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エディプスの恋人



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エディプスの恋人の評価: 4.14/5点 レビュー 49件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.14pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全38件 21~38 2/2ページ
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No.18:
(5pt)

未収録作品

この全集、各巻に必ず幾つか単行本未収録作品が掲載されているというのがウリだったがこの巻では戯曲形式で文庫化された「12人の浮かれる男」のオリジナル小説版の収録である。それと厳密には未収録作品ではないが「バブリング創世記」の文庫版では読み手の参加すら強要するといういかにも筒井作品らしい発表形態の特殊さゆえオミットされた怪作「上下左右」も収録されている。加えて長編収録作品は七瀬シリーズの掉尾を飾る「エディプスの恋人」。正に全集トップクラスのお買い得のセレクションではあるまいか。そういえば本全集が完結して断筆期間を挟んで早二十有余年、発刊当時「これが最後の全集」などと持って回ったコピーを付けてしまった手前なかなか第二期、という空気にはなりにくかろうがそろそろ「虚航船団」以後の作品を収録した「増補改訂版」を出して貰いたいものだ。
筒井康隆全集〈19〉12人の浮かれる男.エディプスの恋人Amazon書評・レビュー:筒井康隆全集〈19〉12人の浮かれる男.エディプスの恋人より
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No.17:
(5pt)

著者の仕掛けた壮大な罠

一見すると前2作との連続性が薄いように感じますが、実は1作目からの七瀬の受難自体が本作への伏線だと言えます。本作は前2作での問題提起(なぜ超能力者が生まれたのか)の解決篇であるとともに、「神」の存在を描く作品でもあります。SF物では神の登場は定番ですが本作では「彼女」を分かりやすく、しかも圧倒的な存在として見事に描いています。これは前2作で運命に抗ってきた七瀬の視点から見るからこそ得られる感覚であり、我々は著者の壮大な罠にはまったともいえるわけです。
エディプスの恋人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:エディプスの恋人 (新潮文庫)より
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No.16:
(4pt)

テーマは凄いと思います

全体的には、「彼」こと智広と、智広を守っている大いなる「意思」の正体を巡る地道な調査描写が大半を占めているため、地味な印象を受けるかもしれません。ですが、題材は非常に興味深いものがあると思います。
「意思」に突き動かされるままに「愛し合わされてしまう」男女の、ある種の「悲恋」物語も面白いですが、今作の一番のテーマは「神の意思」と、それによって生じる「自己や世界の不確かさ」でしょう。
この世界は「神」によって創造され、あらゆる出来事は全て「神」の計らいによって起きているのだとすれば、我々人間は所詮、「神」の手の平で良いように踊らされているだけなのではないか? 「自己の意思」などというのは、見せかけの概念でしかないのではないか?
「自分」という存在や世界の曖昧さ、虚構性を、「神」という存在を追求する事で描いた、非常に絶望感の漂う物語です(暗いのが苦手な人はご注意下さい)。さすがに、作中のような極端な例はあり得ないとは思いますが。
非常に興味をそそられる内容ではありますが、「七瀬三部作」の完結編として見るには、設定に無理があるように思います。これだと、『家族八景』や『七瀬、再び』で積み重ねてきたものは何だったの? という疑問が芽生えてなりません。何でもアリな世界にしたせいで、シリーズ全体の整合性をブチ壊してしまってる感があります。
そして、個人的には七瀬と智広の触れ合いをもっとじっくり描いて欲しかったです……。智広だって、立場的にかなり重要な人物だと思うのに、意外と七瀬との絡みは少なめだったのが物足りなかったです。
※以下、少々ネタバレが入ってるため、未見の方はご注意下さい。

息子である智広のためなら何でもやる母親が「神」になっている訳ですが……一人の母親として、子供を思う気持ちは分かりますが、彼女の立場を考えると、いくらなんでも好き勝手やりすぎに思えます。そんな人が「神」になってしまって良いのか? という引っ掛かりがあります……。

※ネタバレ終了

何でもアリなSFものは受け入れられない、七瀬シリーズは前作「七瀬、再び」で終わっているべきだという人は抵抗を感じるかもしれません。テーマ自体は面白いので、前者の方は合理的なSFものはハナッから期待せず、テーマを味わうつもりで読んでみるか、後者の方は半パラレルワールドものだと思って試しに読んでみるぐらいの気持ちで手に取るのが妥当かもしれません{無論、無理に読めとは言いません(汗)}。
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No.15:
(5pt)

七瀬三部作完結

なんだか哲学的な話でした。

「家族八景」「七瀬ふたたび」の続編として読むと少し残念な感じもしますが、これはこれでいいのかも知れません。私は結構好きです。
前の二作で積み上げてきたものが最後の最後で崩壊していくのには、やられたなぁ、という感じがします。
筒井作品が好きな人ならきっと気に入るのではないでしょうか。
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No.14:
(4pt)

ネタばらし

ネタばらしをしている作品です。
手品ならそのネタ、アイドルならその裏側、舞台ならそのセットの裏側を見せているような作品です。
それはある意味作者の誠実さでもあるのだけれど。
同時に作品に描き出したキャラクターをペラペラの二次元にしたように感じます。
「意志」や「彼女」の存在は作中では只の仕掛けにしか過ぎないので(そう作中のアイドルのように)気にしなくても良いが(「彼」も仕掛けの一つにしか過ぎない、アイドルの隠し芸のように)。
その舞台を作中のキャラクターが喰い破ってこそ、例え文字で描かれたキャラクターであっても実在のものとなると思うので。
その舞台を見透かしながら最終的にその役どころを受け入れる七瀬が残念です(他のキャラクターをその舞台から退場させるのは彼女の誠実さであったのかもしれないが)。
そういう意味で実は、女性原理を全面に出しながら、実に父性的な作品です。
エディプスは父殺しをしたが、この作品は結局父殺しをしていないということです。
だからあくまでも「彼」の恋人は「彼女」であり、七瀬ではない。
父(作者)を殺せなかった(というかそもそもそこに問題意識すら持っていないのだが。だからあのような単純な選民的意識に浸れる)「彼」ではほんとうの意味で七瀬を恋人にすることはできない。
それは「彼」が七瀬の実在性を認識していないから。
そしてそれでありながら、七瀬が自己の実在性を放棄してしまう。
七瀬が魅力的なのは、どのような環境においても自己の実在性を決して放棄しようとしない、その意志であったと思います。
しかしそれを放棄してしまうのは、七瀬が「彼女」を受け入れたからなのでしょうか(それとも単に疲れたか、ある意味作者が)。
そういう意味では七瀬は「彼女」以上の母性を発揮したと言える。
しかし父殺しをしないエディプスの恋人になるという選択を七瀬がした時点で、七瀬はキャラクターとしては死んだと思います。
つまり虚構の存在に戻ってしまった。
確かに文字の上に書かれたものはキャラクターを含めて虚構です。
ですが、そのキャラクターがその虚構を喰い破ろうとするときに、確かに読者はそのキャラクターの実在を感じる。
そういう意味で、七瀬が最終的に自らの実在を放棄するような選択をした(もしくは作者がさせた)ことは残念ではある。
しかしそういう構造を包み隠さず見せた作者の意図はわかる。
しかしネタをネタとせず、それを本物にするには何が必要なのか。
そこまで踏み込めればほんとうの意味で「意志」と向かい合えるような気がする。
結局作品に食い殺されることを、作者が避けたということなのかもしれない。
七瀬というキャラクターのポテンシャルは作者を食い殺せる可能性があった。
そういう意味では七瀬自身がエディプスに成り得たかもしれないということです。
そしてその七瀬(今回の七瀬ではない)の恋人に成り得るのはどういった存在なのか。
そういったことも不遜ながら考えたりするのです。
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No.13:
(5pt)

アイドル性、最大活用

明らかに前2作とは毛色の違うこの作品だが
傑作としてのエディプスの恋人は前2作の存在なくしてありえない
キャラクター小説からの脱却ではなく肥大したアイドル性を昇華させる試みとさせうる技法には脱帽
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No.12:
(5pt)

ファンをSF的に叩きのめし、キャラクターを封印してしまった

あえて三部作の掉尾を飾る作品だと言い切ってしまおう。「家族八景」「七瀬ふたたび」という連作と主人公は同じなのだが、実は前作で話は終わっていたはずだからである。
 その謎解きがないままに、物語は大いなる意志に導かれ、否応なく甘美な恋の物語として進んでいく。そして最後に大いなる意志、すなわち母性のエゴイズムの思惑がすべて告白によって証され、その意志に翻弄される人々や自分の存在意義とは何か、という哲学的疑問に昇華していく。
 作家が創造した主人公を、意外な人気で引き継いで話を展開した結果、今度は読者の予想もしない地平に物語を引きずり出して、大いなるSF的な解決を見せることでファンを叩きのめし、七瀬を封印した作家快心のシリーズ最終作品と言えると思う。
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No.11:
(4pt)

本当のショック

確かに前の2作に比べると話の密度も面白さも低いんだけど…、ショック度・重要度ではトップですね。読んだ回数は圧倒的に「七瀬ふたたび」が多いんで星4つにしましたが。
他の方が書いてらっしゃる「神」の事や「宇宙」の事は割りとどうでもよくて、とにかくラスト。これ、筒井さんが常々言ってる「虚構性への挑戦」の、最初の成功作だと思います。
現実と虚構、本を読んでる自分はじゃあ一体どこにいるのか?この世界は何なのか?高校生の時に読んで、何が何だかわからなくなってナタで脳天かち割られた気持ちで、しばし呆然としました。翌日、学校へ向かった時も、それ以降も、ずっと現実感が無かった、この世界に。
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No.10:
(5pt)

才能を爆発させた一作

シリーズ一作目が好きな人には、この作品が苦手な人が多いようだ。私は小学生の時に読んで、恐怖のあまりトラウマになってしまった。それと同時に筒井作品を深く読むようになった記念碑的作品でもある。七瀬三部作は是非10代で読んで欲しい。
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No.9:
(4pt)

世界観の再構成

七瀬シリーズの3作目にして最終作。おそらくは「家族八景」だけで止めておくつもりだったのが、七瀬を魅力的に描き過ぎて、ついついシリーズ化してしまったのだろう。とは言っても、3作ともテーマは異なる。「家族八景」では七瀬を狂言回しにした様々な家族の人間模様。「七瀬ふたたび」では超能力合戦というSF的設定の中での人間の孤独感と焦燥感。そして、本作では世界観の再構成である。

本作の冒頭で、前作で死んだ筈の七瀬が生き返っている。そして、本作ではエスパーとしての七瀬はほとんど意味を持っていない。エスパー等無視できる程の巨大な存在"神"が登場するからである。この過程で、文章の流れが1行中で分岐したり、文字のポイント数が自在に変わったりと面白い趣向を見せてくれる。七瀬が感じる衝撃がうまく伝わってくる。やがて"神"の前身を知った時、"神"は卑近から彼方へと遠ざかる。そして、七瀬が初体験を迎える時、"神"は彼方から卑近へと降臨するのである。

七瀬シリーズの最後を飾るにふさわしい壮大なドラマが演じられる傑作。
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No.8:
(5pt)

人の心を読む悲しみ

人の心を読むことの、おもしろさと恐怖を、まざまざと実感させられる。愉快さを通り越した先に、恐れがある、恐れの先に悲しみがある、そんな主題を存分に描いている。人の心を読む主人公の作品、この作品以降、これを上回る作品が出ていないことが、この作品の評価を不動のものにしている。
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No.7:
(4pt)

壮大すぎ?

「家族八景」「七瀬ふたたび」から続く最終章で、最後は神の領域の話となります。この本でも七瀬は魅力的で、痛快なキャラで我々を楽しませてくれます。
でも正直、自分としては一作目「家族八景」における、狭い世界で物事が進んでいく雰囲気が好きでした。二作目三作目はいかにもSF的過ぎて、ある意味普通の筒井康隆作品っぽくてやや残念でした。一作目の雰囲気のまま続編を書いて欲しかった、と思うのは私だけではないと思います。
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No.6:
(5pt)

やがて宇宙へ

七瀬シリーズ第三弾、この本を読み始めると、どうやら七瀬は学校に勤めてる事がわかる。

「七瀬ふたたび」ではたしかホステスを生業にしていたのだが、今度は学校……。

登場人物もなにもかも全く繋がりがしばらく無いので、この物語がどうやって終わりに向かって行くのかとってもワクワクしたし、むしろ繋がらず全く別の物語になっているのかとも思った。

しかし、きちんと繋がっていました。

少々強引とも言える形ではありましたが、「家族八景」から「エディプスの恋人」に至るまで徐々に物語は現実性が薄れ、ここへ来て宇宙へ近づいて行くので、読んでいるこちらのテンションも上がっている理由なのであって、決して不自然ではないのだと思う。

きっと七瀬と言う魅力的な存在の物語の結末としては、こうなる他無かったのかもしれません。

しかし、今作品も七瀬の超能力者ゆえの苦悩は決して救われてはいなくて少し切ない気持ちになりました。

何処へ行ってももう宿命なんですね。
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No.5:
(5pt)

続編というものを否定する続編

『七瀬ふたたび』を読んで「この本に続編なんて作れるの?」という疑問を持った人は大勢いることでしょう。そんなあなたは正しいです。もちろん、小説の世界ではああいう作品に続編を作ることは決して不可能ではなく、むしろよく行われていることです。『シャーロック・ホームズの生還』のようなことをやればいいのです。しかし、そんなことは筒井康隆のプライド(あるいは単なるひねくれ根性?)が許しません。

『七瀬ふたたび』の続編であるはずの『エディプスの恋人』は3分の2くらいまで読み進めても、『七瀬ふたたび』のラストには全く触れられずに話が進みます。てっきり「この作品は時系列的な意味での続編じゃなくて、『七瀬ふたたび』よりも前の出来事を描いた番外編的なものなのかな?」と思ったくらいです。ところが、種明かしをされてみてびっくり仰天しました。なるほど、筒井康隆はこういう方法で続編の要望を寄せてくる読者や編集者に平手打ちを食わせたのですね。
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No.4:
(5pt)

懐かしいな

実は筒井作品の中でもベスト3位に好きですね、これ。まぁ、前作二つのようなストレートなエンタテイメントではなく
随分実験的です。彼の他作品と比べると、別にそうでもないけど
七瀬シリーズしか読んでない人はぶったまげるでしょ、これ。クレバーな小説の料理の仕方の他に、
この作品の個人的なツボは、筒井作品にしては珍しく主人公が我を忘れて恋してるところですね。あんな落ちがつくけど(笑)これくらい凝った道具立てを持ち出さないと、こういうの書かないんだなぁ~って感じで、嬉しいです。ちなみに私のベスト3は
1幻想の未来
2エディプスの恋人
3デマ・七瀬ふたたび  です。
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No.3:
(5pt)

これは三部作ではない。

火田七瀬を主人公とする三部作の最終作、ということになっている。だが、主人公の性格を除き、内容といい、小説の結構といい、共通項はほとんど見いだせない。「家族八景」を好きな人はもしかしたらこの作品は嫌いかも知れない。だが、私には三作中一番のできだと思える。エディトリアルのさまざまなテクニックを用いて、立体的に描こうとした作者の意欲、そして、かるがるとリアルに神の存在、遍在感を描き出した作者の力量に圧倒される。
以上、高校時代に感じたことである。子供にも読ませたい。
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No.2:
(5pt)

長く続くことが良いわけではない

筒井康隆と言う作家は強烈なまでに職業意識を持った、真の意味でのプロの作家である。それは断筆宣言を巡る一連の騒動でも明らかであるし、過去の作品を紐解けば理解できるはずである。純文学であろうと、SFであろうと、とにかく生半可では済まない問題作を出し続けているからだ。『エディプスの恋人』は既に読了した人間ならば分かることだが、七瀬シリーズの最終章に当たる作品である。続編にしてはあまりにも不可解な冒頭を皮切りに、尋常ではない「知的アクロバット」ともいうべき結末で全てが解明する。そして、この作品は続編の作る余地がない作品である。作者本人は書くはずもないし、もし他の人間が書いたとしてもそれは粗悪な「偽物」でしかない。『家族八景』『七瀬ふたたび』そしてこの!『エディプスの恋人』の三作品で完全なものとなっているからだ。これ以上不純な夾雑物を入れても価値を貶めるものでしかない。そして、こういうことを堂々とできる作家だからこそ、筒井康隆はここまでの実績を残しているのである。「七瀬シリーズ」に批判的な筒井ファンはそこのところをお忘れなく。
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No.1:
(5pt)

永遠のヒロイン

「家族八景」「七瀬ふたたび」を読んで面白かった人が、
「さぁ、三部作の最後だ!」と意気込んで読んだら、たしかに
「なんじゃこりゃ・・・!?」と思う作品に違いない。(^_^;)しかし、筒井康隆という作家は、火田七瀬というキャラクターが
超能力万能最強無敵ヒロインに祭り上げられ、求められるままに延々と
その続編を書くことを要求され(読者と編集社に、である)、
作中で彼女がその能力を加速させ、ついには死のうが何しようが
再び生き返ってきたり、しまいには神の如くに何でもできちゃう
どっかの安物アニメと五十歩百歩の存在になる前に、自らの手で彼女を
永遠に「火田七瀬」のままで終わらせたのである。筒井康隆という人は、そういう作家なのだ。だから別のレビュアーもおっしゃってているように、「七瀬ふたたび」までの
お話を期待しているお方は、読まない方がよいだろう。
それは作品や作家の作風に対する好みだから、「ぜったい読め」と強制した
ところで、ただ一介のレビュアーに過ぎない私にとって、一文の得にも
ならない。しかし反対に、筒井康隆という作家の底知れない奥深さを知ってみたい人、
断筆宣言にも見られる「へそ曲がり」の一面(笑)を確かめてみたい人や、
「この作家の頭の中って、いったいどうなってるの?」
というワクワクを感じてみたい人には、三部作を通してぜひ、お読みになる
ことをお勧めする。それを共有できる人がひとりでも増えることは、熱烈な筒井党の私にとって
このうえない悦びだから。
エディプスの恋人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:エディプスの恋人 (新潮文庫)より
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