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此の世の果ての殺人
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此の世の果ての殺人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.72pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全47件 41~47 3/3ページ
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巨大隕石がぶつかるせいで人類滅亡が確定している世界で、運転免許を取るために自動車学校に通う。 とかいう「もっと他にやることあるだろ!」と言いたくなる設定からしてイイ。こういうハズしかた好きだしセンスあるなぁ。 で、その仮免の主人公は、ひょんなことから発見した他殺体の犯人を捜すという、やっぱり「もっと他にやることあるだろ!」な目的のために九州各地に赴くことになる。その旅の途中で、ゆかいな仲間を増やして、彼らとちょっとしたユーモアのある会話なんかを交わしながら、犯人を追いつつ、その土地土地で日々を過ごす人々と出会う。 つまりこれはあれだ、特殊な世界で展開されるロードノベルなんだな。 長い旅のなかで繰り返される一期一会は、まさしく最初で最後の出会い(なんせ地球がなくなるから)で、だからエモい。モヒカン棘付き肩パッドでヒャッハーしている悪人もいれば、相互扶助のコミュニティを形成している聖人もいて、みんな各々の最後の時間を過ごしているのだ。ちなみに私のイチオシの登場人物は、イサガワ先生。荒廃する世界の中で自分の正義感を貫くのがカッチョイイ。まあ、その正義感は普通ではなく、「この女、もしやアタマおかしいのでは?」と主人公がドン引きするくらいなんだけど、そこがまたよし。 もちろん、世界が滅亡するわけだから綺麗事ばかりではない。冒頭の教習のシーンで、主人公が自分の父親と母親について話すその内容にはいきなりド肝抜かれたわ。人類滅亡いうても、自動車学校に通えるくらいなんだから、ちょっとオシャンで無機質なセカイ系なんだろなー、という予想はのっけから完全に打ち砕かれた。なんせ教習の行き先で出くわすのが大量の○○○○なのだから、いきなりエンジン全開飛ばしすぎだ。いいぞもっとやれ。それ以降もグロ要素がじゃんじゃん出てきて、でもそれが売りのバイオレンス系では全然なく、旅路を彩る要素の一つになっているのが上手い。もちろんちゃんとミステリもしていて、旅のなかに巧妙にさりげなく伏線がちりばめられていて、読み進めていくうちに「あれがここにつながるのか!」って驚きが何回もあった。 作中に出てくる女たちがいろいろな意味で強いとことか、濃淡のある家族関係とか、それこそもうすぐ地球が爆発するのに学校に通う(というか読後に気づいたが、主人公が地球滅亡を前にしてやったのは仲間と長距離ドライブだったんだな。これはなかなかよいチョイス)とかね、随所にナウでヤングなセンスが爆発してて新人賞にふさわしいと思ったし、選考委員の選評がベタ褒めなのも納得の一作だった。 | ||||
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本作を読んで、まず感じたのは「優等生だな」ということでした。作品として非の打ち所がなく、受賞も納得です。 最近のミステリー小説がどのようなものなのかを知るにはうってつけの作品だと思います。ミステリーに触れてこなかった方ならおそらくものすごく楽しめることでしょう。本作がきっかけで読書にハマるなんてことも考えられます。子供の読書嫌いを矯正したい、あるいは読書週間をつけたいと思っている親御さんなら、とりあえず本作を渡しておけばなんとかなると思います。読みやすい上に飽きさせない構図です。素晴らしい。 とはいえ、ある程度ミステリーに触れてきた方なら(もちろん十分に楽しめる作品ではありますが)、それ以上のものは得られないと思います。それが星4の理由です。再読したいか、と言われたら、五年後くらいにはと答えるでしょう。面白いのですが、個人的に心に響くということはありませんでした(エンタメ小説なのですから、それで十分だとは思うのですが……)。 以上、本作のレビューでした。とても楽しめました。是非購入してみてください。 | ||||
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小惑星の衝突予測が発表され、滅びを目前にした人々はパニックに陥る。 そんな中、淡々と日常を送る主人公。 彼女が女性の遺体を発見したことから始まるミステリー。 面白かったです。 ただ、頭に特大の重しが乗っかっていて、それは最後まで続きます。 大団円なエンディングを読みたい方には向いていないかも。 自分はミステリーをそれほど読んでいるわけでもないので、これから書く感想は、そう言う人が書いたものだと思って読んで頂くと有り難いです。 登場人物のキャラクターがそれぞれ際立っていました。すごくわかりやすかったです。 それゆえになのかも知れませんが、自分の場合は主人公に感情移入できるまで時間がかかりました。主人公の性格に少し癖を感じたのです。主人公のあの複雑な感情は、極限状態に置かれているからこそなのかも知れませんけど。 物語りが進むにつれ、主人公の仲間が増えてゆきます。最初のうち、この主人公は人と打ち解けにくい性格なのかなと思っていたのですが、そうではないのだなと思うようになりました。ただ、壁がある。主人公の心の中に。他人との間で。実はこれが伏線なのです。多分ですけど。 主人公の最初の仲間は教習所の先生でした。この先生がいわゆる探偵役で、主人公はその助手と言った役回りです。この先生、強いですね。強すぎます。でも、これも伏線。多分。 極限状態に置かれた人々の様が、主人公の行動範囲が拡大するにつれ、つまびらかにされていきます。警察官、犯罪者、取り残された人々。正義感で残った人もいれば、他人を利用して生きようとする人もいる。穏やかな人々もいれば、そうでは無い人も。 犯人が誰かはもちろんこの感想では書きません。でも、分かる人にはわかる。ある意味わかりやすい。 この物語りで一番感動したのは終盤近くの110番に従事する人々についての記述です。あのくだりで、作者氏は警察機構を信頼しているのだなと思いました。この予想、当たっているのかはわかりませんが。 そしてラスト、あのシーンで味わえる感慨は、この物語りを読み通した人のみが享受できるものだと思います。それを知りたいと思ったあなた、是非、この物語りをお読みください。 | ||||
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小説はあまり読まない方だが福岡在住ということもあり、読んでみるとハマって読み込んでしまっていた。たいへんおすすめの小説である。 | ||||
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なんでだろう? 地球滅亡も殺人事件も、どうでもよかったです。 ミステリーや滅亡系を何冊か読んでいれば、特に真新しいことはありません。 江戸川乱歩賞はどんなものかと読んでみたら、見事に裏切られました。 もう買いません。 | ||||
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まず、文章力は高いと思います。稚拙な箇所がなくそれなりに小説としてまとまっているところは美点です。若い作家さんとしては随分と頑張ったなという印象です。しかし、反面、無駄な描写が多いのが残念。例えば牡蠣小屋の描写や星座のウンチクなどなどですが、その情景を思い浮かべるのが結構な脳の負担になります。ストーリーや物語の臨場感に大きく影響を与えないところなので編集さんが指導してあげても良かったような気がします。(これは大した瑕疵ではないと思いますが)このあたりは次回作に期待です。 物語は二人の女性が偶然に出会ってしまった殺人の真相を追いかけるというものですが、全体の3分の2位まではほとんど進展がなく退屈です。トリックや動機や伏線も今ひとつで、◯◯と◯◯を見間違えるというのは、ちょっといただけませんし、解決方法も無理があるような気がします。つまりミステリーとして読めば肩透かしを食らわされることになりそう。 では、どういう人にお勧めなのかと言うと、暖炉の脇のロッキングチェアにでも座って気長な読書をされる方、あるいは世紀末の陰鬱な雰囲気にドップリと浸りたい方などにお勧めです。巨大隕石が九州に落下するという過酷な環境下、その瞬間までそれぞれの人物が何を考え、どのように生きようとしているのかが描かれています。これについては上手だと思いますし、好ましく思われる方もたくさんいてることでしょう。 超個人的な結論として、ミステリーとしてではなくロードムービーとしてみれば多くの美点はあると思います。ただ乱歩賞作品とすれば不満なだけです。少し前に乱歩賞作家である下村敦史先生の「コープス・ハント」を読みましたが、こちらは楽しめましたし、自分的にはこれが乱歩賞作品です、と決めつけるのは狭量なのかもしれませんね。 次回作も頑張ってください。 | ||||
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第68回江戸川乱歩賞受賞作。史上最年少の23歳とのことである。 一、史上最年少について 乱歩賞は、第3回(1957年)の仁木悦子氏の『猫は知っていた』が29歳で受賞している。 その後、もしも、第6回(1960年)「受賞作品なし」の年に、22歳夏樹しのぶ(夏樹静子)氏の最終候補作『すれ違った死』が受賞していれば、最年少記録は未だに破られていないことになるが、それはパラレルワールドでの話で、此の世においては、第24回(1978年)に栗本薫氏『ぼくらの時代』が25歳で記録を更新し、第33回(1987年)に石井敏弘氏『風のターン・ロード』が24歳で記録を更新し、第50回(2004年)に神山裕右氏『カタコンベ』が数カ月若い24歳で記録を更新した。そして、今回の荒木あかね氏『此の世の果ての殺人』が23歳の受賞である(調べ間違いご容赦)。 おめでとうございます。 二、内容(ネタバレ防止) 本書の内容は、2か月後に小惑星が日本に衝突して、人類が滅亡することが確定し、無法地帯となった社会でおきる連続殺人の意外な真相を、自動車保険教習所の女性生徒であるわたしと、女性教官のイサガワ先生が、不思議な絆で結ばれ、様々な人と出会い、様々な危険を乗り越えつつ、解明していく、特殊設定ミステリーである。 あとはネタバレ防止で略。 選評は、京極選考委員は賞賛、他の4選考委員は絶賛で、ここ数年では最高の評価を受けた作品のように思う。欠点の指摘はほぼゼロである。 三、私的感想 ○大変面白かった。 ○ミステリーの聖典である夏樹静子氏の『私の推理小説作法』の基準で本書を私的評価してみよう。 ☆推理小説は・・何か新しい着想がなければ、書くべきではない。→本書には「新しい着想」は間違いなくある。 ☆トリックとは・・大きな意味での小説的カラクリ、そこからもたらされる新鮮な意外性といったものである。そこに斬新な知恵を働かせていない限り、推理小説としては失格であろう。→本書には「新鮮な意外性」も「斬新な知恵」もあると思う。 ☆新しいアイディアの上に、小説としての感動が加味されれば、成功であろう。→ここが一番難しい。主人公は「とても、いい人」であるが、「兄弟愛」と「赦し」の部分がちょっとウェットすぎて、共感しづらい。わたしとイサガワ先生の微妙な相棒バランス、突進するイサガワ先生、滅亡を前にした社会で自分の業務を継続する人々は、感動的ではある。 ☆小説の迫力は、書き手が、自分の小説世界をどれほど信じていたかによって決まる。→この点では、本書は迫力ある小説と思う。 四、私的結論 ○全体として、きちんとしたフェミニズムに基づいて書かれた作品と思う。その点でも、新しい時代の乱歩賞にふさわしい。 | ||||
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