秋の城に死す
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秋の城に死すの総合評価:
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「冬の生贄」以来です。 | ||||
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モンス・カッレントフトの四季シリーズ3作目です。「冬の生贄」「天使の死んだ夏」に続き、女性刑事モーリン・フォシュとレギュラーメンバーであるリンショーピン警察署の個性的な刑事たちが活躍します。 伯爵家の城を買い取った弁護士が城を取り巻く堀で惨殺されているのがみつかります。弁護士にはいろいろとよくない噂があり、また、実は城を売りたくなかった伯爵家とトラブルになっていたという話も。伯爵とその長男長女は否定しますが、彼らが経済的に逼迫していたことは事実でした。モーリンたちは捜査を開始しますが、刑事たちはそれぞれに個々のプライベートな事情を抱えています。このあたりは先行の2作から続いているので、発表された順番に読んでいくのがいいと思います。モーリン自身も家庭がうまくいかず、前作の事件であわや最愛の娘を殺される寸前だったというトラウマから、生活や仕事に支障が出るくらいアルコール摂取が問題になりつつあります。 今回は貴族の城が舞台という北欧ミステリにしてはめずらしい設定のためか、全体にどこか格調高い雰囲気がありました。スウェーデンに今も貴族階級があるというのは初耳で驚きでした。あとがきによると、ずっと政治的に大きな力を持っていたものの、1866年に議会が二院制になりその力を失い、1975年には新たな貴族の称号授与がなくなり、今は以前からずっと続いている一族のみが貴族として扱われているそうです。特に特権というものはないそうですが、今も広大な地所を所有する一族もあり、やはり羨望の目で見られているそうです。 それにしても北欧ミステリを読んでいつも思うことですが、一般的な北欧のイメージである平等で自由で公平、洗練され、概して裕福な社会とはまるで違う様相が広がっていて驚きます。格差社会、移民差別、離婚、家庭内暴力、子供の虐待や女性蔑視などなど。この作品の登場人物たちもそういうゆがんだ環境で育たざるをえず、屈折した人物が多く、悪逆として描かれる人間も殺人を犯した犯人も、清く正しく明るく育つことができなかったという悲しみと孤独を感じます。 この作者は他の北欧ミステリにはない独特の作風で、そこで好き嫌いが分かれると思います。今までのシリーズ3作すべてで、殺された被害者が霊魂となって漂いながらあたりを見下ろしているような独白のシーンがあります。自分が死んでいるのを高みからみつめて、これまでの心情を吐露したり、過去の思い出を語ったり。なので読者は捜査する刑事たちにも知りえないことを、言わば神のような視点で知ってしまうわけで、このあたりが本格ミステリを求める方にはルール違反にうつったり、これではホラーじゃないかと取る方もいらっしゃるようです。 中心になっているのはあくまでも真相の解明なので、ミステリであり警察小説であると思います。が、人間の生き様により重点が置かれているといってもよく、そういう意味では文学に近いと感じます。普段から文学作品を読んでいる方には抵抗がないと思います。 このシリーズ、すでに4作目の「春」も、そして「第5の季節」というのも発表されていて、さらに四大元素である水、火、土、風へと続いているそうです。「春」は2010年作品のようですが、いまだに日本で翻訳されていないところをみると、これももしかして途中で翻訳がストップしてしまうのでしょうか。最近、海外ミステリーで、大きくヒットしない場合打ち切りになってしまうパターンがあまりにも多いので・・・。ファンのために、なんとか翻訳出版し続けてほしいと思います。続きが読みたいです。 | ||||
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