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落花
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落花の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.07pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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読売新聞の夕刊に連載されていた小説を単行本化したもの。宇多天皇の孫に当たり、雅楽の名手でありながら父親(更なる名手)に疎まれて武蔵国の国司へと左遷された寛朝という僧の眼を通して、「平将門の乱」、を描くという新しい視座の作品。海音寺潮五郎氏「平将門」との比較が楽しみだった。なお、題名の「落花」とは雅曲の名称であるが、"都落ち"の意味も兼ねているのだろう。 結論的に言うと、海音寺氏の作品が史実を骨格とした歴史小説であるのに対し、本作は良くも悪くも作者流の抒情的時代小説である。もっと言えば、坂東に"都落ち"した僧を主人公とした「伊勢物語」風"貴種流離譚"の一種である(寛朝=在原業平という見立てか)。寛朝の唯一の望みは、10年以上前に坂東へと突然隠棲した"雅楽の天才"の是緒という貴族を探し出し、その教えを乞う事であるが、それならそれで、"雅楽の世界"に焦点を絞った物語に仕上げれば良かったと思う。実際、全体的に"侘び寂び"は良く描かれているとは思うが、これなら、「平将門の乱」を題材とする必然性は皆無だった。その上、本作のトーンに合せるためか、将門を坂東の安寧を司る気高い男(寛朝が将門に"至誠の声"を聞くというから呆れる)として描いている点にも違和感を覚えた。現存する史料が全て正確という訳ではないが、「平将門の乱」はかなり偶発的に起こった行き当たりばったりの事変であり、将門は計画性や理想を持たない粗野な男というのが定説である。それにも関わらず、「平将門の乱」が後世(特に源頼朝)に大きな影響を与えたという事実を軽視している点も如何なものか。また、戦闘の描写は作者の不得手を反映して凡庸極まりなく、これまた、「平将門の乱」を題材とする理由を見出せなかった。結局、寛朝の悲哀を際立たせるために、(京と比して)鄙びた「坂東(将門)」を"ダシ"として利用したという印象を払拭出来なかった。 「若冲」を読んだ時にも感じた事だが、作者は自身の抒情的世界を守る事だけに懸命で、題材はどうでも良いと考えているのではないか。作者の熱狂的ファンは別として、新しい視座からの「平将門の乱」を期待した一般読者にとっては落胆するしかない駄作だと思った。 | ||||
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