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漆黒の森



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【この小説が収録されている参考書籍】
漆黒の森 (創元推理文庫)

漆黒の森の評価: 3.50/5点 レビュー 8件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(5pt)

村の因習と利害、中世の森に迷い込んだよう

因習と利害と、中世の森に迷い込んでいるよう。人間の根源的な姿がのぞく。事件も村人もおぞましいが、そこにきれいな花のように、ある少年の姿が浮かび上がる。ペトラ・ブッシュ のデビュー作品。
モーリッツ主席警部とライターのハンナは互いの反目から親愛に変るが、それ以上の進展はなく、ほどよくつつましい。ドイツの閉ざされた村での殺人、村の因習により隠された秘密。終盤カラスの行列する祭りは、ひたひたとぶきみさが押し寄せる。日本の祭りを思わせるため、どこかなつかしくもある。プロットは巧みである。こういう村の因習集団のおそろしさを、いかにもドイツ的に描いた。キリスト教ではなくあくまで村の掟を守ること、その裏に村人の利害もからむ。しかし、都会ではありえない、とは言い切れまい。ペトラ・ブッシュの描いた世界がおそろしいのは、中世の森のようでありながら、現代とつながることだ。
漆黒の森 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:漆黒の森 (創元推理文庫)より
4488260039
No.3:
(4pt)

グリム童話のような陰惨さで、ミステリというより、ホラーに近いですよ。

いかにもドイツらしい重苦しい陰惨な連続殺人事件。 さすがはグリムの残酷童話の故郷である。 しかも、主人公の片方の女性編集者は頑固で意固地で、思い込んだらテコでも動かない、ドイツ女性の典型。 メルケル首相を思い浮かべてしまったほど。 グロテスクな事件を伝説に絡ませて起こすミステリの常道とも言えるデビュー作。 事件よりもコワイ人間関係。 楽しめるが、この主人公二人がカップルになることを想像すると、ますます怖くなる。
漆黒の森 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:漆黒の森 (創元推理文庫)より
4488260039
No.2:
(5pt)

森に閉ざされた村、口を閉ざす人々、心を閉じた少年

<ローズ・オジリア>
<知恵を絞った。この子を救う方法はまだある。この子の命を守ろう。>
謎めいたプロローグから始まる物語は、十年後、読者をさらに深い秘密の森の奥へと導く。

この「黒い森」からは、おとぎ話めいた雰囲気とおどろおどろしい空気があふれだしている。
森の中をトレッキング中だった女性編集者ハンナ・ブロックは偶然、女性の死体を発見する。

被害者の名はエリーザベト。旧姓をゾマーといい家族の住む村へ帰ってきたやさきだった。

発見者ハンナとフライブルグ刑事警察の警部モーリッツが村の捜査を始める。
<家族のあいだになにか微妙な力関係がある。>

森。鴉男が出ると子供たちが信じている場所へ、エリーザベトの弟ブルーノは恐れも抱かず分け入っていく。
自閉症でサヴァン症候群である彼が何のために。
<家族の大切な秘密が隠してあるかのようだ。>

村では過去にも赤ん坊が行方不明になっており、その十年後にエリーザベトは殺され、妊娠中の腹は切り裂かれ胎児が消えていたのだ。

<みんな疑心暗鬼だ。妻は夫を、息子は母親を、そしておそらく母親は誰も信用していない。>
ブルーノの母親、フリーダ・ゾマーは差別とあきらめに対して憎しみをこめて言う。
<障害児を持つということがどういうことかわかるか。息子が人と違うというそれだけの理由で避けられたり、家に招いてもらえなかったりする。>

自閉症とサヴァン症候群患者の内面を見事に描き出した作品としても本書は評価されるべきであり、ミステリとしてラストで<ローズ・オジリア>の意味が明かされるとき、必ずや読む者の心をうつ傑作である。

ネレ・ノイハウスとともに、ペトラ・ブッシュの全訳を望む。
漆黒の森 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:漆黒の森 (創元推理文庫)より
4488260039
No.1:
(4pt)

伝奇的な雰囲気と、鑑識技術と科学捜査とが巧みに織り交ぜられたドイツ・ミステリ

事件の舞台はドイツの小村です。
この小村の村長の一家や、幼なじみ、もろもろの村人たちの、閉鎖的な人間関係を背景に、凄惨な連続殺人事件が発生します。
 
この村では、無実の罪で死に追いやられた旅人の呪いにより、村人が連れ去られるという、不吉な言い伝えがあり、この呪いを鎮めるための村行事が行われています。ストーリーの展開は、この言い伝え・村行事、そして村内の人間関係とが巧みに、そして不気味に絡められ、ミステリの王道的な魅力があったと思います。
(クライマックスで、読み手に事件の真実が明かされるシーンも、ある意味、王道的な状況だったような気も...)
 
ストーリの背景におどろおどろしさを持たせつつも、警察の鑑識技術、科学捜査について、緻密に描かれており、調査、分析結果によって、捜査陣が事件の真相に近づいていくさまは大変説得力がありました。
 
事件の真相を追う主人公の男女2人、女性記者のハンナ・ブロックと「フライブルク刑事警察首席警部」のモーリッツ、操作の本流とマスコミという相容れるのが難しい立場での、捜査情報の駆け引き、そして、男女関係の駆け引き、ジレンマが、この主人公2人も本作に大きな魅力を加えていたと思います。
 
日本人サッカー選手がドイツ国内で活躍する中、ドイツ国内の都市名や風情を耳にする機会も多いこの頃ですので、本作のような「ドイツ・ミステリ」について、非常に親しみを感じることができると思います。
 
すでにドイツ国内では、この2人を主人公にしたシリーズ作品がすでにリリースされているということです。
本作のシリーズ作品について、また、魅力的なドイツ・ミステリが、今後さらに多く、邦訳版で出版されることを、楽しみにしたいと思います。
漆黒の森 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:漆黒の森 (創元推理文庫)より
4488260039

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