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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年



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【この小説が収録されている参考書籍】
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年の評価: 3.41/5点 レビュー 1023件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.41pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1023件 21~40 2/52ページ
No.1003:
(4pt)

沙羅の正体

思いっきりネタバレです。

沙羅の正体がわからないまま、ハッピーエンドを期待したまま読み終えてしまいました。気になって、考察やレビューを見る中で、大変残念な気持ちになりましたが、それもそのはず、沙羅が何の関係もない女性で、どこの誰かもわからない男性と同時に付き合っていて、本当につくると愛し合うために巡礼を促した、というストーリーは、いささか無理のある解釈です。

いくつかの仮説を見ましたが、やはり沙羅はシロ(柚子)の姉であるというのが最も考えやすいように思います。一緒にいた男性は沙羅、柚子の実父であり、柚子を性的虐待の上、殺した犯人ということになります。

沙羅が黒幕、父親とぐるであッたと考えると、姉妹ともに父親と性的関係を持っており、沙羅は父親の関心を自分だけにむけてほしいために、父親をけしかけてシロを死においやった、というおぞましいストーリーにもなりえます。この場合、つくるに巡礼を促したのは、シロを殺したのは誰かわからないが、クロが逃げ出したことが引き金になっていることで、一定の納得感を、つくるに得させることが目的だったということになるでしょうか。

個人的希望というか、つくるの立場になってみると、妹を失い、守れなかったという罪の意識を持っている方が、まだ嬉しいです。この場合、父親に見せていた笑顔がどのような感情から来ているのか、という疑問にぶつかりますが、沙羅は自分自身を守るために、妹の件は知らないフリをして、父親には複雑な感情を抱きながらも、表面上は良い関係を築いているのかもしれません。そして、つくるを巡礼の旅に送り出したのは、実は自分自身が過去の凄惨な事件に意識的に蓋をしていて、それをつくるの手によって開けてほしい、そして、可能ならば断罪してほしい、という、これまた複雑な感情なのでしょう。

いずれにせよ、つくると沙羅が結ばれるという結末になるのは絶望的であり、そこまで書くとつくるが死んでしまうでしょうから、沙羅の人物像を謎のままにして、いくつかの可能性を残したまま話を終えたのでしょう。結論をはっきりさせないのは、春樹さんのいつものお決まりですよね。
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No.1002:
(3pt)

つくるの変化

再度 読みたくなり注文した
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No.1001:
(5pt)

長さも適切で、完成度が高く、初めて村上春樹を読むのは、この本からがお勧めです

村上春樹は最も成功した作家の一人だと思いますが、謎の設定、予想ができない展開、伏線を拾って収束は、さすがと思えます。内容は村上春樹らしいものですが、最もまとまって、没入する作品だと思います。長さも適切です。ただ、設定されたことの3から4割程度が回収されておらず、読後にちょっと不満が残るかもしれません。お勧め度は高いです。
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No.1000:
(4pt)

村上流、自己と過去の受容の物語?|『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

4、5年ぶりに本作を再読。これだけ経つと筋もあらかた忘れており、フレッシュな気分?で改めて楽しく読むことができました。

・・・
本作の主人公である多崎つくる。他の村上作品同様、非常に自制的・自省的、言葉に敏感、そして適度な運動を好むという、自分があこがれていた方向であり、勝手に自身を重ねて読んでいました笑

再読して改めて感じたのは、本作が生死・友情・グループ・信頼・過去の清算など、多くの人が遭遇する人生における困難に主人公を対峙させていることです。多くの人が日々の生活でこうした問いに悩みつつ、時に間違えたりしつつ自ら答えを出していると思います。読者は主人公を通じて、自分がするかもしれなかった経験、ないしは過去にしたような経験を追体験し、困難の克服についてのケーススタディを行い、適合する方はある種のカタルシスを得られるのではないか、と思いました。

あ、ちなみに筋についてはもう書きません。アマゾンか何かでご覧ください。筆力がないので筋を書いたらすべてネタばらしになりそうで。

・・・
ちなみに本作、名古屋ネタが多く、きっと名古屋出身の方は大いに喜ばれるのだろうなあと感じました。主人公含む5人グループの一人アオは名古屋のLexusの販売店で働いているとのことですが、おそらく桜通沿いの高岳の店だろうな、とか、クロの進学先の英文科が有名な私立女子大というのは椙山か金城か、とか、アオの勤務先から5kmほどのアカの事務所があるガラス張りのビルってのはやっぱりミッドランドじゃないかとか、きっと色々検証される方が多いのではと想像します。私も丁度出版当時、仕事で3、4年ほど仕事で名古屋に住んでいたのですが、小説の舞台に覚えのある場所を重ねて想像するのは予想外に楽しいものでした。

・・・
実はこの春、友人を亡くしました。中高一貫の男子校で、学年に当初は沢山いたバスケ部員で、しごきのような練習に6年耐えて最後に残った5人のうちの一人でした。チームはそこまで強くはなかったけど、卒業前は5人でバスケをやれば、喋らなくてもパスが来る、そういう無言の紐帯を感じたものです。今回、私の一時帰国にあわせて、残った4人でそいつの実家にいって手を合わせたその晩、偶然手に取ったのがこの本でした。まさかお前がこの本を読ませた?なんて逝った友人に問いかけた、そんな夏の読書でありました。
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No.999:
(4pt)

一種のミステリー小説

本文中、ご親切に「ワーグナーの指環」と書いてくれていて思わず笑ってしまった。村上春樹の小説は典拠となるテクストの集合体と言える。そのテクストを見つけ出し、把握しない限り、彼の作品を読めたとは言えないだろう。
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No.998:
(3pt)

梱包がコンパクトでした。

村上春樹さんの作品としてはお薦めです。
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No.997:
(5pt)

ハルキ流「カラマーゾフの兄弟」

「色彩をもたない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」に似ている。(多少、ネタバレあり、注意)

「カラマーゾフ」では最後の裁判で登場人物それぞれの深い思いや熟考が一気に明らかになるところがあるが、「多崎つくる」では、それが徐々に徐々に明らかにされている。
相似は当然、それだけではなくて、魂の奥深い部分を書こうとしているところも似ている。
どちらも殺人が起きているし、真犯人は逮捕されない。
多崎つくるはドミートリイでありアリョーシャだ。シロはイワンだろう。

「多崎つくる」には「悪霊」の存在が示唆され、ドストエフスキーには「悪霊」という著作がある。
そして、「多崎つくる」には大きな和解がある。「カラマーゾフ」には冷酷な判決がある。

繰り返しになるが、いろいろな登場人物が、1人の人間の性格、行動、考え方などについて考察を加え、意見を述べるという構造は、「カラマーゾフの兄弟」を想起させる。
ハルキが最も影響を受けた3作品のなかに選んでいた「カラマーゾフの兄弟」の影響がここで出てきたのかと嬉しくなる。
本作は、「カラマーゾフの兄弟」に大きな影響を受けたというハルキ流の「カラマーゾフの兄弟」だ。
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No.996:
(4pt)

とても面白かったけれど。

個人的には、村上春樹さんはエッセイは好きだけれど小説はちょっと苦手なタイプです。
でもこれはかなり入り込んで読めました。気になったことを先に。主人公と彼女の会話が、現代の30代独身男女とは思えない。この2人は「1970年代の30代男女」のような言葉遣いをして話すのが、ずっと違和感がありました。古臭い。2人が銀座の「喫茶店」で待ち合わせをして「ウェイトレス」が注文を取りに来たりする場面も。この時代感覚のズレは、村上さんもお歳をとられたのだなあと思わざるをえませんでした。
もう一つ。村上作品お約束の、生々しい性描写も、ここまで必要だろうか?と思いました。もっとあっさりとしてくれたら、気持ち良く読めるのになあ。
それ以外は、非常に巧みな、ちょっと巧みすぎるほどの文章の連続。さすがの力量。ところどころ、ちょっとかっこよすぎるのもファンにはたまらないのだろうと感じました。
文句が多くなってしまったけれど、読んで良かった一冊です。
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No.995:
(4pt)

正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる

2020年「一人称単数」以降
新作も出ないので過去作を読み返してます。

日本の作家ですと他に芥川龍之介や太宰治や宮沢賢治や三島由紀夫などが好きです。
これらの人にはもう新刊が出ない。

太宰治といえば
読んだ人はまるで自分のことが書かれているように感じると言われていますが
村上春樹さんにも同じことを感じます。
「これはまるで自分のことのようだ」

人に向けて差し出せるものも持ち合わせず
人をがっかりさせ
ある日まともな挨拶もなく姿を消してしまい
1人ぼっちになるよう運命づけられている
色彩とか個性に欠けた空っぽな多崎つくる
16年経っても心にまだ傷が残っている

振り返れば誰しもこのような別れを経験したことがあるのではないでしょうか?
…ないのかな?
私はあります。

あの素敵な時代が過ぎ去って
もう二度と戻ってこない
いろんな美しい可能性が
時の流れに吸い込まれて消えてしまった
もう後戻りはできないのだ

17歳の友達に会ってみたい気もします。
話せなかったこと
聞きたかったこと
解きたかった疑問や誤解

一緒に過ごせたかもしれない素晴らしい時間

色彩りと活気を与えてくれる名前に色がついているアカやアオやシロやクロ。

灰田の灰色は白と黒を混ぜて作り出される。
ピアノの白鍵と黒鍵。

「村上春樹小説あるある」不思議な謎キャラ
余命1か月のジャズ・ピアニスト 緑川

あと「村上春樹小説あるある」に
小説に出てくる音楽のCDが売れること。
本作ではリストの「巡礼の年」があります。

以下 ネタバレ 感想です

沙羅とはどうなったのかわからないままに終わってしまいました。

沙羅と手を繋いでいた中年の男は父親ってことはないですよね?まさかね

なんだかまた多崎つくるは1人になってしまうような気がします。

シロをレイ〇したり絞殺した人物も謎のままです。
「僕が柚木を殺したかもしれない」と言った多崎つくる。
暗い部屋の隅に立つ灰田みたいに。
「表の顔からは想像もできない裏の顔」

村上春樹さんが好きな作家の1人にあげる
レイモンド・チャンドラー。
その「大いなる眠り」が映画化される際に「あの運転手を殺したのは誰ですか?」
と質問した監督に対しチャンドラーは
「私が知るわけがない」と答えました。

村上春樹さんにもシロを殺したのは誰か
わからないのでしょうか?
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No.994:
(5pt)

狂うための期間

[印象に残った言葉]
・どんなに穏やかに整合的に見える人生にも、どこかで大きな破綻の時期があるようです。狂うための期間、と言ってもいいかもしれません。人間にはきっとそういう節目みたいなものが必要なのでしょう。

・嫉妬とはつくるか夢の中で理解した所では世界で最も絶望的な牢獄だった。なぜならそれは囚人が自らを閉じ込めた牢獄であるからだ。
すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ。

[感想]
色彩をテーマにした暗さの中に葛藤が見える本だった。表面ではなく内側に引っかかりを持ち悩む姿に共感を覚えた。
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No.993:
(4pt)

わかるとかなり面白いけど、ややハードルが高い

かなり遅れて読みました。
アマゾンレビューが話題になったのも知ってて、あまりにも大袈裟な心理描写や、昔の映画やドラマのようなシャレた?会話文には笑いながら読み進めました。
いろんな疑問や謎が残りながらも、ある程度のところまでしか理解できない状態で読み終えました。

推理小説的に読めるという考察ブログを見て、非常に納得がいきました。
小説だけで理解が出来ないのは少しハードルが高いように感じました。
同時に自分の頭の鈍さに悲しくなりましたが
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No.992:
(5pt)

良くも悪くも村上春樹らしい小説。細部の回収が出来てないが仕方ない。

細部の回収が足りない。白の殺人事件が未解決である。
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No.991:
(4pt)

失ってしまった時間を取り戻すために、自分自身の巡礼の旅に出る物語

◆カラフルで多感な高校生時代の仲間たちから・・・・

アカ・アオ・シロ・クロ・・・カラフルな名前を親友たちと、高校時代を過ごした主人公「多崎つくる」。
彼だけが、名前に色を持たない存在で、彼だけが高校卒業後地元を離れ東京へ出た。

仲の良い5人での生活は極めて居心地が良く、「可能な限り5人で一緒に行動する」という一つの共同体の様ですらあった。
揺りかごに包まれているような優しく、濃密で親密な時間を彼ら5人は過ごした。

そして、それは「つくる」が一人東京に出てからも続き、「つくる」は、地元に帰り、居心地の良い「共同体」に変える事を何よりの楽しみにしていた。

ある日、突然、理由も告げられず、「つくる」はその共同体からスポイルされた。
激しく拒絶され、4人の誰とも会ってもらえず、すべての接触を拒否される。

家族同様、家族以上のつながりの共同体の中にいた「つくる」は、居場所を失い、生きるすべまで失いかける。いや、実際に「生きるために必要な何か」を失ってしまう。

積極的に生きることを放棄し、死線をさまよい、ある種「廃人」の様になってしまう。

そして15年物歳月が流れる・・・

「つくる」には新しい恋人・・・になりつつある女性を得る。そして、その女性は「つくる」の中に「生きるために必要な何か」が欠けていることに気づき、それともう一度向き合うように強くすすめる。

欠けてしまった「生きるために必要な何か」・・・それを探すことに、どうしても積極的になれなかった「つくる」だったが、彼女の強いすすめに、15年ぶりに、彼ら4人に再開する「巡礼」の旅に出る・・・

ここでの巡礼とは、過去の「(名前に色はなくとも)カラフルに生き生きと生きていた自分」を取り戻す旅の比喩として用いられる。

そして「つくる」は、その巡礼の最後には、なんとフィンランドまで訪ねて行くことになる。

巡礼の中で、時間を取り戻すことはできず、結局失った「生きるために必要な何か」を取り戻すことは、永遠にできなくなってしまった事を知る。

欠けてしまったピースがあり、それは、もうどうしても取り戻せなくなってしまった。



赤・青・白・黒・・・この4色の他、緑と灰色の色を持つ人物が現れるのだが、この二人の物語の中での役割が、全くわからない。

伏線としても唐突で、登場する意味が私にはわからなかった。

おそらく、この二人の登場部分をサックリ切り落としてしまっても、この物語は成立するだろうと私は思う。

そうした、村上作品特有の腑に落ちない割り切れなさはあるのだけれども、全体としては非常に面白かった。

そして、ラストに向けて、フィンランドでの光景が映画のワンシーンの様だった。

かつての親密な「共同体」の中で、ひそかな恋が育まれ、15年の歳月を経て、それが一つの結実を迎えるシーンがある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人はもう一言も口をきかなった。
言葉はそこでは力を持たなかった。
動くことを忘れてしまった踊り手たちのように、彼らはただひっそりと抱き合い、時間の流れに身をゆだねた。

それは過去と現在と、そしておそらくは未来がいくらかまじりあった時間だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

重なり合う二人のシルエットは、北欧の冷たい空気の下、どこまでも透明感のある温もりを描き出している。

美しい、とても美しく流れる時間が切り取られている。



好き好きはあるだろうが、非常に面白かったし、私はこの作品が好きだ。
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No.990:
(5pt)

最高かよ

死ぬ前に忘れずに読んで欲しい本。
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No.989:
(3pt)

凡人はちゃんと結末を知りたい(笑)

4人の親友から唐突に絶縁を突きつけられた主人公。その傷を引きずったまま年月が過ぎ、新しい恋人の出現によって「巡礼」のきっかけを得る。「巡礼」を終えた彼はひとつの到達点に至る。超ざっくり言うとそんなお話です。

村上春樹の長編を映像にする企画は沢山出てるんじゃないかと思うんですが、あまり実現しないのはおそらく、筋だけ追っても文学作品にならないからなのでしょう。行間にあるものというか、描写の裏に隠されたものというか、明確な主題がとっても捉えづらい。先が気になってずんずん読んでしまうわりには、「あーおもしろかった」が意外とない。

思わせぶりなラストも嫌いではないんですけどね。なんか、いっつもそうなので。理解力のせいもあるんでしょうが、で? 結局どうなったの? ってつい思っちゃう。

ちなみに映像にもなった村上作品で私が好きなのは『東京奇譚集』所収の『ハナレイ・ベイ』です。母の思いが痛いほど伝わった。長編でもたまにはそういう読後感を味わいたいというのは凡人的願望でしょうか。
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No.988:
(5pt)

自分の個性について悩むすべての人へ。

登場人物は主人公以外、みんな名前に色をもち、自分にはない個性を持つ。大学時代、突如親友に縁を切られたことをきっかけに、これといって語ることのない人生を過ごしてきた。
平凡で孤独であることに劣等感を抱く中、同じく名前に色を持たない恋人の助けにより、疎遠になった親友たちを巡礼することで、自分には見えなかった自分の色、個性を見つけていく。
抽象的でわかりにくい描写が多いからこそ、主人公の抱える複雑な感情が垣間見えたし、誰もが同じような悩みを抱えてることに気づくことができた。
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No.987:
(5pt)

ヨーロッパ映画的結末。

だから結末には触れない。ただ、自らの意思と自らの力で死の淵を歩いてみたことのある人。同時に表向きはごくごく普通の人間であるかの様に見られながら、常に錐で心をキリキリと刺されるような孤立の痛みを抱え続けて生きている人。さらにニーチェの“深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ”との言葉が痛切にわかる人には共鳴できる作品であるかも知れない。
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No.986:
(4pt)

完全に理解するには繰り返し読んでの考察が必要

村上春樹の作品を初めて読みました。
不可解さと理不尽さ、孤独への恐怖と絶望など、人間の負の描写が巧みで思わず震えました。
そして私自身も過去の経験から、この主人公に共感するところが多いためか、どんどんのめり込んでいきました。

ただ、物語はすんなり頭に入ってくるのですが、その意味を理解するのがとても難しいです。
(ここから先、ネタバレを含みます。)

例えば灰田の存在や緑川の話など、主人公の巡礼とは無関係と思われる話をわざわざ入れているあたり、これらには何らかの意味があるのだと思いますが、私には読み解けませんでした。

また、人が殺されていることから、この作品にはミステリーの側面もあります。
たぶん犯人は登場人物の誰かなのでしょう。
そして沙羅の言動にもいくつか引っかかるところがあるので、彼女は一体何者なのかという謎もあります。

しかしこの作品はミステリーが主軸ではないので、最後まで犯人はわからないままです。
さらには沙羅の正体やつくるとの結末も描かれず、読者の想像に委ねるカタチで幕を閉じます。
この作品はつくるの巡礼の物語なので、あえてこのような結末にしているのかもしれません。
カタルシスもなくスッキリしないままなので、少々物足りなさを感じますが…。

この物語を完全に理解するには、何度も繰り返し読んでの考察が必要かと思います。
個人的には謎多き部分も含め、読み物としては結構楽しめたのですが、そう何度も繰り返し読んでまで真相を知りたくなる程の魅力は、残念ながらありませんでした。
考察が必要なことから、かなり人を選ぶ作品だと思います。
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No.985:
(5pt)

巡礼の、という表現こそピンとこなかったが

面白かった。
主人公の田崎つくるの孤独、どういうわけかはまり込んでしまった「トラブル」「闇」から抜け出したいという切実な感情と、実際に自分でどうにか動き出すという時が来るまでの気持ちの悪い苦しさが、よくわかった。
けれどもこういうのは、分かる人と分からない人と二分されるのだろうなと思った。
分からない、この本つまらない、という人のほうが明らかに幸せな人種なのである(嫌味ではなく)。

この小説では主人公、その友人たちの年齢などもあり、村上春樹ならではの性の表現も避けることはできないし、それなしでは伝えることができなかったと思う。
また、ほかの方のレビューを見てなるほどそうだなぁと理解したのだが、現在進行形の恋愛に関しては中途半端であろうと、そこはあまり重要ではない。

巡礼の、という表現はあまりピンとこなかったが、色彩をもたない、というのが、心臓に突きささるような、そこだけで泣いてしまいそうになった。反対を考えてみるとわかりやすいです。
色彩をもつ、ってはっきり言える人ってどんな人でしょう。
明らかな成功者でしょうか。
作者について、敗者としての一個人の視点をもって生きることを書く、そんな印象を持っています。
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No.984:
(2pt)

実は世の中、未解決がいっぱい

村上春樹2冊目です。
この人の本は合う、合わないがあるとは聞いていましたが、私は合わないですね。
筋書きとしては面白いのでどんどん読み進めていくのですが、最終的に私は嫌な予感しか残らなかったので、寝る前に読書するような人間には尚更向いていないと思います。

ただ実際に私達が生きている間には、人が何を考えているのかわからず、あの件はいったいどうなったんだろうということが多いので、ある意味現実的な話ではあるのかもしれません。
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