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熱源



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【この小説が収録されている参考書籍】
熱源

熱源の評価: 4.07/5点 レビュー 136件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.07pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全17件 1~17 1/1ページ
No.17:
(3pt)

良書なんだろうけど国語の教科書読んでるみたい

口コミ評価はとても高かったので期待して読みましたが、いわゆる私が求めている娯楽としての面白さはなく、終始国語の教科書を読んでるようでした
また、カタカナの苦手な私には聞き慣れないカタカナの名前とかが苦痛でした
物語も色んな人物と場面と時代が飛躍して描かれるので、折角このモードに慣れたと思ったら別の世界観になっていくので、終始読みにくい
あと、いきなり何年とか何十年後とかに1行で飛んでいくので、ついていくのが億劫になります
とにかく詰め込み過ぎな準文学作品的な小説でしたので、娯楽小説好きにはちょっと合いませんでした
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.16:
(3pt)

テーマは独創的。樺太の寒さは伝わってきませんでした。

この時代、この場所をテーマに選んだ、ということが本書の評価のすべて。予備知識ゼロで読み始めたが、ブロニスワフ・ピウスツキが出てきたところで、あ、史実に沿っているのか、気づく。

高評価多いけど、小説としての出来は「これからの成長に期待したい」というところ。大胆な場面展開は集中力を途切れさせた。長い時間を描く難しさはあると思うが、饒舌な場面と大胆にカットする場面の配分が、私的にはしっくり来なかった。石川啄木はいらないな。(解説の中島さんも風呂敷広げ過ぎ、みたいなことをやんわりおっしゃっていたような)

あと、樺太の描写がまったく寒さを感じさせないのは残念。例えば、吉村昭の「間宮林蔵」や「赤い人」などは読んでいるだけで凍えてくるし、北の大地の過酷な自然に圧倒される。それに比べると本書の樺太はとても過ごし易そうに感じた。

個人的には「爆ぜる」「眇める」といった表現は作中に1回は許せるけど、何度も出てくると、恰好つけてるけど語彙の少ない人なのねと思ってしまう。そのあたりの興覚めポイント多数。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.15:
(3pt)

疲れた。

どなたかのレビューと同意です。
図書館で偶然連続でアイヌ物?の小説を借りてしまって…。
西條奈加さんのは読まずに返してしまったのですが、この熱源は読み出したらわりと面白くて、これ面白勝ったら西條奈加さんの本もまた借りようと思ってたのですが。

なかなかスムーズに読み進めず、結構時間かかってしまいました。
口直し?にお気に入りの今野敏さんの隠蔽捜査シリーズを間で一瞬で読んでしまい、また戻ってきて読んでます。

アイヌのことは詳しくは知らなかったので、勉強にはなったのですが。

実際、アイヌの方は北海道にまだいらっしゃるのかとかは気になりましたが、本としては勉強の本に近いかな、久しぶりに進みませんでした(。-_-。)
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.14:
(3pt)

圧巻なスケールで描かれる樺太を舞台にした物語。

アイヌ・日本・ロシア・ポーランドそれぞれで生まれた人達が従属な関係から対等さらに対立へと発展していきます。

日本は単一民族国家として、アイヌのような先住民族の存在はつい忘れがち。僕自身はアイヌのことを全然知らなかったのですが、アイヌ・日本・ロシアの色々な視点で雰囲気を掴むことが出来ます。アイヌを知らない人も日本人として一度は読んで損はない小説だと思います。

ただし、良くも悪くも小説は重厚すぎて、読み切るのにけっこう疲れました。さらに、物語の終わりに失速感を感じたので三つ星としました。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.13:
(3pt)

賞って何

始まり方がライトノベルです。受賞作にしては文が浅く、美人礼賛がつづくので「??」、
アイヌのことを知りたくて買いましたがレビューを参考にして「やっぱり」な印象を持ったので他の良質な本を買う事にします。
ちなみにアイヌの文化に言及しているのではなく小説家の品位のことです。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.12:
(3pt)

詰め込みすぎかな。

アイヌ民族と文化にかなり興味があったので読みました。
ちょっといろいろ詰め込みすぎて、話がとっちらかってる印象かな。
早稲田のOBなので突然、大隈重信がでてきたのは嬉しかったけど、
でも、必要かなあw
後半、ドタバタ感あり。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.11:
(3pt)

サハリンのアイヌの生活や風習、風俗をもっと前面にだして描いて欲しかった

サハリンの土地とそこに住むアイヌという実に魅力的な舞台設定でしたが、もう少しアイヌの生態について詳しく書かないと小説でないと描けないという差別化が図れません。個人的にはアイヌの人々の生活や風習を40年以上追い求めて様々な書物を読み、調べてきましたので、その意味では物足りませんでした。

リトアニアやポーランドというロシアの圧政に苦しんだ国々にルーツをもつ登場人物もいましたが、アイヌの人だけを中心に添えたほうが、読者の視線や同化がアイヌに注がれて良いのではと思いました。

白瀬隊長の南極、ラストのサハリンでの無条件降伏後の戦闘など、興味深いエピソードが入っていますが、それを入れることで本線のストーリーから外れます。ロシア革命もそうですが、アイヌの生活ぶりに直接スポットライトをあてたほうが読者の共感を呼ぶのではと思いました。

サハリンでの出来事は日本人にとっても興味を覚えます。和人も登場しますが、添え物のような感じを受けました。ロシア人を中心に添え、主人公の一人にしたことで、少し共感性に乏しく感じたのは私だけでしょうか。
そこは惜しいと思いました。アイヌという和人との関係性もある人たちの習性も含めて、興味深いテーマですので、もう少し違うアイヌの人々を重点的に書いてもらうと良かったのではと思っています。
直木賞受賞作品です。一定の評価が定まっている作品ですが、そのような読み取りを個人的にはしました。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
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No.10:
(3pt)

上手さは印象に残るが。

直木賞の栄誉が与えられているのだから多少辛口の贅沢も許していただけよう。これはとても上手い小説である。しかしそれ以上のものを感じない。実在の人物と想像上の人物を配し、かれらがやりとりする場面場面をいくつかつなげて史実の細部を想像で埋める。時代小説はそういうものだけれど、本作は小説技法の高さが印象に残り、タイトルとは裏腹に熱となって迫るものがないのは、人物を作家の想像だけで動かしきれていないもどかしさがあるからではないだろうか。書き手の技量と真面目さには率直に好感を持つが、このような小説が著名な文学賞をとり、他の作家が追随するようになると、文学はだんだんと息苦しくなってしまわないだろうか。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.9:
(3pt)

ストーリーは非常に面白いです。(ネタばれあり)

ストーリーは面白いし、実在の人物がモデルであるということに終盤で気付いて、さらに素晴らしい読書体験になりました。
しかし、実在の人物をモデルにしているのにも関わらず、登場人物の性格や行動が漫画っぽく、とくにアイヌの主要キャラたち軽く、史実の重さとのギャップに違和感を覚えました。
ツンデレ、賢い主人公キャラ、熱血バカ、勉強できるちょっと生意気キャラなどと漫画的なステレオタイプな人格が与えられ、主役と熱血バカが何歳になっても無意味に殴り合うシーンなど疑問に感じました。
ヤヲマネクフが南極で無謀な暴走をして、殴り合ったのが史実通りなら、私の思い込みであったと反省します。
ブロニスワフに関しては素晴らしいキャラクターだと思いますが、最期は史実通りにしてほしかったと思います。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.8:
(3pt)

題材となった史実は興味深いが、語る人の視点が多すぎて残念。

直近の直木賞を受賞した、19世紀末から第二次大戦最末期にいたるまでの樺太アイヌの物語である。

途中まで、完全なフィクションだと思って読んでいたが、登場人物を何人か検索してみて、ほとんどが実在の人物であると知った。

もちろん作中に登場するウラジミール・ウリャーノフ(レーニンの兄で「人民の意志派」活動家、刑死)や、大隈重信、金田一京助、白瀬矗、二葉亭四迷などは実在であることがすぐわかるが、本書の主人公ともえるヤマネクフ(山辺安之助)、シシラトカ(花守信吉)、千徳太郎治、ブロニスワフ・ピウスツキ、その妻のチュフサンマ、チュフサンマの叔父のバフンケまでもが実在である。

白瀬探検隊を調べて、ピウスツキ以外の名前が出てくるのに驚いた。

確かに、樺太アイヌの民族的な物語と、ポーランドの独立革命、そして白瀬探検隊、これらが史実として繋がっているのは新鮮であり、物語性にも溢れていると思う。

そこには大変な興味を掻き立てられたが、しかし、小説としては語る人の視点が多すぎてなんだか落ち着かない。

素材が豊かなだけに、もっと書きようはなかったのだろうかと、少し残念な気持ちが読後感として残った。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.7:
(3pt)

歴史的な空気は伝わる

この平和ボケした日本に住んでいて、外の真実の世界の空気は充分に伝わる。
そう言う点では、読んで良かった本。
やはり、世界みんな仲良くなんてかなり危険な考えということがよくわかる。
対等な力を持つものだけが、平和という言葉を使うことができる。
外国を決して性善説で見てはいけない。
まあ、色々考えらされる小説ではあるが、小説自体はあまり面白くない。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.6:
(3pt)

読む に適した作品

ナレーションは耳障り良くいつまでの聞いていたいと思います。
が、作品が長すぎました。
聞くより読むに適した作品だと思います。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.5:
(3pt)

少し期待外れ

解説を読んでこの手の作品は直木賞に近いのではと思い発表前に購入しました。読んだ感想ですが、どうしても自分たちには遠く感じる樺太やアイヌの話題なので、それなりに興味深く読めました。しかしながら登場人物(特に主人公であるヤヨマネクフ)の設定がどうにも甘く、なかなか物語に入り込めませんでした。また、日露戦争や第二次世界大戦を経て、環境は変わっているはずなのに、そこのところも今一歩伝わってこない、、。いろいろな話題をちりばめつつも時代が漫然と移り変わってゆく、そんな印象を持ちました。熱源というタイトルほどに熱を感じない作品でした。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.4:
(3pt)

緻密な描写にうなるしかない

読んでいるとまるでサハリンにいるような気持ちにさせられる。どこからか隙間風がぴゅーぴゅー吹いてきそうな感じ。一気に読むにはちとつらいが学校の日本史でもサハリンのことはここまで詳しくは教えてくれなかったので興味深く読むことができた。そしてサハリンからはるか遠いポーランド、疫病の恐怖(まさに今の世界)。読むにつれうなるしかなかった。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.3:
(3pt)

不必要な「何より」。

川越宗一『熱源』(文藝春秋社、2019年08月30日発行、2020年01月25日第5刷)

 川越宗一『熱源』は第百六十二回直木賞受賞作。芥川賞の古川真人「背高泡立草」にがっかりしたので、こちらはどうかと読んでみた。新聞などで読んだ「選評」は好意的だったし、少数民族 (マイノリティー) と「ことば」を題材にしていることにも引きつけられた。テーマが「現代的」である。
 しかし読み進むうちに、テーマの「現代性」よりも、いま、「文学」はすべて「村上春樹化」しているのかという印象だけが強くなってくるのだった。読みやすいが、その読みやすさゆえに、なんだかがっかりしてしまう。「現代性」(現実)って、こんなにわかりやすくっていいのか。(現実といっても「舞台」は2020年ではないが。)
 古川真人「背高泡立草」の文体が「昭和の文体」なら、川越は「村上春樹以降の文体」とでも言えばいいのだろうか。

  240ページ、小説のなかほどに、こういう文章がある。唇の周囲に入れ墨を入れた妻(チュフサンマ)に対して、夫のブロニスワフが驚く。妻はアイヌの習慣に従ったのだ。その習慣を夫は好きになれない。しかし、こう思う。
<blockquote>
自分がだれであるかを決定した妻のふるまいは、何よりも美しいと思った。
</blockquote>
 「自分がだれであるかを、自分自身で決定する」というのが、この小説のテーマであり、「自分がだれであるかを決定する」もののひとつが「ことば」である。妻は、「ことば」ではなく「肉体」そのもので「自分がだれであるかを決定した」という点では、同じテーマを支えていることになる。伏線というと少し違うが、「本流」を決定づける「支流」のひとつといえる。
 こういう「わかりやすい支流」がつぎつぎにあらわれて、作品全体を「本流」へむけて動かしていく。小説には複数の登場人物があらわれ、そのひとりひとりの動きが「支流」のように集まってくる。「本流」が見えたとき、では、それは「だれの流れ」なのかということが、実は特定できない。それは自然の川の流れと同じである。どの「支流」が欠けても「本流」の形は変わってしまう。
 そういう点から見ると、文句のつけようがない。「完璧」に構成された作品である。

 それはそれで、よくわかるのだが。私には、とても物足りない。
<blockquote> 
自分がだれであるかを決定した妻のふるまいは、何よりも美しいと思った。
</blockquote>
 ここに書かれている「何よりも」とは「何」? それがわからない。「何」は特定できないと言われればそうなのだろうが、その「ことば」にならない「何」をことばにしないかぎり「文学」とは言えないのではないだろうか。
 その前の部部から引用し直そう。
<blockquote>
「入墨、入れたのか」
「わたしは、アイヌだから」
 チュフサンマの言葉は言い訳ではなく、決意に思えた。
「やっぱり、嫌?」
「いや」と答えた震えているのは、自分でもわかった。
「きれいだ。きみは、美しい」
 正直なところは、好きになれない。嫌悪はまったくないが、慣れない料理のような感覚がある。だが、自分がだれであるかを決定した妻のふるまいは、何よりも美しいと思った。
</blockquote>
 「好きになれない」「慣れない料理のような感覚」であるけれど、それを否定していくだけの「美しさ」がある。「決意」の美しさである。そういう「意味」はわかるが、それはあくまでも「意味」である。「頭」で理解する「美しさ」である。
 ひとが「何よりも」というときは、もっと「生理的」なのものであると、私は思う。「頭」ではなく「肉体」の反応だと思う。その、「肉体」の反応が欠けていると思う。
 「慣れていない料理」ということばがあるが、「慣れていない」けれど、口にした瞬間に吐き出したいと思ったけれど、吐き出せない。舌にひろがり、のどに流れ込んだ何かが意識を裏切るように「料理」をむさぼる。そういう感覚があるとき、それを「おいしい(美しい)」と言うのだと思う。自分の信じていたものが叩き壊され、自分が自分でなくなってしまう。そういうときが「何よりも」というときではないのか。
 別なことばでいうと「敗北感」がない。あ、私は妻に負けてしまったというような敗北感(妻は自分が自分であるということを決定することができるのに、自分はできない。自分にできないことを妻がやってしまったという敗北感)が具体的に書かれないかぎり「何より」という「感覚」は生まれない。そういうものを書かずに「何より」ということばで処理してしまっている。そこが、つまらない。

 たいへんな情報量があり、それがとても巧みに処理されている。それは理解できるが、どこまで読んでも「わくわく」しない。登場人物の「肉体」に出会った感じがしない。ストーリーを読んでいるという気持ちにしかなれない。手応えがない。つまずかない。ことばが「ストーリー」に従事しすぎている。
 私は欲張りな読者なのかもしれないが、この登場人物はどうしてこんなことを考え、こんな行動をするのか、わからない。わからないけれど、あ、それをやってみたいと思うことを読みたい。「わからない」が噴出して来ない文章はおもしろくない。
 こう書くと「何より」がわからないと書いているじゃないかと言われるかもしれないが、川越の書いている「何より」は「存在しない何より」である。つまり、

自分がだれであるかを決定した妻のふるまいは、美しいと思った。

 に過ぎないのに、それをむりやり強調して、価値のあるもののようにみせかけている。いま書き直したように「何より」がなくても「意味」が通じる文章なのだ。言い換えると「何より」は「頭」でつくりだした「強調」であって、具体的な「何か」(言葉にならない何か)ではないということだ。
 これでは文学ではない。巧みな「粗筋(ストーリー)」なのだ。下書きなのだ。この下書きを破壊して噴出する「だれも書かなかった肉体としてのことば(詩)」が暴れ回るとき、それは文学が生まれるのだ。



(補足)
 なぜ「自分がだれであるかを決定した妻のふるまいは、何よりも美しいと思った。」の一行にこだわるか。それは、「自分がだれであるかを決定する」というのが、この作品のテーマであるからだ。「自分のことば」「自分の文化」を自分で選び取る。引き継ぐ。そういう一番大事なことを象徴的に語る部分に「何より」という「強調の慣用句」が無意識につかわれている。この小説が非常に読みやすいのは「文体」が鍛えられているというよりも、「文体」が「慣用句」によって推進力を得ているからである。
 「慣用句」が悪いというわけではないが、文学の「文体」は、読者をつまずかせるものでないといけない。立ち止まり、考える。考えることで登場人物と一体になることが文学の醍醐味なのだ。あるいは逆に、登場人物の「ことば」のスピードにひっぱられて予想外のところまではみだしてしまう。予想外の所へ行ってしまう、という一体感が文学なのだ。つまり、完全な「孤」になる一瞬にこそ、文学がある。
 その完全な「弧」を、しかもテーマに重なる大事な部分の「孤」を、「慣用句」で処理してしまっては「味気ない」としか言えない。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.2:
(3pt)

熱は感じたけれど

サハリンを描くのであれば、もっと過酷な自然があるべきだし、野生の恐ろしさも欲しかった。
人としても尊厳が場面が変わりすぎて伝わりにくい所もある。

熱源はもう少し物足りない。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417
No.1:
(3pt)

新人賞として妥当な作品

直木三十五賞の対象が「無名」「新人」「中堅作家」であり、最終候補作5作品から賞確定までの過程が、結果的に「新人」を軸の1つとなったことを考慮すれば、至極妥当な選定であったと言えよう。
受賞の根拠として「近年稀に見る大きなスケール」「登場人物が生き生きと描かれている」が挙げられていたが、その点は確かに評価できる作品ではある。
しかし、「近年稀にみる大きなスケール」とは原田マハ作品で見られるような時系列で実在の人物を登場させ、架空の人物を配し語らせることで辻褄を合わせることに成功した物語の「地政学的な範囲の広さ」と「時系列の幅」を意味しているだけとも言える。「登場人物が生き生きと描かれている」も、主要な多数の登場人物を大胆な時間経過で次々と短く描きつないでいく手法をとったからこそ、本来ならば描かなければならない葛藤や変化を十数年間すっ飛ばし、その変容を容易にした側面も指摘できる。
そして最大の問題はモチーフである「熱」を随所に無理に挿入した結果その意味が拡散し、テーマである「熱源」が非常に曖昧で作品を貫く幹としての役目を果たせていないことだ。ストーリテリングの点に於ける甘さは、選考委員の指摘に賛同する。
第160回直木賞の奇跡のような重厚な最終候補作群「宝島」「信長の定理」「童の神」「ベルリンは晴れているか」らと比較すると、同じ賞でありながらこれほどまでに「新人賞」としてふさわしい賞レースになってしまった今回の結果には苦笑するしかない。
熱源Amazon書評・レビュー:熱源より
4163910417

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