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ねじれた文字、ねじれた路
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ねじれた文字、ねじれた路の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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ラリーは元気な木を切らない。 ラリーの引き出しはこんなになめらかな感触の引き出しは初めてだと驚くほど手入れされている。不当に人生をズタズタにされてもなお静謐さを感じるほど丁寧に暮らすラリー。その人柄に引き込まれて読み進めた。 中盤から面白く一気読みした。 サイラスの心の内に共感が薄いとおそらくサイラスざけんなで終わってしまうと思う。読み手の共感力の深さによって読みごたえが浅くも深くもなる話だった。 気になる点を挙げるなら、丁寧に暮らす人なのだから毎食ファーストフードでなく食事もきちんと作る設定でよかった気がする。そしてサイラスの罪にアンジーや同僚みんなが甘すぎる。ラリーの定かでない、証拠もない罪には容赦なかった人たちだというのに。ちょっと違和感。 しかし、真に人を見る目があったのはホットドック作りの達人マーラだけだったという・・。 ラリーは読書という逃避先がなかったなら人として壊れててもおかしくなかった。本は偉大。 | ||||
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ミステリーとして目を引かれるようなものは特にありません。種も仕掛けもなく単純なもので、はっきりと解決しない謎もあります。 ではドラマとしてはどうかというと、どんよりとしたアメリカ南部の風景や人間関係がよく描かれています。ただ主人公たちが青少年期に起こった事件や事故がもととなり、彼らが成人しても現在に影を落としているという回想の類の小説って、エピソードの挿入や事件解決の仕方がどれもワンパターンなんですよね。各々の作品の主人公たちの性格は違えど、どこかで読んだような展開ばかりでどうも新鮮味に欠けます。トマス・クックが好きな人はこういう作風好きかも知れませんね。 | ||||
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おそらく、そうなんだろうなという設定であるが、事件が本当に解決したわけでも無く、主人公の二人の思いが淡泊過ぎる様な気がして、真実味が感じられない。消化不良。 | ||||
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ホラー小説を愛する内気なラリーと、野球好きで大人びたサイラス。1970年代末の米南部でふたりの少年が育んだ友情は、あるきっかけで無残に崩れる。それから25年後。自動車整備士となったラリーは、少女失踪事件に関与したのではないかと周囲に疑われながら、孤独に暮らす。そして、大学野球で活躍したサイラスは治安官となった。だが、町で起きた新たな失踪事件が、すべてを変えた。過去から目を背けて生きてきたふたりの運命は、いやおうなく絡まりあう―。 | ||||
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クーンツの「心の昏き川」を読んだ後だったので、アメリカ南部の田舎町で起きた少女失踪事件をめぐる事件が始まりのこのミステリーはテンポも緩やかで、登場人物もわかりやすく、どんどんページが進んだ。一昔前の古い家族関係や、貧しい白人の暮らし、白人と黒人の根深い人種差別が、豊かな自然描写に織り込まれて、自分もこの町に放り込まれてしまったような気にさせられる。昔の事件の容疑者扱いされ、町の人から無視されて暮らす孤独な自動車修理を営む男ラリーと、事件を捜査する助手のサイラス。彼が黒人ということが事件のポイントで、このふたりが25年前の事件とも、からんでくるというのがあらすじ。まあ、結局は、人間関係のねじれ,心の行き違いが悲劇をよび、秘密が明らかになった時に主人公二人の再出発の人生がはじまるのでしょうか? | ||||
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ミステリーとしては面白くないだろう。でも僕のように学生時代一度でも、『虐め』とはいかなくても『仲間外れ』ぐらいな経験(誰でもこのくらいは一度はあるのでは?)がある人間、もしくは『加害者』とまではいかなくても『傍観した』ぐらいな人間(これも誰しもが経験していると思う)にとっても、この作品はグサッと胸に刺さる作品なのだ。どちら側の人間も、主人公たちに共感してしまうこと必至である。トリックなどない、犯人も途中で想像がつく、でも味わい深い作品だ。ミステリーが好きな人も嫌いな人も、人間である以上、どちらにも是非読んでほしい | ||||
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初めて、外国のサスペンスを本で読みました。この本はラジオ番組で紹介されてとてもストーリーが気になっていました。久々に本を読み 先が気になる展開の仕方でとても楽しかったです。 | ||||
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「いっけん無能だが、ずっと待ち続ける勇気をもった人」「才能ある人だが、真実を明かす、という義務を放棄して逃げてしまった人」 の対比がクッキリしていた 強いけど、弱い。弱いけど、強い・・・ 孤独のうちに暮らすということ、幼少期のコンプレックスを抱えて生きるということ、 私自身に重なる部分もあり、強くひきこまれた。 | ||||
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2流小説的とは思うが、ブラックランズか、ロストチャイルドの様な、メランコリックと言うか、ノスタルジックな感触が、全体にゆったりと流れ、そこに、主人公の穏やかな性格が重なり、読んでいる間、とても、リラックスできた。誘拐殺人の容疑者と言う、厳しい状況の中でも、自身の行き方を変えない、変えることのできない主人公に、哀れを感じもするが、その、芯の強さに、何か、心を打たれる。 アメリカ中南部の小村と言う設定だが、良く考えると、今の都市は、結局、極く、近くの関係者だけとの薄い付き合いしかない、過疎地帯と同じで、作者も、現代の縮図を意図したのではないかと思う。 犯罪の解決と共に、長いわだかまりの解け始めるエピローグは、安易とも思うが、静かな癒しを与えてくれる。 | ||||
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アメリカのディープサウスと言われるミシシッピー州の田舎町が物語の舞台で、過去と現在が交錯しながらストーリーが進んでいく。 大きなくくりとしてはミステリーなのだろうが、ミステリー的な要素は手段として用いられているだけで、保守的な土地柄ゆえの差別、偏見、無知ゆえに起こってしまった事件を通して織りなす人間ドラマが過去と現在をカットバックしながら、ゆっくりと流れていく。 したがって、結末は途中で容易に想像がついてしまうが、この小説の醍醐味は顛末を知ることではなく、過去と現在、白人(ラリー)と黒人(サイラス)、北部と南部、都会(シカゴ)と田舎(ミシシッピー)、正義と悪、男と女、内向的と外交的、裕福と貧困といった相対立する構図が埋め込まれた仕掛けと、ラリーとサイラスの感情の交錯やゆらぎを読み解きながら楽しむことにあると感じた。 心を揺さぶられる小説を久しぶりに堪能した。 次作の出版を期待して待ちたい。 | ||||
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25年前にミシシッピー州の小さな町で、ホラー小説好きで内気なラリーと野球好きで快活なサイラスは友情を育んだ。 しかし、あることをきっかけに、ふたりは付き合うことがなくなってしまう。 そして、同じ高校の女子生徒が失踪し行方不明となった。 ラリーは女子生徒の失踪に関与したと疑われたが、何の手がかりがかりもなく迷宮入りの事件となった。 ラリーは高校を卒業したあと軍に入隊し、自動車整備の技術を身につけて町に戻ってきた。父親の自動車修理工場をついで、ひっそりと暮らしていた。 しかし、何年経っても町の人々はラリーを潔白と認めなかった。 一方、サイラスは大学に進み野球を続け、名内野手として活躍した。 そして、25年後治安官となって町に戻ってきた。 町では、新たな女子大学生の失踪事件が起こっていた。 ある日、家に訪ねてきた何者かにラリーは撃たれ救急病院に運ばれ意識が戻らない状態となった。 そして、サイラスがラリーの事件を担当することになり、ふたりは顔を合わせざるを得なくなるのだった。 貧困や人種差別や父親の暴力など、ふたりの少年は抗えないねじれた運命に翻弄されてきた。そして、後半になってそのねじれが少しずつ解かれていく。 謎解きやどんでん返しがあるわけではないが、読ませる見事な筆さばきだ。 | ||||
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「ミステリ−」というジャンルへの期待から、 華麗な謎解きや、驚くようなトリックを求めて読んだなら、失望するかもしれない。 事件とその解決は、2人の主人公の出会いと再会を描くための「きっかけ」に過ぎない。 むしろ、描かれているのは、 主人公2人の回想や、それを通して、現在の自分を見つめていく様子など、 いわゆる「純文学」的な要素だと言ってよい。 アメリカ南部の、貧しい暮らしを送る人々(黒人、白人双方)の様子が描かれ、 それが、物語に現実感を与える。 主人公たちもその貧しさの中にいて、それだからこそ、別れ、再会したのだ。 なぜ、自分の人生はこんなふうになったのか、なってしまったのか。 なぜ、親しかった者と別れたのか。 再び会い、ともに生きるようになれるのか。 普遍的な問いがこの物語の底流にあると感じられる。 そして、それこそ、この物語が解いてみせる「ミステリー」なのかもしれない。 | ||||
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デビュー短編がアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀賞を射止めるという強運の持ち主で以後は3年から4年毎に著作を刊行して来た寡作家フランクリンが著し長編3作目にしてロサンゼルス・タイムズ文学賞を受賞した2010年度刊行の話題作です。本書の風変わりな原題については著者が本文に入る前に冒頭で「Mississippi」のSの文字を意味する言葉だと教えてくれていて中々に文学的な香りがする洒落た表現だなあと感心させられますが、日本語の訳題もシンプルな言葉をつけ足して二人の少年の友情が失われ別々の道を歩む事となる本書の内容を上手に表した実にお見事なセンスだと思います。 人口五百人前後のミシシッピ州の片田舎シャボットで唯一人の治安官を務める通称‘32’(野球の背番号)のサイラス・ジョーンズは陽性で仲間達から慕われる人気者、片やホラー小説が滅法好きな小心者の変人で25年前に起きた少女失踪事件への関与を疑われ周りから除け者にされて一人孤独に暮らすラリー・オット。二人は実は共に高校生だった25年前の夏の日に確かな友情で結ばれていたのだが、不運にもある諍いの為に仲違いしてしまいそれ以来すっかり疎遠になっていた。しかし最近になって町で再び少女失踪事件が起きるに及んでやがて互いに避け合って来た二人の運命が劇的に交差して行くのだった。 本書のミステリーとしての興味は、25年前と再び繰り返された現在のそれぞれ2つの少女失踪事件の真相と、それからオマケとして意外な人間関係の真実になりますが、物語の中に怪しげな容疑者やさまざまなヒントが散りばめられていますので、私には最後に明かされるどちらの答えにも大きな驚きはありませんでした。もしも本書は実はノンフィクションなんだよと言われたとしても素直に信じられる様な真実に極めて近いリアリティーを備えた物語だと思いますし、それは現代ミステリーが目指す素晴らしい理想の完成形と言えましょう。でも唯一不自然に思ったのは、サイラスが幾ら高校生で頼りなかったとしてもあれ程世間を騒がせた大事件の行方にあまりに無関心で無責任に過ぎたのではないかという不審の念でしょうか。本書はミステリーというよりも普通小説の文学作品に近く、その魅力は謎解きの興味や犯人とのアクション・シーンのサスペンスにはなくて、やはり素朴な風土に溶け込んだ人と人とが織り成す厳しくも温かな人間ドラマにあるのだと思います。苦労続きの貧しい黒人の母子として南部の田舎町へ流れ着いて来て不幸になってもおかしくないのに自分の力で運を切り開いて幸福を掴んだサイラスに対して裕福な白人の子なのにシャイで変わり者なせいでみんなから仲間はずれにされて寂しい人生を歩んで来たラリーと真に対照的な二人が長い間のわだかまりを解いて友情を復活させる場面は何気なく書かれてはいますが読む者の心に深い感動をもたらしてくれるでしょう。そしてこの友情は混じり気なしの本物で、終盤に明かされる秘密さえも必要なかったのではないかと私は思います。それからもう一つだけ私が密かに感動を覚えるのは、サイラスが殺されそうになりながら悄然とそれを受け入れようとする心情や世間から阻害されても決して恨みの思いを抱かない彼の信じられない程の人としての純粋さです。 本書は昨年度のミステリー賞の多くに候補作としてノミネートされた程の評価の高い傑作なのですが、私はきっと著者の事ですから大きな反響も全く影響せずその長い創作ペースは決して変わらないだろうと思いますので、また数年後に熟成された傑作が生み出される事を信じて次回作を気長に楽しみに待ちたいと思います。 | ||||
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デビュー短編がアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀賞を射止めるという強運の持ち主で以後は3年から4年毎に著作を刊行して来た寡作家フランクリンが著し長編3作目にしてロサンゼルス・タイムズ文学賞を受賞した2010年度刊行の話題作です。本書の風変わりな原題については著者が本文に入る前に冒頭で「Mississippi」のSの文字を意味する言葉だと教えてくれていて中々に文学的な香りがする洒落た表現だなあと感心させられますが、日本語の訳題もシンプルな言葉をつけ足して二人の少年の友情が失われ別々の道を歩む事となる本書の内容を上手に表した実にお見事なセンスだと思います。 人口五百人前後のミシシッピ州の片田舎シャボットで唯一人の治安官を務める通称‘32’(野球の背番号)のサイラス・ジョーンズは陽性で仲間達から慕われる人気者、片やホラー小説が滅法好きな小心者の変人で25年前に起きた少女失踪事件への関与を疑われ周りから除け者にされて一人孤独に暮らすラリー・オット。二人は実は共に高校生だった25年前の夏の日に確かな友情で結ばれていたのだが、不運にもある諍いの為に仲違いしてしまいそれ以来すっかり疎遠になっていた。しかし最近になって町で再び少女失踪事件が起きるに及んでやがて互いに避け合って来た二人の運命が劇的に交差して行くのだった。 本書のミステリーとしての興味は、25年前と再び繰り返された現在のそれぞれ2つの少女失踪事件の真相と、それからオマケとして意外な人間関係の真実になりますが、物語の中に怪しげな容疑者やさまざまなヒントが散りばめられていますので、私には最後に明かされるどちらの答えにも大きな驚きはありませんでした。もしも本書は実はノンフィクションなんだよと言われたとしても素直に信じられる様な真実に極めて近いリアリティーを備えた物語だと思いますし、それは現代ミステリーが目指す素晴らしい理想の完成形と言えましょう。でも唯一不自然に思ったのは、サイラスが幾ら高校生で頼りなかったとしてもあれ程世間を騒がせた大事件の行方にあまりに無関心で無責任に過ぎたのではないかという不審の念でしょうか。本書はミステリーというよりも普通小説の文学作品に近く、その魅力は謎解きの興味や犯人とのアクション・シーンのサスペンスにはなくて、やはり素朴な風土に溶け込んだ人と人とが織り成す厳しくも温かな人間ドラマにあるのだと思います。苦労続きの貧しい黒人の母子として南部の田舎町へ流れ着いて来て不幸になってもおかしくないのに自分の力で運を切り開いて幸福を掴んだサイラスに対して裕福な白人の子なのにシャイで変わり者なせいでみんなから仲間はずれにされて寂しい人生を歩んで来たラリーと真に対照的な二人が長い間のわだかまりを解いて友情を復活させる場面は何気なく書かれてはいますが読む者の心に深い感動をもたらしてくれるでしょう。そしてこの友情は混じり気なしの本物で、終盤に明かされる秘密さえも必要なかったのではないかと私は思います。それからもう一つだけ私が密かに感動を覚えるのは、ラリーが殺されそうになりながら抵抗せずに悄然と運命を受け入れようとする心情と世間から阻害されても決して恨みの思いを抱かない彼の信じられない程の人としての純粋さです。 本書は昨年度のミステリー賞の多くに候補作としてノミネートされた程の評価の高い傑作なのですが、私はきっと著者の事ですから大きな反響も全く影響せずその長い創作ペースは決して変わらないだろうと思いますので、また数年後に熟成された傑作が生み出される事を信じて次回作を気長に楽しみに待ちたいと思います。 | ||||
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タイトルとあらすじに惹かれて読んだ作品です。個人的にはミステリ要素にあまり期待せず、ビルドゥングズ・ロマンの色が濃い作品かなぁと予想していました。 実際には、主人公2人のどちらについても、ビルドゥングズ・ロマンというほど丹念に少年時代から現在への変化を描いているわけではありません。けれども記憶の底から一時を切り出したような表現は、饒舌すぎるよりはるかに魅力的でした。 特に主人公の一人、レイプ殺人を疑われ孤独な日々を送ってきたラリーは、アメリカの小説にはミステリ・純文学問わず多く現れる風変わりで純粋な魂を持った男性ですが、その抑えた造形がすばらしい。決して聖人化していない。善良な弱者とも言い切れない。非常に魅力的な人物です。他の人物がともすれば類型的な中で、ストーリーにリアリティを与えていると思います。 ただ、ミステリとしてはどうなんだろう...驚くような二転三転はなく、サスペンスというほどの緊張感もない。最初からそれらを求めていない私には不満もないけれど、普通のミステリ好きには物足りないんじゃないかと推測するのですが。 手に汗握るストーリーじゃないと満足しない方には不向き。ミステリをベースにした読み物をゆったり楽しむ方におすすめです。 | ||||
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粗筋は紹介通りの典型的な推理小説。そこに南部の様々な人間模様を織り込んで読ませる小説。例えば主人公の2人が白人とアフリカ系でしかも舞台は偏見や差別の色濃いと言われる南部の地方なので、当然人種問題が(控えめながら)発生したり、主人公2人の家族も様々の出自を背負っていて単純に良い悪いとは言えない複雑な人生を抱えていたり、他の登場人物も被害者を含め色々な感情を秘めていたりと主に登場する人物たちの人間関係が話を牽引していく小説となっています。最初に推理小説と書きましたが、普通小説に推理小説的要素を盛り込み、アメリカ南部の現在を活写しようとした小説に思えました。作中、i Podなどが出てきてあくまで現代の南部であることを読者に強調しようとする作者の意図、アメリカ南部の現在を伝えたい為に書かれたと思われる小説であることが、個人的に印象に残りました。 ここからは作品と関係ない私論なので読まないでいいですが、最近の推理小説は昔みたいなトリックが出尽くして、代わりに小説として深化、純化する方向に進んでるように思えますが、どうでしょうか(T・H・クックの新作もそうでしたが)。私の読書量が足りず偏っているからかもしれないですが。小説として面白ければいいですが、昔の推理小説みたいに外連味のある謎解きとか今後どんどん減っていくのかと思うと多少複雑な気持ちです。 | ||||
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製材業が主たる産業のミシシッピ州の町。25年前の少女失踪事件で、少女を最後に見たことで犯人と疑われ様様な規制を 受け続けるラリー(白人)、彼と友情関係を構築しながら、人種問題も抱えラリーを見捨て離反し一旦は街を離てゆくサイラス(黒人)。 25年の時を経て、同様の事件が起こり、ラリーは撃たれ、その真相解明捜査の過程で明かされてゆく、世代を遡った確執、と いまや警官となったサイラスの秘密... 登場人物はいずれも必死に、その日を暮らす小市民達で、小さなその町が全てで、風評に惑わされ、ラリーを苦境に追い込んだとしても とても彼らを責める事は出来ません。ラストには衝撃の人間関係も用意され、盛り上げ方もジックリで、深秋に読むに相応しい好著であると思います。 ただ、ジックリ検討すると、そのプロット(大筋)とその衝撃的な”ラストの仕掛け”が非常にハートの『川は静かに流れ』あるいはナンシー・ピカード 『凍てついた墓碑銘』に似ていると私には感ぜられ、どうしてもfull mark (5☆)を付けること値ませんでした。 それと、これ完全な"誤植"と思うのですが、p138 & 139 スーツケースをよたよた引っ張って歩いているのはラリーではなくサイラスであると思いますが... | ||||
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