、もっと大きなメッセージを感じる。英子とベッキーさんを描くには、この昭和初期という時代しかなかったんだろうと。命の大切さとか、おおざっぱなイメージではなく、こんな時代にあって人はどう生きるべきだったのか、今の私たちはどう生きるべきなのか。作者の様々に交錯する思いを英子に語らせているような気がする。 そしてなにより、与謝野晶子の「君死にたまうことなかれ」の解釈に驚いた。自分が弟の立場だったら、決死隊に志願してでも華々しく死ぬしかなくなる、この歌を世に公表することがそんな危険な行為だったとは。言論の自由なんて今でもあるかどうかわからないけれど、戦争に、もしくは政府に反対の意を表明するということはそういうことなのか、とそんなことに思いが至らなかった自分の浅さを思い知ったような気がする。 英子のこころの美しさとベッキーさんの聡明さがここちよいが、これからどんな時代に日本が突入していくのかを知っている私としては、なんとも胸が詰まる思いである。 | ||||
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昭和初期の東京。士族の花村家令嬢と女性運転手・別宮(べっく)の二人に遭遇する事件を描いた連作短編集「ベッキーさん」シリーズの2作目。 戦争へと向かう不穏な空気感の中、人が人を思うことの難しさが形を変えて描かれています。 恋、憎しみ、哀しみ、それぞれの登場人物が、それぞれの思いでこの世界に生きている……その一つ一つをかみしめる作品です。 ベッキーさんこと別宮さんが背負ってしまっているものも表題作の「玻璃の天」で描かれています。凛としたベッキーさんの感情の揺れをとにかく抑えて書かれているのが印象的で、三作目をすぐにでも読んでみたいと感じました。 | ||||
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ベッキーさんシリーズ2作目。 全3部作で、もちろん順番通り読むのが望ましいのですが、この真ん中が一番出来が良い巻になっています。 右翼の物言いに、日教組が日本をダメにしたという話がありますが。 少なくとも戦争反対の面では、教師たちは左翼的なおもわくでもなく(当然だ、共産国家にだって軍隊はある)、資本主義批判でも、平等思想でもなく、ただただ子供を死なせたくないという思いで行動したのだと、その切々とした気持ちが伝わってくる内容です。 作者が元教師で、教師だったからこそ長年徹底的に考えてきた事が、ぎゅっと詰まった、重い、重い、一冊です。 北村薫の描く少女は、美しすぎて嘘っぽいと思う人も多いようですが。 若者の多くが、ある面不器用なまでに美しい思いを抱えているという事実を、彼は教師という職業を通して、また父親として知ったのではないでしょうか。 そして、それを守りたいと切実に思い、しかし守ることの困難さも実感したのだろうと思うのです。 全ての若い女性のそばに、(彼女を守り、彼女を導く、分別ある年上の女性)ベッキーさんを一人ずつ置いてあげたい。しかしまた、その素晴らしいベッキーさんも、一人の弱い女性であり、できるなら彼女の側に彼女を守る素晴らしい男性にいてもらいたい。 それが北村薫の偽らざる本心だろうと思うのです。 | ||||
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ベッキーさんシリーズの第2弾(全3巻)。 「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3本の短篇が収められている。 ミステリとしては評価が難しい。「幻の橋」と「想夫恋」は箸にも棒にもかからないレベル。「玻璃の天」はアイデアは面白いが、うまく生かし切れていないように感じた。 しかし、このシリーズの主眼は、ミステリの部分にはないのだと思う。第二次大戦直前の日本の上流社会を幻想的に描くという点に力が入れられている。軍国主義的な傾向への強烈な批判が込められている。 しかし、それも好き嫌いが別れそう。私は苦手。 | ||||
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女子学習院の生徒のお嬢様を主人公として描かれるのは,1933 (昭和8) 年の東京の上流階級の世界.作者は厖大な資料を駆使して,今では完全に失われてしまった社会を昨日のことのように描き出す.この時代の空気は,ここに書かれた通り,物言えば唇寒し所か,生命の危険さえある漠然たるテロの恐怖に満ちたものであった.その空気が実感できるのが作者の手柄である.私はこの恐ろしい空気の中を生きただけに,作者に感謝したい.それと日本の古典文学,中華の漢文文書に対する教養は,この時代の初等中等教育の水準の高さの結果であることに注意したい.戦後の学制改革,教育改革は本質的に敗戦国の教育水準を下げる企みで,その結果が現在の嘆かわしい状態なのである.貴族階級が亡びるのはよいとしても,知的水準までが亡びるのは口惜しい.そういうことをこのお嬢様シリーズは痛感させてくれる.強く推薦.なお,会話の応答で,返す,という表現はこの時代ではあり得ない (お言葉を返すようですが,と言って反論する時に限る).それから食材という言葉はなかった.強いて言えば素材か材料だろう.難点はその程度で,真に見上げた時代再現である. | ||||
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ベッキーさんのたしなみが感じられる作品だと思う。 驕れる人の行動に対して,抑制のある行動が取れる人間。 こういう人が少なくなってしまったのだ。 「女のくせに」 昭和初期に使われる言葉,今でも平気で使われる言葉でもある。 自分を振り返ることができない人は,他人に対して何もできないはずなのだ。 ベッキーさんは,自分という人間の位置がよくわかっているのだろう。 | ||||
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ベッキーさんのシリーズの第二弾。『街の灯』を読んでいる者にとっては、お馴染みの人々が次々に出てくる。ミステリーと言わずとも、読み物として面白い。 短く引き締まった文が続く。女運転手ベッキーさんの過去が、徐々に徐々に明らかになる。随所に張られた伏線に気を配っていると、短編集を読んでいるような気がしない。 昭和初期の上流階級の生活が、商事会社社長の娘、花村英子お嬢様の生活という窓を通して、具体的な風俗の形をとって描かれていく。彼女が、まれに覗き見る庶民の生活が、彼女の心に波紋を広げる。それが、時代を物語る重要なエピソードになっていることも多い。 英子お嬢様は、素直でしっかり者で魅力的だ。類型的ともいえるが、ベッキーさんとの、大時代的な主従のつながりが不自然に感じられないところがすごい。昭和初期という時代がそのような関係を許す、というようなものではないだろう。そのような関係を許すような世界を描いているのだ。だからこそ、わずかに覗く庶民の在り様、世界の動きに強いリアリティが生じる。 それにしても、引用される作品の何と多いことか! 古典から現代(当代)の作品まで。漢文、清元から映画まで。引用が、取って付けたようなものではなく、内容に深く関わっている。そのために、何かを読み落としているのではないか、との思いが絶えずつきまとう。たとえば、忠臣蔵の何を自分は知っているか、と自問しだすときりがない。他の引用にいたっては、なおさらだ。もっとも、それは不安というよりも、愉しみと云った方が良いものだが。 | ||||
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北村さんの 「スキップ」「ターン」「リセット」3部作は、とても面白かった。 その後、すっかりご無沙汰していた作家さん。 「鷺と雪」が出版されたので、調べてみたら、どうやらシリーズの3番目とか。 で、遡って、これを読みました。 う〜ん、ドスンとハマりました。 知らずにいたことが恥ずかしい、でもこれをスルーしなくて良かった! 良家の子女・花村英子とおかかえ運転手・ベッキーさん。 やっぱり北村さんは、お上手! キャラクターが生き生きしている。 女学校の女生徒達や、女学校の様子が実にありありと伺える。 近世の歴史って、時間が足りなくて学校の授業でパスされることが多いので、意外と知らない。 当時の街の様子や、おひいさまたちの暮らしが嫌味にならずに、巧く描かれている。 膨大な参考文献、膨大な時間を費やして調べ、書かれているのでしょう。 作品に対する作者の姿勢が心地よい。 ミステリーであるが、それ以外の部分に全く無駄を感じない。 上質の作品。 | ||||
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ステンドグラスを突き破り転落死した男には、人の恨みを買うような何かが あったのか?ステンドグラスに開いた穴の謎に迫る表題作「玻璃の天」を 含む3編を収録。 時代は昭和初期。日常の中で起きるさまざまなトラブルや謎に迫るのは、 大きな屋敷に住む令嬢と女性運転手の二人だ。 3編の中で特に印象的だったのは「玻璃の天」だった。ステンドグラスに 開けられた穴に込められたある人物の憎しみ・・・。それを見破った女性 運転手の別宮だったが、その結果彼女自身のあまり触れられたくない過去 までも暴かれることになってしまう。この話の展開は面白い。古きよき 昭和初期の時代描写も、とても興味深く読んだ。ただ、この作品は「街の灯」の 続編なので、そちらから先に読んだほうが話のつながりが見えてよかったので はないかと思った。読む順番を間違ってしまった・・・。これから読む人には、 順番どおりに読むことをオススメしたい。 | ||||
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「街の灯」の続編にして、ベッキーさんと英子シリーズ第2弾。 英子はいよいよ女子学習院の中期4年を修了し、後期3年の課程に進む (前期4年、中期4年だから今でいう中3から高1ぐらい)。 当時のおひいさま(お嬢様)方は社交界デビューの年頃とて、英子の周辺でも、 好いたはれただの、お見合いだの、駆け落ちだのといった話が聞こえてくる。 そんな日常において出来する事件の謎をめぐる英子とベッキーの活躍が描かれている。 残念なことに、本作でベッキーさんの素性が明かされてしまう。 個人的には、この謎はできるだけ引っ張って欲しかったし、明かされた正体も意外に 平凡というか、衝撃度は小さかった。まあ、まだ謎は少々残されてはいるが…。 ただ、描かれている時代がこの先いよいよ暗い軍国主義の時代へと突入していくことを 考え合わせると、作者にとっては続編を書き続けていくことがかなり厳しいのではと 心配してしまう。本シリーズのファンとしては、第3弾あたりで終了とならないことを 祈っているのだが。 個人的には、昭和初期という時代に興味を惹かれるものがある。 大正デモクラシー後、戦前においてもっともリベラルな空気を纏い、昭和文化が花開き、 モボ、モガが闊歩した時代。 北村薫はかなり緻密に時代考証を重ね、この時代の雰囲気をかなり忠実に再現している(と思う)。 例えば、当時女子学習院のあった青山や、現在衆・参両議長公邸のある永田町の 旧閑院宮邸あたりの描写、銀座和光の時計塔の竣工当時の話等々実に興味深い。 それと例によって博覧強記を発揮し、当時の詩歌、書画、美術、思想に至るまで巧みに、 しかも嫌味なくストーリーに取り入れていくところなど、感心しきり。 そして、北村作品に共通する登場人物たちの繊細な思考と、思いやりに満ちた解決案の提示。 「日常の謎」が北村作品のキャッチフレーズとなっているが、その(主要)登場人物たちは、 非現実的と思えるほど、優しく、繊細で純粋なことが多い。 このシリーズでは、時代設定が今から70年以上前なだけに、そんな純粋な人物像にも 一層違和感なく溶け込めるのかも知れない。 | ||||
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『街の灯』に続く本作は氏の「推理」小説としては、 円紫シリーズなどと比べその輝きが少ないことを認めざるは得ないだろう。 しかし、会話がやや現代風に改められてはいるものの これだけの時代考証を行い、それを作品の中に 反映させたエネルギーは高く評価すべきだ。 十五年戦争の前夜、最も華開いた昭和の消費文化。 数々の作品に採り上げられた記号といえども イメージだけではなく、生活感を持って描写し得た作品は それほど多くはない。その直後に設定を置いた本作は その中でも高い質を持ったものに相違ない。 自由に外出できないお嬢様を探偵役に据えた逆転の発想が、 軍靴の足音が不穏な時代を描写するに相応しい。 続編が強烈に待たれる。 | ||||
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舞台は昭和初期で、現代の作品ながら、当時の雰囲気が、克明に描かれている。 巻末の参考文献の多さからみても、多くの資料を駆使して、当時が再現されている様だ。 特に、巻頭に配されている「幻の橋」は、明治大正昭和初期の風俗が、凝縮されて描かれている様な作品だ。 そして、巻末に配されている「玻璃の天」には、少々不穏な雰囲気も感じられ、戦争に突き進んでいる事が分かる。 こういった雰囲気の中で、それぞれの作品はミステリーでもある。 その内容は、人探しから、殺人まで、色々だ。 これらの作品は、内外の文学、音楽、美術といった、芸術的要素があるミステリーであるのが特徴だ。 特に、国文学や海外の文学に題材を求め、それらが自然に物語に溶け込んでいる。 こういった意味で、大変格調高い作品に仕上がっている。 この格調の高さにロマンを感じる。 本書を読み始めると、途中で本を置くのは無理だ。 | ||||
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