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(短編集)
罪悪
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罪悪の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.11pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 21~27 2/2ページ
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『犯罪』で人の深遠を端的に顕した簡潔な文体は、罪悪感でなく罪悪そのものを取り上げた本書でも同様に効果を上げたように見受けられます。 ですが出来得る限り情感を削ぐ事で、より明確に罪の輪郭を浮き上がらせはしても心情面での掘り下げ方に甘さが目立ってしまっていました。 またストーリーに意外性が足りず先の展開が簡単に読めてしまう所為で、後味の悪さを除けばこれといって心に残る話が少ないのも残念です。 ただ前作にはない趣向で、合間に挿しこまれた幾つかの小話がピリリと全体を引き締めており私のお気に入りです。 『犯罪』が優れた物だっただけにどうしてもハードルを上げて読んでしまったのですがこれはこれで面白い作品だと思いますし是非次回作にも期待しようと思っております。 | ||||
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「罪悪」に興味を持たれるということは、「犯罪」を読んだ方が多いと思います。 「犯罪」はインパクトが強烈で、一気に読みました。 それに比べると若干インパクトは薄いです。 でも、やはり面白いです。 各ストーリーも趣向を凝らして少し変わっています。 ただ、それが前作と比較すると若干変わったので評価がわかれるでしょうか。 僕は、2冊目としては、全く同じだと意味ないのでよいとは思います。 ただ、「犯罪」は、よくできてますw 気になるぐらいなら、ぜひ読んだ方がいいですよ。 オススメするぐらいに、おもしろいです。 | ||||
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おそらくはドイツの弁護士である「私」が、自らが出会った事件をレポートするような形の連作短編集です。 前作「犯罪」と同じ形式の短編集です。 相変わらずクールな語り口はそのままに、淡々と事件を描画して行くスタイルです。 前作と比較すると、前作が「ある事件の内容」を中心に書いたレポートという印象だったのに対し、今作は「案件と私」というようなスタイルで、「私」が書いたことありきのエッセイのような味わいが強く残ります。 前作のような徹頭徹尾貫かれたクールさはややうすれ、いち弁護士が持っている連載コラムのような印象を受けました。 そのため、前作ほどの痺れるようなかっこよさというものは影を潜めてしまいますが、相変わらず面白いです。 1篇1篇もそれほど長くないので、空いている時間にのんびり少しずつ読み進めたい人にもお勧めです。 | ||||
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ドイツの作家フェルディナント・フォン・シーラッハの『犯罪』に次ぐ第2短編集。現役弁護士である作者自身が取り扱った犯罪事件に材を得た、15の短編が収められています。 抜群の面白さを持つ『犯罪』の姉妹編と聞けば手にしないわけにはいきません。『犯罪』の短編群がどちらかというと、やむにやまれぬ事情で犯罪に手を染めざるをえない主人公たちの痛ましさを描いていたのに比べれば、今回の『罪悪』に登場する人々はむしろ何の罪もないにもかかわらず凶悪な犯罪に巻き込まれてしまった無垢の人々のむごさを語っているものが多いように感じられます。 物語を恬淡と描写しているようにみえる乾いた文章が、犯罪の無慈悲ぶりを鋭く浮き上がらせていて、日本語訳の素晴らしさにほれぼれします。口の中が不快に乾き、暗澹たる思いにかられるにもかかわらず、頁を繰る手を休めることができません。 そして巻頭の「ふるさと祭り」は作者自身が残忍な犯罪者を弁護することで味わわざるをえない現実の苦さについて語った秀作です。その苦さを味わうことを作者は「私たちは大人になったのだ」と記しています。 子どもだったころ、大人になるということは、立派で明るくて、生き生きとして可能性に満ちた世界に自身が近づくことだと思っていたはず。しかしそうした思いは子どもが抱く幻想でしかないと気づくことこそが、大人になることの意味なのだ。 現実がもつ冷たい肌触りに、読み手の私も心震えたのです。 この掌編を読んで味わった感触は、以前読んだ『あなたに不利な証拠として』(ローリー・リン ドラモンド/早川書房)を読んだときに得たものと大変良く似ています。 作者のプロフィール紹介によれば、昨2011年に初の長編作品『Der Fall Collini』を上梓したとのことです。これまで二つの短編で生かされた著者の手腕が、長編ではどのように冴えわたっているのか。今から訳書が出るのが大変楽しみです。 | ||||
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前作のインパクトが余りにも大きかった為か、続編になる今作には全体的に平坦な印象で、ちょっと物足りなさを感じた。 しかし、相変わらずの感情を排した淡々とした語り口には読み手の魂を燻られる。そこには著者の物言わぬ訴えや思いが潜んで いるのではとすら思えてくる。今回は、前作の"エチオピアの男"に代表されるような感動を誘う話は少なめで、不可解であったり、後味の悪い編が多かった。 極めつけはラストの「秘密」。きっと、一様に首を傾げるに違いない。なかでも、「鍵」は異色を放っている。全編中最も長く、読み応えも十分。 あまりの意外な展開の連続に、「これ本当に実話なの?」と思ってしまうほど。ミステリと言うよりは、コメディタッチで新しかった。読後感については、 前作「犯罪」よりも若干淡白になったが、著者の独特の文体と、作品の虚無的な雰囲気がどこか気に入っているので、決して読んで損をしたとは思わない。 短篇集なので、手軽に読めるところもいい。 | ||||
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著者が弁護士として弁護を引受けた事件について描いた連作短篇のかたちをとっているところは、前作の『犯罪』と同様である。 15の短篇には、罪を犯した人間が必ずしも相応の罰を受けるわけではない不条理な事件がある一方、証拠を斟酌しない大岡裁きのような判決や、ほっと胸を撫で下ろす事件の結末もある。 比較的長いものも数ページのものもあり、バリエーションに富んでいて読み易い。 たとえば、最後の『秘密』はまるで落語のようなオチのある短い話。 無駄が省かれたストレートな文体で、登場人物の心理や事件の核心が淡々と語られ、ぐいぐいと引き込まれていく。 二匹目のどじょうを狙った本書は、またもや絶品の短篇集に仕上がっている。 | ||||
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前作「犯罪」よりも、性的暴行やいじめなど、目を覆いたくなる凄惨な犯罪の多かったこの作品。 一話目から理不尽な犯罪の意外な結末で始まる。 読んでいると重く鬱々とした気分になり、本の暗部に沈み込んでいく感覚だが、 相変わらずの淡々とした独特のリズムを持つ、静かな語り口が雰囲気をやわらげている。 私たちは「どんな理由があろうと、罪を犯した者は裁かれるべき」という当然の理念を信じているが、 「本当にそれが正義だろうか」と作者が投げ掛けてくる。 作者はこの理念をあっさりと否定し、誰もが「こうなって欲しい」と願う結末を用意している。 やはり感情なくして人は裁けないものなのだ。 最終話「秘密」は、暗澹たるムードから一転、「イカレた男」と作者なやり取りが笑える、ユニークな作品。 「犯罪」が面白かった方なら、この作品もぜひ一読を。 | ||||
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