夜の終る時
- 悪徳警官 (11)
- 日本推理作家協会賞受賞 (110)
- 警察小説 (526)
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ひょんなことから手にした。 | ||||
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昔、(推理小説では)警察小説しか読まないという年配の知人がいた。彼がなぜ警察小説を偏愛していたのかは訊かなかったが、今はそれが分かる気がする。 ひとつは、名探偵がー極端な場合には現場に赴くことさえなくー推理だけで犯人を割り出すことへの不満であろう。警察官という職業の地道な苦労の割に報われないのに比べると、名探偵の論理的なインテリジェンスそれじたいが胡散臭くも感じられよう。それに第一ー本書の[解説]で郷原宏氏も書いている通りーもはや私立探偵の職業的リアリティは風前の灯でもある。また、たとえば横山秀夫の作品にも顕著なように、警察官は犯人を追い詰める以前に警察内部での葛藤が凄まじいことも知られている。そして、本書は「日本で最初に書かれた悪徳警察ものであ」り、郷原氏の「見るところでは、この作品をしのぐ悪徳警察ものはまだ書かれていない」という。 しかし、警察小説のもうひとつの特徴は、聞き込みなどに代表される足を使った捜査の部分は、読者からすれば往々にして退屈でもあることだ。本書もその轍から完全に抜けきれているわけではない。それでも、読む進むうちに徐々に面白さが走り始め、第二部を読み始めるころには、この小説が頗る興味深いものであることを確信している自分に気づくはずだ。 第一部は、犯人を追う側の物語であり、第二部は、犯人自身のモノローグである。こういう構成の小説が他にもあったか、憶い出せないが、この構成が実に巧みだ。なぜなら、犯人を追う側には、どんなに肉薄しようとも、犯人の本当の動機は所詮わかりっこない。それは、供述などでは決して浮かび上がってこない。犯人の心の闇の奥は、こうした一人称小説のモノローグという形でしか叙述できないのではないか。しかも、最初から一人称にするのではななく、第一部で犯人を外側から追いかける物語を読んだうえで本人の独白を聴くという構成が効いているのだ。つまり、一挙に犯人側に感情移入してしまえる、という趣向だ。 そういえば、件の警察小説好きの先輩は、カラオケに行くと、ムード・コーラスものだけを歌っていた。万感の哀切をクールに歌うその姿が今も忘れられない。 | ||||
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昔、(推理小説では)警察小説しか読まないという年配の知人がいた。彼がなぜ警察小説を偏愛していたのかは訊かなかったが、今はそれが分かる気がする。 ひとつは、名探偵がー極端な場合には現場に赴くことさえなくー推理だけで犯人を割り出すことへの不満であろう。警察官という職業の地道な苦労の割に報われないのに比べると、名探偵の論理的なインテリジェンスそれじたいが胡散臭くも感じられよう。それに第一ー本書の[解説]で郷原宏氏も書いている通りーもはや私立探偵の職業的リアリティは風前の灯でもある。また、たとえば横山秀夫氏=原作のドラマに顕著なように(つまり原作は未読)、警察官は犯人を追い詰める以前に警察内部での葛藤が凄まじいことも知られている。そして、本書は「日本で最初に書かれた悪徳警察ものであ」り、郷原氏の「見るところでは、この作品をしのぐ悪徳警察ものはまだ書かれていない」という。 しかし、警察小説のもうひとつの特徴は、聞き込みなどに代表される足を使った捜査の部分は、読者からすれば往々にして退屈でもあることだ。本書もその轍から完全に抜けきれているわけではない。それでも、読む進むうちに徐々に面白さが走り始め、第二部を読み始めるころには、この小説が頗る興味深いものであることを確信している自分に気づくはずだ。 第一部は、犯人を追う側の物語であり、第二部は、犯人自身のモノローグである。こういう構成の小説が他にもあったか、憶い出せないが、この構成が実に巧みだ。なぜなら、犯人を追う側には、どんなに肉薄しようとも、犯人の本当の動機は所詮わかりっこない。それは、供述などでは決して浮かび上がってこない。犯人の心の闇の奥は、こうした一人称小説のモノローグという形でしか叙述できないのではないか。しかも、最初から一人称にするのではななく、第一部で犯人を外側から追いかける物語を読んだうえで本人の独白を聴くという構成が効いているのだ。つまり、一挙に犯人側に感情移入してしまえる、という趣向だ。 そういえば、件の警察小説好きの先輩は、カラオケに行くと、ムード・コーラスものだけを歌っていた。万感の哀切をクールに歌うその姿が今も忘れられない。 | ||||
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1964年 第17回日本推理作家協会賞受賞作 ヤクザ組織 赤座組との癒着を疑われている徳持刑事が失踪した。徳持刑事の幼なじみで、恐喝の容疑者 赤座組幹部 関口が、逮捕寸前の忽然と姿を消して間もなくのことだ。同僚の刑事たちは、関口、そして徳持刑事の行方を追う。やがて、ホテルで徳持刑事の扼殺死体が発見され ・・・ 本作品は二部構成で、一部は捜査活動に専心する刑事達を描き、二部は犯人の視点から事件の顛末を明示するようになっている。 一部で捜査の折々に語られる刑事たちの悲哀。刑事という職業を選択したがゆえに負ってしまった人生の苦難が切々と表現されている。この鬱勃とした描写が、二部で明かされる犯人の動機に深い影をおとしているのだ。 徳持刑事の死は、悪行の果てなのか。捜査が進むにつれ、徳持刑事への疑いが濃厚になっていく。 本作品はいわゆる暗黒小説である。横山秀夫さんに先駆けたかのような、刑事の生きざまを掘り下げた警察小説でもある。真犯人が吐露する切羽詰まった苦悩の日々。絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残す。 犯人探しだけに終始していない構成の妙が効いている作品である。 | ||||
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1964年 第17回日本推理作家協会賞受賞作 ヤクザ組織 赤座組との癒着を疑われている徳持刑事が失踪した。徳持刑事の幼なじみで、恐喝の容疑者 赤座組幹部 関口が、逮捕寸前の忽然と姿を消して間もなくのことだ。同僚の刑事たちは、関口、そして徳持刑事の行方を追う。やがて、ホテルで徳持刑事の扼殺死体が発見され ・・・ 本作品は二部構成で、一部は捜査活動に専心する刑事達を描き、二部は犯人の視点から事件の顛末を明示するようになっている。 一部で捜査の折々に語られる刑事たちの悲哀。刑事という職業を選択したがゆえに負ってしまった人生の苦難が切々と表現されている。この鬱勃とした描写が、二部で明かされる犯人の動機に深い影をおとしているのだ。 徳持刑事の死は、悪行の果てなのか。捜査が進むにつれ、徳持刑事への疑いが濃厚になっていく。 本作品はいわゆる暗黒小説である。横山秀夫さんに先駆けたかのような、刑事の生きざまを掘り下げた警察小説でもある。真犯人が吐露する切羽詰まった苦悩の日々。絶望という言葉がふさわしい幕の閉じ方は、読了後もしばし、重苦しい余韻を残す。 犯人探しだけに終始していない構成の妙が効いている作品である。 | ||||
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1963年発表。第17回日本推理作家協会賞受賞作。 ハヤカワミステリや東京創元社のクライムクラブで紹介されていた当時の海外ミステリの最先端の水準に堂々と挑み、多様な傑作群を生み出した昭和三十年代の結城昌治の凄さはどれほど評価しても足りない程だ。 本書は犯人当ての本格推理の前半、暗い陥穽に落ちて行く悪徳警官を描く後半という二部により描かれる意欲作。 凝った構成が趣向倒れになることなく、翻訳ミステリの濃厚な影響を受けた洗練性と日本人らしい陰翳深き情緒が無理なく一体化され、そして何より常に清新な挑戦を試みた作者の志の高さに感動する名作。 | ||||
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