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冷血



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【この小説が収録されている参考書籍】
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冷血の評価: 3.76/5点 レビュー 109件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全75件 41~60 3/4ページ
No.35:
(4pt)

上巻を繰り返す

上下巻に別れているのが非常に解りやすい構成だと思いました。。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.34:
(4pt)

改めて 冷血と云う事を考えさせられた作品

高村薫女史の小説で 初めて犯人に同情してしまいました。 幸せな家庭を一晩の内に破壊するのですが、この時点では世田谷の事件を思わせられましたが、犯人の供述の中で次第に明かされて行く二人の生い立ち。

特に戸田の家庭環境が哀切に満ちており、其れだから犯罪が許される訳では無いのですが、取り調べの時点で常に戸惑はさせられる警察と検察、そして弁護士達。それでも事件性が冷酷なだけに、無理矢理作り上げる調書。

どれも、仕方無い事とは云え二人の犯人を取り巻く人間達の中にも冷血は存在する…。其れは、犯罪事件が起こる度に私の中にも有る冷血を考えさせられる事なのだと、思い知らされる小説でした。合田と犯人の手紙のやり取りが唯一の救いですね。

「太陽を曳く馬」で私には難解過ぎて読み終わるまで苦労したので、暫く女史の作品から遠のいて居りましたが、此の作品を読んで本当に良かったと思っています。「レディジョーカー」より以上に読後感の哀切さが胸に残り、結構辛いです。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.33:
(4pt)

ひさびさの高村薫

久々の高村作品をよみました。男性作家のような強いプロット。ただし、犯罪者心理を合田が追っているが、今ひとつ意図が理解できませんでした。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.32:
(5pt)

高村薫の緻密で迫力ある描写は健在。中年になり人間的に深みを増した合田雄一郎との再会

文字通り血も凍るような殺人現場の描写には戦慄を覚え、犯罪小説としてのサスペンスは十分楽しめるが、いかに凶悪な犯罪を犯そうとも人間の心の奥には何があるのかを執拗に追及する作者の姿勢に心打たれる。人間の善と悪とは何であるか。国家が人を死刑にするのは正しいのか。前作の「太陽が曳く馬」ほど難解ではないが、人間とは何であるかという永遠のテーマを作者はこの「冷血」でも追及し続けている。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.31:
(5pt)

犯罪小説の女王、復活!!

上下巻を3日で読了。
高村薫の作品をぶっ通しで読めるというのは、
本好きにとって最高の贅沢の一つだ。

女性の一人称で始まる冒頭にまずびっくり。
しかも13才の中学生。いきなりの変化球に戸惑うも、
身中に不穏な熱を抱えた高村印の男どもの登場でひと安心。
本の装丁からして『レディ・ジョーカー』を意識しているし、
「珍しくはないが、専門の人でないとちょっと思いつかない凶器」
というのは『マークスの山』を思わせる。
これは久々のエンタメ路線か、と思いきやさにあらず。

上巻後半、2人の犯人はあっさりと逮捕され、凶器の特定をめぐるサスペンスもなし。
下巻では、犯人や数多くの参考人の供述が延々と積み重ねられ、
作者は事件について、誰もが求めるわかりやすく整合性のとれた
「ストーリー」ではなく、本当の意味での「真相」を描き出そうとする。

警察の事件捜査という過程の中で、一家四人殺害という
一つの事件が、膨大な量の言葉に置き換えられていく。
しかし、それは現実という無辺のパズルを、言葉というピースで埋めようとする
虚しい試みでしかなく、われわれにできるのは、この非情で理不尽な
現実というものの前に絶望し、それをただ受け入れることだけ。
毎度のこととはいえあまりにも重い。ずっしりとした読後感が残る。

それでも、難解な警察用語が頻出し、「おれはいったい何を読んでいるんだ?」
と自問の一つもしたくなるような分厚い本に、他のことをほっぽり出してまで読み耽ってしまうのは、
この世界における言葉の本質的な不毛さを認識しつつ、
それでもなお、この現実を描き出すための言葉を探し求め、
迷い、苦悩する作者の真摯な姿がそこにあるからだろう。

にしても、『ゴーストオブマーズ』とはね。
まさか高村薫の作品にこの名前が出てくるとは。
高村さん観たのかな? 観たんだろうなあ。取材はガチでやる人だから。
神妙な顔であのB級おバカSFを観てる高村さん。なんだか微笑ましいな。

ところで今『マークスの山』読んでるんだけど、
合田雄一朗がヤンチャで笑える。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.30:
(5pt)

美品、良品

何度も読み返すと考え、
新品に近いと思われる商品を選択しました。
購入商品は、その通りでした。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.29:
(5pt)

美品

何度も読み返すと考え、新品に近いと思われる商品を選択しました。
購入商品は、その通りでした。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.28:
(4pt)

フィクションの限界

この作家のディティールへのこだわりは有名な話だが、この作品に関して言えば、その辺りは全く気にならなかった。というのもいわゆる”福澤家3部作”で折れかかったこの作家への期待が、全く違う形で報われたからだ。僕らはエレベーターの扉や拳銃や原発の構造に関して、この作家の作風として捉えて結構楽しんできたが、永田町や禅寺の修行やましてや宗教なんかに関しては、まったく作家の自恣としか受け取れなかった。自己満足ならご免蒙る、そう思って3作目は(彼女の作品としては初めて)投げ出してしまった。しかしこの作品でまったく違っていた。

久しぶりの合田刑事との再会に最初は戸惑いもあったが、さて、あのスニーカーの若者もこのような形で老熟していくのかと、自分の来し方と比べたりもした。しかしそれは第2章以後のことで、第1章の少女の日記で綴られる被害者家族の日常と、犯人たちの行き当たりばったりの行動、その比較はどういえばいいのだろう、つまり社会が表現を躊躇している格差やタブー、いやもっと深い部分にある現代社会に内在する不条理というものを感じざるを得ない。そしてそれを際立たせているのが前述のディティールである。初潮を迎えた13歳の少女の心の動き、青年期を終えた若者の行き場のない怒り、どのように表現しようにも陳腐に陥るが、それに加えて特筆すべきは情景に関する記述である。池袋の五差路に始まって国道16号線沿い、パチスロ、サウナ、ファミレス、全ての描写がこの作品の本質になっているように思われる。荘厳であろうが軽薄であろうが、秩序であろうが無秩序であろうが、この作家はどんなものであれ文字で表現できないものは無いと、僕は首根っこを押さえつけられた思いがしたものだ。そしてその本質が”ブレイド”、”パリ・テキサス”、”利根川図誌”というように具体化され、一気に身近なものとなる。

そういった意味で、この作品は上下巻でまったく違った作風であるとも言える。下巻一冊を占める第3章は、いわば上巻の各章で抽出されたテーマを固化している密室劇のようなものだ。この作家の好む人間の多面性や冷厳な司法制度、そして死生観といったものを合田刑事の思索を借りて作家は表現するが、ここで僕はふとフィクションの限界を感じた。これは世田谷で起きたあの事件ではなく作家の頭で創造された虚構なのだと思うとき、慄然とした思いになる。あなたは本当に人の営みを見てきたのですか、軽々しい思いは無かったですか?と問いたくなる。とくに分娩時低酸素症の医療過誤の被害者との面談では、あの”午後4時の男”のような不快感を感じざるを得なかった。

”否”という記述があるがこれは文字通り”いな”と読むより”いや”程度で捉えたほうがいいと思う。どちらにしても彼のカポーティは”冷血”以後、作家としての輝きが著しく失せていったが、彼女にはそうなって欲しくない想いだ。誰も予期しないようなまったく新しい荒野を目指して欲しいな
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.27:
(5pt)

後半一気に読みました。

僕はすべて高村さんの作品をすべて読んでいないので単純にエンタテイメントとして面白かったかどうかで判断させていただきますと、下巻になって実に面白かったです。上巻でやや疲れながら下巻に来ましたが疲れも吹っ飛んで読んでしまいました。1日です。こういうのは久しぶりです。
初めは一言でいえばこういう人間が出現してきているということかなと思いました。従来の犯罪の物差しで測れない、単純に不条理、衝動とかという名前が当てはまらないもの、それを何とか捕まえようとする合田さんね。そんな構造のように思って読んでおりましたが、井上はともかく戸田のほうはあり得るかなとさらに井上の感覚もひょっとしたら今の世では起こり得るかなと思いながら読みました。題名から当然カポーティを連想しますが、設定がこちらは架空の話なので全くのフイクションです。(世田谷の事件を連想させますが、似させなかったほうがよかったような気がします)。個人的にはこちらのほうが面白かった。まあ今の時代を取り扱ってますから当然と言えば当然です。設定が突飛すぎるという書評も読みましたが小説は突飛の集約なんでいいかなと思います。
それと村上春樹にも通じるけれど作品の中に作者の世代感が出る(当然ですが)「パリ・テキサス」「ナスターシャ・キンスキー」「ライ・クーダー」・・・妙に納得してしまいます。
でも最後のあたりになってこの本の主題って、理由もない殺人の犯人を死刑に処するために正当な理由を見つけねばならないあ司法のジレンマを書き表しているのかなと思ったり、なかなか単純に痛快丸かじりという本ではありません。
それとちょっと前の事実が出てくるので(たとえば中村紀洋の移籍問題とか)昔々読んだ「赤ずきんちゃん気をつけて」を思い出した。いしだあゆみの「ブルーライトヨコハマ」が出てきて当時は新鮮な小説だった。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.26:
(4pt)

"心理分析の限界"をテーマに、新しい物語構成手法を模索した意欲作

カポーティの代表作と敢えて同題名とした上に、二人組という犯人設定も含めて、背景となる事件の構造もほぼ同一という設定の中で、作者が何を描こうとしたのか大いなる興味を持って本作を手に取った。カポーティの方は実際の犯人検挙後に、綿密な取材の下、ルポタージュと小説の間のギリギリの線(この"さじ加減"がカポーティの力量)で再構成したものだが、こちらは未解決の事件である。現実の事件を基にしていながら、基本設定以外は全て作者の手に委ねられているという点で、「レディ・ジョーカー」と同系列の作品だが、同一テーマを扱うとは考えられない。「レディ・ジョーカー」では社会構造の歪み・矛盾とそこから生まれる悲哀や"やるせなさ"を、「太陽を曳く馬(渾身の力作)」ではオウム事件を背景とした認識論・宗教論を扱ったが、本作で何を見せてくれるか楽しみだった。

上巻では犯行場面の描写が省かれたが、その代り、下巻では取調べを通じて犯行場面の徹底的な再現がなされ、それと共に徹底的な動機の追求がなされる。茫漠とした(韜晦なのか本音なのかも判然としない)動機しか示さない犯人達、検挙上の都合もあって、説得力のある動機を求める捜査側......。結局は、「人は他人の心理や行動原理を理解出来るか否か」という"心理分析の限界"がテーマの様に映った。その意味で本作は、体裁こそ変わったものの、「太陽を曳く馬」の上巻の認識論と同系列の内容で、物語構成は三部作以前のものという作者の新しい試みと言って良いのではないか。想像だが、「太陽を曳く馬」が小説としては読み難いという(多分あった)批判に応える事を意図したものの様に思えた。同時に、上巻でも抱いた、人生には様々な岐路があり、道の僅かな選択の差でその後の人生が大きく変わり得る事、その上で、どのような道を選択しようと各人に"立ち位置"の不確かさが付き纏う事というテーマ性を改めて感じた。それ位、犯人の生育過程及び逮捕後の姿勢に関する書き込みが精緻を極めている。そして、合田の"立ち位置"もまた不確かなのである。

更に、犯罪(警察)小説としても楽しめる内容としている(このため、"ミステリ作家"との誤解を招くのだが......)辺りは作者のサービス精神と言えよう。数多の作家の中で、筆力は勿論の事、現代社会やその中で生きる人間に対する観察眼の鋭さ・深さで作者は一歩抜きん出ていると思う。今後も意欲的な作品の発表を期待したい。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.25:
(4pt)

人間の"立ち位置"の不確かさがテーマか〜下巻の展開が楽しみ

上巻のみの感想(下巻は未読)。カポーティの代表作と敢えて同題名とした上に、二人組という犯人設定も含めて、背景となる事件の構造もほぼ同一という設定の中で、作者が何を描こうとしたのか大いなる興味を持って本作を手に取った。カポーティの方は実際の犯人検挙後に、綿密な取材の下、ルポタージュと小説の間のギリギリの線(この"さじ加減"がカポーティの力量)で再構成したものだが、こちらは未解決の事件である。現実の事件を基にしていながら、基本設定以外は全て作者の手に委ねられているという点で、「レディ・ジョーカー」と同系列の作品だが、同一テーマを扱うとは考えられない。「レディ・ジョーカー」では社会構造の歪み・矛盾とそこから生まれる悲哀や"やるせなさ"を、「太陽を曳く馬(渾身の力作)」ではオウム事件を背景とした認識論・宗教論を扱ったが、本作で何を見せてくれるか楽しみだった。

「太陽を曳く馬」は小説というよりも論文(あるいは禅問答?)に近い体裁だったが、本作は三部作以前の体裁に戻った。事件に至るまでの過程を、底知れぬ不気味さを秘めているのか単なる軽薄・粗暴なのか判然としない二人の言動と被害者家族の模様とのカットバック形式で描き、犯行場面は描かず、合田達の捜査が始まるという進行。各種のメカや警察の組織・内部権力闘争・捜査手法に関する記述は相変わらずの"精緻"の一言に尽きる。捜査現場が持つ独特の雰囲気や微妙な人間関係が余す所なく活写されている。このように、犯罪(警察)小説としても楽しめる辺りは作者のサービス精神と言えよう(このため、"ミステリ作家"との誤解を招くのだが......)。舞台の一部となる町田・相模原周辺、特に16号線沿線についての詳細な描写にも、(地元住民として)驚いた。やはりこちらも、執筆前の取材が半端ではないのだ。

上巻はアッケナイ終わり方だったが、人生には様々な岐路があり、道の僅かな選択の差でその後の人生が大きく変わり得る事、その上で、どのような道を選択しようと各人に"立ち位置"の不確かさが付き纏う事がテーマとなっている様に映った。強行犯捜査を外されて、にわか農作業が頭を占める合田の"立ち位置"も不確かであり、冒頭に出て来る被害者家族の13歳の長女の日記の「子ども以上、メス未満」という言葉もそれを象徴している様に思われた。「太陽を曳く馬」では上巻が認識論、下巻が宗教論とハッキリ区別がなされていた。この先何が出て来るか、下巻の展開が楽しみである。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.24:
(4pt)

人の行動に理由はあるのか?

上下巻、読み終わりました。

上巻の最初は、13歳になる少女の生活が丁寧に描かれ
続いて、刑務所から出所したばかりの男が
携帯電話の求人サイトで犯罪に手を染めようとしているところが描かれ

少女の一家と
無計画にすすむ男二人の行動が交互に描かれ

どうか無事で会って欲しいと思うところで第1章が終わります。

そして第2章は一家4人が殺されたところから始まります。

ここまで本当に一気読みしました。

下巻の第3章では、捕まった犯人2人の取り調べ。
なぜ4人を殺すことになってしまったのか?
第1章では、男の一人は「子どもは殺してはいけない」と
明言していたにもかかわらず。

作者の丁寧な筆致は、ついに
なぜ4人を殺したのか、その理由にはいきつきません。

でも、本当の犯罪もそういうものかもしれません。
裁判で争われるのは、分かりやすく単純化された部分だけなのかもしれません。

物語を読みながら、オウム真理教の麻原彰晃のことを考えていました。
彼はほとんど意思疎通できない状態とのこと。
そういう人間を死刑にする意味はあるのか?
しかし、あれだけの人々を殺害しておいて、本人は税金で食事を受けている矛盾。

「反省させると犯罪者になります」という本も読んでみたくなりました。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.23:
(5pt)

創作ノンフィクション小説

下巻では、二人の容疑者が犯行を自供し、事件の詳細と犯行理由が次第に明らかになる。相変わらず著者の視点は冷めており、ノンフィクションを読むかのよう。

キャベツ。合田雄一郎も犯人も見方は違うのだが、奇しくも同じ表現をしている。

フィクションでありながら、警察機構や捜査の様子、犯人が強盗殺人に至る背景から犯行シーンまでをよくぞここまで書き込んだと驚くばかり。

創作ノンフィクション小説と呼ぶべきか。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4620107905
No.22:
(5pt)

まるでノンフィクションのような…

久々の合田雄一郎シリーズ。冒頭から幸せな四人家族の日常と二人の男の出会いから悪の道にのめり込んで行く過程が交互に描かれる。そして、最悪の事件はクリスマス・イヴに発覚する。

著者の狙いなのだろうか、まるでノンフィクションのような著者の冷めた視点が、極めて克明に事件の過程を描いているようだ。それだけに現実に起こった事件であるかのような錯覚を覚え、不気味さを感じる。

上巻では事件の発覚から容疑者の二人が確保される所までが、じっくりとまるでこの世を俯瞰するかのような視点で描かれている。

果たして…
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4620107891
No.21:
(5pt)

捜査場面はリアルで読み応えあり

「レディ・ジョーカー」以来の高村薫作品。
「晴子情歌」でくじけて、なぜ?どうして?難解作家になってしまったの???と、
それまでの「好きな作家=高村薫」を名乗れないさみしさを感じていましたが、
とりあえず読みやすい!それだけでうれしくて★5つ(レビューになってない)

まず上巻は淡々と警察調書のような文章で、それが却って事件の凄惨さを浮上がらせ
迫力満点でかなり怖かったです。
とにかく上巻はいつから合田が園芸おじさんになったのかが疑問なくらいで
違和感とか、疑問は持ちませんでした。
問題は作品の要のはずの下巻ですが…
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.20:
(4pt)

あれれ?犯人像にちょっと疑問

上巻は警察調書のような文体と相まって、捜査の描写に現実感があり、とても面白く読んだ。
そして肝心の下巻は確かに読み応えたっぷり、なのだが…
同時に様々な違和感も感じた。

「戸田=歯痛男」はこちらまで歯が痛くなるくらい気の毒な男で、合田もある種の共感を
寄せているようにも見える。分かりやすい動機も一応あるといえばある。
問題は「井上=双極性の男」です。
彼は人たらしで魅力的な男と設定されているけれど、どうにもそこが伝わってこない。

また二人とも、意外な趣味を持っていて、そこから本の差し入れという形で、彼らと
合田の交流があり、本作の最も重要な部分になるのですが、その彼らの趣味がなんだか
取ってつけたみたいで違和感が残ります。
また合田との手紙の中の彼らと、上巻での彼らがどうも繋がらない。

と思いつつレビューを見たら、「カポーティではない高村薫の限界」というレビューが
私の疑問に答えてくれました。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.19:
(4pt)

問いかけ

殺人の法的要件はやはり理屈が優先で形式的な部分があって、特に、被疑者に精神疾患があると、取り調べや裁判の過程で法的要件を整えようとする際に、実態とのギャップが生じるケースも出てくるだろう。

そうしたギャップを通じて人の生死とは何かを問う手法やその問いかけ方は、流石、高村薫でありレベルが高い。

作者は百も承知で書いているのだが、死に伴う喪失感は主観でしかありえない。軽度の精神疾患があるとはいえ、「冷血」な殺人犯に喪失感を覚えた人をどう捉えるかは万人共通ではない。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.18:
(4pt)

この日に読了とは・・・

読了した日に3死刑囚の刑執行。
しばし合田雄一郎になる。
時として臨界に達したかのようにこの世界の裂け目を垣間見せる異形の殺人事件は
いったん宙吊りにされ、そのリアルは傲然たる指示機能を標榜する司法言語に回収され着地する。
国家の操る司法言語が個の抹消の根拠を僭称することは自明でありながら、
リアルは国家の言語領域に解体され死刑相当のリアルに転位するのだ。
合田は国家の司祭の系列にありながらその言語体系そのものに殉じることができない。
個の直接性には個の直接性をもって当たるしかないだろう。
合田はそのエッジを彷徨する。諦念や断念というふうにではない仕方で。
死刑も証拠捏造も医療過誤も厳密性という錬金術の迷路の中にある。
そこからリアルを拾い上げようとする我が主人公が、
湖北への小旅行をつつがなく終えたことを祈るのみである。
冷血(下)Amazon書評・レビュー:冷血(下)より
4101347263
No.17:
(4pt)

土地が人間を作る

レディジョーカー以来の、高村薫。
ちりばめられる実在の固有名詞と土地が
戸田と井上という二人に血肉を与え、16号線の風景が、どこかで目にしているあの荒涼感、コンクリートと
人々の貧しくはないのに漂う底辺の土の臭いが、戸田と井上の会話から浮き上がってきます。

一家4人殺害という大事件ながら、その決定的場面は上巻での描写はなくひたすら、戸田と井上の事件前の数日を綿密に追い、その寂漠とした日常と訪れる場所の描写で、あー彼等の空洞はやばい、じわじわとくるのです。
一方の被害者サイドの地に足をつけた社会的地位とその生活、その本物の豊かさと
井上たちが日常的に見る光景との差は、読んでいる側に静かに迫って来る
日本の真実の、本物の身分の差。

けれども人は自分の土地に親しみ、そこで生きて、その風景と折り合いをつけて誰もが逸脱せずに、一生を終えるものです。
なのになぜ、いきなりこの二人は殺人までにいたるのか。

太陽の光が眩しくて...

思い出すのはカミユの一節。
そんな漠然さ、曖昧さをもったまま、合田登場、警察の捜査の章にはいり
怒涛の如く展開、逮捕で上巻は終わります。

これはサスペンスでもなんでもなく、ドストエフスキーの世界なんですね。
出世した合田は相変わらずの一面もありますが、かつての魅力はなく、諦観という鎧を身につけ
静かに傍観者としてそこにいます。

渇ききった土地と人間を目の当たりにして、重くページを閉じた上巻でした。

面白い、やはり高村薫は凄い。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255
No.16:
(5pt)

物語の枠を超えているような気がする

物語の流れには、最後に決着がついていなければならない、なんてことはないと思わせられた珍しい作品だろう。
合田雄一郎は、この物語の中で、特に自身の主張を強める訳でなく、かと言って流されもしない。
主要登場人物が強烈な存在感を放つのではなく、ほぼ偶然に近い要素によって、関係を持たされざるを得なくなった人間たちの様相が、淡々と描かれる。

犯行の「動機」って、実際どの程度のものなのか、と考えざるを得なくなった。
実に微妙な線を衝こうとし、実際に文章化した作者の勇気を称賛したい。
冷血(上)Amazon書評・レビュー:冷血(上)より
4101347255

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