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扉は今も閉ざされて
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扉は今も閉ざされての評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.83pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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30代のアニー・オサリヴァンは定期的に精神分析医のカウンセリングを受けていた。それは彼女が不動産業者だった1年ほど前、オープン・ハウスにやってきたデビッドという男に拉致誘拐された事件の経緯を話すことで、心に負った傷をいやすためだった。アニーが語る事件の真相とは…。 カナダのヴァンクヴァー島に育った不動産業者でもあった作者が書いたデビュー作品です。アニーが今はカウンセリングを受けていることから、何らかの形で誘拐犯のもとから脱出できたことは読みとれますが、誘拐された理由も、犯人の真の素性もなかなか明かされることなく、ひたすら厳しい拉致生活が事細かに語られていくことになります。 一人称の語りで、文章は大変平易。その上、奇異な物語が怒涛の展開でどんどん進むので、頁を繰る手がもどかしくなるほど。なかなか読ませる筆力は、とてもデビュー作とは思えないほど。一気に読み通してしまいました。 物語は半分過ぎたところでアニーの脱出を目指した決死行は一定の成果を見るのですが、そこからが意外な方向へと物語はねじれていきます。そしてようやく見えてくる結末の、あまりにも痛ましく苦い姿に言葉を失います。 ですがこの物語は、極限状況に置かれた人間がそれでも決してあきらめることのない力強さを込めた一行で、見事にしめくくられるのです。 一級のミステリーとまでは言いきれませんが、それでも私はこの物語を十分楽しんだと言えます。 | ||||
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処女作とは思えない構成力の高さ、読みやすい文体。 十分及第点でしょう。 キャラの描き方も良かったです。 読者に想像の余地を残し、なお且つ大事な部分はしっかりイメージさせる。 バランスが良く、ウマイです。 どなたかが仰っていましたが、 原題である「still missing」の方が、小説としてのテーマを欠かずに済んだでしょうね。 つまり、この物語が伝えたいことは、恐怖でもロマンスでもなく 失い続けることと、その中で生まれる希望であるということ。 だからこそ、あのラスト一行だということ。 傑作です。 | ||||
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本書のヒロインと同じ不動産業者から転進して大成功を果たしたカナダの実力派女流ミステリー作家スティーヴンスの大ベストセラー・サスペンス・スリラーのデビュー作です。私が本書の日本版の訳題を見て真っ先に思い浮かんだのは、同じ早川文庫から過去に出たアガサ・クリスティーの作品「鏡は横にひび割れて」でした。クールさを感じる原題「STILL MISSING」に編集者が情緒的な要素を加味されたのだろうと私が想像する訳題の意味はヒロインが長い監禁生活から開放された後もショッキングな体験がトラウマになって中々元通りに戻れない苦しい心理状態を表しているのだと思いますが、そこまで内容に踏み込まなくてもミステリアスな雰囲気を醸し出し読者を読んでみたい気持ちにさせるまずまずの良い選択だと思います。 独立した公認不動産業者として充実の日々を送っていた「わたし」アニーの順調な人生が八月のある日を境にして急変する。客を装った謎の男に誘拐され連れて来られた山小屋の中で監禁状態に置かれて屈辱的な地獄の日々が際限なく続く。やがてある事件をきっかけにして遂に地獄の日々にピリオドが打たれ彼女は帰って来たのだが、不可解にも事件はそこで終わりとはならずにまたもやアニーの身に新たな脅威が迫るのだった。 本書は最初から最後までヒロインのアニーが女性精神分析医に向かって対話する一人語りの手法で書き貫かれており、初めは無駄に思える話が気になって興が殺がれたりもしましたが、セッションが進み回を重ねるにつれて彼女の受けた深刻なダメージや目に見えない心の痛みに理解が及んでその迫真の描写に引き込まれ頁を繰る手が止まらなくなります。性格がすっかり厭らしく歪んでしまった事を自覚して自己嫌悪に駆られながらも、半ば人間不信にも陥っていて本来の優しい性質を取り戻せない、そんな自分をどうする事も出来ないといった彼女の苦悩する姿がどうにも痛ましく、同性の方ならば特に我が事の様に強く感情移入してしまう事でしょう。しかしそんな風に何度も折れそうになる心を懸命に励まして負けてたまるか!と踏ん張り抜き絶対に真相を突き止めようとがんばる根性とどんなに辛い現実にも目を背けずに立ち向かう姿勢は誠に立派で尊敬の念さえ覚えます。物語の真相については意外ではあっても全くあり得ない絵空事ではなく十分にリアリティーを感じさせる内容で、「事実は小説より奇なり」という有名な諺がありますが、最近は(良い悪いは別にして)逆に小説の方から意図的に事実に近づかせている様な現代ミステリーに共通する方向性を本作にも感じます。それからヒロイン・アニーの恋愛模様の変化については道徳感や多少の身勝手さや理屈は抜きにして男女の間に起きる互いにどうしようもなく魅かれ合い必然的に結びついてしまう出来事であってつまりはごく自然の結果なのだと思います。 既に刊行されている第2作も本書と同じ趣向のヒロインの一人語り小説だとの事で、女性心理の奥襞まで余す事なく濃密に描いてみせる著者の今後更なる活躍に期待して追い続けて行こうと思います。 | ||||
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スゴ本、認定! 勝手ながら。 物語はほぼ、独白の形で始まる。 カウンセラーに語られる形式も一切無駄のない最小限のもので、 第何回目のセッションか、とタイトルが付けられ、ひたすらに独白。 他人は出てくるものの、他人の心象風景の描写は皆無。 ところがそれが、一種異様な緊張感をこの小説に与えている。 日本でいうところの不動産屋スタッフの女性が主人公。 ある日、カレシとのデート前の最後の仕事で、モデルハウスを案内していると、 最初は感じの良かった客が一転、銃を押し付けてくる。 そのまま拉致され、監禁される主人公。 どうして自分が? 目的はいったい何? 明日をもしれない運命におびえる女性に、誘拐犯は自分の子供を産むように強要する。 そして、望まない出産。 子供に愛情を感じ始める日々だが、あそこまで子供を望んだはずの男は一変、 子供を疎み始め、病気の子供の世話をしようとする女性を妨害し始める。 最初に女性がカウンセラーと会っているため、彼女が生還したこと、 子供は彼女とは一緒にはいないらしいことなどは、冒頭から読者に示されている。 ところがカウンセラーに話される彼女の話は細切れで、 かつカウンセリングの間に、空き巣犯が出現したり再びの誘拐未遂が‥ 犯人は単なるストーカーなのか?それとも複数犯? 彼女の周りで彼女を気遣う友人、彼は本当に誠実なのか? 彼女を救った警察官、その正体は? ノイローゼ気味の彼女の独白は被害妄想気味で、 それが最後の最後まで犯人の狙いと実体をわからなくさせている。 翻訳の妙で、さくさくスムーズに読めた。 最後の数ページは、犯人の自己愛と身勝手さに、もう一度戦慄。 キャリーのような思い込み型犯人を描く傑作はたくさんあったが、 ここまで徹底的に被害者の妄想世界で織りなされる作品は初めて出会った。 最後のページまで、まったく誰も、信用できなかった。 よくジェットコースタームービーと言うけれどこの小説はさだめし、 目隠しで迷路に放り込まれた感覚。 とにかく不安。落ち着かない。ささくれ立った感触がずっと続いた。 いやー、秀作。 唯一文句があるとしたら、この邦題かな。 原題は、still missing. まだ行方不明、という意味と、失ったままの二つの意味にとれる。 心のドアが閉じたまま、というよりは彼女はまだ、 失ったものを取り戻していない、というほうがより正確な気がする。 いやでも、これがデビュー作とは!脱帽! | ||||
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