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冬の生贄
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冬の生贄の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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スウェーデンの作家モンス・カッレントフトの6作目で、この作家の作品では日本初訳のようです。最近の北欧ミステリは女流作家が多いので、名前からこの作家も女性かと勘違いしたのですが男性でした。ただ、ヒロインの女性刑事モーリンの心理描写が的確なため、女性ファンから「夫より女性の気持ちをわかってくれる」というファンレターが多いのだと後書に書いてありました(笑)。この作品の前には冬、夏、秋、春の四季シリーズと5作目の「第5の季節」があるそうです。実際に読んでみてこの作品からスタートしてもさしつかえなかったですが、大変おもしろかったため、できれば過去の作品も翻訳してほしいと思いました。 北欧ミステリの共通項、不毛で暗く厳しい冬、精神のバランスを崩す人々、離婚、母子家庭、ばらばらの家族、心理的にねじれた人間関係、アルコール中毒、移民と差別、手厚いと見える社会福祉の裏側など、社会の負の上に物語りは成り立っています。残酷に殺され識別できないくらい顔が傷つけられ、雪の中、木に逆さにつるされた死体。被害者は暴力の耐えない家庭で育ち、精神的に問題があると思われていた生活保護者の青年。カルトの宗教的儀式か、または不良グループの気まぐれな暴力か、それとも何かうらみをかうような出来事があったのか・・・刑事モーリンとその相棒ゼケが舞台となる地方都市リンショーピンを駆け回ります。捜査の過程もスリル満点で、結末も納得がいくものでした。 上下巻の長い物語ですが、その長さを感じさせません。章の区切りには、殺された青年の魂が、風に吹かれて天上から見下ろしているかのような独白が挿入され、不思議な雰囲気をかもしだしています。心霊小説でもホラーでもなんでもなく、死者に意識も言葉もあるはずがないのですが、この独白のせいで、なにか文学のような香気も感じられ、暴力的、猟奇的な事件の凄惨さが和らいでいます。 また、印象的だったのは冬の描写です。「人間の住むところではない」という言葉が何度も出てきます。車から家まで、ほんの少しの距離を歩くだけでもつらい、味気ない砂を噛むような厳寒の風景は、日本人が思い浮かべるロマンチックで美しい冬景色とはかけ離れたものです。北欧の人々が夏と太陽を焦がれる気持ちは強烈だということですが、寒さの厳しい所で生まれ育つと、余計に暗い冬が疎ましく感じられるのかもしれません。 最近読んだ北欧ミステリの中では出色の出来でした。おすすめです。 | ||||
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北欧の厳しい寒さと事件の不気味さが相乗して薄気味悪さが迫ってきました | ||||
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長さを感じさせない展開。北欧の厳寒が伝わってきます。主人公が魅力的 | ||||
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北欧的な、とても暗い空や冷たい空気感が漂うサスペンスです。結果的には、うーーん、これで終わり?と思ってしまうのですが、アメリカ的なサスペンスに慣れてしまった目には、また新鮮で神秘的な読後感が残りました。 | ||||
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下巻と同様です。北欧ミステリーにどんどんはまっていくみたいです。 ただ、同作家の他の作品が翻訳されていないのが、少し残念です。 | ||||
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北欧ミステリーは、なじみが薄いのでより興味があります。上巻と一緒に一気に読み上げました。 | ||||
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モンス・カッレントフト著、久山葉子訳『冬の生贄』(創元推理文庫)はスウェーデンのミステリー小説である。上下巻の文庫本になっている。 舞台はリンショーピン市という地方都市である。主人公モーリン・フォッシュは女性刑事である。雪野原の木の枝に血だらけの死体がぶら下がっていたことが事件の始まりである。極寒の北欧の描写が具体的で、日本とは異なる風土の物語であると実感できる。死体と思われる人物の詩的なモノローグが挿入されており、幻想的である。 小説の醍醐味は与えられる情報が活字のみであることである。読者は文章から登場人物のイメージを想像する。これはビィジュアル面だけでなく、登場人物が自分にとって好感を抱ける人物か、反感を抱く人物かという想像も含まれる。その想像は十人十色であり、だからこそ小説のドラマ化やアニメ化で新鮮な驚きを感じたり、失望したりする。 『冬の生贄』では重要登場人物のイメージが中々固まらなかった。彼は極度の肥満体で、周囲の人から臭いと思われている。それを裏付ける食生活も描写される。問題は彼が作中で優しさ溢れる詩的なモノローグを語ることである。極度の肥満体という外見と詩的なモノローグの語り手が同一人物として想像できなかった。 作中では彼の不幸な生い立ちと孤独が強調され、同情を誘おうとする。それでも度を越えた肥満は自己管理のできない失格者という考えもある中で、生活保護で暮らしながら肥満体になる人物には好感が持てない。彼を爪弾きにした多くの住民と同じ気持ちになってしまう。 管見は生活保護受給者を怠け者とする見方には賛成しない。生存権は人権であり、生活保護バッシングに反対する。必要な人が生活保護を受給でき、ゼロゼロ物件などの貧困ビジネスが存在しない福祉国家スウェーデンを素晴らしいと考える。それでも生活保護を受給して肥満になる彼のような人物がいるならば生活保護バッシングが起きる背景は理解できる。 | ||||
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スウェーデンは福祉国家である。『冬の生贄』にも生活保護制度の手厚さが描写される。それは格差と貧困に苦しむ日本とは対照的である(林田力「『貧困にあえぐ国ニッポンと貧困をなくした国スウェーデン』の感想」JANJAN 2008年12月10日)。 また、『冬の生贄』に登場する警察署長は移民二世である。これも日本では考えられない。日本では外国人を排除するヘイトスピーチ・ヘイトデモが起きているレベルである(林田力『東急不動産係長脅迫電話逮捕事件』「東急不動産係長逮捕事件とネット右翼」)。 それでも『冬の生贄』ではスウェーデンも孤独や格差、差別など社会病理と無縁でないという現実を描いている。福祉国家スウェーデンも悩みのない楽園ではない。しかし、貧困ビジネスやブラック企業が横行する日本と異なり、生活ができていることは素晴らしい。衣食住が足りているからこそ、人間関係の闇に向き合えるとも言うこともできる。 実際、『冬の生贄』に描かれる社会病理は福祉国家故のものではなく、日本社会にも当てはまる。たとえば不良少年のエピソードである。このエピソードが物語の本筋に必要かは議論があるところで、物語をコンパクトにまとめるならば割愛することも選択肢になる。それでも大人の信頼を裏切り、嘘八百を並べる不良少年の救い難さは社会病理を描く上で効果的である。 日本でも関東連合などの元暴走族・ヤンキー集団の犯罪性が社会問題になっている。中学校などでのイジメも犯罪者のレベルであることが明らかになり、社会を震撼させた。『冬の生贄』では不良少年が更生して社会に受け入れられるというような古臭い筋書きにならないところにリアリティがある。スウェーデンでの刊行は2008年であるが、日本の社会病理を先取りする先進性がある。 | ||||
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本作はスウェーデンミステリー作家・モンス・カッレントフトの“女性刑事モーリン・フォシュ・シリーズ”の6作目である。例によって、北欧の美しい自然と生活感あふれるシングルマザー・モーリンの描写が読みどころでしょう。 凍てつく雪原の木に吊るされた血だらけ・傷だらけの裸の死体は、残忍な殺され方をされたようで、まるで何かへの“生贄”のようであった。スエーデンの地方都市リンショーピンを舞台に、難しい年頃のトーヴェを娘に持つバツイチ女性刑事・モーリンは凄惨な難事件を追う。リンチなのか生贄なのか、事件の背後には、被害者の生前の悲惨な日常や、それを取り巻く人たち、また、被害者の悲惨な過去と家族の愛憎劇が見え隠れする。また、シングルマザー・モーリンの家庭事情等も描かれている・・・娘トーヴェは、彼氏がいることも打ち明けてくれないし、モーリーン自身も別れた夫ヤンネに心を残しつつも、新聞記者と付き合っている。そんな家庭事情を引きずりながらモリーンの捜査は続く。一つ、そして、また一つと隠された出来事が明らかにされていく・・・それは・・・お読みください。上を読んだら次が気になり、上・下、一気読みでしょう〜。日本は春を迎えましたが、本書を読んでいるとスウェーデンの厳しい寒さを感じるような気がした。 | ||||
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本作はスウェーデンミステリー作家・モンス・カッレントフトの“女性刑事モーリン・フォシュ・シリーズ”の6作目である。例によって、北欧の美しい自然と生活感あふれるシングルマザー・モーリンの描写が読みどころでしょう。 凍てつく雪原の木に吊るされた血だらけ・傷だらけの裸の死体は、残忍な殺され方をされたようで、まるで何かへの“生贄”のようであった。スエーデンの地方都市リンショーピンを舞台に、難しい年頃のトーヴェを娘に持つバツイチ女性刑事・モーリンは凄惨な難事件を追う。リンチなのか生贄なのか、事件の背後には、被害者の生前の悲惨な日常や、それを取り巻く人たち、また、被害者の悲惨な過去と家族の愛憎劇が見え隠れする。また、シングルマザー・モーリンの家庭事情等も描かれている・・・娘トーヴェは、彼氏がいることも打ち明けてくれないし、モーリーン自身も別れた夫ヤンネに心を残しつつも、新聞記者と付き合っている。そんな家庭事情を引きずりながらモリーンの捜査は続く。一つ、そして、また一つと隠された出来事が明らかにされていく・・・それは・・・お読みください。上を読んだら次が気になり、上・下、一気読みでしょう〜。日本は春を迎えましたが、本書を読んでいるとスウェーデンの厳しい寒さを感じるような気がした。 | ||||
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