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石の来歴
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石の来歴の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.24pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全21件 1~20 1/2ページ
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この作家は名前だけは知っているが作品は読んだことがない一人だったが、先日読んだ加藤陽子さんとの歴史対談本が非常に面白かったので、そこで加藤さんが激賞していたこれを読んでみた。1994年の芥川賞受賞作。 あの大戦のフィリピン・レイテ戦線での壮絶な帝国陸軍の様相を、ある上等兵が語る「岩石の歴史と永遠性」をモチーフに戦後社会に生きる復員兵と繋ぎ、ある種怪談じみた装いの物語に仕立てた手腕は流石!と言うしかない。それにしてもこの文体!三島由紀夫のような「華麗な人工美の極致」とは違うが、どこか中島敦を思わせるようで中島の漢文調より柔らかな文章の流れが、実にいい。一語一語をじっくり味わいながら読みたくなる~そんな文章である。そして、68年からの学生運動のうねりを「戦中派」に対抗する存在として浮き立たせたところなど、ちょっと大江健三郎「万延元年のフットボール」を想起させる。 しかし、東南アジア戦線では実際の戦闘で死亡するより病死・餓死などのほうが多かった事実、そして行軍に付いていけなくなった「見込み無き兵士」の陸軍内殺害。そうした「内情」が淡々と綴られるこの作品が「第一級の戦争文学」であることは間違いない。こういう作家のことを今まで知らなかったとは!これからぼちぼち他の作品も読んでみる。 | ||||
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「石の来歴」は既読だが、それを発展させたのが「浪漫的な行軍の記録」らしい。「浪漫的な~」の感想を書く。 敗戦の色濃く、生存の望みもわずかな極限状況の中で、日本軍兵士達が、理不尽な行軍を延々と続ける狂気を描いたものと読んだ。正常な意識も判断力も失われた中で、彼らを動かすものは、狂気しかない。私には推測しか出来ないが、実際に敗戦の迫った日本軍兵士達が、狂気に突き動かされて、理解不能な行動を取った事もあったんだろうな、と思わせる迫真の内容。 奥泉光さんが、作家として想像力を働かせ、戦場と言う極限状況の狂気を描いた力作と評価したい。 | ||||
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1985年「地の鳥 天の魚群」でデビュー後、1992年に第108回芥川賞候補(受賞はせず)になった「三つ目の鯰」と、第110回芥川賞受賞作「石の来歴」の2作が収録されています。 「石の来歴」は氏の作品によくある過去、現在の時制や場所が混沌として入り混じる複雑な構成になっています。また、これもよく取り上げられる太平洋戦争と軍隊も出てきます。鉱物というものの成り立ちを人を含めた生物の輪廻転生に見立てて、石が作品の重要なモチーフとなっています。 ただ、奥泉光氏作品を読むのはこれで6作ですが、いまだに自分には難解で、作品群を通して訴えている共通のものがあるのか、いまひとつよくわかりません。 ストーリーは、「悲惨なレイテ島の戦場からなんとか生きて戻れた主人公が、父親がやっていた本屋業を継いで秩父に開店、結婚して息子2人を授かりやっと安定した生活を手に入れた。秩父の山で鉱石にはまり学者レベルまで至り名もそこそこ知れるようになるが、ある日息子が山中へ石を取りに行き何者かに殺害されてしまう。 犯人はとうとうつかまらないままに妻はおかしくなり、次男を連れて離婚。何十年もたったある日、ぶらっと現れた次男は過激派になり警察に追われていた・・」という話です。 過去が現在と繋がり、最後はまた過去に戻るという他の作品にもみられる循環ですが、これは何を意味しているのか正直よくわからず、作品全体としては暗く救いのない話で読後はそれなりに落ち込みました(苦笑)。文章や構成の完成度は高いと思います。 一転して「三つ目の鯰」はどこか飄々とした温かみのある話です。著者にしてはまっとうな?わかりやすい一般小説という感じです。芥川賞の選評を読んでみると「石の来歴」を絶賛している人もいれば、「先の”三つ目の鯰”の方がよかった」という委員もいて、実は自分もそちらの方でした。 しかし「思考や知識を生で出すまいと努力していることがよくわかった」と言う人もいて、奥泉氏の本来の作風を抑えて一般向けにわかりやすいように書かれたのかもしれません。 舞台は著者ご自身の故郷である山形県庄内平野と思われる水田に囲まれた集落です。 東京に住む主人公が、亡くなった父の遺骨を先祖代々の墓に収めるところから始まります。彼が父のことや子供の頃の田舎での思い出を振り返る部分が、自分が幼い頃父の田舎に帰省した時とあまりにもそっくりで、山や小川や光と風といったものがまざまざとよみがえりました。 墓というもの、宗教感情というほど強いものではないが何かしら漠然とある敬虔な気持ち、先祖を弔うということ、血の繋がりとは何か。当たり前のように仏教で仏事を行う親族とキリスト教の牧師になった叔父、そしてもしかしたらキリスト教の信仰を持っていたかもしれない父親の生前の姿が交差して、主人公は様々なことを考えさせられます。 ”テレビも見ず文盲で江戸時代の農民とはかくあったに違いない”と思わせる親戚の古老が、ユーモラスでいい味を出してます。 こちらの作品は読んだ後とてもあたたかい気持ちになりました。どちらも奥泉氏の原点を感じさせる作品です。 | ||||
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通読に何の支障もなく、この価格での提供に感謝! | ||||
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独特の文体が心地よいです。 | ||||
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SFなのか 楽しく読ませて頂きました。 | ||||
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結局は人も石も宇宙の循環の中のひとつに過ぎない。ラストの死を覚悟?で向かった洞窟で再び過去に戻り殺したはずの上等兵を救えたのがよかった。 | ||||
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(内容に触れています) レイテ島の戦いで敗残兵となった真名瀬が、上官の命令により、病兵を殺害する。 戦争後遺症となり、記憶の喪失、混濁を招く。 殺人事件発生時刻、真名瀬にアリバイはない。 強いて動機を挙げれば、戦争ストレスによる狂気が浮上する。 ふたつの殺害のキーワードは「緑色チャート」であり、この鉱物をめぐり、 上等兵は真名瀬に、真名瀬は愛息に「石の来歴」に関するうんちくを傾ける。 この共通項がぶきみさをかもし、めちゃくちゃな動機であるけれど、 2件目の殺人に、異様な説得を持たせている。 荒唐無稽な殺人が根幹をなしているにかかわらず、ミステリの枠に収めず、 純文学に昇華する企てに気魄を感じる。 ※画像・プロフィールは無視してください | ||||
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人は一つの人生しか生きることはできない。一度に一つの事しか出来ないように。しかし、SFでは、同じ主人公が何種類かの人生を生きることを仮定できる。追いつめられた敗残兵が一人の大尉のもとに集まり、洞窟を見つけそこに引きこもる。主人公は、ここで大尉から命じられて、いつも話をしていた上等兵を切り殺してしまう。 この事件が主人公の人生の重いくびきとなる。彼は戦後一見幸福げな人生を送るが、聖書のヨブ記のように、家族を失う。最初に期待の長男が通り魔にに刺されて亡くなる。この事件から妻が離婚して実家に帰る。次男も同様に亡くなる。家族を失った主人公は、再び戦時中の洞窟に戻ったように、昔切り殺した上等兵と出会い、今度は彼を生かして共に逃亡する。 今、通り魔とか、高齢者による訳の分からぬ交通事故による狂気の殺人事件が続発している。長男の死、次男の死、石に対する執着、主人公を巡る人生を好転させるためには、戦中のあの忌まわしい事件を清算しなければならない。 人生は何のためにあるのか。石集めに熱中できた人生は、素晴らしい。過去の忌まわしい体験は、負の遺産を負わせた。全ての不幸はここに起因している。戦中の罰を受けたような生き様を描いた、主人公の人生には、大いに共感できる。しかし、現実には多数の無辜の民を死に追いやり、特攻を命じて若者に人生を奪った、指揮官クラスの老人たちが戦後も、安穏と人生を過ごしている。寿命が来て平穏無事にあの世に去った。連合軍に裁かれなかった悪魔のような爺さんが今も生きてたまに、マスコミでとり沙汰されることがある。こういう老人がまだ生きているのかと驚くことがある。全てを命じられた従った兵士が、戦中の犯罪を忘れて生きてきたのに、家族を不幸が次々に襲ってくる。戦時中の罪を問われたような人生が描かれていると思った。この罰ゲームにも似た人生を転じるには、もう一度やってはいけないと言う後悔の源である事件を逆転しなければならない。SFの中でしたそれは出来ない。現実に生きる人生もやり直しは効くと信じるが、時の勢いの中で、全てが狂気の沙汰だったのだから、後の人生を、人命を大切に、家族を大切に生きていけたら良かった。石集めに熱中、何でも熱中することを追及して人生を送りたいが、幸せな人生を暗転させた通り魔が、彼に切り殺された上等兵の生まれ変わりだったりしたら、古来の前世、現生、後世の因果話になってしまう。人智を超えた所には、そんなこともあるのかもしれない。不可思議がかえって真実を描写しているのかもしれない。難しい。 | ||||
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石に魅入られた男を襲う悲劇。戦時中、死にゆく男から聞かされた言葉が、そのきっかけだが、家族に悲劇を見舞われるのと、戦時中の記憶がオーバーラップして、緊張感溢れる物語世界を味わった。現実世界で破滅が近付く時、戦時中の記憶も悪夢のように蘇るが、主人公が「殺せ」と言う上官の命令に逆らい、軍刀を捨てて投降した時、大宇宙へ繋がる「石」を手に入れるのだ。ズシリと石のように重い読み応えが印象的。 | ||||
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コメント通り綺麗でした。 内容は、夏目漱石の明暗や福永武彦の忘却の河と通じる個人に固執するあまり、一番近い家族さえ情愛が通じない難しさを感じましたね。家族崩壊と個人確立は特に最近当たり前になっていて、以前知的階級の悩みが、趣味に没頭できる時代だからありふれて来たのかもしれない。いわゆる動物的な家族愛と個人確立は両立しないものか、考えていきたい。 | ||||
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作者の近刊「東京自叙伝」とこの本しか読んでいません。奥泉初心者です。 第一印象は、ずいぶんと文章が上手だなあと言うこと。プロの作家さんなので当たり前と言えば当たり前、ずいぶん失礼な物言いですが、一文が長めなので、ずいぶん饒舌に感じる。でも、ぎりぎり推敲に推敲を重ねた感じもわかる。すごい計算の上に生み出された文体なのではないか。私はそういう観点からこの著作を味わった。 表題作のラストに戦慄しながら・・・・・。 | ||||
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活字中毒」とは、よく考えられた言葉だ。「読書好き」とはニュアンスが違う。活字中毒者にとっては、作品のテーマやストーリー展開は二の次だ。まずは、言葉や文字の力そのものを堪能する。 例えは悪いが、麻薬中毒者が、ブツを体内に取り入れて洩らすため息と、活字中毒者がブツ?に書かれた文字を丹念に追いながら、思わず洩らすため息は多分同じだ。相当のカタルシスが両者をブツの虜にしている。 また、活字中毒者は、おそらく速読はしない。読むのが速い人はいるだろうが、視線はナメクジのように文字を這っているはず。 本書は活字中毒者にとって上玉のブツだ。綴られる言葉に強い力が宿っている為、かなりの快楽状態を生み出す。正に言霊。 加えて、文節にリズムがあり、一文が長めなので、トランス状態に陥るようなグルーヴが発生している。 二本の小説を収録。最初のタイトル作では、ある種奇妙な戦時体験が背景にはあるが、何気ない日常が瓦解していくさまが描かれる。二本目は、タイトル「三つ目の鯰」でも感じるように、最初に奇妙さを提示し、そこへと徐々に近付いていくさまが描かれている。 | ||||
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石の収集、戦争体験、家族にまつわる物語が効果的にリンクする、純文学とミステリーが混ざったような作品です。硬質な文体と壮絶な展開に、パンドラの箱を開けてしまったような怖さと、じんわりとした哀しい余韻が残ります。 | ||||
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「石の来歴」は戦争で最後に上等兵に言われた言葉が心に残ってそれ以来、石の収集にのめり込んでいく男の話で、過去と現在が交錯し、ミステリアスな展開で最後まで興味深く読めた。戦争場面や学園紛争など描写がうまいと思った。 「三つ目の鯰」は、テーマも興味深かったが、より私的に庄内平野の風景描写に心打たれた。 | ||||
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ミステリーと言うべきか、ホラーと言っても良いのか。夢と現実、過去の戦争と戦後の現在が交錯しながら、読者をひきつけるストーリー展開と心理描写は一級品である。 その後の奥泉光の作品と比べると、オーソドックスとか保守的と言われるかもしれないが、純文学のテーマ性を魅力あるストーリーに込めたこの作品は大好きである。 | ||||
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割と芥川賞受賞作は苦手な方だが、これは面白かった。最近の奥泉作品からは想像もできない硬派な文体と内容。戦争中の記憶に苦しめられる男が主人公だが、不思議と重くはなく、読んだ後に考えさせられはするが、暗く落ち込むということはない。同じ体験をした方は、また感想が違うかもしれないが、我々高度成長期に生まれた人間に「その当時のことをわかれ」という押しつけがましさがなく、読んで損はないと思う。 | ||||
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石の来歴、感動しました。最近芥川賞受賞作ばかりを読んでいるのですが、石の来歴は中でも頭一つ抜けた面白さでした。この作品は、小説好きな男性は必読です。感動すること間違いなしです。・・・ただ、三つ目の鯰のほうはいまいちな感じが否めません。奥泉さんらしい良い雰囲気はあるのですが・・・。 | ||||
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芥川賞受賞の表題作は、戦争で地獄を見ながらも生き延びた主人公が、戦後社会的にはそこそこの成功を収めながらも家族関係において再び地獄を味わう悲惨な話。 こんなことを書くと、暗くてジメジメした小説かと思われるかもしれませんが、案外そうでもなく、岩石蒐集の話を軸に据えて過剰な演出を排除しているため読後感は悪くありません。 ただ前半は、セリフがほとんど無いのは我慢するとしても、中編なのに物語が全然進まず、テンポが悪いので-1点。 同時収録されている芥川賞候補作「三つ目の鯰(なまず)」は父の死をきっかけに先祖から子孫への血脈の継承について考える大学生の話。 こちらは(表題作同様)難しいテーマを扱っている割りに、23歳の大学生の目線を通して軽快なテンポに仕上がっています。その技量は見事というべきでしょう。 ただ、いくら小さい頃毎年里帰りしていたとはいえ、東京に生活の本拠があるフツーの大学生が「本家の家名の存続」や「墓を守る」という考えについて思索の出発点から肯定的な態度をとる(主人公は自分が家名を継承して田舎で生活することに関しては都会人として躊躇するが、前提となる「家名は絶やしてはならない」という考えには大して疑問を抱かない)のは違和感がある。 戦後、少なくとも法律上はこういった思想は否定されており、反発から入るのが通常の姿だろう。 つまり、主人公のこの部分に関する考え方は一世代前のものであり、これだけが他の日常的な感覚と乖離して分裂状態に陥っている。 保守的な文壇受けを狙ったのでは?との邪推まで働いてしまう。最終的に肯定に行き着くにしても、せめてその過程ではもう少し振幅・葛藤を見せてほしかった。だから-1点。 | ||||
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芥川賞の「石の来歴」もいいですが、「三つ目の鯰」は、月刊文学界で新人賞をとった、奥泉氏のデビュー作と言える小説は、とってもお勧めです。作風が変わりやすい奥泉氏ですが、これは初期の、ふつうの小説の2作品です。ぜひ、読んでください。 | ||||
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