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蠅の王



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蠅の王の評価: 4.16/5点 レビュー 103件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.16pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全103件 41~60 3/6ページ
No.63:
(2pt)

食傷気味

1954年発表の作品で、発表当時はセンセーショナルだったかもしれないが、『バトル・ロワイヤル』以降の作品を知っている世代からしたら、またこの手のやつかといった感じではないだろうか? 人間の内なる悪を描いているとよく言われているが、バタイユやセリーヌやドストエフスキーといった作家たちも人間の中に潜む悪といったことをテーマに小説を書いている。この作家が特に突出しているといったわけでもないだろうし、また人間性に潜む悪と言えば恰好いいテーマのように思えるが、そんな本ばっかり読んでいると、つくづく自分は厨二病なんだなと思う日がくるかもしれないw
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.62:
(5pt)

近視の眼鏡は凹レンズ

孤島に置かれた少年達が次第に食欲と暴力とに支配されてゆくさまを描いた作品。
社会から切り離された集団で何が起こるか、という思考実験に基づくSF作品の一つといえる。
理性を持っているのは社会なのか個人なのかは難しい問題だ。
私は読んでいて連合赤軍事件が何度も頭に思い浮かんだ。細部はいろいろ違うが、本質的には同じだろう。

ところで読んでいて何より気になったのが、眼鏡で日光を集め火を起こすという描写。
子供で遠視は少ないだろうから不自然に思いながら読んでいたら、残念ながら
「近視」とはっきり書かれている箇所に遭遇。
第11章の冒頭。念のため原文にもあたったところ、やはり"myopia"とある。

翻訳にあたった平井正穂氏の解説によれば、ゴールディングはオックスフォード大学入学後自然科学を専攻していたが、
のちに英文学専攻に転じたそうだ。
オックスフォードで自然科学を専攻するような者が、近視の眼鏡は凹レンズで光を集められないことを知らないとは。
一つの長編小説を書いている間に、そのことを考えもせず、気づきもしなかったのだろうか。
個人的には少なからぬ衝撃である。

この作品はこうした詰めの甘さを感じさせる箇所が所々にある。
荒削りだが骨太な作品、ということで甘く評価。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.61:
(5pt)

餓鬼地獄

南太平洋、漂流、餓鬼、飢餓、殺し合いと人間の本質を子供を通して描くイギリス文学!
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.60:
(5pt)

ラーフの合理的なデモクラシーは、幼い子供たちが夜になるといだく恐怖をうまくそらせない1954

少年小説は、現代の大衆社会における政治の寓話になるが、それはやがて、現代の精神の寓話となり、人間の悪の研究となる。

・無人島に不時着した少年たち。その島は食糧が豊かで、水泳ができ、おもしろい遊びに不自由しない。しかし、少年たちは二つのグループに分かれて争うようになる。一方はラーフに率いられる少年たちで、救いを求める信号としての狼煙(のろし)を絶やさず、小屋を建てる。他方はジャックに率いられる合唱隊の連中で、野生の豚を狩る蛮行に夢中。

ラーフの合理的なデモクラシーは、幼い子供たちが夜になるといだく恐怖をうまくそらせない。このため、ジャックを中心とする呪術的な舞踏が次第に少年たちの心をとらえるようになる。陰惨な争いがつづき、文明国の中流階級の少年たちは野蛮人と化す。。。

・・・1962年、ゴールディングはカリフォルニア大学で講演した。

「第二次世界大戦以前には、私は社会的人間が完全なものになり得ることを信じていた。社会構造が正されれば、善意を生める。社会の再組織により社会悪はすべて除去できると信じていた。今日でも信じることは可能だが、戦後は止めた。信じれないからだ。・・・蜂が蜜を生み出すように人は悪を生み出すということを知らずにあの歳月を過ごしたものがいるとすれば、盲目だったか、頭がおかしいかだ。・・・人は病んでいる。例外的人間が、ではない。普通の人間が病んでいるのだ。道徳的に病んだ被造物、というのが人間の条件なのだ・・・・と私は思った」

丸谷才一1983
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.59:
(5pt)

序盤は読みづらいが、、、

三分の一くらいまでは、
「ああ、設定ありきのサバイバル物ね、設定(登場人物、アイテム、風景、等々)が細かくて、面倒くさいな」と思いましたが、
軽く読み進めていく内に、「これは単純なホラーだ」と気付き、その頃には、初めの頃に感じた、鬱陶しい細かい文体も癖になってくる、
そんな具合です。

若者受けの良い、暴力的な小説は、こういうところから影響を受けているでしょうけど、どうせなら質の良いものを選びましょう。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.58:
(2pt)

このレベルでノーベル文学賞がとれたのか

のどかな「十五少年漂流記」が次第に浅間山荘事件になっていくような物語。人間の深奥に潜む獣性、悪魔性を、孤島に取り残された子供たちという寓話的設定で描いている… のだが、これは「十五少年漂流記」の単なるネガ版でしかない。そのアイディアだけで、表現も心理描写もまったく浅い。読むものの心をえぐる感じがまるでない。こんな低レベルの小説でノーベル賞がとれるのかと驚く。

 1954年の発表で、時代のせいか、牧歌的というか切迫感がなさすぎる展開だ。クライマックスがあっという間にあっけなく終わるのも頷けない。
 芥川賞や直木賞作品のほうがましだし、山田風太郎の南海の孤島を舞台にした戦争ものだってもっと面白い。
 「蝿の王」とは聖書に出てくる悪魔ベルゼブルのことらしいが、ところどころに寓意的に表象を入れて文学的装いをとっているけれど、どこが面白いのかわからないという以外に、表現する言葉がない。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.57:
(3pt)

テーマは野心的、内容はわりと退屈

この作品の内容を一言で言ってしまえば、理性と本能の対立といったところだろうか
それ自体はとても興味深いテーマなのだが、この作品はどうにも内容が地味だ
というのも、この作品の大半は『島に近寄った人に気づいてもらえるように狼煙を上げようとする主人公』と
『そんなことお構い無しに食欲を満たすために豚を狩る男』の対立に終始しており、それ以外にも重要な
人物がいないではないが、別にそこまで活躍するでもなく、話自体が唐突に終わってしまう

島から出るために筏を作ったり、怪我や病気で苦しむ仲間の為に何かするとかそういった展開は何も無い
何度もブタ狩り音頭や法螺貝で切れるピギーネタを読まされるのはあまり面白いものでもなかった

退屈で最後まで読めないという作品ではないものの、もう少し小説としての面白みも欲しかった
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.56:
(5pt)

子どもを通じて人を見る

無人島に不時着した少年たちの顛末。
リーダーを立て、秩序だった生活が始まったものの、その先にあったのは狂気だったりする。

狩猟班の子どもが顔にペイントする件や、無人島で子どもたちが殺し合いをしていく描写は迫力がある。
だが、単なる冒険活劇だと思っちゃいけない。

一番印象的だったのはオチのシーン。
似たような設定で描かれた他の作品と比較してみるに、時代性が反映されているようで実に興味深かった。
現在だと、果たしてどのような終幕になるだろうか。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.55:
(2pt)

名作との話でしたが、

私には合わない名作でした。
読み進めていても、まったく入り込めませんでした。
人によるのでしょうね。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.54:
(5pt)

陰鬱とした話ですが、面白かったです

無人島に漂着した少年たちを描きながら、文明人の心の根底に潜む獣性をえぐり出す話です。いわゆる少年漂流物の話の一つですが、英雄的な話ではありません。
和訳が少々古いので、言い回しなどが若干気になりますが、それでも面白く読めました。重いテーマの話ですが、もっと軽い気持ちで読み進めても良いと思います。登場人物のキャラも分かりやすく立っていて、読みやすい作品でした。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.53:
(5pt)

恐怖に支配された子どもたち

無人島での生活を余儀なくされた子どもたちが自分たちで規律を作って生活していく、と聞くと真っ先に思い浮かぶのは「十五少年漂流記」ではないでしょうか。この物語は戦争を逃れる子どもたちを乗せた飛行機が不時着し、無人島に子どもだけが取り残される、といった状況。ただし内容は「十五少年漂流記」のような爽やかさとは程遠いもの。

大人は一人もおらず、食料も手に入り、戦争の危険にさらされることもない無人島での生活は最初こそ子どもたちの“楽園”として描かれますが、やがてそこで得体のしれない“恐怖”に子どもたちは遭遇します。理性を保つために作り上げた規律も幼さゆえの恐怖や焦りによって消滅し、子どもたちの野性や暴力性といった本能が露わになっていきます。

恐怖の対象が一体何なのか、それを知ることを禁忌とした彼らは閉鎖的な集団を形成し、規律を犯すものを容赦なく排除します。登場人物は皆十代かそれより幼い年齢ですが、そんな子どもたちの心の中にも確かに闇の部分が存在することを、説得力のある描写で描き出しています。主人公たちが仲間を殺した罪悪感と、自分が殺人に加担した恐怖に焦燥する場面は、読者の心にまで後味の良くない、焦りや不快感を植え付けます。それも子どもの視点で描かれているため、いっそう痛々しく感じられます。

年若い子どもたちが恐怖に駆られて殺戮を犯す、なんて現実にはありえない事だと思うのが普通でしょう。しかし、リアルに人間の本性、獣性を描き出す本作には、それを納得させるだけの説得性が秘められています。

ダークな雰囲気の物語で死人も出ますが、凄惨なグロ描写などは無いのでご安心を。
蝿の王 (集英社文庫 コ 1ー1)Amazon書評・レビュー:蝿の王 (集英社文庫 コ 1ー1)より
408760022X
No.52:
(5pt)

思春期の少年たちの危うさ

訳についていろいろ書かれているので私は純粋に内容について書くことにします。
これだけレビューにばらつき感があるところにこの本の価値があるのではないかと思います。

少年たちが乗っていた船が座礁し、無人島に到着するところから物語が始まります。
自分たちの世界、暖かい島。少年たちにとっては小さい頃から誰もが一度はあこがれた状況だったでしょう。
しかしやはり現実は甘くはありませんでした。自分たちのやりたいことをやる願望があるということは社会や大人に守られているからこそ存在するものだったのです。当然ルールは破られ、秩序は乱れ、そこに思春期の少年特有の揺れが混じり、話は進んでいきます。

どうしてこういう風になるのかわからないというレビューも見かけましたが、理由なく行動を起こすことがこの時代の子供たちの特徴なのです。ちょっと自分と異質なところがあると判断した時点でいじめたりいじめられたり、さっきまで機嫌よくしていた子が突然口もきかなくなったり。中学生の娘を見ているとよくわかります。何でこういう考え方しかできないのかな?といつも思います。でも理由を探してはいけないんだと。こういう時期なんだと。最近やっと悟りました。

この本のラストは二段階になっています。書かれているラストとその先にある書かれていないラストと。
少年たちは果たして救われたのか、否か。
中学生に是非読んで欲しい小説です。
でも多分あまりにも自分たちの嫌な部分を見せ付けられるでしょうから、はじめに読んだときは不快になるでしょうね。10年経って再読するとまた違った気持ちを味わえるでしょう。本の中には一回読んだだけでおしまいではなく、自分が今社会のどこに存在しているかによって読み直したときに違った感想を持つものがあります。そういった本は名著と呼ばれるものが多いです。この本もそんな本の一冊です。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.51:
(4pt)

子供だからこそ・・・?

ある程度の予備知識を持ちこの小説を手に取りました。

冒険、希望、友情に溢れた冒頭。
迷い、対立が鮮明になる中盤。
人間の本来の姿(であろう部分)が描写される終盤。

孤島のような閉鎖された空間で集団が生活した場合、「小説のようなハッピーエンドにはなりませんよ」という実例のように感じました。
とはいいつつ、立派な物語ではありますが。

予備知識では、もっと凄惨な事態になるのかと想像しておりましたが、行方不明者を含め描写されている犠牲者は片手でも余る程、というのはやや拍子抜け。
ただそれは、非力な子供しかいない空間だからこそだったからなのかと考えます。

仮に、この集団に大人が混じっていたり、大人だけの集団だったのならどのような事態になったのか。
大人は理性を携えており、規律のある生活を送り首尾よく救助されていたのか。
私には到底そのようには思えません。
仮に私(28歳)があの集団に混じっていたのなら、結局は暴力で御することを選ぶだろうと思います。

また、副次的とはいえ運良く救助させることにはなりますが、果たしてそれが彼らにとって良かったことなのかどうか。
あのような状態にまで陥った子供たちは、文明社会に戻ることができたのでしょうか。

いろいろと想像、妄想の尽きない小説だと感じました。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.50:
(2pt)

小説として読むには、ご都合主義が鼻につく

小説として読むには、ご都合主義が鼻につく。
寓話として読むには、冗長さに頭が痛い。

どちらにせよ題名の「蠅の王」は、
物語の中の「得体の知れない何か」であって
この本の主題を表しているとは思えない。

出版された1954年に縁遠いから?
欧米人ではないから?

名作と聞いて読んだが、私の心は動かなかった。
蠅の王 (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (集英社文庫)より
4087605787
No.49:
(5pt)

「蝿の王」とは、いったい何者なのか

『蝿の王』(ウィリアム・ゴールディング著、平井正穂訳、新潮文庫)は、かなり以前から読まねばと思いながら、果たせずにきた本である。

ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』の系譜に連なる作品ということを知ったら急に読みたくなり、一気に読んでしまったが、これは少年のための物語なのか、大人のための文学なのか、未だに判然としない。著者のゴールディングが1983年にノーベル文学賞を受けたことは、はっきりしているが。

近未来に起こった世界大戦のさなか、英国から疎開する少年たちを乗せた飛行機が敵の攻撃を受け、南太平洋の孤島に不時着する。大人のいない環境の中で、6〜12歳の少年たちは選挙で隊長を選び、狩猟隊や、救助を求める烽火(のろし)の番をする係など、それぞれの役割を決め、生活のルールを定めていく。

豊富な食料に恵まれ、野生の豚が棲息する楽園のような島で、島内の探検に精を出すなど、当初は秩序ある平穏な生活を送るが、次第に、激しい内部対立が生じ、殺伐とした陰惨な殺戮へと駆り立てられていく。

海からやってきたのか、空からやってきたのか、闇に潜む得体の知れない「獣」の存在。少年たちは恐怖心に襲われ、狂気に囚われていく。

そして、「蝿の王」とは、いったい何者なのか。

やがて、少年たちの内面にも「獣」が巣くっていたことが明らかになる。

この作品は、人間の内なる暗黒をえぐり出すことによって、人間のあり方を問おうとしているのかもしれない。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.48:
(4pt)

大人が居ない子供だけの世界がリアルに描かれています

一言でこの物語を形容するならば「子供(イノセント)故の恐怖、残虐性、悪、理性の崩壊」です。
初めて読む際にはある程度の心の準備が必要だと思います。
私は予備校の先生から勧められたのですが悲劇だと知っていても読中読後は辛かったです。
とにかく「大人が居ない子供だけの空間はどうなるのか、何が起こるのか。人間がいかに脆い存在か。」
ということを生々しく、それでいて神秘的に、冷徹とも言えるほど真正面から描き伝えています。
この作品はそういったテーマを描くことに恐ろしいほど成功しているのではないでしょうか。
描写されることの全てに意味がある(とれる)といっても過言ではないです。
二度読む気になるかは別として、一読の価値は間違いなくあります。(しかし辛いお話なので読む際は覚悟の上で)
小説の完成度としては☆5です。しかし個人的な感想として☆4です。

※以下ネタバレ含みます(未読の方注意)。あくまで個人的感想です※
印象に残るシーンや登場人物への感じ方が読んだ人それぞれ違うであろう作品だと思います。
私は客観的に見ればこの作品の子供たち全員が被害者と言えるのであり、それぞれが違う選択(生き方)をしただけで、サイモンやピギーの事件も混乱状態に陥ったための『事故』と呼べるかもしれないと思います。

しかし、私自身は生を奪う快楽から逃れられなかったジャック及びその仲間たちがどうしても許せません。
ラーフが掲げる理想こそ正義だとしても一時でも快楽と獣への恐怖に負けたラーフが正義だとは思いません。
ラーフが最初から隊長として人格的に知的にふさわしいとは思いませんでしたが、ジャックや少年達はなんとしてもラーフの言うこと(秩序)を守らなければならなかったんです。彼らがもう少し『大人』だったら…。烽火を絶やすことも、獣に脅えることも、サイモンやピギーを殺すこともなかったでしょう。サイモンやピギーは彼らに間違いなく『殺された』のだと私は思います。自分に襲い掛かる恐怖から身を守るため本能に身を任せ何かを生贄にするこの縮図は現代のいじめとも共通します。ラストは身を守るため本能に従った人間が生き残り、理性を持つ人間が殺されたという結果。☆4な理由はここです。あまりに悲しいです。

私はこの話の唯一の救いはサイモンだったと思います。サイモンだけが自分の恐怖、人の心の闇に向き合うことができる少年でした。だから獣の正体がパラシュートを付けた人間の死体だとわかった。
そして彼は「お前はラーフもピギーもジャックも皆好きだろう」と蠅の王に言われます。少年たちが獣への恐怖と互いへの不信と自分の尊厳を守ろうとバラバラになっている時に彼だけが仲間を想っています。
しかしサイモンはその仲間に殺されてしまいます。この事件は彼らの人間としての理性が完全に崩壊したことを意味します。もう誰も自分の中の獣を直視できる者はいないのです。
私が一番印象に残ったのはサイモンの死体が流されていくところでした。星空や海やサイモンが美しく描かれています。作者の少年への温かいまなざしや優しさが唯一顕著に見れた場面だと思います。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.47:
(5pt)

責任転嫁とは何かを感じた作品

ドイツが第二次世界大戦で犯した犯罪をナチス・ドイツに全て責任を押し付け、ドイツ国民はあたかも被害者であるかのように責任転嫁したように、この物語でもサイモンの死においての責任のなすりつけを描く描写には圧倒された。人間の内にある悪を取り除くのはいかに不可能かということを考えさせられた物語であった。一度は読むべき本であると思う。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.46:
(5pt)

十五少年漂流記、必読。

十五少年漂流記が、NHKアニメだとすれば、蝿の王はさしずめ新世紀エヴァンゲリオン。
という例えはあれなんですが、

十五が表なら、裏は蝿の王。十五を知っていたので、凄く楽しめました。

最初はとってもワクワクします。
希望に溢れ、少年たちが島で暮らしてゆきます。
ちなみ、この蝿の王では、舞台は世界大戦の最中でもあります。

途中から、十五の希望は、何かおかしな方向へと現実へと展開してゆきます。

ラストへかけての、主人公の言葉はしめつけられる思いでしたが、ラストでのこれからの展望を思うと、なんともいえない気持ちになるのでした・・。

ということで、個人的にはオススメ。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.45:
(3pt)

二十歳になる前の方に

20世紀中期の作品にみられる不条理を、宗教的背景なしに
私たちに感じさせてくれます。

知恵者による皆が生き残り無人島からの救出の法が、「肉」
に蹂躙されてゆく。小学生であるわずかな理性を持った少年達が秩序より衝動的な
欲望を選択してゆく。
現代の私たちにとっては単純な物語構成になっていますが、年齢により格差が大きい
小説だと思います。

小学生の頃、多少の学年の違いで圧倒的な体力差があったのを、ガキ大将なる
存在を懐かしむ事ができました。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016
No.44:
(4pt)

新訳がそろそろ望まれる

共産主義国との戦争から疎開するイギリスの小学生たちを乗せたジェット機が太平洋の孤島に墜落。生き残った子どもたちは帰国を目指して力をあわせるのだが、やがて彼らの間に大きな亀裂が生まれて…。

 ノーベル文学賞受賞者であるイギリス人作家ウィリアム・ゴールディングの代表作とされる小説です。
 戦争をいとわしく思って国を後にした純真無垢な子どもたちが、新しい土地で自分たちなりに規則と秩序を重んじて生きようとします。しかし、彼らの集団生活はやがて大きな軋(きし)み音を立てて崩れ始め、むき出しの本能と混沌の世界が立ち現れてくる。そんな様子を描いています。

 この小説で対立するジャックとラーフの姿を見ながら私は、これは原初の共同体的社会がやがて王権を手にしたものによる統治社会へと姿を変える途次を描いた小説なのではないかと感じました。人類が王となる者を最初に選んでその者に自由と権利を託していく様子が、この子どもたちの寓話の中に確かに見て取れたのです。

 ですから短時日で幕を閉じるこの物語が、もしも数年、数十年の期間のそれとして描かれていたなら、絶対君主制的様相から議会制やブルジョワ資本主義、やがては子どもたちが逃走したはずの共産主義体制へと変貌をとげたかもしれないと想像するのは楽しいことでした。

 なお私が手にしたのは昭和50年発行のものの22刷(平成4年)にあたる版です。
 30年以上も前の翻訳であるせいか、和訳文はかなり古めかしいものとなっています。「忿恚(ふんい)」や「隠忍自重」など、かなり硬質な漢語が散見されます。消失が惜しまれるこうした言葉を翻訳家が使うことを必ずしも否定はしませんが、子どもたちが主人公の寓話としての『蠅の王』には少々重たくはないでしょうか。

 昨今の新訳ブームを目にするにつけ、『蠅の王』もそろそろ新しい翻訳が出てもよいころかもしれません。
蠅の王 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蠅の王 (新潮文庫)より
4102146016

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