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暗い落日
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【この小説が収録されている参考書籍】
暗い落日の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.46pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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“真木(終吉)探偵もの”第1作。タイトルどおり“暗い”話だ。しかし、その厚い壁の向こうに真っ暗な真相を発見した私立探偵じしんの深い淵にも食い込んでくるほどの事件であった。それから、もっと怖ろしいのは、殺された者も殺した者も被害者であったということ。そして、加害者は余生を悪夢に魘されながら生きつづけなければならないとはいえ、幾人もの屍を見なければ、自らの犯罪に気づかなかったのだ。 真木は磯村英作、69歳から孫娘・乃里子、19歳の捜索を依頼される。乃里子は吉井克也、21歳とつきあっていた。しかし、資産家の英作は克也との交際を断固として認めなかった。それでも一月ほどは何ごともなく過ぎたのだ。ところが、ある日、乃里子は普段着のまま満足な金ももたず、行方知れずとなってしまった。克也の家庭は複雑で、両親とも酒浸りで男親のほうは、外に女を作って家にも寄り付かない。それで克也も一時はグレたようだが、乃里子と出会ったこともあり、更生の道を歩んでいたのだったが…。 探偵は、英作を怒らせてしまい、クビになってしまう。それでも、退きさがることはできなかった。<だれの命令でもなく、自分の内部からぐいぐい突き上げてくる烈しい力>に翻弄されるように動き続けた。落日の下で<揺れているのは波ではなく、わたしの心だ>った。章タイトルは、すべて乃里子と関係がある。「水色のブルーバード」も「花模様のスカーフ」も、そして「崖の上の女」も。いや、「スェードの茶色い靴」だけは乃里子のものではなかった!ここに鍵があるのか?いやいや、そう簡単には推理できない錯綜した事情が横たわっていた。途方もなくぶ厚く堅固だった壁が崩れだした時の様子を、探偵は<猛烈な勢いで噴出した><真っ黒な原油>にたとえている。しかし、その眼には<暗い影>が落ちていた。 この事件の犯人は人間の<エゴイズム>と<弱気>だと探偵は告発する。そして、人間は生きていても死んでいる場合もあることを、<運命は残酷な悪戯>をすることもあると探偵は知るのだった。この作品を教えてくれた原尞の小説たちと同じように深い闇に突き落とされるような結末である。ここには、原の作品とちがってユーモアもほとんどない。真木探偵に気心の知れた腐れ縁の仲間もいない。したがって、最初の英作とのもの以外、会話の妙味もあまり感じられない。それでも、この作品が、原尞にハードボイルド小説を書かせる直接の動機のひとつになったことは充分に納得できたし、何より、2冊残っている真木シリーズを最後まで読んでみたい気にさせられることに何の支障もなかった。感銘には暗いものもあるということだろうか。結城昌治が描きたかったことに最後までつき合ってみたい。 | ||||
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著者は、日本のハードボイルドの先駆けと言われる作家さんだそうです。 個人的には著者の作品を初めて読みました。 最近は、主人公である私立探偵の一人称スタイルのハードボイルドに固執して読んでおり、いったんダシール・ハメットのサム・スペードやチャンドラーのマーロウまで遡り、国産に戻って来たところです。 依頼があり、行方不明者を探す過程でアクシデントに見舞われ、最後には真相にたどり着く。この往年のスタイルが、本作の魅力です。 いわゆる本格ミステリーと違って、散りばめられた伏線が最後に全部回収されて大どんでん返し!とはいきませんが、読者が探偵と同じ気持ちで謎を追いかけ、真相に一歩ずつ近づくのがハードボイルドなのだと、最近気が付きました。 その点で、本作は傑作だと思います。 | ||||
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日南貿易の駐在員・坂本は社員の香取の行方を追ってサイゴンに赴任する。会う人に「香取を捜すのをやめなさい」と言われてもやめないでいると、謎の言葉を残す人物があらわれたりする。さらに不意に襲われ、脅しの電話があり、事件に巻き込まれてゆく。著者はあとがきで〈舞台を南ベトナムの首都サイゴンに決めるまではまったくの五里霧中〉だったと記している。 執筆された1961年は、派兵拡大を押し進めたアメリカの対ベトナム政策で泥沼化していた。地図もなく、新聞社に資料もない。サイゴンに駐在したことのある新聞記者や商社員に会って、サイゴン市内の見取図を作ったという。 坂本や香取、リエンをめぐる人々は第二次、インドシナ、そしてベトナム戦争の被害者。そうした悲しさがスパイの行動によって、いっそう際立ってくるも本書の特徴である。 『暗い落日』は私立探偵・真木が磯村家に依頼されて、失踪した令嬢・乃里子をさがすストーリー。ところどころに伏線を入れ、状況描写をできるだけ短くし、会話で読ませるあたりは『ゴメスの名はゴメス』とよく似ており、スピード感があふれている、 執筆にあたって、興信所に取材の電話をすると、暴力団が経営している怪しい事務所があったという。このあとに出版された文庫の帯にはハードボイルドと銘打ってあるが、どちらかといえば探偵ものミステリーと思う。 | ||||
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デジャヴって言葉がはやっていますね。映画にもなったしね。 心理学や医学のことはしらないけど、既視感って訳しているようです。 ようは行ったことも、見たこともない風景なのに、なぜか懐かしい・・という感じかな。 昔、武満徹がチャンドラーの小説について、イマージナリー・ランドスケープがあると書いていた。 想像的な光景というのも、いまやデジャヴの範疇かもしれない。 チャンドラーのセリフって、時々、その時の気持ちによって嫌いになるときがある。情緒過剰だからだ。 うろ覚えで書く。 ギムレットには早すぎる。。。 開店直後のバーは空気がきれいで、ひんやりしている。 ぴかぴかのグラス。。。がなんたらとかね。 今日のタイトルにもしているけど、さよならを言うのは少しだけ死ぬことだ。。。うふふ、文学してるよねって感じだ。 結城昌二(真木探偵シリーズ)はロスマクの系列だろうけど、チャンドラーの後期には憂愁があると書いていたが、至言である。 憂愁とうけとるか、歯が浮くようでヤダかは、そりゃ、好みですね。 なんか、前期とか後期とかいうと、ウィトゲンシュタインみたいで、凄い偉そう。 アハハ 「さむけ」の、ロスマクは透明感があって好きだな。 小笠原豊樹の訳が、かなり貢献しているのかもしれない。 いつも謎の失踪があって、探偵が介入すると、アメリカ家庭が崩壊するパターンになってから、つまらなくなったね。 奥さんのサスペンスものの方が面白い。 チャンドラーもどうせ再訳するなら、村上春樹でなく、村上博基ならよかったのに・・・と思うけどな。 稲葉明雄だと、なんか思いっきり、古臭い美文になりそうだが、それも楽しみだ。 まあ、みんながつげ義春や吉本隆明を読んでいるときに、ロスマクやリング・ラドナーを読んでいた。 反社会的で屈折してたのだろうけれど・・・。今は昔です。 でもそのころは、チャンドラーよりハメットだったし、ウールリッチよりパトQ(クェンティン)だった。 そういう人、多かった。 ちなみに我がイマージナリー・ランドスケープの作家だと、当時だと、松本清張かしら。短いセンテンスの文体が好きだった。 「黒い樹海」とか「蒼い描点」、そして「黒い福音」は、デジャヴな光景がマザマザと浮かんだ。 その結果、「対星館」に何度もお泊りした。 原作の景色と、うん、すこし違ったかな。でも、それでいい。 | ||||
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どこにも売っていなくて(近隣地区)、アマゾンで見つかり、親も喜んでおりました。 | ||||
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本書で、結城昌治こそ、わが国のハードボイルドの原点であることがわかる。 一人称視点からくる、ストーリーの強引さはやむをえないが、それを補って余りある出来である。 真木は、軽口をたたかない「沢崎」といえば現在のハードボイルド好きにわかってもらいやすいか。 40年前に書かれた作品とのことであるが、 ぜんぜんその古さを感じさせないところはすごい。 感じるとしても、ケータイのない不便さぐらいであり、 それは、ストーリーとは関係のないことである。 お薦めするのは、もちろんハードボイルド好きの方。 たやすく手に入る今が、読み時。 たとえ読まなくても、手に入れておきたい作品である。 | ||||
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結城昌治は日本ミステリにおける偉大なパイオニアであり、その業績は再評価されなければならない。 日本版「EQMM」の短編コンテストで佳作入選し、洒落たユーモア・ミステリ「ひげのある男たち」で長編デビュー。 本邦初の本格的なスパイスリラー「ゴメスの名はゴメス」、悪徳警官ものの傑作「夜の終る時」(推理作家協会賞受賞作)、 渥美清主演で映画化もされた愉快なコンゲーム物「白昼堂々」とその多彩さと完成度の高さは驚きですらある。 そして私立探偵 真木(名は明らかにされない)を主人公とする本作こそ、日本において初めて登場したリアリティを持ったハードボイルド・ミステリである。 ロス・マクドナルドの強い影響を感じさせるが、昭和30年代の成熟と腐敗の気配を見せ始めた日本社会の暗部と悲劇を描写した、その世界は古びていない。 「公園には誰もいない」「炎の終り」と続く本シリーズは必読だ。 | ||||
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私立探偵真木シリーズの1作目。 作者は大藪晴彦とともに日本のハードボイルドの創生期をささえた作家であるが、恥ずかしながら、このシリーズは最近になって、原りょうのエッセイ「ハードボイルド」で知った。原氏自身、第一作「そして夜は蘇る」を書く際、精神的な支えとなったと書いているように、一人称記述の私立探偵小説という設定以外にも、作品の醸し出す雰囲気が非常によく似ている。40年以上前の作品ということで、背景となる時代は古いが、内容は全く色あせていない。沢崎シリーズのファンにもおすすめできる作品である。 なお、真木シリーズは、他に「公園には誰もいない」「炎の終り」 | ||||
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私立探偵真木シリーズの1作目。 作者は大藪晴彦とともに日本のハードボイルドの創生期をささえた作家であるが、恥ずかしながら、このシリーズは最近になって、原りょうのエッセイ「ハードボイルド」で知った。原氏自身、第一作「そして夜は蘇る」を書く際、精神的な支えとなったと書いているように、一人称記述の私立探偵小説という設定以外にも、作品の醸し出す雰囲気が非常によく似ている。40年以上前の作品ということで、背景となる時代は古いが、内容は全く色あせていない。沢崎シリーズのファンにもおすすめできる作品である。 なお、真木シリーズは、他に「公園には誰もいない」「炎の終り」 | ||||
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傑作国産ハードボイルド作品の中でも外すことのできない、探偵真木シリーズのスタートラインに立つ作品。オリジナル角川文庫版です。ロス・マクドナルドからの流れに位置する傑作小説であります。事件の起こる家庭の暗い運命を真木が追い詰めていきます。一人称で書かれた物語に共通する、まるで自分が物語りの中に入り込み、私立探偵となって事件を解決していく、バーチャルな感覚を体験することができます。そしてその体験は上質な物語であればあるほど、バーチャル度は高まっていきます。 | ||||
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先年惜しくも亡くなった結城晶治さんは、都築道夫さんと並ぶ鬼才だったと思います。結城さんの作風は一作ごとにまるで異なりますが、この『暗い落日』に始まる「私立探偵真木シリーズ」は、ハメット、ロスマク、チャンドラーの本格ハードボイルドの系譜を日本に移植しようとした野心作です。中でも、この『暗い落日』はおすすめです。原寮さんもこのシリーズに影響を受けたと明言しておられますし、原さんのファンであれば必ず気に入ると思います。 | ||||
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