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死が最後にやってくる
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【この小説が収録されている参考書籍】
死が最後にやってくるの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.32pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全31件 1~20 1/2ページ
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紀元前2000年の古代エジプトを舞台にした、資産家の内紛を描いたミステリー。 外から見える性格と内に潜む本来の性格がストーリーの肝となるだけあって、登場人物はよく作り込まれており、とても丁寧に描かれています。 特に絶対君主である父親が妾を連れて帰ってきてからの、ギスギスした人間関係の描き方が恐ろしいほどリアルです。 その後は「そして誰もいなくなった」が頭をよぎるくらいに人がどんどん死んでいき、本来の性格が表に現れたり、人間関係に変化があったりするなど、愛憎入り乱れる人間ドラマが展開されます。 人物造形や心理描写に重きを置いた作品かと思うので、大仕掛けのトリックやどんでん返しといったものはありませんし、犯人は比較的わかりやすい方だと思います。 しかし、伏線の張り方や意味深長な台詞など全体的に質が高く、クリスティの他の名作と肩を並べても遜色ないほどの作品ではないでしょうか。 | ||||
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クリスティを読むのは35年ぶりである。 ませガキであった筆者、中学1年の夏から一年をかけて、日本における海外ミステリの古典の十傑(ぐらいにはなるでしょう?)ヴァン・ダイン、クリスティ、クイーンをあらかた読み切り… …すっかりミステリに自己免疫症状を起こすようになってしまった。 無理もない。 この時期の少年少女はすべからく多種多彩な栄養を脳にぶち込むべきで、大人のデザートともいうべきミステリはときどきぐらいで良かったのである。 (年代的には「十角館」とかP・D・ジェイムズ「死の味」が出たころではないかと思う←これも存在を一世代後に知った) 年齢的にも戦争やテロでどれだけの死体が量産されるかを知りはじめるお年頃である。 よくて数人、頑張っても10人(それだけの死体を量産すると、もはやミステリとか殺人事件の範疇を越える気がする)殺してもだからなんだ、と猪口才な知能が覚醒しはじめ、本来、ミステリは大人の余暇の現実逃避にワインでも片手にチビリチビリと読む体なのが本来の姿なのだろうが(どういうイメージだ)数人にこの世からお引き取り頂くのがせいぜいの殺人犯にこれはこれはお疲れ様ですと食傷し・・・・以後一世代、人生の主要部分からは完全にミステリを切り捨てた。 つまらぬアナフィラキシー反応を持ったものである。 人生の終わりを感じるようになり、もう好いか、ちょっと試しに残り時間で読んでみた、という感じで、クリスティを読むのは昭和末期以来だった(平成時代、クリスティを一冊も読まなかった) 35年ぶりのアガサ・クリスティは大人の作家として立ち現れた。 彼女は人類の心理の深層を観察する科学者としての目を持っていたのか、と10台ガキには到底気づかなった(気づくわけがない)事に瞠目した。 ・あの二人の喧嘩は本気ではなかったのよ。あの喧嘩を楽しんでいたんだわ。本気で相手を怒っていたのではないのよ。でも、今は違うわ。相手を本当に傷つけたいと思う気持で、そして喜んでるのよ。 ・墓には侵入者を惑わす扉がついているでしょう?自分でもそうした扉を作って自分も他人もそれを信じる。でも、現実がその人に迫って、真理の羽で触れると…本当の本性が現れるんです。やさしさとか従順で、バカを装った方が人生は暮らし好いのでそうしている。でも、危険という現実が彼女に迫ったので、その本質が現れたわけです、 ・お前にはまだほんとの楽しみが分かってない。恋愛におさらばして、愛だの憎しみを忘れて悠々としていることがどんなにいい気持か。ものを見物させてもらて、自分は痛痒も感じない。息子がきれいな娘にうつつを抜かしてその娘が家中を掻きまわす。笑いが止まらないよ。 ・墓所でただ座っているだけで安心できるの。自分で勝手に考えられるし、それで幸福なの。 お前は運がいいよ。皆が心の中で願う幸福を手に入れたんだ。私はこの年になって内側の世界があるって気づいたんだ。だけど手遅れだよ。 ・信じられないことなんか何もないよ。少なくともそれだは人生から学び取った。愚鈍な女は危険だよ。一つのことしか分からない。自分が見たいと思った事しか見ない。 だから毒を入れた酒を、こともあろうに夫が一緒に呑む可能性をまったく考えない。 ・男ってもの自体がなによ。子供を産ませるためだけのもの。民族の力は女にあるわ。 だから男なんか、子供が育つようになったらさっさと死ぬがいいわ。 結論のような嘆息が現れる。 ・なんであれ成長するんでしょう…優しく、賢く、偉大な方向に成長するのでない場合、逆に邪悪なものを育てるのかもしれません。 古代エジプトでならその宗教観ならさもあらんと思わせる、あっと驚く(つくづく私は単純な構造である)トリックがあり、そうした奇巧を組み合わせた時ミステリは成立するのだな、と納得。 反面、これまた七つの海に君臨した大英帝国人というべきか、中王国に向けて統一過程にある当時のエジプトを見て ・小手先の小才子ではない、大きなものがあります。私は一書記にすぎませんが、帳簿を通じて利益を越えた壮大な世界を見れますし、その大いなる流れがエジプトなのです。それを知る満足は総督よりも大きいと思う。 と、政治的センスの片鱗を見せたりもする。 イギリス式ユーモアにも噴いた。 ・なんらかの結論に到達するには、見通しを立てた上でないとね。 エサは頷いた。 そのときかつらがずりおち、彼女はじつに奇怪な面相になったが、誰一人笑おうとしなかった。 ・あいつら葬式費を一割も値上げしました。人件費がかさむからですと。 数が多いんだから割引すべきだよ。(孫の死が連続したあとの祖母のセリフがこれである) 解説子・深堀骨さんは「彼女はミステリを舐めて書いている。ミステリの約束事を殺人とトリックが必要なんでしょ、クリアしておけばいいんでしょ、そんなもんと思って書いている」といったような事を書いている(逐語ではなく大意の要約)「メドドダマ」と馬鹿にされているが、クリスティの真髄は人間関係を描きだす普遍的な小説の面白さにあるのだから、ミステリというジャンルの縛りは小手先なのだ、とクリスティ愛の充溢する名(迷?)解説だった。 アガサ・クリスティは大人の作家。大人の、余暇の楽しみの作家。 一世代後の再会だった。 といってこれから全作品を読破しようとは毛頭思わない。読むとしてもチビリチビリとつまみ食いで好いのである。それで好いではないか? 蛇足。 登場人物AとB、BとC、CとAでそれぞれの性格の別の面が現れ、まったく違う展開とケミストリーが生まれる。それで物語が進む。クリスティはこの方法を多用するが、きびきびと使いこなすので、世間話から生まれる世間知は密度につながり、関係性が物語の進路を渋滞させることがない。 クリスティを敬愛した乱歩賞作家であり、饒舌な大海小説「グイン・サーガ」を遺した栗本薫(1953-2009)は、この関係性の魔力に魅入られ、構成要素の膨張は、部分が巨大な連作の一部に変質し、全体はいくつかのまとまりを持つ巨大なサーガの一部に拡大するとともに分散され、全体の見通しの視野と、構想の統御を失った。 彼女は部分の膨張が全体を構成し、物語の筋が呑み込まれたフローベール後期の長編と同じく、クリスティが単一の長編の中で完結させた、関係性を人間性の剔出に使用するという目的に向けて収斂させず、描出そのものが小説を構成する方法論から逃れられなかったように思われる。 | ||||
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すごい感動はないが、読みやすくそしてやっぱり面白い。 | ||||
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アガサ・クリスティが好きで全巻持ってます。 買い始めて30年以上も経てばボロボロになる巻もあるわけで数冊買い替えです。 古き良き時代の定番ミステリーです。 | ||||
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古代エジプトの南王国が舞台のミステリ。王国の首都の墓地管理人をする一家の独裁的な寡夫の主が、北から若い愛妾を連れ帰ったことからはじまる事件。主の息子嫁たちは彼女をいびるが、それをネタに訴えられた主は息子たちと絶縁を宣告。息子や息子嫁達が呆然とする中、愛妾は不審死を遂げる。一旦は快哉を叫んだ彼らだが、次々に病や病死に襲われていき…あのテーマじゃないだろうか、だれかしら生き残るのか不安にすらさせるが、極めて合理的な解決が訪れる。 現代人読者の目からは犯人も手口も概ね見当がつくだろう(大体現代のミステリ読者は「誰が最も怪しくないか」を考える癖がある)が、合理精神とは無縁な世界に住む作中人物たちが大真面目に右往左往する心理はなかなか説得的だ。 | ||||
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古代エジプトの墓所守の家族内で起こる連続殺人事件。ポアロやマープルといったシリーズ探偵が登場しない歴史ミステリーで、作者としては異色の作品。 家長である父親、その子供の長男夫婦、次男夫婦、三男、夫を亡くして出戻りの長女、家長の年老いた母、雇われの管理人の男、古参の召使の女が主な登場人物。登場人物それぞれが個性的で、性格の違いによる書き分けが巧い。特に、家長の母親エサの慧眼ぶりと召使のへネットの嫌味な性格が印象的。 家業の墓所守や農地経営等で一族の生計を立ててきたが、父親が出張先から妾を連れて戻ってきたことで、微妙なバランスを保っていた家族内の関係に波乱が生じ、連続殺人へとつながっていく。 お互いの微妙な心理関係を織り込みながら進行していくストーリーは、なかなか読ませる。ヒロイン役の長女レニセンブがホリとカメニのどちらを選ぶのかというラブロマンスとしての興味もある。 犯人は1つだけトリックを使っているが、たいしたものではないし、読者が推理する要素はほとんどないので、ミステリーとしては平凡。 | ||||
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1990年9月13日、英国の老舗出版会社Hatchardsから、“Crime Companion”と題するペーパーバックが刊行されました。 副題に“100 Top Crime Novels of All Time Selected By The Crime Writers' Association”とあるように、これは英国推理作家協会が選んだ、100年に渡る英国推理小説のオールタイムベスト100。クリスティの著作からは3作品がランクインしています。 その3作というのは、『アクロイド殺し』(5位)、『そして誰もいなくなった』(19位)、そして残る一作がなんとこの『死が最後にやってくる』(83位)なのです。ポアロやマープルといった人気の探偵役が登場しないこともあり、クリスティ作品中でも、決して著名とはいえない作品ですが、本国のプロたちからはなかなかの評価を得ていることがわかります。 その理由は、やはりこの作品の歴史ミステリとしてのインパクトにあるといえるでしょう。何しろ、舞台となっているのは紀元前2000年という、途方もない大昔の、しかも英国から遠く離れたエジプトの地。いくら何でも、相当にアクロバテッィクな設定です。プロになればなるほど、その困難さが実感でき、翻って高評価へと繋がるのかもしれません。 しかし、歴史ミステリという冠に期待し過ぎると、意外に肩透かしを食らうかもしれません。というのは、クリスティ自身が作者のことば(5ページ)で「場所も年代も物語にとっては付随的なもので、どこの場所でいつ起こったとしても構わない」と言い切ってしまっているのです。 実際、読んでみると、古代エジプトの香りよりも、クリスティが得意とした大豪邸とそこに暮らす一家の中で起こる葛藤劇、という面を遙かに強く感じます。従って、歴史ドキュメンタリーや古代の謎解き番組から喚起される古代エジプトらしさを求めてしまうと、物足りなく感じてしまうかもしれません。 これはクリスティが歴史に無知だったせいではありません。後述(「物語の背景となる時代について」の項をご参照ください)するように、考古学者の夫を持つクリスティは、専門家から詳細な助言を得ており、この時代についてかなりの知識を持っていたことがわかります。しかし、それを徒に主軸にするのではなく、あくまで自身の作風のフレーバーとして用いるに留めています。この選択のおかげで、本作は歴史ミステリでありながら、その時代についての知識がまったくいらない、もっといえば、歴史に興味のない人でも読める内容になっているのです。 しかも、歴史という要素の代わりに、クリスティが前面に押し出してきたテーマは、実は謎解きですらありません。血の繋がった親子、あるいは夫婦でありながら、ひたすらいがみ合い、侮蔑し合い、愛情も敬慕もない家族。彼らは同じ屋根のもとで暮らす者たちが次々と殺されても、助け合おうとも、協力して犯人を探そうともしません。探偵役を振られた人物すら、証拠がないという理由で、自身の考えを懐にしまってしまいます。その結果、一家が事実上崩壊するほどの連続殺人を招いてしまうのです。 ここから受ける印象は、ミステリというよりも舞台の悲劇、それもシニカルでブラックジョークに富んだ、もしかしたら悲劇ではなく喜劇なのかと感じさせる英国ならではの悲劇でしょう。ヒロイン役である一家の末娘レニセンブと、その相談役である書記のホリを除いて、人間の負の面だけが強調されたキャラクターばかりで構成されているのも意図的な人物配置であると思われます。物語の舞台が屋敷とそのそばにある墓所など、かなり限定されていること、極端に長いセリフが多用されていることなども、舞台劇を想起させます。 しかも、クリスティはロマンスを巧みに取り込むことで、作品の本質である毒気を巧みに隠してしまっています。未亡人で子供もいるレニセンブがその割に世間知らずで純朴なところに、人によってはイラつきを覚えるかもしれませんが、ヒロインがこうした性格だからこそ、読者は感情移入できる対象を見出せるのです。もし、彼女までが黒い人間であったら、まったく雰囲気の違った作品になってしまっているでしょう。 1940年代中盤に入ると、クリスティはほとんど短編を書かなくなり、長編の発刊ペースも30年代に比べて減ってきます。そして、その関心も純粋に謎解きをメインにしたミステリよりも、ミステリと普通小説の融合、もっといえば、ミステリの要素を持った普通小説を書くことに注力するようになります。 『死が最後にやってくる』は、そうした志向の変化と、劇作家でもあったクリスティの側面、さらには考古学への興味などが結合して生み出された作品といえるでしょう。歴史ミステリでありながら、それを超越してしまった一作。クリスティ作品を少なくとも20作以上お読みなり、特に華々しい知名度を誇る1930年代の作品よりも、じっくりと人間を見つめた1950年代以降の作品がお好きな方には、きっと楽しめることと思います。 【物語の背景となる時代について】 本作は、紀元前2000年頃という大昔を舞台にしていますが、読むにあたって、歴史的素養や知識をまったく必要としません。 しかし、夫が考古学者であり、その方面に多くの知人を持っていたクリスティは、読者に負担をかけないように留意しながらも、歴史的なバックボーンを丁寧に構築しています。それは、屋敷の調度や装飾、そこに住む人たちの衣服や食事、彼らが従事している日常の仕事、さらには葬儀の様子まで、微に入り細を穿ちます。老齢のエサが自分の葬式の副葬品についてこと細かに語る部分(226ページ)などは、博物館などでそれらの現物を見たことがある人には、思わず頷きたくなることでしょう。 時代については、巻頭にある作者のことばや、作中(特に180ページ)の記述からすると、歴史学でいうエジプト第1中間期の末期に該当すると思われます。 古代エジプト王国は、当初ナイル川デルタ地帯(下エジプト)のメンフィスを中心に栄えます。ここは現在のエジプトアラブ共和国の首都、カイロの南に位置し、紀元前31世紀頃から紀元前22世紀中頃まで、1000年以上に渡って、王国の中心地となりました。中でも、第3王朝から第6王朝(番号は歴史学上便宜的に付けられている数字)の時代が最盛期で、古代エジプトというと誰もが思い浮かべるであろう、クフ王をはじめとするピラミッドが建設されたのもこの頃です。 しかし、第6王朝の途中から王権は衰退し、各地の諸侯が独立勢力となる分裂時代が訪れます。これがエジプト第1中間期です。 この時代、かつての先進地域であったメンフィスは秩序が崩壊し、大混乱に陥ったといわれます。代わって、下エジプトの中心は、ナイル川を遡ったネンネス(ヘラクレオポリス)を中心とする一帯に移り、ナイル川中流域のテーベを中心とする上エジプトを収めた支配者たちとの南北対立が起こります。両者は戦いを繰り返し、最終的に南が北を呑み込む形でエジプトの再統一が成されるのです。本作は、この再統一がまもなくなされる時期を背景としています。 また、舞台となるシーブズは、現在のルクソールにあたり、当時としては上エジプトの中心地にあります。エジプトの分裂を終わらせる、新興にして最強勢力の、そのもっとも繁栄している一帯です。巨額の財産を持つインホテプの屋敷がある場所として、相応しいといえるでしょう。 対して、インホテプ一家を崩壊に導くファム・ファタール、ノフレトや、ヒロインであるレニセンブと恋愛模様を繰り広げる書記のカメニはメンフィスの出身とされています。作中、ノフレトは悪女と呼ぶに相応しい性格と行動を見せていますが、かつて政治文化の中心であった都市で生まれながら、遠く離れた農村地域の金持ち中年男の妾となった境遇を考えると、その態度にも無理からぬ面が出てきます。また、カメニが恋の歌をしきりと歌ってレニセンブの気持ちを引き寄せていくのも、いかにも都人らしい文化的な態度だといえます。 歴史を材に取り、それについて調査、研究を重ねながら、それらについての蘊蓄を披瀝しない――ここには、クリスティの作家性、というよりもむしろ人間性がよく表れているといえるのではないでしょうか。 【補足データ】 初版:1944[昭和19]年10月(米版。英国版は1945年3月刊行) 初版刊行時点でのクリスティーの満年齢:54歳 長編として:全66作中の35作目 特定の探偵役が登場しない長編として:全17作中の9作目 | ||||
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本書は紀元前2千年のエジプトを舞台にした異色作であるが、作者自身が「どこの場所でいつ起こったとしても構わない」と記しているとおり、事件に警察の介入がない点を除けば、設定を現代に置き換えてもそれほど違和感はない。 一家の絶対君主であるインホテプと、その息子(と妻)たちと娘を巡る愛憎劇から発展するミステリーとして、同じ中東もので『死との約束』を最初に連想したが、インホテプの若い愛妾ノフレトの登場で愛憎劇の中心が彼女に移る。そして当然のごとくノフレトが死に、さらにその後に続くいくつもの死。 古代エジプトを舞台とした趣向は面白かったが、ミステリー作品としては『死との約束』と同レベルぐらいかなというところ。 作者作品を読みなれた読者であれば、誰が犯人か、またどのような仕掛けがあったのかおおよそ見当がつき、大きな期待はしない方が無難。 | ||||
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本書は紀元前2千年のエジプトを舞台にした異色作であるが、作者自身が「どこの場所でいつ起こったとしても構わない」と記しているとおり、事件に警察の介入がない点を除けば、設定を現代に置き換えてもそれほど違和感はない。 一家の絶対君主であるインホテプと、その息子(と妻)たちと娘を巡る愛憎劇から発展するミステリーとして、同じ中東もので『死との約束』を最初に連想したが、インホテプの若い愛妾ノフレトの登場で愛憎劇の中心が彼女に移る。そして当然のごとくノフレトが死に、さらにその後に続くいくつもの死。 古代エジプトを舞台とした趣向は面白かったが、ミステリー作品としては『死との約束』と同レベルぐらいかなというところ。 作者作品を読みなれた読者であれば、誰が犯人か、またどのような仕掛けがあったのかおおよそ見当がつき、大きな期待はしない方が無難。 | ||||
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アガサを、久しぶりに読んでみたくなり手に取った一冊。 紀元前2000年のエジプトが舞台という、数ある作品の中でも 異色の作品だというのに、何となく惹かれつつも 難しいかな…という疑念もあった。 しかし、読み始めるとそんな心配はどこかに。 紀元前の話と言えども、問題なく現代にも通じる人間関係。 家族間の愛憎劇を、旨くミステリーに仕込み、登場人物達が 次々に殺されて行く。 ポアロもミス・マープルも出ず、一体誰が謎を解くの? という面白みもあった。 誰もが犯人でありえて、誰もが被害者になりうる。 さて、犯人は一体誰? 至極単純なことを、この愛憎劇が複雑に絡まって盲点となる。 読み終えて、思ったのは いつの時代にも インホテブのようなワンマンな人 レニセンブのような、世間知らずの人 ヤーモスのような、一見優しくも 決断力の無い人 サティビィのような、口煩い ヒステリーの人 ソベクのように、豪快だけど単純な人 カイトのように従順だけど、自分の周りしか見えない人 イビイのように、自分を過大評価する 自惚れの強い人 ホリのように、思慮深き人 へネットのように、自己憐憫で他人の秘密をかぎまわる人 …等、色々な人がいる。果たして、自分はどの人に一番あてはまるのだろう? などと考えながら読んでみると、又面白い。 アガサの異色作、是非 一読あれ。 | ||||
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アガサを、久しぶりに読んでみたくなり手に取った一冊。 紀元前2000年のエジプトが舞台という、数ある作品の中でも 異色の作品だというのに、何となく惹かれつつも 難しいかな…という疑念もあった。 しかし、読み始めるとそんな心配はどこかに。 紀元前の話と言えども、問題なく現代にも通じる人間関係。 家族間の愛憎劇を、旨くミステリーに仕込み、登場人物達が 次々に殺されて行く。 ポアロもミス・マープルも出ず、一体誰が謎を解くの? という面白みもあった。 誰もが犯人でありえて、誰もが被害者になりうる。 さて、犯人は一体誰? 至極単純なことを、この愛憎劇が複雑に絡まって盲点となる。 読み終えて、思ったのは いつの時代にも インホテブのようなワンマンな人 レニセンブのような、世間知らずの人 ヤーモスのような、一見優しくも 決断力の無い人 サティビィのような、口煩い ヒステリーの人 ソベクのように、豪快だけど単純な人 カイトのように従順だけど、自分の周りしか見えない人 イビイのように、自分を過大評価する 自惚れの強い人 ホリのように、思慮深き人 へネットのように、自己憐憫で他人の秘密をかぎまわる人 …等、色々な人がいる。果たして、自分はどの人に一番あてはまるのだろう? などと考えながら読んでみると、又面白い。 アガサの異色作、是非 一読あれ。 | ||||
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歴史ミステリーですね。 エジプトを舞台にした まるで読者がその時代にタイムスリップしたかのように 錯覚せせる素敵な作品です。 ただし、ミステリーに関しては あまり重きは置いておらず 一族ならではの反目やいがみ合い そして、跡継ぎ問題など かなりリアルな描写で描いているので そちらをメインに読んでいったほうが楽しめるかも… もちろん最後はクリスティお決まりの ロマンスあふれるハッピーエンドです。 | ||||
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歴史ミステリーですね。 エジプトを舞台にした まるで読者がその時代にタイムスリップしたかのように 錯覚せせる素敵な作品です。 ただし、ミステリーに関しては あまり重きは置いておらず 一族ならではの反目やいがみ合い そして、跡継ぎ問題など かなりリアルな描写で描いているので そちらをメインに読んでいったほうが楽しめるかも… もちろん最後はクリスティお決まりの ロマンスあふれるハッピーエンドです。 | ||||
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初めのうちは、どこの文化の話かよくわからなかった。 現代のイギリスの話でないことは分った。 昔の話なので、生活の実感がわかなかった。 家族の間の関係は、資産がある家だとこういうふうなんだろうなと想像はついた。 登場人物でアガサクリスティに近いのは、 インホテプの娘レニセンブと インホテプの母エサかな思った。 「生きている妾と、死んだ妾では大違い」 といった、人生訓のような言葉があちこちに出てくる。 エジプト文化の人生訓なのか、 アガサクリスティの見聞きした人生訓なのははわかららなかった。 話の筋としては、へネットという召使の位置付けがよくわからなかった。 殺人者の正体も意外だった。 へネットの位置付けと殺人者の正体の2点を除けば、とても奥深い物語だと感じました。 エジプトへ行って,エジプト文化に触れてから再読したい。 | ||||
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初めのうちは、どこの文化の話かよくわからなかった。 現代のイギリスの話でないことは分った。 昔の話なので、生活の実感がわかなかった。 家族の間の関係は、資産がある家だとこういうふうなんだろうなと想像はついた。 登場人物でアガサクリスティに近いのは、 インホテプの娘レニセンブと インホテプの母エサかな思った。 「生きている妾と、死んだ妾では大違い」 といった、人生訓のような言葉があちこちに出てくる。 エジプト文化の人生訓なのか、 アガサクリスティの見聞きした人生訓なのははわかららなかった。 話の鈴としては、へネットという召使の位置付けがよくわからなかった。 殺人者の正体も以外だった。 へネットの位置付けと殺人者の正体の2点を除けば、とても奥深い物語だと感じました。 | ||||
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最初はここまで素晴らしいと思わなかった。 次々死んでいく。 アガサの作品の中でも容疑者がここまで次々死んでいくのは「そして誰もいなくなった」以外ないのではないか?と思う程だ。 謎を解くキーワードを見つければ犯人を見つけることは可能かもしれない。 「早すぎるのもよくないが、遅すぎるのもよくない」という意味深長な趣旨の言葉が何を意味するのかが最後にわかった。 スリルの点では申し分ない。アガサ作品でも最高ランクだと思う。 古代エジプトでも現代でも人間というものは変わらないものだと思った。 | ||||
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最初はここまで素晴らしいと思わなかった。 次々死んでいく。 アガサの作品の中でも容疑者がここまで次々死んでいくのは「そして誰もいなくなった」以外ないのではないか?と思う程だ。 謎を解くキーワードを見つければ犯人を見つけることは可能かもしれない。 「早すぎるのもよくないが、遅すぎるのもよくない」という意味深長な趣旨の言葉が何を意味するのかが最後にわかった。 スリルの点では申し分ない。アガサ作品でも最高ランクだと思う。 古代エジプトでも現代でも人間というものは変わらないものだと思った。 | ||||
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中東シリーズ「ナイルに死す」「メソポタミアの殺人」なんかよりはるかにスゴイ作品。 古代エジプトが舞台になっているものの、全然違和感なく読める。 「そして誰もいなくなった」のように族長イムホテップの家族が一人また一人死んでいく。 おいおい家族がみんな死ぬのでは?と読んでいく方が心配したほど。犯人は誰?そして狙いは何?勘のいい人なら犯人は見つけられると思う10人中3人くらいでしょうか?私は捕り逃してしましました。私が犯人と思った人が次々殺されたのには参りました。 主人公の女性が殺されることはまさかあるまいと思いつつハラハラ読みました。 「殺人は容易だ」の女性と同じで危機一髪!最後の臨場感は「殺人は容易だ」似てましたね。 あまり知られていない作品ですが、中東ものでは一押しです!臨場感、意外性、描写、展開力も最高です。表面と心の奥の違いがここまで犯人探しを難しくさせてたのはさすが。 犯人を見つけた読者にはアガサ自身が感心するでしょうね。再度読み返せば犯人が怪しさNo1である事がわかるのですが・・・笑。とにかく秀作です。お勧めします!時間の無駄には決してなりません。 | ||||
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中東シリーズ「ナイルに死す」「メソポタミアの殺人」なんかよりはるかにスゴイ作品。 古代エジプトが舞台になっているものの、全然違和感なく読める。 「そして誰もいなくなった」のように族長イムホテップの家族が一人また一人死んでいく。 おいおい家族がみんな死ぬのでは?と読んでいく方が心配したほど。犯人は誰?そして狙いは何?勘のいい人なら犯人は見つけられると思う10人中3人くらいでしょうか?私は捕り逃してしましました。私が犯人と思った人が次々殺されたのには参りました。 主人公の女性が殺されることはまさかあるまいと思いつつハラハラ読みました。 「殺人は容易だ」の女性と同じで危機一髪!最後の臨場感は「殺人は容易だ」似てましたね。 あまり知られていない作品ですが、中東ものでは一押しです!臨場感、意外性、描写、展開力も最高です。表面と心の奥の違いがここまで犯人探しを難しくさせてたのはさすが。 犯人を見つけた読者にはアガサ自身が感心するでしょうね。再度読み返せば犯人が怪しさNo1である事がわかるのですが・・・笑。とにかく秀作です。お勧めします!時間の無駄には決してなりません。 | ||||
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紀元前二千年のエジプトを舞台にした異色ミステリ。部族の中で起こる連続殺人事件を扱ったものだが、クリスティ特有のストーリー展開と伏線の張り方の巧さで読ませる。題名は聖書からの引用か。 舞台からして、単に奇を衒った作品かと思うと良い意味で裏切られる。殺人の容疑者候補が次々と殺されていき、読む者を飽きさせない。犯人候補が見当たらないまま、異空間の中を読む者も彷徨う中で、クリスティはちゃんと伏線を張ってあるのである。それも四千年経っても変らない男女関係の中に。真相が明らかになった際、苦笑せずにはおれなかった。 指紋などの近代的捜査が不可能な状況で、登場人物達の行動と心理の描写のみで現代ミステリと変らぬ水準の作品を創りあげるクリスティの力量を再確認させる秀作。 | ||||
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