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薬指の標本
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薬指の標本の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.31pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全85件 41~60 3/5ページ
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小川さんの作品は博士の愛した数式しか読んだことがないので、てっきり温かみのあるストーリーを主に描く方かと思いきや…。いやはや、こんなサイコパス風味なモノも書ける方だとは。 情景を美しく描き出した文体に魅せられて読み進めていたら、何時の間にか「薬指の〜」の主人公のように日常から異世界へと切り離されていくような感覚に陥っている自分に気がついて、この方の持つ世界観にただ驚嘆するしかなかった。「六角形の〜」の方も、切ないストーリーの中に二度と覚めない夢の中に引きずりこむような怪しさを漂わせていてインパクト大。博士の愛した数式でファンになった方には、次にこの「劇薬本」を読むことはおススメしかねる。他作品で耐性を身に付けてからご賞味あれ。 | ||||
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青髭的ミステリアスな作品。 主人公の女性は、 標本製作の助手のバイトを始める。 その“標本の館”は 昆虫や花、葉といった代物を扱うのではない。 ある少女は、火事で家族を失い 焼け跡に生え残っていた3本のきのこを 標本にしたくてやってきた。 ある女性はピアノの音。 靴磨きの男は死んだ小鳥の骨。 標本にできないモノはない。 そして、 一度標本化されたモノは 再び手にとって懐かしんだりされることもない。 標本師の弟子丸氏は言う。 標本の意義とは、 封じ込めること 分離すること 完結させること ヒトはその目的のために 標本の館を訪れるのだ。 日々の受付事務を独りで淡々とこなしながら 時折訪れる弟子丸氏との密会を 楽しみにする主人公。 ある時弟子丸氏から赤い靴を プレゼントされ、 どんな時も必ず身につけているように 命じられる。 まるで脚の一部のように ぴったりとした靴。 靴磨きの男はそんな彼女に忠告する。 靴が脚を侵し始めている 靴を脱ぐように勧める男に対し 主人公は言う。 「根本的で、徹底的な意味において 彼に絡め取られているんです」 そしてそんな彼女の状況は 顔に火傷を負った少女が “火傷”を標本にしてほしい、と 願いやってきたコトで変わってゆく。 弟子丸氏とともに、 標本室に消えていった少女。 彼女はどこにいったのか。 そして、 それを目撃した 主人公は何を決断するのか・・・ 趣ある外観、内装で、 優しい光の差す館の描写に対し、 弟子丸氏とのやりとりや 密会の場、セックスの情景は ひやり、としていて さるきち身をこわばらせる。 ちなみに、この作品 映画化されているらしい。 さるきちはコワくて独りじゃ観れなそう。 もしも、 もしも、この標本の館が実在していたら、 さるきちは過去の“事件”の記憶を 標本しに訪れていたのだろうか。 そうしたら 摂食障害を発病することはなかったのだろうか。 そんなことを考えた。 | ||||
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事故で薬指が欠けてしまったことが原因で職場を辞めた「わたし」が 次に見つけた働き先は、標本作りをするところだった。ここを訪れる さまざまな人たちは皆、思い出の品々を持ち込んでくるのだが・・・。 表題作を含む2編を収録。 どんなものでも標本にしてしまう弟子丸氏。そこで働く「わたし」は、 いつの間にか弟子丸氏に愛情を感じてしまう。だが、彼の心が分からない。 自分を見てほしい。振り向かせたい。その思いが「標本」と結びついていく・・・。 その過程は、読んでいてぞくぞくする。表題作「薬指の標本」は、不思議な 世界をのぞいているような作品だった。もうひとつの「六角形の小部屋」も 独特の雰囲気だった。懺悔室のようだが、そこは単なる「語り部屋」なのだ。 だが、そのひと言では片付けられないものがその部屋にはある。狭い部屋の 中には別の世界が際限なく広がっているようだ。ラストに感じる喪失感が 心に残る。どちらも作者の感性が光る作品だった。 | ||||
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評判とおり透明で静謐な作品。どこかを突付くと、そこからこなごなに壊れてしまいそうなくらいに繊細で、微妙なバランスで保たれた世界。ディテールはリアルでありながら全く現実離れした世界。 「標本」という、いわば時間を閉じ込めた小空間。その中で、そこに収められたモノは永遠に残ったとしても、それを包括していた全体としての存在は消えているということ。存在の消失と永続性、モノに対するフェティシズムとエロティシズム。非常に雰囲気と香りを伴った、確かにフランス人好みの作品かもしれません。 | ||||
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ここのところ小川洋子さんにどっぷりはまっている。解剖学者養老猛司の愛弟子である布施英利も巻末に書いているように身体の消失感がこの本のメインテーマ。他者への依存から生まれる自己消失感。この「感じ」を、本来の精神的なものとしてではなく物理的、身体的なものに少しずつシフトさせながら描く。病は気から、ではないが精神的なものはいずれ身体へとおりてくる。ボディビルという身体への変質的こだわりから最終的に生首に至った三島由紀夫のように。静かに淡々と進むストーリながら読み終わってみると肉体的にどっと疲れている。これも身体へ強いのこだわりを描いた故なんだろうか。 | ||||
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いかなる場合でも自分のペースを崩さない、他人の迷惑に鈍感な、こういうタイプの人はどこにでもいる。 あの時の感触ははっきり覚えているのに、感情はよみがえってこない。 本人の意思や努力によって運命を切り開けると信じている人もいるかもしれません。 けれど、意思や努力がすでに運命なのだと、わたしは感じます。決して人生を否定しているのではありません。 次の瞬間何が起こるか、わたしたちは少しも知らされていないのですから、やはり常に自分の力で選択したり判断したり築いていったりしなければならないでしょう。 いくら運命が動かしがたいものだとしても、すべてをあきらめてしまうなんて愚かです。 誰にとっても運命の終着は死ですが、だからと言って最初から生きる気力を失う人は、たぶんあまりいないはずです。 なるほどなあ〜〜と思った作中の文章であります。 | ||||
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表現の一つ一つがとても繊細で言葉をすごく丁重に扱っている作家さん 彼女の作品の中では、日常にありふれているはずの物まで 不思議な雰囲気をかもし出します。 文章から伝わってくる雰囲気は、とても寡黙。 でも、どこか生ぬるく独特の緩やかな時間が流れています。 最近の作品も好きですが、この頃の作品が一番好きです。 | ||||
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私がまだ、“昆虫ハカセ”だった頃身近な昆虫達を捕まえて標本にしていた。先端恐怖症の私は柄付き針を使わない、もっぱらホルマリン漬け標本家専門であった。しかも、殺生ができない子供らしくない子供だった私は屍(しかばね)専門で、 息を止めて全神経を集中させ、その「屍」=「物体」と二人きりの時間を楽しんだ。 標本作りには、たっぷりの時間が必要だ。 足の欠けたダンゴムシやメスに頭部を半分齧られ悶絶死したハラビロカマキリやらが宝物だった。 幸い、大人になった私は多忙な日々を送る商社マンだが、隙あらば、弟子丸になっていたかもしれない。 つぎは、 あなたの番だっ。 | ||||
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「封じ込めること、分離すること、完結させることが、ここの標本の意義だからです」。技術士の弟子丸氏は言った。彼が標本にできないものは何一つない。様々な品物が持ち込まれ、標本化によって依頼者は安堵を得る。その「標本室」に、「わたし」は事務員として採用された。 二人きりの「標本室」。弟子丸氏という不思議な人物に、いつしか「わたし」は侵食され、絡め取られていく・・・このような設定は、小川作品ではしばしば目にするが、本作品は印象深いもののひとつだ。弟子丸氏が突然露わにする「わたし」への執着。いたぶりに近い行為。それに「わたし」が飲み込まれ、自らを差し出すようになっていく怖さ・・・ 浴場(「標本室」は女子専用アパートだった建物を利用している)でのデートの場面など、映像的な魅力にも富んでいる。 ふと思う。いつから侵食が始まっていたのだろう。「わたし」が弟子丸氏に初めて浴場に案内され、靴をプレゼントされた時か。いや、事務員募集の貼紙を見て標本室を訪れた時すでに、ひょっとするともっと前から運命づけられていたことではなかったか。・・・その線引きの難しさ、境界の曖昧さに怖さを感じる。境界のあやふやさは小川作品のひとつの個性に違いない。現実と非現実、安らかさと危うさ、甘さと痛さ、穏やかさと烈しさ、正気と狂気・・・両者の重なり合う地点から静かに語られる物語には、しばしば不安な気持ちにさせられつつ、魅了される。 「標本室」と似た機能をもつ場を描いた作品に『沈黙博物館』がある。あちらも特殊なものを収集、保管する物語だが、味わいはまったく異なる長編。合わせて読まれると興味深いのではと思う。 | ||||
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『薬指の標本』、映画の印象が強烈で、観たすぐに、 原作を読んでみました。 登場人物、プロット、台詞、イマジネーションは、 映画でもそのまま活かされていて、変な感じですが、ちょっと 安心しました。読みながら映画のシーンが、ガンガン、頭に 現れてきて、それは奇妙な体験です。 でも、映画も原作もどっちもよかった。独特の世界観とエロス、 タナトスの世界。 もう一方の『六角形の部屋』も、奇妙な世界観と後味で、 不思議な小説でした。文章や描写は平易なのですが、その分 描かれているお話、語り小部屋や主人公が遭遇する人々は なんか、シュールレアリズムな感覚に捕らわれる、読んでいて 不思議な空間時間間隔になる一篇です。 | ||||
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「博士の愛した数式」と同じ作者とは思えない。全く違うタッチ。 描写がとても繊細で、目の前にスローモーションで映像が浮かんでくるような不思議な感覚。匂いや温度まで伝わってきそうな感覚。静かな場所で読むと音までも聞こえてきそうな・・・。 恋、愛、をまだ知らないpureであり、でも深い、若い女性の心もが伝わってくる。 存在する物(者)が消えてゆく、消えてもなお存在し続ける そんな不思議な感覚を作り出す短編。 私は好きです。 | ||||
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束縛されることの不自由さと,甘美さが描かれていると思います. 抵抗することができない,でも苦痛ではない束縛. 黒い靴に,薬指に,彼に捕まっていたい彼女の想いがあらわれている気がしました. 共感したわけではないけれど,これが一つの愛の形なんだと思いました. 少し不思議な雰囲気もあり,独特の世界を楽しむこともできます. | ||||
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一文一文から映像が目に浮かぶ。それも、こんなんじゃないかな?レベルの映像じゃなく、まるでフィルムに焼き付けた確固とした映像のように浮かぶのである。この作者の小説は初めて読んだが、小説の世界にぐいぐい引き込まれた。 しかし何事にもおちを求めてしまう私自身の性質が災いしてか、「この標本技術士は一体何者なんですか?」「楽譜を預けた少女はどうなったんですか?」「靴は主人公の足にくっついてしまったんですか?」「最後どうなったんですか?」と、読後に筆者に電話して聞きたい位の勢いで疑問符が頭の中を駆け巡った。 おそらく、この不思議な余韻がいいのだろうが…… | ||||
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壊れそうであり、でも現実感がたっぷり味わえる作品だと思う。 「ホテル・アイリス」という作品しか知らなかったが、その時の印象とまた少し違う。 実はフランス映画を先に見た。 思わず読みながら、その映画の映像が挿入されてくるので、文字で読む作品の良さを私は見逃しているのだろうか・・・と思ったが、そもそも著書自体にフランス映画の匂いを感じさせるものがあるのでは・・という印象に変わった。 人は何か自由でありたいと願いながら、何処かで囚われていたい、自分を封印して欲しいという思いを抱いてしまう、束縛を必要とすることがあるのではないかと思ってしまう。 欠けてしまった薬指と、自分をがんじがらめにする靴、少女の火傷の痕が標本になった姿を想像して生まれてくる嫉妬、甘ったるいだけでない、それらのアイテムから感じる透明感のある甘美さが私は好きだ。 | ||||
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小川洋子の文章には独特の色気があるように感じます。 静謐で、繊細、美しくそして儚い閉鎖的な世界には独特のエロティシズムが漂っています。 フランス映画になると聞き、納得できました。 愛の痛みを感じたい方、おすすめします。 | ||||
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フランスで映画化とききましたが、フランスというところが心憎いですね。小川洋子さんの作品はこれが初めてですが、低いバスの音がきこえてきそうなモノクロトーンの逸品です。すばらしいです。シックで飾らない日常、それでいて標本という永遠の保存を目的とした行為に衝かれる彼、依頼人、そして私。そして、浴室でのシーンなどは、まるで透明のゼリーのなかでおとなしく固められた果物のような静止に魅了されます(ここにはパリジェンヌがぴったりでしょう)。装丁も洋書のようなオシャレさ。お値段もお手ごろなので、通勤バックに忍ばせてはいかがでしょう。 | ||||
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「博士の愛した数式」が有名ですが、小川さんの作風を語るのに一番ピッタリな作品がこれじゃないかな、と思います。 薬指、標本、赤い靴のオマージュにも思える黒い革靴。 全てのこれらの小道具が、心地よい痛みを抱えているようで、それが面白いですね。 静かだけれども、チクチクと刺さるような痛み。 幻想的でいて、非幻想的でもあるような。 読んだ後は、心地よい痛みに夢中になります。 これに入ってるもう一つの作品も、奇妙で面白いですよ。 | ||||
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「薬指の標本」のほうがいつまでも糸を引くような感触を残す読後でした。 ひそやかな文体から常に頭の中に映像が浮かぶのですが すっかり古びて、乾燥し、殆んど清潔にさえ見える廃墟がハイビジョンカメラで 細部までじっくりなめるように映されていくような… はっきりした映像が浮かぶ、という点ではリアルなのですが 実際のところは幻想的なホラーに近いと思います。標本技術士は「コレクター」ですね。 標本が自ら標本化されたがるという点は異なりますが。 読み終わって表紙を改めて見ると、椅子の足のようなモノに靴が履かせてある!ぞぞ。 | ||||
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シトシトと雨が降る梅雨の時期に小川洋子さんの文章はぴったりだ。人を愛する事の先にある事、、それは常にハッピーな結果になんかにたどり着くわけなくて、時には痛かったり、切なかったりするものである。 その中にいることは僕の幸せでもある。彼女の小説の中にいる時、僕はそれと全く同じ気持ちでいられる。この小説は、その雨の景色によく似た世界に入り込める僕にとって大事な小説のひとつだ。 | ||||
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静かなときの流れの中で、不思議な物語が繰り広げられる。靴と一体化していく足なんて絶対にあり得ないけれど、「そうかな?」と思えてしまう。映画が楽しみです。 | ||||
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