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鹿の王
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【この小説が収録されている参考書籍】
鹿の王の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.01pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全347件 321~340 17/18ページ
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ファンタジーの世界にリアリティーを詰め込んだ作品 生物兵器テロや国同士の政治問題、民族間の問題、生きる事と死ぬ事 医療と政治と宗教の問題 ゴチャゴチャ絡み合ってるので子供向けではありません 子供に24を見せるようなものです 内容は破綻せずに中途半端に終わりました 最後の最後で投げやり感が出てモヤモヤする人もいると思います ファンタジーの中にリアリティーを入れてしまったので ヴァンの能力がピンとこなくなりました 文体は詩的でセンスがありファンタジー作品としてはとても良い作品でした 人間愛に満ちていて心温まる作品です 最後、ヴァンの覚悟の先にある結末が読みたかったのですけど・・・・ | ||||
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弱病素を体内に取りれ抗体をつくる現代のワクチン予防医学に通ずる興味あるモチーフを、人、動物、植物、自然と人間のかかわりの中で展開する読み応えのある小説 | ||||
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図書館で借りたのですが上巻の途中で疲れてしまい返却しました。 国名や地方の名前がいくつも出てくることや、人物名が似たような漢字(しかも特殊な読み方のため記憶し辛い)のため誰が誰なのか混乱し、何度か数ページ前に戻って読み返す必要がありました。 また、セリフの中で意図が読み取り難い言い回しがいくつかあり、それがストーリーにとって重要なことだったりして読み手の自分が置いてけぼりに。 全体として児童書にしては難解で、大人にとってはあっさりし過ぎのような気もします。 以上の理由で、どの人物にも感情移入が全くできず。 なおこの作者の著書はいくつか読んでおり、その他の著者の本も月に数冊のペースで読んでるので、本を読みなれていないわけではないと思いますが、この本は自分には合いませんでした。 | ||||
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『精霊の守り人』&『獣の奏者』両シリーズ、『弧笛のかなた』など夢中で読んだ後、待ってました〜!という新作。 期待を裏切らない面白さだった。ぐいぐい引き込まれる。やはり上橋作品。 出版元編集者への要望だが、前作品のように巻頭に地図や見取り図のような俯瞰ページがあると、有難いし親切かなと思った。読み始め、作品への引き込み度が増すと思う。 上橋作品の特有の世界観理解には(ファンは承知の上で読むが)、読みながら一緒にベースを作っていく作業が伴うので....。 自分は、上巻を読みながら、俯瞰図のような地図のようなものをノートに記し、それを時折見て、確認しながら読み進めた。 | ||||
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ゲームのような感覚で読み進めていましたが読み進めていくうちに現在社会の警鐘のように感じてすぐに上下完読してしまいました。はやり購入する際には上下一度に買うべきですね。 | ||||
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上橋菜穂子さんの待望の新刊ということで、無条件に飛びついた私でしたが、 読後感は「内容は懲りすぎ、エンディングは尻切れトンボ」です。専門的な 知識(医学、民族、地衣類など)が多すぎて、辻褄が合いすぎていて、途中 で飽きてしまったし、キャラクターの、特に最後のシカンの描写が尻切れト ンボになってしまったように感じました。シカンについてはもっと背景を描 写してほしかった。大衆性(特に子どもたちにも読んでもらいたい)も大事 だと思いますので、もう少し内容をシンプルにしてキャラクターの描写を増 やして欲しかった。ただ、この作品は映像化されると、凄く良い物ができる のではないかと期待させます。「名探偵コナン」が漫画だと全然面白くない のに、アニメだとめっちゃ面白いのと似てます。キャラクターが魅力的だし、 これは是非アニメーション化してほしい作品です。 | ||||
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上巻を読んで、戸惑っている人は、ぜひ、頑張って下巻までたどりついてほしい。 獣の奏者や守人のような派手さはないが、静かで、それでいて胸の奥からあたたかいものがこみ上げてくる素晴らしい物語だ。 私は涙が溢れて止まらなかった。 ひねくれているので、「泣ける!感動!」と書いてある本の帯はなんとなく避けてしまう。それは大切な人が亡くなる悲しみの涙が多いからだ。 しかし、この鹿の王を読んで、止めどなく溢れてくる涙は違う。 あるのはただ、わたしたちが生きるとは、死ぬとはどういうことなのか、冷酷なまでに冷たいその事実と、小さな希望の光である。生きるとは、こんなにも辛く、歓びに満ちているのかを見せつけられ、涙が止まらなくなるのだ。 生きることは苦しい。とてつもなく苦しいことだ。 しかし、もがき、苦しみながらそれでも前へ進むことで、見えてくる光がある。 この物語を主人公たちと駆け抜ける間、様々な、苦悩や絶望に出会う。しかし、物語を通して、必ずその向こうにある、小さな光が灯台のようにずっと照らしだしてくれている。 なんとあたたかい希望の物語だろう。 この物語は、今生きている自分自身を照らしている光にも気づかせてくれた。 壮大なファンタジーでありながら、日常から全くかけ離れたものではなく、読者に寄り添い、ともに生きてくれる物語だと思う。 出会えてよかった。そう思える本が、一生のうちに何冊あるのかわからないが、間違いなくそのうちの一冊だ。 ヴァンにユナがいて、サエがいて、トマたちがいて本当によかった。 ホッサルに、ミラルがいて、マコウカンがいて本当によかった。 ありがとう上橋さん。 | ||||
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複数の物語が並行し、半ばまで少し戻りつでしたが、後半戦からは全体像が理解できます | ||||
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少し上巻は戸惑いましたが下巻からは話がつながり一挙に読破です。楽しいでした | ||||
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医術のお話は難しかったですが、このお話の世界の中の病素がどうあるかだとか、医術がどうだとか、そんなことは読んですんなり入ってこなければ、何度も読み直して理解しようとする必要はないでしょう。 このお話の中にはもっともっと魅力的な部分な部分がたくさん詰まっています。 人や獣の生き方、生かされ方。思惑、裏、表、素。 登場する人や獣は、大きな存在に生き方を左右され翻弄されるばかりの非力な「ただの個の集団」であり、人の立場に立っても獣の立場に立ってもただただ哀しく、せつなく、やるせなくなり涙します。 しかし、ひとりひとり、一匹一匹として生きる中にはごく自然でしかしとてつもない暖かさ、強さ、愛があります。 人と人、人と動物、動物と動物の間に愛と絆がある。 それらを無情に壊すものがいる。 しかし、壊されてもなおまた築き上げるものがいる。 主人公のセリフとして最後に書かれた呼びかけ、または想い。 人も獣も、個としての思いはただそれだけのはずなのに。 読み終わって思い返すたびに哀しくて涙します。 そかし、その後で、やはり作品の中で描かれたとても強い暖かさで引き戻してもくれる作品でした。 守り人や奏者のような疾走感はなかったと思います。 しかしその分、これまでの作品よりも深く、穏やかな愛が描かれていたと思います。 | ||||
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(※以下は私の書評です。上下巻合わせたものです) 今年“小さな(児童文学の)ノーベル賞”といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した著者の渾身の一作。 3年間にわたり心血を注そがれたこの物語は大人向けの極上エンターテイメント・ファンタジーに仕上がった。大自然の中での人間と動物、そして極小生物までの生き物の関わりと戦いが描かれたこの小説は、壮大な叙事詩といえ、全ての読者を圧倒し大きな感動へといざなうに違いない。 中世の民族が入り混じる中央アジア、とりわけ韃靼あたりを想像させる巨大帝国が舞台であり、背景には征服された先住民族と征服した民族の間に火種が燻っている状況がある。 主人公は飛鹿(ピュイカ)という鹿を操る狩人・戦士ヴァンと天才医術師ホッサルの二人だ。 奴隷に落とされ、ヴァンが囚われていた岩塩鉱を犬が襲い囚人も奴隷監督も謎の病死をするが、ヴァンだけが生き残り、脱出することから物語の幕が開く。襲撃から免れ、生き残った奴隷賄婦の娘の幼児ユナを連れヴァンの生活や冒険が始まるが、その行く手には苦難が待ち受けている。一方、黒狼熱(ミツツアル)という致死的な病が発生する中でその治療法や薬の開発に乗り出すのがホッサルである。二人を中心に物語は進むが、やがて二人は出会うことになる。その展開はすべてにおいてワクワク・ドキドキさせ、自分の娘としてユナを愛しみ育てるヴァンの愛情と二人の親子愛も見どころになっている。 「鹿の王」とは群れを支配する者(鹿)を指すのでなく、群れの存続を支えて時には自分の命を張るほど尊ばれる者をいうが、「鹿の王」とヴァンが重ってしまい、結末が気になってしかたがなかった。 近頃は世界中が民族や国家の対立でキナ臭に包まれているが、この物語は国や民族のありかたにも一石を投じているように思う。いがみあうのではなく“共生”することが大切と訴えている。そして、それは国や民族の間だけのことではなく、人と病気(病原)の関係でも同じであることを黒狼熱治療で述べている。 この本は医学的要素が多く取り入れられているが、ウイルス学、免疫学をわかりやすく説明しているし、くすり、病気、症状などの命名が素晴らしい。 破格なスケールの展開力と豊かな想像力、表現力に感服させられた一作であった。オーストラリアの先住民・アボリジニの研究者でもあり、文化人類学者である著者でなくては書けない作品かもしれない。 1000ページを超える大作であったが、中だるみもなく一心不乱に読み終えた。最終100ページは朝4時に起床して読んだほどであった。読了後はしばし陶然として満足感に浸った。 | ||||
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(※以下は私の書評です。上下巻合わせたものです) 今年“小さな(児童文学の)ノーベル賞”といわれる国際アンデルセン賞作家賞を受賞した著者の渾身の一作。 3年間にわたり心血を注そがれたこの物語は大人向けの極上エンターテイメント・ファンタジーに仕上がった。大自然の中での人間と動物、そして極小生物までの生き物の関わりと戦いが描かれたこの小説は、壮大な叙事詩といえ、全ての読者を圧倒し大きな感動へといざなうに違いない。 中世の民族が入り混じる中央アジア、とりわけ韃靼あたりを想像させる巨大帝国が舞台であり、背景には征服された先住民族と征服した民族の間に火種が燻っている状況がある。 主人公は飛鹿(ピュイカ)という鹿を操る狩人・戦士ヴァンと天才医術師ホッサルの二人だ。 奴隷に落とされ、ヴァンが囚われていた岩塩鉱を犬が襲い囚人も奴隷監督も謎の病死をするが、ヴァンだけが生き残り、脱出することから物語の幕が開く。襲撃から免れ、生き残った奴隷賄婦の娘の幼児ユナを連れヴァンの生活や冒険が始まるが、その行く手には苦難が待ち受けている。一方、黒狼熱(ミツツアル)という致死的な病が発生する中でその治療法や薬の開発に乗り出すのがホッサルである。二人を中心に物語は進むが、やがて二人は出会うことになる。その展開はすべてにおいてワクワク・ドキドキさせ、自分の娘としてユナを愛しみ育てるヴァンの愛情と二人の親子愛も見どころになっている。 「鹿の王」とは群れを支配する者(鹿)を指すのでなく、群れの存続を支えて時には自分の命を張るほど尊ばれる者をいうが、「鹿の王」とヴァンが重ってしまい、結末が気になってしかたがなかった。 近頃は世界中が民族や国家の対立でキナ臭に包まれているが、この物語は国や民族のありかたにも一石を投じているように思う。いがみあうのではなく“共生”することが大切と訴えている。そして、それは国や民族の間だけのことではなく、人と病気(病原)の関係でも同じであることを黒狼熱治療で述べている。 この本は医学的要素が多く取り入れられているが、ウイルス学、免疫学をわかりやすく説明しているし、くすり、病気、症状などの命名が素晴らしい。 破格なスケールの展開力と豊かな想像力、表現力に感服させられた一作であった。オーストラリアの先住民・アボリジニの研究者でもあり、文化人類学者である著者でなくては書けない作品かもしれない。 1000ページを超える大作であったが、中だるみもなく一心不乱に読み終えた。最終100ページは朝4時に起床して読んだほどであった。読了後はしばし陶然として満足感に浸った。 | ||||
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上橋さんの作品は初めて読みました。、最初は入りにくかったが先に進むにつれて展開の面白さと登場人物が多いのに、一人ひとりの個性が丁寧に描かれている。まだ下巻に入ったばかりなので、この先が楽しみである。 | ||||
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上橋菜穂子さんの著書は、すべて読んでいます。どの物語からも、他の著者にはない大きなパワーをもらいます。そのパワーは、私の人生の一歩一歩を支えてくれます。「鹿の王」上下巻は、今までの菜穂子さんの著書の中でも、最高傑作だと思います。 「病に命を奪われることを諦めて良いのは、諦めて受け入れるほかに為すすべのない者だけだ。他者の命が奪われることを見過ごして良いのは、たすけるすべをもたぬ者だけだ。」(下巻本文より) もし、必要とされていて、自分ならば出来ることが目の前にあったら、自分ならば救うことが出来る命が腕の中にあったなら、自分自身の命を捨てても、私は私に出来ることをするだろうか。 それをすることができる才を、そういう心と体を、天から授かる者がいる。 それは、もしかしたら、あなたかも知れない。私かも知れない。ある意味で、すべての人なのかも知れない。 | ||||
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魂をゆすぶられるようにして物語を読んだのはいつぶりだろうか。著者は2014年国際アンデルセン賞受賞者。「大人を魅了する児童文学」という切り口で紹介されているテレビ番組を見て興味を持ち、初めて読んだが、まさに子供だけに読ませておくなんてもったいなさすぎる壮大な世界観の物語である。表現が平易なだけで、本書が伝えようとしている人間関係や感情の機微は、ある程度の年齢にならなければわからないものも多い。こういうと安っぽくなってしまうが、バイオアドベンチャー歴史ファンタジーともいえる上下巻あわせて1000ページを超える大作はこのうえなく贅沢な読書体験だった。 前述のテレビ番組で、作者は物語を書くときに大切にしていることとして、善悪を対立させて書かないことと、細部までリアリティにこだわることをあげていた。とりわけ本書は黒狼病という謎の病気をめぐる民族間攻防の話が核となっているので、細菌や免疫といった医学についての記述が多いが、すべて医師の監修を受けたというだけあって説得力がある。そしてこの黒狼病はいま世界で猛威をふるいつつあるエボラ熱を髣髴させるものがある。今回のエボラ熱禍の中心地である西アフリカでは先進国の医療支援が現地に入った初期には、「あそこに行けば殺される」というような噂がひろがって治療の妨げになったそうだが、本書では黒狼病が東乎瑠〈ツォル〉の属領となり、帝国から送り込まれた入植者たちによって文化伝統を踏みにじられたアカファ王国の「呪い」であると噂され、それがさまざまな憶測や謀略の温床となるさまが描かれている。また、東乎瑠〈ツォル〉から故郷を追われた恨みを燻らせ続け、徹底的な復讐を誓う火馬の民〈アファル・オマ〉の族長オーファンと彼に従う者たちにはイスラム国の戦士たちが重なる。主人公ヴァンは東乎瑠を相手に戦い破れ、岩塩鉱で奴隷とされていたが、脱出後に東乎瑠人に助けられ、匿われたことから帝国の民と心を通わせるようになり、オーファンのような狂信的な復讐心は抱いていない。本書のひとつのモチーフは「征服者と被征服者」であるが、そのような単純な構図では実は何も説明できないことをこの物語は思い出させてくれる。異民族を支配征服して帝国を広げ続ける東乎瑠の為政者にしても、残忍なリーダーと賢慮のリーダーの両者を細やかに描いている。また、支配者と被支配者のあいだの均衡をとりながらしたたかに生き延びる者たちの姿もここにはある。ガザ地区におけるパレスチナ人とイスラエル人の攻防が多くの血と何十年の外交努力によっても止まないのは、この紛争に巻き込まれてしまった人々には民族や宗教に還元できない個別の事情があるからだ。運命の糸が複雑に交差して織りなされる壮大な物語の濃淡は、善悪ではなく、ただそれぞれの価値観や人生の色である。 本書のもうひとつのテーマは「個と全体」であろう。主人公のヴァンは黒狼に噛まれてから、半仔〈ロチャイ〉の群れといるときに自分の内側と外側が「裏返って」犬たちと強烈な一体となるような感覚にしばしば襲われて戸惑うが、その異常な状態において「虚無」の感覚がなくなることに気づく。「あるのはただ、命の衝動だけだ」。人間が自我を持つ個となった瞬間、個は孤と同意になったが、その自我を捨てればまた個は世界とつながれる。仏教が瞑想を通じて目指す境地とヴァンの「裏返り」の状態は通じるものがある。ヴァンを悩ませる本能(人を噛みたい)と理性(噛んではいけない)のせめぎ合いは、自我を持ち、理性を持つに至った人間が負わされたくくびきのようである。キリスト教でいう原罪であろうか。作者はヴァンにこう言わせている。「身体も国も、ひとかたまりの何かであるような気がするが、実はそうではないのだろう。雑多な小さな命が寄り集まり、それぞれの命を生きながら、いつしか渾然一体となって、ひとつの大きな命をつないでいるだけなのだ」。 人間社会は地上を覆う複雑な生態系と人間の体内に存在する精巧な免疫系の間にたゆたう未熟な系にすぎない。その未発達な理性で自らを取り巻く外界=生態系と自らを生かしている内界=免疫系を支配しようとするのは傲慢なことである。異種交配して自らをより強く生まれ変わらせた植物や動物が人間にとって有害な存在になったからといってそれを責めることなどできようか。均衡を破ったのは人間の身の丈を超えて拡張しようとする自我であり、その報いは受けて当然である。「何が命をつなぎ、何が命をうばうのか、その因果の糸はあまりにも複雑で辿りようもない」。東乎瑠の奴隷となった母親から火馬の乳でつくった食べ物を与えられていた少女ユマは黒狼に噛まれても生き延び、火馬の乳は穢れた食べ物として口にしなかった東乎瑠の貴人は病に倒れたという皮肉。人間のあずかり知れぬところで人間の生き死にが決まるという不条理とそれに抗う人間という傲慢さと高貴さの入り混じった存在の輝きを描ききった。 タイトルとなっている「鹿の王」は「群れが危機に陥ったとき、己の命を張って群れを逃がす鹿……本当の意味で群れの存続を支える尊むべき者」を指す。物語の主人公ヴァンはその運命を背負わされた男だといってもいいが、彼の厳格な父親はその息子の運命を知ってか知らずかこんな言葉を残す。「そういうやつがいるから、生き延びる命もある。たすけられた者が、そいつに感謝するのは当たり前だが、そういうやつを、群れをたすける王だのなんだのと持ち上げる気もちの裏にあるものが、おれは大嫌いなのだ」。その言葉を思い出したヴァンは悟る。「自らを捨てて、他の命が命となることを助ける。それが、ただの必然――そういうふうに、生まれたから、そうなっただけ、ということもあるのだな、と」。絶対的なヒーローに対して作者が最後に送った言葉は賛辞でも慰撫でもなくこの一言であった。「才というのは残酷なものだ」。児童文学どころか人類文学といってもいい深度と強度を兼ね備えた作品である。 | ||||
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圧巻でした‼︎経験したことが無いような世界観に圧倒されました。ストーリーテリングは絶妙ですね(^^) | ||||
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リアルを求めた医療描写の為でしょうか? 上下巻の本にしては主要と思われる登場人物が多すぎたせいでしょうか? 期待が大きかった為に今回は消化不良… どの民族、どの立場の人物も魅力的な人ばかりだった為に、なんだかとっても残念です。 上下巻で終わるようなお話ではなかったように思います。 地図付・5巻位で各民族毎に焦点を当てた話で読みたかったなぁ。 個人的には一気に読む本ではないと思います・・・ ゆっくりじっくり想像し、考えて読む本ではないでしょうか? 一気読みなんかしたらもったいないです。 | ||||
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家族全員上橋さんの作品が大好きで、ほぼ全作品持っています。家にあることを知りつつ旅先で読みたくなって、同じ本が3冊もあったりします。この本が出た時飛びつきましたが、天と地の守り人に見られるような、吸い込まれるようなスピード感に欠け、なかなか進みません。今下巻の途中ですが、一旦中断して蒼路の旅人から守り人シリーズを読み返しています。どなたかもレビューに書いていましたが、一気に読もうと思わず、時々目を止めて、心に染み込んで来るのを待ちながらじっくり読むのが自分にはあっている作品と思っています。 | ||||
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最先端の医療(科学)と宗教の戒律、民族間の紛争・・・ 人間ドラマというより、社会問題がメインでしょうか。 私の理解力が追いつかず、読んだ後、物凄く疲れてしまいました。 やはり、こういった難しいテーマの作品より守り人シリーズのような躍動感と熱い想いがある作品のほうが好きです。 | ||||
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「精霊の守り人」からの上橋さんのファンですが、本作はとても読みにくかったです。 人物や土地名などが頭に入りづらく、ヴァンとホッサルの二人の主人公に、バルサに感じられたような一体感… 好感がなかなか持てませんでした。 また帯に「(児童文学の)国際アンデルセン賞<作家賞>受賞第一作」とあり、 上橋さんの以前のインタビューで児童文学へのこだわりが語られていたので、 てっきり本作も児童文学かと思い読み進めていましたが、児童文学なのか一般小説なのかどうかは不明です。 ただ一般小説だとしてもかなり複雑なお話ですし、漢字の読みが特殊なので、 読みにくさを軽減するために地図や勢力図やルビが欲しいな…と思いました。 一気読みは出来ず、寝オチすること数回。 ようやく辿り着いたあとがきを読んで、本編で感じたもやもやは晴れた…というか、 「よほど書きにくかったのだな。通りで読みにくかったわけだ。」 などなど納得はできましたが、出来る事なら本編だけですっきりしたかったです。 いろんなタイプの作家さんがおられるし、読者にもいろんな好みや感想があるでしょう。 本作には、今の私の方が合わなかったのかも… 登場人物の人間が出来すぎていて、そこかしこで語られる教訓の多さに「もういいよ」と感じてしまいました。 追記:上記のことを出版元の担当編集者が校正の際に気が付かなかったのか疑問です。 また、上橋さんに不必要な情報を削るなどの提案や指導ができなかったのか。 地図やルビなど、読みやすくするための工夫をしなかったのか。 「大人向け」=「読みにくい、性描写がある」ではないと思います。 上橋さんはKADOKAWAから執筆依頼があってから長い間書くことができず、「約束をしたからとにかく完成させなければ」と 物語に必要な勉強はしたけれど、知識が血となり肉となる前に書いてしまい、 担当編集者も「今出せば売れるから急げ」と、充分に校正しないまま世に送り出してしまったような感じがします。 どんな名作家でも全ての作品が当たりということは難しいということでしょう。 次回作はじっくり書いて頂きたいなと思います。 | ||||
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