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密やかな結晶
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密やかな結晶の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.92pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全74件 41~60 3/4ページ
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逆らいようがないと表現するべきか 淡々と押し寄せる「消失」に飲み込まれてしまう。 一昨年亡くなった祖父を思い出して つらかった。 一昨年から今年までいろいろと失った自分にとっては読むタイミングを間違えた作品かもしれない。 | ||||
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これはものすごく面白かった。 勝手な感想だけど、 「あった物が無くなっていく、消えていく、忘れられていく寂しさ」 を、本当に上手に描写していると思う。 圧倒的暴力と、そこから身を守る術の描写の仕方は、アンネの日記をモチーフとしているだろうということは容易に想像がつくけれど、その設定の活かし方がものすごく好きだ。 つまり、ここで暴力の対象とされるものは、思い出や記憶なのだ。 奪い去られてしまうことに比べたら、「悲しみ」でさえ、それを無くしてしまいたくない、「悲しみ」にもアイデンティティはある…そんな気がしてくる。 ファンタジックな世界観を持ちながら、非常に普遍的なものが感じられる。 全く中だるみすることなく、最後まで読みきることができた。 結末がどうしても知りたくなる小説だった。 私は、「小川洋子の作品で何がオススメか」と聞かれたら、間違いなく本書を推す。 | ||||
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恐怖をあおるつもりはないのだろうが、消滅の危機・切迫感がまったくみられず、無表情にことが進行する。 愛くるしい犬をもてあそんだり、秘密警察以外、悪人をいっさい登場させないなど、どこかほのぼのしている。 メタ小説が現実と反転しており、ドMなのは作者の嗜好だろうか。 ※ 写真・自己紹介は無視して下さい | ||||
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消滅が進む事に、心の空洞が増える。 消滅してゆく島で、わたしは事態を受け入れながらも、常に哀しみに支配されている。 発狂する寸前の心みたいな緊迫感が作品から伝わり、意識を逸らす事が出来ない。 世の中に溢れる無駄は、心を豊かにしているのかもしれない。 が、消滅してゆく世界でわたしが日常生活をおざなりにせず生きる姿は、凛として美しく映る。 | ||||
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小川洋子ならではの透明感のある文体と、衝撃的なストーリーの組み合わせ。 どうなっていくのか、どきどきしながら読みました。 「アンネの日記」を思い出したり、カフカの「変身」を思い出したり。 「今の私の生活だって、戦争や災害や事故などで急に無くなることもある」と考えたりしました。 美しい心の優しさが伝わるような文体で、不条理について考えさせる小説でした。 | ||||
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久しぶりの小川さんです 船、香水、ハーモニカ、バラ、カレンダー、小説、左足 ある朝、目覚めると何かが消滅していることを感じる島民たち 彼らは消滅した物を燃やすか流すか、何かしらの方法で処分しなければなりません 「わたし」が小説の消滅で本を燃やすのですが、その物の記憶すら徐々に消えていくので処分に対する抵抗はほとんどありません 図書館が火に包まれるのを見ても大きく嘆くわけでもありません 小説家にとって小説が消える以上の哀しさはないと思うのですが何事もなく受け入れるのです そのような不幸があっていいものでしょうか 私は「わたし」の消滅より、小説の消滅とそれを受容れる「わたし」の様子が一番悲しかったです ところで、島には記憶を失くさない人々もいるのです 秘密警察は、記憶を保ち続けていると思われる人々の家に踏み込んだうえ強制連行します ナチスのユダヤ狩りを連想させますね 「わたし」の母親も、小説を持ちこむ会社の編集者も記憶が消えない人間でした 母親は数年前秘密警察に連行され遺体となって戻ってきました その後、父親も亡くなりひとり暮らしだった「わたし」は編集者を家の地下室に匿います やがてすべてが消えていくしかない物語のなか 唯一の救いは 長い期間潜伏生活を送り、全てが消滅した後、たったひとりで光り輝く外の世界へ出て行く編集者の姿でした 作中作 「わたし」の綴る倒錯のにおいのする官能的な状態を描いた小説も良かったです 1編の長編と1編の短編を読んだようです | ||||
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小川洋子の大ファンです。この本は買いそびれていたので、今回購入できてとても満足しています。 | ||||
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ひさびさに、小説を読んで、その楽しさに耽溺しました。 小川洋子は、同世代の作家だし、2004年本屋大賞の『博士の愛した数式』 は当時高校生だった娘といいよねぇ、盛り上がった作品でした。 寺尾聰と浅岡ルリ子が出ている映画も見に行って。 この『密やかな結晶』はかなり前に買って読めないでいました。 世界からいろいろなものが消滅していく物語に心がひるんでしまって。 でも、400pの小説を読み終わって、これは 世界に誇れる日本文学の傑作ではないだろうか、、、 と思います。 暴力シーンも、戦闘シーンもなく、圧倒的暴力とその暴力への 抵抗を描いていることが奇跡のように思えます。 小説家である20代と思われる女性が主人公、この”わたし”が 生きている世界では、少しずつ、ものが消滅していきます。 リボン、香水、鈴、オルゴール、エメラルド、ハーモニカ、鳥、、、、 物体としてのものがなくなるだけでなく、それらのものがあったという 記憶そのものが抹殺されていく世界です。 確かに、これらのものが無くても、人は、生きていける。けれど、 私達が生きる世界がいかに、これらの些細なものの甘美な記憶と 体験で生きているか、ということが痛いようにわかります。 些細なものの消滅の次には、地図、カレンダー、写真、小説、、、、と 消滅は続きます。 そんな世界に、消滅したものを記憶している一部の人がいます。 そういう人たちは、記憶狩りといって、秘密警察に連行され、消えていく。 主人公の私は、記憶を保持したままの自分の編集者を自分の 家の隠し部屋にかくまいます。 まるで、ナチスの時代のアンネ・フランクのように。 そう、この小説自体が、ナチスの、またスターリンの粛正時代、中国の 文革、いやいや、日本の治安維持法、そして、今年の原発事故までも 暗喩しているようです。 思想が目に見えないように、記憶というものも目に見えません。 記憶が消されるという人間そのものに対しての圧倒的暴力。 消滅は、ついに、人の体の部分にまで及んでいくのです。 左足、、、右腕、、まるでSFのような話の展開になっていきます。 主人公がかくまった”すべての記憶を保持している編集者”は 隠し部屋で生き抜きます。 この世界では、記憶を持ち続けることが”抵抗”であり、”生きる”ことなのです。 そして、この小説のなかのことは現実でもいえることだと気づくのです。 権力者は、庶民が考えること、被害を覚えていること、被害を語る ことを嫌いますよね。 もう一つ、作品のなかに主人公が書く、小説が一篇 埋め込まれています。 これがまた秀逸。信頼していた恋人に、声を奪われ、次は会話の手段で あるタイプライターを奪われ、紙もペンも奪われ、部屋に軟禁される 物語です。恋人の豹変、それなのに、思考することさえ奪われ、 逃げられないのです。この物語が、美しい静かな文章で描写される 恐ろしさに私は、凍り付きました。 それでいて、読後感は、私達の生きる世界が、たくさんの無駄に思える 行為によって、なりたっていることを痛切に感じさせるのです。 なにげないおしゃべり、紅茶を飲むこと、香水のにおいをかぐこと、 部屋に飾ってある写真、小説を読むこと、、、効率からはずれるこれらが あるから私達は生きていけるんだ、、、と思うのです。 | ||||
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小川ワールドの根底に流れる世界観はここにあった。 本作の主人公が書く小説で、男に少女が閉じ込められる話は薬指の標本そのものだ。 テーマを正面から扱った分、消化不良感や昇華されなかった感が否めない。ここで描かれたいくつかの作品がその後の作品で絶妙の切れ口を見せているともいえるけど。 この本を先に読んだ方が良かったのか、それともルーツをたどる的にこの作品に触れる形でよかったのか、今となってはわかりませんが。 うん。でも、やっぱりあと、もう一ひねり。 | ||||
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初めて小川洋子さんの本おもしろいと思った小説です。『余白の愛』を読んだときはまだ小川洋子さんの小説に慣れてなくて“なんだ、この本と”思ってしまいました・・・。 独特の世界観があり、はまれば病み付きかも・・・です。川上弘美さんと同じ位置にいます。私の感覚では。この本がおもしろいと思われた方は『薬指の標本』もご覧ください。とっても素敵ですよ!!フランスで映画化されたものです。さすがフランス!! | ||||
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個人では抗えない大きな力による不幸に黙って耐える人たち、 しかもその不幸の記憶もだんだん薄れてしまう。 そんな状態に流されている主人公が、大きな流れに逆らうことをする。 その動機は本人にもはっきりしないが、自分にとってもかなり危険なことをやり通してしまう。 けれども、自分自身は大きな流れに乗って、消えていくことを受け入れてしまう。 ファンタジーですが、人ごととは思えない不安も感じてしまいます。 悲しくて辛いことが、たんたんと過ぎていく。 せめてもの救いは、本人はつらさをそれほど感じることができない、というところです。 | ||||
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最近の著者の作風からすると、デビュー作の方により近い雰囲気。 ひんやりしていて、善意のものなのか悪意のものなのかわからない無機質な感じ。 しかし、無意識のうちにも善意の方へ傾こうとする読む者の心が、 最後の最後にはねつけられたような後味の悪さが残る。 意地悪な童話とでも呼べばいいのだろうか・・・ 物語が進むにしたがって様々なものをなくしていく島の人々に反比例して、 なくなっていったものを積み上げて物語の情報に置き換えて読み進めていく私たち読者。 でも結局はその両方が、ふくらみすぎた風船がパン!とはじけるように、最後には空っぽに なってしまった。 | ||||
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着想は素晴らしいと思いました。でも、暗いのです。読後感が非常に悪かったです。読んでいて次々と湧き上がる好奇心やストーリーの先の展開への期待が裏切られたような気がします。最悪だったのは解説。 | ||||
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初めて小川洋子さんの作品を読みました。 最初から主人公の置かれてる「消滅」のある世界という設定に驚きましたが 次に、その文章や選ぶ言葉の一つ一つがすごく優しくて美しくて驚きました。 残酷な情景を描いているのに、美しい絵を想像してしまうような感じで。緊迫した状況での登場人物達の優しさや愛情表現が、激情的ではないけど、とても心地よく感じます。読み終えて、悲し〜い気分になりましたが、「何かすごい小説読んじゃった」っていう興奮が残りました。 映画「博士の愛した数式」を見て本を手にした、ミーハー派ですが他にも小川洋子を読みたくなりました。 | ||||
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淡々と進む物語なので、1回入ってしまえば読みやすい。 忘れることの空しさと、覚えていることの儚さが見事に融合した淡白な作品だ。 所詮、人間は物体なのだということを思い知らされる。 何故か物凄く悲しくなる本だ。 | ||||
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ものすごく、淡々と物語は進んでいって、 なのにすごく感情移入して読んでしまうんです。なぜか。 まぶたより、あたたかい作品。おじいさんがだいすきでした。 消滅は悲しいはずなのに、 消滅してしまうと、それが悲しいことだということも忘れてしまって、 どんな消滅も受け入れて、生きていくけれど、 島は、そして自分の心は、スカスカで、空虚ばかり。 だけど、それを辛いとも感じることはないんです。 消滅とは、そういうこと。 消滅を受け入れて、全て忘れてしまう人と、 覚えている「異端」な人。 覚えている人は、忘れてしまう人を、かわいそうだと思います。 でも、忘れてしまう人にとっては、それは普通なことで、 消滅を辛いと思う、覚えている人がかわいそうだと思います。 「忘れてしまうこと」と、「覚えていること」 いったいどっちが幸せで、どっちが辛いんでしょう。 | ||||
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この物語は、全編をとおして流れている静かな雰囲気にまず引き込まれてしまいますが、人間であればどうしても持たずには生きていくことのできない感情の動きを、実に丁寧にすくい上げ、物語として「結晶」させた作品だと思います。消滅に立ち会った人々が、なぜ消滅の対象となったものたちへの記憶を、あんなにも徹底的に消そうとするのか。その心の動きは、例えば、心はある人に寄り添っていたくとも(恋心でも、友情でも)、状況がそれを許さず、自分自身を消していくようなつらい気持ちで忘れようとする。そんな心の動きに、非常によく似ていると思います。また、古い異国の童話のようなエピソードが随所で銀細工のようにキラリと光っていて、時々本棚から取り出して読んでしまう魅力的な作品です。10年前から小川洋子さんのファンですが、最も愛着の強い作品です。 | ||||
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著者の作品には名前があまり出てこない。 この作品にしても出てくるのはせいぜい「乾さん一家」(各人の名はあらわれない)とR氏くらいだ。 主人公にさえ名はない。 名前も持たない人々が、大切なものを次々と無くしながら、それを哀しむこともできず、生きている。 そして読者に問いかける。 「あなたは何もなくしていないの?」「なくしていることに気づいていないんじゃないの?」 読者は答える。 「そんなことはない。何もなくしてなんかいない。なくしていたとしても、それで不都合はない。」 | ||||
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小川洋子の作品の中で最も好きなもののひとつです。 記憶を奪われることの恐ろしさ、 そしてそれをもう思い出せないことの恐怖。 そんな極限状態を、小川洋子特有のしっとりとした美しい言葉たちで つづられています。 記憶をなくさないR氏を秘密警察から必死にかくまう私・・・ この情景はアンネフランクの日記を彷彿とさせます。 私はこれまでにいくつのものを忘れてしまったのだろう… 普段忘れることなんて特に気にしていないことだけれども、 とても悲しいことだと感じてしまいます | ||||
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小川洋子さんの作風は、物語を「紡ぎ出す」という表現がぴったりだと思います。 この作品も、小川さんらしい透明感や美しさに溢れていて、読み出すと一気に引き込まれる不思議な世界でした。 淡々と描き出される日常や、おじいさんとの交流には心温まり、まさに小川さんの魅力が満載・・・ その一方で、あまりにも報われない喪失、哀しみに満ちた世界観はこれまたまさに小川さんの魅力・・・あ~いい作品だったなぁとしみじみ思う一方、読まなきゃよかったとも思う作品でした。哀しい・・・ | ||||
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