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(短編集)

殺人出産



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【この小説が収録されている参考書籍】
殺人出産
殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産の評価: 3.48/5点 レビュー 80件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.48pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全48件 41~48 3/3ページ
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No.8:
(5pt)

設定に度肝抜かれた

4作品とも面白かったし、こういった設定を思いつく作者に感心です。有り得ないようで、もしかしたらなんて思っちゃう。改めて本って面白いなぁと思いました。
殺人出産Amazon書評・レビュー:殺人出産より
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No.7:
(4pt)

女性の感性では、近未来のSF的な設定の小説も、こんなにもさりげなく当たり前の私小説のように描かれるのかという発見ができたことが収穫

この作家は以前から、独特の切り口で作品を書いているという評判だったことと、最近純文学作家がディストピア小説を相次いで発表しているなかの一冊として「殺人出産」が紹介されていたので、興味を持って読んでみた。
期待外れだとか、こんなものだとか、いろいろとレビューが書かれていますが、どれもみななるほどと納得できるレビューだと思います。
但し、私が感じたのはまったく別のもの。
女性の視点で描くと、ディストピアの何とも言えない設定の物語が、こんなにもさりげなくあっけなく当たり前のように描かれるのだという発見が面白かった。
恐らく男性作家やSF作家などは、このような設定だと、もっと設定した世界観について詳しく伝え、読者に訴えかける内容になっていたと思う。
きっと、現代社会のなれの果ての一つのシナリオとして読んでほしいという思いや、作者の持つ価値観に基づいた社会への鋭い警鐘といった読後感をもたらす作品になるのが圧倒的多数ではなかろうか。
それほどに、近未来の社会のある一面を描いていると思う。
でも、作者はそれについて何かを訴えようとするのではなく、そのような社会になった時の一般のごくフツーの人々は、きっとこんな風になんとなく受け入れて生きて行ってしまうのだろうという、ある意味訴えるよりも恐ろしい描き方をして読者にポンと投げ出しているように思えた。
表題作以外もしかり。
現代の価値観や社会通念からどんなにかけ離れた社会が訪れようとも、市井の人々は特に大きな抵抗をすることもなく、
ただ何となく流されながら受け入れ、疑問や違和感を感じながらもそんな社会にじわじわと順応して生きていく。
結局、人ってそんなものなのだと、作者から突き付けられた気がする。
そういう意味では、この作品は恐ろしい作品だと思う。

次は、消滅世界を読んでみようと思う。
殺人出産Amazon書評・レビュー:殺人出産より
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No.6:
(4pt)

"同調性"を疑ってみるという点において、吉村萬壱氏「ボラード病」と並んで、2014年におけるサタイア文学の秀作

表題作の他、「トリプル」、「清潔な結婚」及び「余命」の3つの掌編を伴録した中短編集。3つの掌編の意匠も、社会の常識的価値観や"同調性"を疑ってみるという、表題作の意匠とほぼ同一なので、以下では表題作に関してのみの感想を。特に、「余命」に関しては、筒井の昔の短編に同一の意匠のものがあった気がする。

「十人産んだら一人殺しても良い(むしろ、一人殺すために十人産む、と言うべきか)」事が法律で許容・奨励されている近未来世界を描いた作品で、吉村萬壱氏「ボラード病」と並んで、2014年におけるサタイア文学の代表と言える。この殺人(=出産)の決意をした人を「産み人」と呼び、被害者を「死に人」と呼び、両者共に賞賛される。人口の減少化、動機不明の殺人事件の増加、生殖と快楽との境目の無さ等の現在の社会状況を背景に、この近未来世界における"同調性"問題を扱っている点が鋭いと共に、「ポラード病」の意匠との類似性を強く感じた。本作では、人間が生来(多かれ少なかれ)持つ殺人衝動を扱っている点も特徴ではあるが。

個人的には、「3.11」以降、世論が一方的に傾く傾向にあり、日本人の付和雷同性が際立つ中で、"同調性"への懐疑の念を呈しているという意味において、意義ある作品だと思う。ただし、少なくても十年は保ち続けられる"殺意"とは何かという掘り下げが浅い点、賞賛される「死に人」のために「産み人」を志願する人が存在する理由が曖昧な点、この近未来世界に"同調"している筈のヒロインが、一人の胎児を殺した事をキッカケに「産み人」を志願する点等、全体的に作品構造に整合性がない様にも見えたが。まあ、整合性よりも風刺性を重視した結果だと思うが。一読の価値がある秀作だと思う。
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No.5:
(4pt)

久々におもしろかった小説

なんでもかんでも読めるタイプではない自分には久々に一気に読めた
めったに小説よまない自分でも2時間ちょいで読めた

10人産めば一人殺していいという法律の中で生きる、ひと家族の物語です
あと短編2話付き、これについては漠然と終わってるので微妙でしたが、
本編はおもしろかったです
さくっと読みたい人にむいてます

短い新井素子バージョンや筒井康隆の軽いバージョン的なものが好きな人にはむいてます。
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No.4:
(4pt)

生と死と性の在り方を問う一冊

この作家さんの作品を読むのは初めてです。タイトルのインパクトに惹かれて読みました。

全体的にどの話も平坦というか抑揚のない感じ。設定も小中高生が考えそうな陳腐なものでした。
酷評ではありません。不思議なもので、この平坦さと陳腐さがいい感じに軽そうな作品に重み(後味の悪さ)を与えています。
どの話も生や死や性の在り方について書かれており、特に表題作の「殺人出産」は生・死・性の3つのテーマを盛り込み、移り変わる社会の秩序に翻弄される人々の生き方や心情が読みやすく表現されています。
ただ、どの話も設定が違うだけで同じ話を読んでいるような感覚になりました。(そういう作風なのかもしれませんが)
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No.3:
(5pt)

価値観が揺さぶられる作品! 読む価値あり。

「人を殺すのは悪いことだ」「男と女が一対一で付き合うのが恋愛だ」「自殺は良くないことだ」
こういった当たり前の価値観、いわゆる常識をゆさぶってくる作品です。

短編集です。タイトルの殺人出産は、「人を殺す」ことを賛美するわけではありませんが、今の世の中の問題を切々と訴えてきます。
「10人産んだら1人殺してもいい」。それを疑いもしない若い世代。私から見れば異様。しかし彼らには彼らの倫理観がある。
殺人出産の制度がない時代も、人は殺された。10人産んで1人産めば、人口は9人増える。命の価値をどうやってはかるのか?
この制度によって、生きることに価値を見出す人々。自殺は減少。しかし、人殺しを合法化するのは間違っていないか?

一度読んでみる価値はあると思います。命について考える機会になるかと。
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No.2:
(4pt)

少子化や未婚男女の増加、医療技術の進歩など、人類が抱える問題について、現状の価値観を打ち破る作品に挑戦した短編集

少子化や未婚男女の増加、医療技術の進歩など、人類が抱える問題について、現状の価値観を打ち破る作品に挑戦した短編集。

10人産めば1人殺してもいいという表題作の殺人出産制度がもっとも印象的だった。

何を常識と考えるかは人それぞれで、ある人にとっては残酷な世界でも、別の人にとっては優しい世界になる。人を殺す代わりに新たな命を生み出すという発想は新鮮で、人間の常識や正義などの価値観を考える話になっていて楽しめた。

他の短編集も発想自体はよく考えたなと思ったが、ページ数が少ないせいもあり、ちょっと物足りなかった。「清潔な結婚」は、どのような繁殖を行うのか楽しみにしていたのだが、特に意外性もなくて拍子抜けしてしまった。
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No.1:
(5pt)

なんて正しい世界に私たちは生きているのだろう

タイで24歳の日本人男性が代理出産で20人近くの子どもをもうけていたというニュースが物議をかもし、その後この男性が「死ぬまで毎年10人から15人の子どもをつくり続けたい」と話していたと報じられた。20歳から70歳まで生きたとして、750人の子どもが生まれる計算になる。現在日本の合計特殊出生率は1.43で今世紀半ばまでには人口が1億人を切るのは確実だ。この男の子どもはほとんどがタイから第3国に渡航しているようだが、彼がもし、人口の減りゆく日本に一人で750人もの子どもをもたらしたとしたら、国から感謝され、そのおこないは称賛されるだろうか? いまのところそうはなっていないが、彼を罰する法律もない。100年後はどうだろう? この小説は、私たちが今現在の価値観で「とんでもなく非常識」「道徳的にありえない」ようなことがすっかり日常の一部となった世界を淡々と描いている。いま私たちが住んでいるこの日本の価値基準では「事件」「犯罪」「禁忌」となることが、すっかりあたりまえになった世界がここにある。

男でも女でも、10人産めば人を1人殺してよいという制度は、「プラスマイナスで9人増える」ことの価値を、近代の道徳体系や法体系の上位にもってくるというラディカルな考え方だ。殺人者は「産み人」とたたえられ、その「産み人」に殺される「死に人」は、10人もの新たな命が生まれるための犠牲になってくれたということで感謝されながら逝く。1000年前の人間が人工授精や代理出産が珍しくもなくなり、技術的には人間のクローンさえつくれるようになった現代の世界を見たら、私たちがこの小説を読んだときのような衝撃を多かれ少なかれ感じるだろう。生きることと死ぬこと、生かすことと死ぬこと、生まれることと死ぬこと――動物社会ではそれは単なる自然の摂理だが、人間はそこに優劣や善悪を持ち込むことで社会の秩序を保ってきた。テクノロジーにより、生殖行為と性行為はすでに切り離されたが、本書の『トリプル』にあるように、恋愛と性行為も切り離され、『余命』にあるように老化と死も切り離されていったとき、これまでの社会通念はかたちを変えて行かざるを得ず、制度もそれに合わせて変わっていくのだろう。著者は「産み人」から生まれ、「産み人」となった主人公の姉、環(環という名前は、循環の環である)にこう言わせている。

「世界はいつも残酷です。残酷さの形が変わったというだけです。」

経済成長のためには人口維持は必須、若年人口が減り続けると社会保障制度が崩壊する、日本という国を消滅させてはならない――といったことが、少子化対策が必要な理由としていつもあげられる。それはそれで違和感もあるが、この小説に書かれているのは、そうした政治経済的な理屈を超えて「人口が増えていくこと」が絶対善とされ、「命を奪うものが、命造る役目を担う」ことが「人は人を殺してはならない」と同じくらいに説明不可能にして説明不必要な世界である。極端に価値観が転換した近未来の社会を、明日目が覚めたらこんな世界になっているかもしれないと思わせるようなぬるっとしたリアリズムで描ききった。本作品集には人類がこれから延々向き合っていくであろう答えのない問いの数々が高純度で詰まっている。カズオ・イシグロの『わたしを話さないで』を思い出した。
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