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罪の声
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罪の声の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.78pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全215件 201~215 11/11ページ
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グリコ・森永事件は私が30代前半の頃に発生し、関西在住だったせいか、事件現場も殆ど知っていたので、今も鮮明に記憶に残っている。塩田武士は現在30代後半で、事件発生時、5歳ぐらいと思われ、まさに一連の事件の中で、犯人の指示を伝えるのに、子供の声のテープを使ったことから、世間に衝撃を与えたが、その子供の年代と一致するのである。塩田はその子供の気持ちになって、事件を再構築したのだ。 子供の声の人物が大人になり、ふとしたきっかけで自分がその声の主だと知る。一方、年末企画で31年ぶりに、この未解決事件を担当する事になった同年齢の新聞記者を配して、その両方の視点で事件を追いかける展開はスリル満点で、やがて両者が交叉して欲しい、いや、して欲しくない感情が相半ばする。 本書はフィクションなのか、ノンフィクションなのか判らないほど真相に迫っている熱気がある。私もDVDに落としていた「NHK未解決事件 グリコ・森永事件」を久しぶりに観て、あるいは「緊急報告 グリコ・森永事件」を書棚の奥から引っ張り出してきて読んでみた。 それによると、犯人の指示書では、名神・大津サービスエリアの案内板の後ろに貼ってある事になっているのに、滋賀県警の別動隊の一人は、時間差で犯人らしき人物が、ベンチの座席の裏側に何かを貼りつけているのを目撃しているのである。この事実を基に塩田は別のストーリーを創作するのだ。 後半の方で新聞記者の一人がこう語る。 「俺らの仕事は因数分解みたいなもんだ。何ぼしんどうても、正面にある不幸や悲しみから目を逸らさんと『なぜ』という想いで割り続けなあかん。素数になるまで割り続けるのは並大抵のことやないけど、諦めたらあかん。その素数こそ事件の本質であり、人間が求める真実や」 あの頃、犯人の脅迫状や指示書の内容に世間は騒然としながら、一方痛快感もあった。しかし割り切られた素数を読むと、この事件の裏には様々な悲劇があり、現在も進行形なのである。間違いなく今年下半期の直木賞候補作となって欲しいし、出来れば受賞して欲しい。 | ||||
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京都で仕立屋を営む曽根俊也は父の遺品の中にカセットテープを見つける。再生してみると、それは31年前に発生した「ギンガ萬堂事件」の脅迫テープであり、しかも幼いころの自分の声であることに驚愕する。 一方、大日新聞の文化部記者・阿久津英士は、未解決事件を追った社会部主導の連載企画のプロジェクトに放り込まれ、しぶしぶ「ギンガ萬堂事件」を洗い直し始める…。 -------------------------- 昭和の迷宮事件「グリコ・森永事件」をその事件発生の様子から、警察の迷走する捜査、過熱するメディア取材までをほぼ忠実になぞりつつ、事件の真相に至る過程は作者独自の大胆な推理と想像をまじえて描いた長編ミステリ小説です。400頁超のハードカバー本ですが、あまりの面白さに、秋の連休2日で読了しました。 私自身、1984年に発生した「グリコ・森永事件」を連日、新聞テレビの報道を通じて体験していましたし、2011年に放送されたドキュメンタリー×ドラマ『』を見ていたので、かの事件の発生から迷宮入りまでの過程はおおよそ頭に入っているつもりです。それだけに、被害企業の固有名こそ架空のものに差し替えられているとはいえ、現金受け渡しのためだけに拉致された若いカップルのことだとか、不審者の職質をするかしないかをめぐって警察の中で葛藤があったことや、報道協定をめぐるメディアと警察の対立など、実際に起こった出来事がこの小説の中にきちんと落とし込まれていて、フィクションというよりはルポルタージュを読んでいるような錯覚に陥り、激しい興奮を覚えて頁を繰り続けました。 落とし込まれた史実は、「グリコ・森永事件」に限りません。 犯罪に加わった9人の中には、1970年代から80年代にかけての日本と世界の潮流に翻弄された者がいます。暴力と暴力が激突する過激な左翼活動、社会民主主義の果てに英国病に苦悶し、やがてサッチャー政権による劇薬ともいうべき新自由主義という治療法をとったイギリス――。 新聞記者出身の作者らしく、冷徹に時代を切り出す手腕はとても巧みです。 調査報道に邁進する阿久津と、身内が犯罪者であったかもしれないという苦悩にさいなまれる曽根という、同世代の男ふたりの人生が物語の中盤で交錯してくるあたりから、物語は作者の果敢な仮説によって史実という名の軌道を大きく外れていくことにはなります。しかしその仮定の世界は、劇場型犯罪として世間を大きく騒がせた「グリコ・森永事件」の、時に忘れられがちな点を大きく衝いていくことになります。 その点とは、年端もいかず、社会の道理もわかっていない幼い彼らに、脅迫文を録音させた大人がいたということ。大人の薄汚れた恣意によって無辜の子どもたちがあの凶悪犯罪に加担させられていったということです。 あれから随分と長年月が経ちました。主犯格の連中の中には既に鬼籍に入った者もいるでしょう。しかし、当時まだ10代だった子どもたちは長じるにしたがって、あのとき自分がさせられたことの重みを感じないではいられない人生を歩んでいるのかもしれません。それを考えると、犯人の大人たちは世間を騒がせる以上に、取り返しのつかないほど大きな過ちを犯したのだということを思わざるをえません。 腹のすわった重厚な物語の奥に鋭い指弾の矢を備えた、見事な長編小説です。 | ||||
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数年前にNHKで放送された「グリコ森永事件」の番組で、犯人からの指示に使われた子どもの声に関しての新事実を紹介していました。それを観て、これらの事件に関わった子ども達は、現在どうしているのだろう、と思ったことを覚えています。同様の思いを持った著者がいて、このような作品が生まれた事に、まず感動しました。新たな事実を追いかけて行く過程を読むうちに、事件に関する事実の知識と、進んで行く物語の境が分からなくなりそうになるのが、この本を読む快感でした。その点では、素晴らしい作品だと思います。⭐️ひとつのマイナスは、海外での取材やそれにまつわるストーリーが、国内の物語としっくり馴染んでいない感じで、残念だったからです。とは言え、面白かったよ、と周りには薦めますね。グリコ森永事件に関しては、NHKスペシャル・未解決事件のシリーズがオススメです。本書でも描かれているシーンは再現ドラマで見せていますし、実際の捜査関係者の証言も観ることが出来ます。 | ||||
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映画化して欲しい!! 今年の必読です。 人間ドラマ 親子の情愛 泣かせます! | ||||
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導入から最後まで一気に読ませる紛れも無い傑作です。ただ登場人物が多いので、途切れ途切れに読むと名前がパッと認識できない時があります。ノートでも取りながら時間をかけてゆっくり続けて読むべき作品。 | ||||
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新聞広告で見て、ぜひ読みたいと思い購入しました。予想通りの内容でした。あくまでもフィクションですがここまで書けるということはその裏側には膨大な取材、勉強があるのだと思いました。ラストでは思わず涙がこぼれました。本を読んで泣いたのはいつ以来だろうか。 | ||||
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400ページに及ぶ超大作。骨太で重厚で、犯罪に巻き込まれた家族の悲惨さを見事に描き出した作品だと思います。 私は「グリコ・森永事件」を知らない世代なので、こんなこともあったなとは、思い出すことができない世代なのですが、それでも当時の犯罪の壮大さが想像できる作品でした。 この作品自体は作者のフィクションですが犯罪に子供も巻き込まれているというのは、後々こうした凄惨な事実があるかもしれないという著者の犯罪に対しての強い批判を痛いほど肌で感じました。 昨今、障害者支援施設が襲われて尊い命がたくさん奪われた事件がありましたが、その犯人にも、こうした本を読んでいただき、被害者や被害者家族だけじゃなく、加害者の家族となった自分の家族について考えてもらって猛省してほしいと思いました。 | ||||
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事件の核心の部分は、迫真でしたし、 それ以外の部分も心地よく読めました。 | ||||
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着眼点が素晴らしいです。ただの犯人探しだけではなく、人間を描いた小説になっていると思いました。また実際の事件の内容とフィクションの境目が分からないリアリティ感がすごいです。少しずつ確信に近づいていく感じがリアルで、ぐいぐい引き込まれました。 | ||||
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筆者が強調しているようにこれはフイクションである。然し、1984年ごろ日本中を震撼させ、その後事件解決を見ることなく時効となってしまった 「グリコ・森永事件」で公表されている事実を詳細に至るまで踏襲しており、著者自身が何らかの独自の取材や情報取得を通じて、極めて 「事実」に近いドキュメンタリーを書き上げたのではないかと思わせるほどの力作となっている。私も個人的にこの「グリ森事件」には大きな興味を 持って、いろいろな関連書物も読んできた。その中でもこの事件の背景と犯人像に一番近いものを描いたのは、高村薫の「レディジョーカー」 ではないか勝手に思っている。この「罪の声」で描かれる犯人像や背景もこの「レディ・ジョーカー」と重なる部分があると理解した。だが、 大きく異なるのは、この「罪の声」で作者が追いかけたのは、この犯罪で逃げおおせたはずの犯人たちも得るものは極めて少なかった という「推理」だけでなく、事件に無理やり引きずり込まれた「子供たち」の不幸な人生だ。「グリ森事件」で警察への連絡電話で子供が使われた という「事実」を基に、ここまでその少年少女たちの凄惨な人生を描くことに、この作品の大きなテーマを置いたことは絶賛に値する。この作品が 「事実」にどこまで近づいているのかという興味もさることながら、社会派エンターテインメント作品として一気に読ませるものに仕上がった理由は そこら辺にあると思っている。 | ||||
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何気なく手にとってみると、グリコ森永事件が題材。懐かしさと視点の面白さからついつい一気に読み終えてしまう。事件の詳細はあまり知らなかったが、細かく分析されていて、全編にわたって破綻なくねられたストーリーで、あたかも真実がそうだったのかと思わせてくれた。とても読み応えのある作品であり、いい時間を過ごさせてもらったと思う。事件に少しでも興味を持った方にオススメ。 | ||||
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グリコ森永事件が起こった頃、リアルタイムで報道に接していましたが、当時は新聞とテレビ、週刊誌くらいしか報道媒体がなく、警察が後からやっと出してくる「大本営発表」も、それが判明している事実の何%の内容なのか、一般市民には推察する術もなく、ただただ訳もわからず日本中が「食品に毒」という点で振り回された、という記憶しか残っていません。結局、犯人側がどういう形でどのくらい「儲けた」かもわからず、犯人グループがかなりの人数であったであろうに(おまけに子供まで関与していたにも関わらず)、最後まで誰一人として捕まることなく時効を迎えた、というのも、ある意味凡人の理解の範疇を超えた犯罪でした。 本書中で犯人グループの一人が、「あの時代だから出来た犯罪だ」という意味の発言をしていますが、確かに、街中に監視カメラが溢れ、人々がスマホや携帯を持ち歩いてあちらこちらで撮影した動画や画像をネットにアップし、ネットの掲示板にあれこれ書かれるようになった現代では、もう無理な話でしょう。 そんな昭和最後の大きな忘れ物のような事件を、事件に関する部分はほぼ史実通りのノンフィクションで、犯人にまつわる部分は作者のフィクションで、違和感なく融合させた本書は、リアルタイムでグリ森事件を知っていた人間にも、「本当にそういう構図だったのかも」と唸らせる力作です。特に、「犯人側に関与していた子供がいた」という視点で書かれていたのが、とても新鮮でした。 確かに、犯人側の子供達も不測の事態がない限り、まだ元気に生きている年頃だと思えば、今、本書をどのような気持ちで眺めているのでしょうか。 著者略歴によれば塩田さんは元新聞社勤務とのことで、さすがと言うべきか圧倒的な取材力や調査能力を感じます。まだお若いにもかかわらず、外連味のない真面目で簡潔な文章にも好感が持てます。 本書ももちろんお勧めですが、早くも次回作に期待しております。 | ||||
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グリコ・森永事件をモチーフにした小説ですが、下手なドキュメンタリーより真実に迫っている気がします。構成も展開も、実に見事で、圧巻です。新聞記者出身の作家は無数にいますが、記者の体験をうまく消化(昇華?)した成功例だと思います。やや冗長かなあと思うような風景描写も、文章のリズムがいいのか、すっきりと読み進められました。著者の作品を初めて手に取りましたが、これだけのものを書ける同世代がいるのか、と驚き、尊敬しました。自信をもっておすすめします。 | ||||
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グリコ森永事件に関し、著者の独自の視点から事件の真相を推察していく。 結論から言うと、とても面白かった。 個人的には事件に関し、あの有名なキツネ目の男の似顔絵を知っているという程度の知識しか持ち合わせていないにも関わらず、である。 物語は、偶然幼少時の自分自身の声が録音された脅迫テープを見つけてしまった主人公と、あるきっかけから事件を追う若手新聞記者との二者の視点から進行する。 前半から中盤にかけては、時系列順に実際の事件の概要の説明も盛り込まれる。 著者の新聞記者という経歴を生かしたものか、丹念に取材し、また、事件に関する地道な検証を真剣に重ねた形跡が伝わってきて引き込まれる。 そう、著者の本作にかける熱意というか、本気さがビシビシ伝わってきて、読後感がたまらなくよかった。 読み終えたとき、この事件の真相はきっとこの通りなのかもしれない、と自分自身の中で納得できるのである。 ぜひ色々な人に読んでほしいと思わせる力作。 この作品にとどまらず、今後の作品にも期待をしたい。 | ||||
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本作は「グリコ森永事件」を題材とした小説です。いまさらグリ森、しかも作者は30代。 まあちょっと手に取ってみるか、程度の感覚で読み始めたのですが…。 小説とは思えないほどのリアリティと迫力に圧倒されっぱなしでした。 物語は、グリ森事件を追う若手記者と、グリ森事件の「犯人の子ども」の二人の視点から展開していきます。 前者は資料や関係者の証言に徹底的に当たり、実際の事件についての解説の役割を担います。 後者の視点を通じてグリ森事件の犯人家族の「その後」を辿ることで、事件に巻き込まれてしまった人々の哀しみが描かれます。 いわば前者が「ノンフィクション」、後者が「フィクション」となっているのですが、新聞記者の丹念な取材によって 事件の詳細と「新たな疑惑・仮説」が描かれることで、後者の物語も「実際に、こうだったのではないか」と 思わせる説得力を帯びていきます。 結果、途中から「これは本当に小説なのか。著者は本当の事実に辿りついており、それを小説の形で 発表しているのではないか」とリアルと虚構の境界線が消滅します。最終的に記者は「核心」に辿りつくのですが、 それを読み終えたあとには、「グリ森事件とは、そういうことだったのか」という強烈な錯覚に襲われました。 筆者は元新聞記者とのこと。取材経験を活かして過去の資料や証言に徹底的に当たったのでしょう。 それゆえの推理力と説得力。この作者にしか書けないグリ森事件の「真実」がここにあります。 | ||||
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