星落ちて、なお
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巨星河鍋暁斎の娘・暁翠の生涯を描いた作品。 本書を理解するうえでは、まず河鍋暁斎記念美術館(埼玉県蕨市)に行って、彼らの作品の実物に触れてみることをお薦めします。 住宅街の小さな美術館ですが、カフェも併設されており、じっくりとその世界に浸ることができます。 父である河鍋暁斎は、狩野派の伝統的技法を基盤に、中国画、西洋人体図に至る数々のテクニックや視点を身に着け、風景画・戯画・人物画・妖怪画など、ありとあらゆる作品を世に出した「画鬼」、当時の最高人気作家でした(現代ではあまり伝わっていませんが…)。 攻めに攻めた画法やモチーフは、現代人が見てもギョッとするものが溢れています。 一方の娘・暁翠は、狩野派を受け継ぎ、美人画や雑誌の挿絵などを手掛けるとともに、一門の統率、弟子の育成、美術教育(女子美大の教授)にも携わります。 しかし、これらは全て「守る」行為であり、好き勝手攻めばかり続けられた父に対し、娘であり女である自分を対比しながら、忸怩たる思いを抱いていた暁翠の様子が本作から伺われます。 そして、何かを守りながらも最高のパフォーマンスを示そうとした暁翠の心意気には、胸を打たれるものがあります。 ただ、この攻めと守りのコントラストは、二人の作品を通じて感覚的に理解できると思われるので、本作はドラマや映画にした方がよりよいと感じました。 | ||||
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画壇のこだわりがわかり面白かったです。 | ||||
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中身は読んで分かった | ||||
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作者である澤田瞳子の作品を拝読するのは今回が初。完全に前知識無しでタイトルから受けた何かしらの予兆みたいな物に引っ張られる形で手に取った次第。 物語は明治22年、幕末から明治前半にかけて「画鬼」と呼ばれ、狩野派の流れを受け継ぐ天才絵師として知られた河鍋暁斎の葬儀の場面から始まる。暁斎の弟子たちに気を使われながら葬儀を済ませた暁斎の娘・とよ(後の河鍋暁翠)は弟子たちから「周三郎さんはどこへ?」と尋ねられる。 長男であり喪主を務めねばならない立場でありながら精進落としの席を中座したまま姿が見えなくなった兄の周三郎が本郷に建つ別宅に戻ったものと当たりを付けたとよは弟弟子の様な八十五郎を連れて本郷へと向かう。 だが、本郷でとよを出迎えた周三郎が描いていたのはとよが角海老から受けた仕事で「姐さんの仕事を横取りか」と色めき立つ八十五郎をよそに周三郎はとよの才の無さを論う。自分にも暁斎に比肩するとまではいかずともまともな絵が描けると反論するとよだったが、追い打ちを掛ける様に周三郎は「親父はお前を歳を取った自分の世話をさせる為に絵を仕込んだのだ」と北斎の娘・応為と変わらぬと吐き捨てるが…… 「あるべき家族の在り様」とは何か?この作品のテーマは紛れもなくそこにあるのではないかと。平凡な家族とその愛情の中で育ったであろう一般人ですら悩むこの大問題を、天才絵師として知られる父親とそんな父親に対する愛憎と才では全く及ばないコンプレックスを抱えながら生きざるを得なかった一人の女性絵師が一生涯に渡って向き合い続けた姿を描く作品、この作品のコンセプトを簡潔に伝えようとするならその辺りに落ち着くかと。 主人公のとよ=河鍋暁翠についてはろくに知らなかったので調べてみたら明治後期から大正年間に活動した女性絵師らしく、本作の表紙を飾る「五節句之内 文月」も彼女の作品であるらしい。 物語の方は上でご紹介させて頂いたとよの父親で「画鬼」と呼ばれた天才絵師・河鍋暁斎の死から始まりタイトルの「星落ちて、なお」もこの巨星が堕ちた後にも遺され、とよを振り回す事になった暁斎の影響を指すものかと思われる。 ……世の中「二世」「二代目」と呼ばれる人々が「しょせんは親の七光り」「親には及びもつかぬ」という色眼鏡で見られる事が多いものだけど、幸いにしてとよを取り巻く人々は善人ばかりで表立って嘲笑する様な手合いは登場しない。だが、表立って「七光り」と嘲笑されなくても親と同じ道に進んだ自分の才能が全く及ばないという事実は時に嘲笑以上に傷を負わせる事もある。 その象徴たるエピソードがとよの結婚生活であろうか。弟子の一人が世話をしてくれた結婚相手は明治時代においては奇跡ともいえるぐらいに「理解のある男性」なのだけれども、この時代に「好きに生きてくれ」と示す愛情はとよを全く救わない。 夫から理解と自由が与えられてもとよの胸のうちに湧き上がるのは「この人は優しいけれど自分が逃れられない画業の辛さを理解してくれない」という孤独感と絵師と一般人の間に横たわる絶望的な距離なのである。冒頭でとよを葛飾北斎の娘・応為に準えた兄の周三郎が「あの親父は俺たちにゃ獄だ」と吐き捨てた様にとよは物心着く前に絵師に仕立て上げられそこから逃れられない身であり自身が他人に理解して貰える「普通の人」では無い事を繰り返し突き付けられる。 そして本作においてこの孤独は家族という枠組みを通じる形でとよを苦しめ続ける事に。赤い血ではなく、墨で繋がった暁斎や周三郎以外には理解者がいない絵師の孤独をとよは家族を得る事で埋めようとするのだけど、家族としての愛情を知らない自分にどんな家族が作れようかという悩みは長年にわたってとよを苦しめ続ける事に。 とよは別れた夫との間に娘を授かり女手ひとつで育てようとするのだけど「自分の酷い人生を繰り返す事だけは避けたい」と娘を絵から遠ざけようとして、それがまた娘を、とよを苦しめるタネになるのだから何とも救われない。 人として、母として理解者が得られないのであればせめて画業だけでもとよの味方であれば良いのだけれども明治の、文明開化の時代は暁斎が学んだ狩野派の技法を「古臭い」と当の絵師たちも含めて切り捨てる方向へと進み続けるのだからとよの孤独は深まるばかりなのである。 ただ、面白い事に本作で描かれるのはとよを含めた河鍋の血筋だけでは無い。暁斎の弟子であり、とよの弟弟子みたいな八十五郎も大手酒問屋の旦那でとよのパトロン的な立場でもあった清兵衛も家族を設けるのだけれども、その人生は順調とはいかない。時に婿として入った家を追い出され、あるいは妻を大いに傷付けることとなり例え一般人であっても幸福な家族を作り上げるのは容易では無いのだと繰り返し読者に訴えかける。 ただ、そんなイザコザだらけで上手くいかない事が当たり前の様な諸々の「家族の問題」は本作におけるとよの立場を想えばどこか「救い」になっていたかもしれない。要するに「一般人ですら思うに任せないのが家族なのだから、まともでない育ちの絵師が家族の問題で悩むのは当たり前だろう」ってな訳である……周りが完璧超人ばかりであるよりはダメっ子、ドジっ子がちょいちょい居た方が気は楽でしょ? その意味で本作は選択の余地もなく絵師にさせられてしまった、まともな愛情など受けようも無かったとよの救済の物語であると言えるかも。一般人には理解して貰えない絵師と言う生き方しか出来ない自分の需要に至るまでの過程こそが本作を通じて作者が描きたかったものではなのかと本を閉じながら思わされた次第。 追記 それにしても大芸術家の子として生まれ、父に愛憎を向けながら(どっちかと言えば憎が多め)いざ結婚したら自分が嫌っていた父そっくりだったと気付かされるあたり、とよのモデルって「美味しんぼ」の山岡士郎なんじゃないのかと密かに思っていたりする。 | ||||
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再読 前回はストーリー展開に気持ちが行ったが 今回は、絵描きが、いかに時代の寵児ともてはやされようと、 いつかは傲慢な新人たちに時代遅れだとか懐古趣味だとかいわれ 人心も離れ値段も下がってゆくという残酷な有様がとても良く解った。 かつてどれほど多くの人の目を驚かせ喜ばせたのか 彼の絵が移ろいやすい世人から侮られ、謗られ忘れ去られた今でも 河鍋暁斎という画鬼の恐ろしさ素晴らしさを、自分だけは知っている P317 河鍋暁斎しかり橋本雅邦、栗原玉葉しかり。 100年後の今でこそ皆有難がって高価な値で売買されていてもそんな事は当事者は知らぬ事。 みんなそのような目に会ってきたのだ。 ルネッサンス時代の絵画でも今でこそのものだ。 そんなことを思ったらなおさら鹿島清兵衛の 「結局人はあの世に何も持っていけないのですよ。ならせっかく生まれたこの世を楽しみ 日々喜んで生きたほうが息を引き取る瞬間納得できるじゃないですか。 それは決して絵や能には限りません。漁師もお役人も商人も・・ この世のすべてはきっと自ら喜び、また周囲を喜ばせられた者が勝ちなんです。P314」 勝ちはともかく結局はこんな生き方が一番幸せなんだろうと思った。 | ||||
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