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ベルリンは晴れているか



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ベルリンは晴れているかの評価: 3.53/5点 レビュー 77件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.53pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全77件 61~77 4/4ページ
No.17:
(4pt)

(2019年―第15冊)被害者クリストフの背景が不明瞭だが、終戦直後のベルリンを精緻に描いた、あたかも海外翻訳ミステリーを読むような小説

1945年7月、戦争に敗れたドイツの帝都ベルリンは連合国側の4カ国が占領していた。アメリカ軍の兵員食堂で働く17歳のドイツ人少女アウグステ・ニッケルは、突然NKVD(内務人民委員部)の尋問を受ける。戦時中に自分をかくまってくれた音楽家クリストフ・ローレンツが毒殺され、アウグステに嫌疑がかかったのだ。NKVDはやがてローレンツの妻フレデリカの甥エーリヒに目をつける。エーリヒは一時ローレンツ家の養子として迎えられたが、後に家を出たまま同家とは縁が切れていた。NKVDは映画の街バーベルスベルクにいるかもしれないエーリヒを探すようアウグステに依頼する。おりしも近郊でポツダム会談が開催されようとしていて、スターリンがドイツに向かっていた…。
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 2019年の直木賞候補作であり、本屋大賞ノミネート作です。終戦直後のベルリンの崩壊ぶりを日本人作家がここまで精緻に描き出すことができるのかと驚きをもって読みました。

 瓦礫の山と化したベルリンで被占領国民の哀しく理不尽な日々が果てしなく続きます。わずか2日間とはいえ、まだ10代の少女に過ぎない主人公とともにする、謎めいた追跡の旅の道行きは大きな緊張を強いるものでした。
 また「幕間」と称して5度にわたって差し挟まれる戦中回想シーンで描かれる、ユダヤ人やツィゴイナー、同性愛者や東欧移民などへの虐待の様子は苛烈を極め、目を覆いたくなるほど微細な描写が幾度も登場します。その抑圧された少数派側の憤怒と焦慮が、アウグステに同行する“ユダヤ人俳優”カフカ、ツィゴイナーとユダヤの血を引くヴァルター、同性愛者のアーリア人ハンスの関係を大きく揺さぶっていくのです。
 彼らの姿の向こうに、戦争のむごさがくっきりと見えてくる物語です。

 しかし、戦中・戦後のベルリンがあれほど詳細に描かれる一方で、殺人事件の被害者であるクリストフがその死を招くきっかけとなった背景そのものには霞がかかったかのようではっきりしません。クリストフの行動の動機が曖昧なまま物語が閉じてしまった印象が拭えないのです。クリストフ殺害犯もそこを明らかにする努力をしていないことにも納得がいきません。

 謎解き物語としては、最後の意外な犯人像も含めて楽しめはしましたし、戦争終結直後のドイツをあたかも海外ミステリーを読むかのような気持ちで味わえたのも事実ですが、被害者の実像が不鮮明なままに終わった点に不満を感じたこともまた否定できないのです。

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*131頁:「リヒテンベルグ」という街の名が出てきますが、Lichtenbergは「リヒテンベルク」とするほうがドイツ語の原音に近いと思います。

*258頁:「帝国文化院」に振られたルビが「ライヒスカルチュアカンマー」となっていますが、Reichskulturkammerは「ライヒスクルトゥアカンマー」とするほうがドイツ語の原音に近いと思います。

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 作者・深緑氏自身、この小説を執筆する上で参考にした文献を巻末に多数掲げていますが、そのリストに載っていない書で、お勧めの書を以下に紹介しておこうと思います。

◆臼井 隆一郎『 アウシュヴィッツのコーヒー―コーヒーが映す総力戦の世界 』(石風社)
:『ベルリンは晴れているか』の中で「代用コーヒー」を口にする場面が幾度か出てきます。コーヒーとは名ばかりで、「栗を砕いて炒った」もの(57頁)や、「タンポポの根」を代用したもの(370頁)など材料は様々です。その一方でフレデリカが「陶器のカップで本物のコーヒーを飲む」(417頁)場面も出てきます。
 代用コーヒーと戦争の関係について描いたノンフィクションが『アウシュヴィッツのコーヒー』です。

◆ローラン・ビネ『 HHhH (プラハ、1942年) 』(東京創元社) 
:『ベルリンは晴れているか』の中で「ベーメン・メーレン保護領のプラハで襲撃され、死亡したラインハルト・ハイドリヒの葬儀が昨日あったばかり」(296頁)と記されます。
 ナチ高官としてユダヤ人問題の“最終的解決”計画の推進者であったラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画を描くフランスの小説が『HHhH (プラハ、1942年)』です。
 2014年本屋大賞翻訳小説部門で第1位に選出されています。

◆ハラルト ギルバース『 終焉 』(集英社文庫)
:1945年4月、ソビエト軍が進攻してくる中、帝都ベルリンでユダヤ系の元刑事オッペンハイマーが、旧知のギャングであるエデから奇妙な依頼を受けます。ディーターと名乗る男とそのカバンをかくまうようにというのですが、ディーターは終戦を目前に殺害されてしまいます。一方、進駐してきたソ連軍もそのカバンを探していて…。
 1944年5月に始まる『 ゲルマニア 』、1945年1月を描いた『 オーディンの末裔 』に続くドイツのミステリー・シリーズの第3弾です。ソビエト駐留軍との微妙な関係を背負って敗戦直後のベルリンで謎の解明に走る点で、『ベルリンは晴れているか』と共通するところが多い物語です。

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ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.16:
(4pt)

取材と表現力

日本人が終戦直後のベルリンについてここまで詳細に調べて、読者をあたかもそこにいるような状態に引き込む表現力はすごい。
但しストーリーは主人公目線で展開していくにも関わらず、最後の落ちとのつながりが自然ではないように思った。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.15:
(3pt)

ミステリではない

書評でミステリであるかのように紹介されて高評価を得ていたし、直木賞候補にも挙げられましたので期待を持って読みました。力作ですがミステリまたは娯楽作品としては楽しめませんでした。
 街の様子が詳しく記載されているのですがその割にリアリティを感じることが出来ません。ジオラマの中で動く人形劇のように思われてなりません。多数の文献に基づく詳細な描写は大いに評価できますが、小説のテーマ(謎解きではないはず)の膨らみに寄与していないと思います。
 些細なことですが誤記、または誤りと思われる記述があります。①駐留米軍の食堂の名称が「フィフティ・スターズ」とありますが、当時の星条旗は48★ですから???です
②「シケモク」の意味ですが、米兵が吸っていたたばこを捨てた行為を「シケモクを捨てた」と記述していますが、捨てたあと(暫時を経て)シケモクになるのですから×です。米兵が「シケモク」を吸っていたのなら正しい記述でしょうが・・・
それはないですね。なお、別の箇所では正しい意味で使用されています。
③「胡桃ボタン」という表記がありますが「くるみボタン」が正しいです。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.14:
(2pt)

大作ではあるけれど

大作だとは思うが、舞台のベルリンの描写を描くことにのみ文章を費やしている気がする。物語の情感が足りないと思う。描写は素晴らしいのだが作者の狙いを感じて、戦中戦後のベルリンのガイドブックを読んでいる気持ちになった。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.13:
(5pt)

定価は、本体1900円+税です!

直木賞の候補作となり、高い注目を集める作品であるため現在(2019.1.8)アマゾンでは定価に加えて謎の取次手数料・配送料により単行本が1,000円以上高額になっています。3,400円という時もありました。お近くの書店や他の書籍購入サイトでは2,052円です。
Kindle版をご検討の方はそのままレジへお進みください。やはり紙で手元に置きたい、そしてアマゾンで買いたいという方は…止めません、内容はとても良いので損はないはず。
でも、そこそこの差額です。瑞々しくも恐ろしく面白い短編集「オーブランの少女」と好きな甘味を買うとか、感想メモする美しいノート買うとか、どうでしょう?
さてあまりの高値に驚き前置きが長くなりましたが、この作品に寄せられる視線の熱さを感じます。実際とても熱量のある内容です。しかし落ち着いた、時に冷徹なほどの鋭い視点でまざまざと当時の空気を描き出しています。想像と取材と構成力の賜物。怒りと絶望の中に見出される、人間の力強さ、生きることへの希望。じっくりと読むに足る重厚さですが、けして重苦しいだけでなく興味関心を湧かせる豊かな筆力がありました。
こういった切実な時代を扱う物語の奥深さは、ひとえに作者が生み出したキャラクターと実際のエピソードや当時の文化風習の調和によるものと思いますが、老若男女を問わず世界観に引き込まれるのではないかと思います。
賞レースの行方はさておき「良いもの読んだわ」と納得できる作品なので、多くの方のお手元に届けばいいなと期待します。一気に読むタイプも、じっくり読むタイプも、アウグステの歩みと視点と共に物語をお楽しみいただけるかと。私は静かに自分を見つめ直すような気持ちで堪能できました。映画化をイメージして登場人物をキャスティングするのもおすすめです!
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.12:
(5pt)

とにかく感心しました

戦場のコックたちにものけぞったが、2冊分の膨大な資料を読み込む過程で、この作家はたぶんあと何冊か、この時代の欧州の物語を書くだけの素材と動機を獲得したのでしょう。
 ミステリー要素は二の次でかまわない(賞レースでは減点対象でしょうが)。とにかく、ベルリン陥落直後のドイツをこれだけ詳細に描いて、読者を引っ張り続けられる日本人作家は、他に居ない。「卵をめぐる祖父の戦争」を連想させる部分もありますが、真似ではない。
 感動はしませんでしたが、おおいに感心した大作でした。「帰ってきたヒトラー」との併読や、「・・最後の12日間」の鑑賞をすると、よりリアリティが増します。
ベルリンは晴れているか (単行本)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (単行本)より
448080482X
No.11:
(5pt)

国家と多様性、国家と個人の尊厳というテーマを扱った歴史小説

戦後すぐのベルリンが舞台で、ポツダム会談直前に起きたソ連統治下のベルリンでドイツ人が米国製の歯磨き粉に含まれた毒で殺害されたという事件をめぐる2日間に焦点を立てた小説です。ミステリー小説という触れ込みでしたが、第二次世界大戦期間のドイツの状況を詳細に調べ上げ、それを一人称で現在進行形で描くことで、市井の人から見た戦争体験記という印象を受けました。
ユダヤ人、障碍者などの人種差別はもちろんですが、国家と多様性、国家権力vs個人の尊厳という極めて現代にも通じるテーマを扱っております。黙認する罪というのを感じましたが、あの時代にあの場所にいて、自分が黙認以外の選択肢を取れたかというととても難しいかな。集団対個人という風に置き換えば、悪の度合いが違うだけで同じような場面はいくらでもあるはずで、その時に自分は何を考えて判断するべきなのかなと考えるきっかけをくれました。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.10:
(3pt)

良く書けている

当時のベルリンの雰囲気を良く伝えている。

ちょっとドタバタしすぎで、情緒を壊している。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.9:
(1pt)

読むのが辛い。まるで修行のような

終戦直後のドイツの話をなぜ書く必要があったのか。理解できない。
辛い。半分読んだが、これ以上読む時間がもったいない。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.8:
(5pt)

すごい、どのようにしてここまで、あの時代の情景を再現できたのか?

ここまで凄惨な状況だったのか、読むまではわからなかった。読むことによってその一端を知った。著者、深緑さんの再現能力は高い。没頭して読んでしまう。あたかも自分もベルリンで暮らしているかのように。とにかくすごいとしか、言いようがない!
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.7:
(3pt)

惜しい

面白いのだが納得できないところが多数ある。
人物の造形は魅力的だがストーリーに無理がある。
ただし読後感は良い。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983
No.6:
(5pt)

圧倒的な不条理の果てにある驚きの真実

連合国4ヶ国に占領されたベルリンで、主人公の少女アウグステは、ある日突然ソ連軍に呼び出される。そこで告げられたのは、戦時中に匿ってもらっていたクリストフが毒物により不自然な死を遂げたという事実。

戦後、クリストフはソ連に近い立場にいたことから、地下に潜伏したナチス工作員による犯行の可能性があるとしたソ連軍は、クリストフの甥であるエーリヒという人物を探すことをアウグステに命じた。

そしてアウグステは、ソ連軍に同行を命じられたカフカを道連れに、エーリヒを探す旅に出たが…。

焼け跡を行くアウグステとカフカが遭遇する様々な困難が描かれていくが 、ナチスの台頭から敗戦に至るベルリンの状況も合間に挿し込まれ、現在と過去とが交錯しながら物語が進展する。

本書が過去の幕で繰り返し読者に投げ掛けてくるのは、国家が人間に突き付けるグロテスクで圧倒的なまでの不条理だ。それに対して、現在の幕で示されるのは、個としての人間が人間にもたらす不条理。

戦争により理性の皮を剥ぎ取られた状況下での人間の醜さを描くことにより、「国家」や「集団化した人間により組織された政権」などの抽象的な存在ではなく、不条理を生み出す核はそもそも個人にこそ内在しているのだということを語りかけてくる。

エーリヒ捜索にかけるアウグステの「執念」の理由、苛酷な目に遭いながらも逃亡せずにアウグステと行動を共にするカフカの「真意」、そしてアウグステが暴いたある人物の行動の「動機」など、本書にはいくつかの謎が織り込まれている。そして終盤でのどんでん返しと、ストーリー的にもかなり読ませる作品だ。

戦後の荒廃したベルリンの描写や、ナチスによりベルリンが息苦しくなっていくさまなどは、実にリアリティがある。脇役に至るまで、人物造形も細やかだ。

ヨーロッパを舞台としたこれほどの深みのある作品が、まだ若い著者の手によって産み出されたことに、素直に驚きを覚える。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.5:
(5pt)

毎晩、寝るまでのひと時を楽しみながら読んだ小説である。

新聞書評に引かれて読んでみようと思った。大変面白かったが、面白いからすぐに読めるというのではなく、読みがいもあり、しばらくの間は寝るまでのひと時を楽しむことができた。

 舞台は第二次世界大戦直後のベルリンである。話は、篤志家のドイツ人が何者かによって殺されるところから始まる。殺されたのは、主人公のドイツ人少女・アウグステを戦争中に助けてくれた一家の主人だった。帯書きには、「圧倒的スケールの歴史ミステリー」となっていて、犯人探しの物語のように書かれているが、内容は少し違う。犯人探しというよりも、戦後のベルリンの様子が、親を亡くした孤児や、進駐してきたソ連軍、アメリカ軍を狂言回しとして詳しくそして興味深く語られていくのだった。この辺の著者の取材力と筆力は読者を圧倒し、次々とページをめくっていった。日本人でありながら、どのような動機があって、作者はドイツのことを書いたのだろうかと興味がわくが、あとがきにはそのことは書かれていなかった。

 この本からは、ドイツ人の全てがナチやヒトラーを崇拝していたわけではない、ということも述べられている。アウグステの父親がそうだった。貧乏な工場労働者だが気高い心を持ったドイツ人である。そんなことも知ることのできる、小説として楽しめた一冊だった。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.4:
(5pt)

旅路の果てに、それでも希望はある! 胸奥深いところを緩やかに刺激する一冊!

1945年、敗戦・分割占領されたベルリンの米軍慰安所でウェイトレスとして働くアウグステの日常から物語は始まる。突然ソヴィエト監視所に連れられ、毒殺された旧知の演奏者について尋問を受けるアウグステ。ここで僕は既視感にとらわれる。冒頭から遠慮なく投げかけられるは、ひとの本質を突く強い文章。そう、これは『朗読者』『階段を下りる女』のベルンハルト・シュリンクを読んでいる感覚、いや、それを超越した骨太さだ。アウグステと"ユダヤ人"カフカの旅を追う「本編」とナチス政権下でのアウグステと両親の苦闘を描く「幕間」のバランスも見事だ。
・Ⅰ章ラスト近くの「高い建物が消え失せて…」の文章には唸らされた(p92)。
・廃墟となった繁華街の中で、それでも楽しく生きようとする人々の描写は心に残る(p138)。
・中盤で明かされるはカフカの運命。俳優として"演じる"ことの真の意味が語られる。
・「幕間」と、特にⅢ章のカフカの独白に表現される全体主義の恐ろしさよ。軍需用ユダヤ人、そして夜間の強制移住の恐ろしさは身の毛もよだつ(p266)。人間性の根幹からの否定。「ドイツ人は皆ヒトラーに洗脳されている」とアメリカ軍士官に言わせたのは絶妙だ。「…どれが"まとも"なのか教えてくれよ!」(p269)
・カフカにとっての"あいつ"。「まだ息があるのに埋めるな」(p267)。アウグステにとってのギゼラ(p214)。一生ついてまわるは後悔の念か、それとも忘却への願いか。
・ベルリン爆撃の描写は迫真だ(p427)。ブロックバスター爆弾と焼夷弾の恐ろしさが強く伝わってくる。
・知人はどんどん死んでゆく。ナチス親衛隊の手により、ユダヤ人収容所により、イギリスとアメリカの空爆により。「最後のひとりまで戦え」。ちぎれたハーケンクロイツ旗。「あんたも気をつけな。生き延びてまた会おうよ」(p432)赤軍の猛烈な侵略を受けたベルリン市民の最期は壮絶だ(p434)。誰もが殺しあう日々……。
・そして、密告者、隣人の喪服の女性が、自殺を試みた瀕死の女性が、アウグステに語ったある事実(p437)……。

物語に通底するは、非占領国民の強さと"哀しみ"だ。4か国の外国人に蹂躙され、未来を見通せない中で日々生きていくことの困難さよ。
戦後70年を経過しても"ナチ狩り"に執念を燃やすドイツ人の姿は、わかるような気がする。それは自らへ課す贖罪でもあるのだ。

旅路の果てに、それでも希望は、ある。ベルリンは晴れているか。これだけの物語を紡ぎ、胸奥深いところを緩やかに刺激する文章を書きあげた著者の力量に脱帽だ。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.3:
(3pt)

ほどほどに楽しんだ・ネタバレあります

こんながちゃがちゃしてるであろう時期に、ひとりの毒殺犯をでっち挙げて、しかも即時死刑にしてしまったら、お手柄も何も、「軽くスルー」にならないかな?そこまで労力使って、しかも腹心の部下ごと犠牲にするだけの「メリット」があるのか?
の辺りがピンと来なかった
戦前、戦中、戦後の描写は楽しんだ

他の方も既に書いてますが、「なんで、あえて、ここなんだろう?」と、思ったりする
面白くない訳じゃなくて、著者略歴から↑が全然読み取れないから、素朴な疑問
って感じに

基本的には楽しみました
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.2:
(5pt)

今こそ読まれるべき歴史ミステリーの大傑作!

ネットで評判だったので気になっていたら、以前すごく感動した「戦場のコックたち」の作者さんの本だと知って即購入。「コック」は第二次世界大戦の最中に日常の謎を解くというのが面白くって読んでいると、どんどんと深刻な内容になってきて、それでも読むのをやめられずに最後はエピローグを読み終わって思わずうるっときてしまいました。
今度の「ベルリン」は、舞台がドイツで敗戦国、しかも軍人じゃなくって普通の少女ということで、前の作品よりもずっと辛くて、かわいそうな状況なんだけども、まるで当時のベルリンを歩いているような気分にさせてくれるものすごく手に取るように鮮やかな文章で、あっという間に物語に引きこまれてしまいました。
物語もとっても凝っていて、1945年7月時点の終戦間もないベルリンと、主人公アウグステが生まれてから成長していく様子とナチスが誕生してドイツがどんどん酷い状況になっていく様子を書いた幕間とが交互に書かれています。
この二つの物語が最後で一つに合わさって、ミステリーとしても、あっと驚く結末が待っていました。
ユダヤ人や同性愛者、身体障害者などの差別問題についてもとても深く考えられていて、当時の迫害の様子が容赦なく書かれているので読んでいて辛いところもありましたが、「これは今も続く地続きの問題なんだ、遠い過去の異国の物語ということで、他人事のように考えていてはいけないんだ」と気づかされました。
あとがきにもの凄くたくさんの参考文献がのっていて、なるほどプロの作家さんってこれだけ調べるんだと感動と納得。
今みたいな世の中に、こんな作品が書かれて、それを読むことができてとてもよかったです。
ぜひ、ドイツ語に翻訳してドイツの人にも読んで貰いたいです。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
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No.1:
(4pt)

今のドイツは晴れているだろうか?

題名は「パリは燃えているか」の本歌取りだろうか。「戦場のコックたち」に続く第二次大戦終戦前後の物語であり、敗戦国ドイツの首都ベルリンを舞台にしたミステリー小説である。戦中戦後のドイツの惨状は、自ら体験した小説家が描いており、特にノーベル賞受賞作家のハインリッヒ・ベル等の短編は、暗さと絶望に満ちている。本著者にそれを求める人はいないだろうが、物語の背景には「幕間」」として十分に描かれている。この本はむしろグレアムグリーンが描いた「第三の男」の方に近いかもしれない。最期のどんでん返しは予想していなかったが、それを予感させる布石がもう少し前半にあっても良かったのではないか。いずれにしてもまだ若い女流作家が、何故第二次大戦終戦前後に題材を求めるのか、個人的にはそちらの方を聞いてみたい。
ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:ベルリンは晴れているか (ちくま文庫)より
4480437983

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