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(短編集)
犯罪
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犯罪の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.21pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全114件 101~114 6/6ページ
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出張時の搭乗前、飛行場内の書店にて何となく眼に留まり気になったので購入。正解でした。時間が経つのを忘れて物語に入り込みながら読み耽りました。 著者が実体験で遭遇したのであろう様々な犯罪者が登場人物のモティーフになっていると思われますが、読んでいて人間存在の深淵というか怖さ(あるいは素晴らしさ)を垣間見させてくれる一書です。著者は法律家(弁護士)の由ですが、お堅い起訴状ないしは判決文を想起させる短文形式の事実・心理描写のシークエンスでこのような物語を紡ぎ出せるというのは、一つの発見でした(文体の勝利!)。また、所々に記される刑事司法に関する鋭い警句も一読に値します。 「ある警官がある裁判官に、弁護人は正義という車のブレーキでしかないといったことがある。その裁判官は、ブレーキがなければ車は役に立たないと答えたという。刑事裁判は、この力の綱引きのなかではじめて機能するのだ」(120頁)。 重厚さという点では、読後の余韻はベルンハルト・シュリンクの『朗読者』に近いものがありましたが、三篇選べと云われれば、個人的には「タナタ氏の茶碗」、「正当防衛」そして「エチオピアの男」になります。 | ||||
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「エチオピアの男」だけで買う価値あり。 移民に関するお話が多かったですね。 ドイツの社会問題の一部も垣間みられて興味深かったです。 “リンゴ”がキーワードなのを心に留めて読まれると味わいがまた深く。 表紙のデザインも良い。 | ||||
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ミステリ小説を読んでいて違和感を感じることの多くは、そこに描かれる犯人の動機や心理が、理解しやすいことにある。そこに登場する犯罪者は、明らかに我々の良く知っている人々、いや、我々自身なのだ。 しかし本物の犯罪者が、そんなにわかりやすい人物だろうか? 我々と同じように考える人々は、やはり我々と同じく、犯罪など犯さないのではないだろうか。 シーラッハの短編に描かれる人々は違う。 日本人はどうにもこうにも日本人らしくないし、犯罪一家の天才児にもリアリティはない。 しかし、日常犯罪者に接する職業だけが目にする、罪を犯す人々の、転がり落ちるようにそこを目指す情緒がはっきりと読み取れるのだ。 我々がニュース記事に記載された犯罪者の行動に感じる、理解できない思い、独特の違和感にぴったりと符合し、その感触は、まさに実物の犯罪者に会ったと思わせる。 さらりと簡略された表現も美しく、他のどの小説にも似ていない独特の作品集だ。 | ||||
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いやぁ,本当に面白かった。ある意味,感動的です。 本書は短編集で,全部で11篇の物語が収録されています。 本書には,くどい情景描写もなければ,長々としゃべりまくる人物も登場しません。場面転換が大胆で,断片的な映像のカットが次から次へと提示されるようなイメージと言ったらいいのでしょうか。あるシーンで普通に生きていた人間が,数カット後ではあっけなく死んでいたりするわけです。 救いようのない悲惨な話もありますが,悲惨な中にも心が温まるような話,無性に心を動かされる話も収録されています。 個人的には「ハリネズミ」「棘」「エチオピアの男」の3篇が気に入りました。 | ||||
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読むことをやめることができない。 静謐なモノクロのドキュメンタリー映画を見るようである。 読者は身体を離れた視点そのものとなって、11の犯罪を見届けることになる。 やがて、今見ているものが「物語」なのか、それとも事実の報告なのか、判然としなくなる。 それは、11の物語が特異な犯罪を取り扱っているにもかかわらず、その経緯の中に、人間として共感できるものが見いだされ、理解できるからである。 11の短編には切れ味の良し悪しがあるようには思う。しかしそれが更に物語に真実味を与えて、尚一層犯罪に関わった人間の姿を浮かびあがらせる。 | ||||
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11の短編を束ねた一冊。ドイツ人作家シーラッハの作品としてはこれが本邦初訳のようです。 収録作品のどれもがなんからの犯罪に手を染めた人々の姿を描いています。 一生愛し続けると誓って暮らしてきた医師と妻。それでも老妻を手にかけた夫の理由とは何だったのか。(「フェーナー氏」) 資産家の父親には愛されず、互いだけを頼りに生きて来た姉と弟。姉が弟を溺死させた経緯とは。(「チェロ」) ネオナチ青年二人にからまれ、そのまま彼らを殺してしまった中年の男。果たして彼の行為は正当防衛か過剰防衛か。(「正当防衛」) エチオピア人孤児だった男が2度も銀行強盗を行なうに至った事情とは。(「エチオピアの男」) 被疑者たちの弁護を引き受けた弁護士の視点で語られるこの11の物語のいくつかは犯罪そのもの描くというよりは、人はなぜ犯罪に走るのかを見つめ、そのやむにやまれぬ胸の奥の心模様をつぶさに描いています。憎むべき犯罪であるはずなのに、物語に私たち読者の心模様がどこか重なることを否定できないのです。 そして思い至るのは、むしろそうした犯罪に至る彼らの姿こそが、人間であることの証であり、捨ててはならない人間性を描いているといえるかもしれないということなのです。 そしてまたどれもが、一種独特の乾いた短い文章を連ねて紡がれている点が特徴的です。 犯罪者の心模様をウェットに描かないからこそ、説明的ではありませんが、だからこそむしろ強く迫って来るものがあるといえるでしょう。 なお、私は「チェロ」という作品に特に心打たれたのですが、これからこの『犯罪』を読まれるかたには、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」を先に読んでおくことを強くお勧めします。私があの小説の一番のお気に入りで読後以来幾度も反芻してきた一節が出てくるのです。あの言葉が胸に沈むのは、やはりフィッツジェラルドの小説を手にしたことのある読者だけでしょう。 | ||||
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ありそうな犯罪のエピソード、でも現実とは思えないけれども、これはあり得る、実話だろうとも思わせる。著者の淡々とした表現の巧みさに、引き込まれる一冊でした。 | ||||
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賞をたくさんとっているようですが、この作品が文学として優れているのかどうかについては、私は首をかしげます。ただ、そういうのを除くと読み物としては、とてもおもしろいです。短編のどれもがとてもリアルで、新鮮で、さすがに弁護士が書いた作品という気がします。実際に、ベースには実話があるのではないでしょうか。それを上手く組み合わせたり、アレンジしたりして、作品として仕上げている? とにかくリアルな肌触りのする短編ばかりなので、そんな気がしました。 私のお気に入りは、「正当防衛」です。謎の男の正体がわかってくると、そのプロフェッショナルぶりに感動すらおぼえます。他にもいくつかの作品は、余韻がいつまでも残りました。読んでみる価値あり、と思いますよ。 | ||||
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犯罪をめぐる11の物語からなる短編集。 淡々とした筆致で、描写も必要最低限。 コンパクトにまとまっており、それでいて読みやすく、 短編小説のお手本のような作品群だ。 ただ、いわゆるミステリーではないため、 その辺を期待して読むと肩透かしを食うかもしれない。 どちらかというと純文学に近いテイストで ボルヘスやカフカの短編群を思い出した。 (もちろん、『犯罪』の方がより現実に即したモチーフを扱っているが。) どの作品も甲乙つけがたいが、 個人的には『タナタ氏の茶碗』『緑』『棘』が良かった。 不条理の中の条理を、作者が真摯に丹念に描いている。 全体を通してみても、冷徹な視線であるにも関わらず、 彼ら「犯罪者」を見守る視線はどことなく暖かい。 罪を犯すことの本質を問うているようだ。 また、巻頭と巻末に掲げられた警句は、一考の価値があるだろう。 読者それぞれの回答があるだろうが、 この警句こそが作者が仕掛けたミステリーなのかもしれない。 いずれにせよ、次作が楽しみな作家だ。 個人的には長編を読んでみたい。 | ||||
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すごいすごい。この密度の濃さ。 大昔に、ロアルド・ダールやダンセイニの短編を読んで、 なにか狐につままれたような不思議な気分になったことを思い出します。 海外文学には、時として、こういう濃密な短編集が出現しますね。 ひとつひとつは短いのに、強烈な印象を残します。 「神の視点」であるかのような語り口。 実際の設定では、すべて語り手の弁護士の回想のような形をとっているのですが、 乾いた、まったく無駄のないその語り(描写)は特筆すべきものでしょう。 短いのに、ひとりの人間の一生を覗いてしまったかのような読後感。 一編一編が短いので、暇なときに少しずつ読む、という楽しみ方もできます。 年をとると、重厚な長編を読み通すのがつらい時があるので(笑) これはありがたいですね。 個人的には、「正当防衛」の不気味さ、「エチオピアの男」の読後感のよさが 印象に残っています。 買って損のない短編集です。 | ||||
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本編を読み終わると、最後にフランス語で<これはリンゴではない>との一節が残される。 本篇11編すべてに<リンゴ>が登場するのに気づいていたので、何かの謎掛けだと思うのだが... <リンゴ>は時に、物語りのキーポイントだったり、犯罪の傍観者だったり、羊の目だったり 相当深い示唆含みだと勝手に思うのだが、結局よく分からん。 さて、本書に対する賞賛は他レビューに詳しいのでここからは(最後の一節の謎が解けない事に対する悔し紛れの) 私の本書に対する”妄想”レビューなのだが、本篇11編の内、ドイツ人犯罪は5編、不法合法を含めた移民の犯罪編は5、 どちらか不明が1編(正当防衛)。登場する移民もトルコ、レバノン、ギリシャ、ベトナム、パレスチナ、東欧、そして(たぶん)日本 (タナタなどという苗字は聞いたことがないのだが...)と多種多様、現代ドイツの犯罪に含有される犯罪傾向を ある程度表した数構成ではないかと邪推している。問題はドイツ人の犯罪編に関しては、そこはかな人間の哀しみを 醸し出した話が殆どなのだが、移民の犯罪はどこか<ずる賢く><凄惨残忍さ>がそれとなく強調されている気 がするのは私だけか... おりしもドイツだけではなくフランス、イタリア、オーストリア等では、このところ極右=外国人労働者排除 の台頭著しいニュース が伝わっており、<これはリンゴではない>の謎解きが<樽の中の腐ったリンゴ>でないことを祈るのだが... 蛇足だが、作者の祖父パルドウールは、戦前ウイーンのユダヤ人追放に関与し、戦後逃げ回ったが、観念して出頭、 死刑を求刑されたが、<フランス人>弁護士の尽力で、死刑を回避出来、禁固20年に減刑されている。 (ただし刑期の短縮は一切なし)妻とは獄中で離婚しており、孫の作者が、祖父と同じ苗字を名乗ると言うのは 尊敬の念と考えていいのか? あくまで妄想なので聞き流してください。 | ||||
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結論から言うと、どの短編も傑作の大当たり! 感情を排して淡々と語られていくが、ひじょうに印象的で、読後にも余韻にひたれる。 ・「フェーナー氏」Fahner 実直な老医者が、悪妻を殺した理由は? ・「タナタ氏の茶碗」Tanatas Teeschale 日本人実業家から、金庫を盗んだチンピラ。 中に入っていた家宝の茶碗だけは、いくら出しても取り戻したい被害者。 それを耳にした街の顔役は、チンピラたちを傷めつけるが…… ・「チェロ」Dee Cello 資産家のもとに生まれながらも、父を嫌い、二人きりで生きる姉弟。 姉はチェロの才能があり、音楽家を目指すが、弟が事故で脳に障害が残り…… ・「ハリネズミ」Der Igel 強盗で捕まった、犯罪一家の一人。 馬鹿だと思われている末っ子は実は天才で、兄を助けるために法廷で嘘をつく。 ・「幸運」Gluck 戦争で、ドイツに密入国した女性。 売春の最中、相手が心臓麻痺で死んでいしまう。 慌てた彼女は、同棲している恋人が帰ってくるまで外で待つことにするが、 入れ違いで彼が帰ってきて、死体を見つけてしまう。 このままでは、彼女が逮捕されると考えた彼は…… ・「サマータイム」Summertime ホテルで、不倫相手を殺した容疑で捕まった実業家。 証拠は彼が犯人と示している。 それを崩すために弁護士が見つけた証拠の穴とは? ・「正当防衛」Notwehr 駅で二人のネオナチに絡まれた男。 彼は全く動揺することもなく、二人を殺す。 正当防衛の適用をするべきだが、刑事は、彼の身元を証明するものが皆無なのが気に入らず…… ・「緑」Grun 羊を殺し、眼球を繰り抜く伯爵の息子。 父親が農夫に弁償していたのだが、近所の少女が行方不明になり…… ・「棘」Der Dorn 彫像「棘を抜く少年」の棘がどうなったのか気になってしょうがない博物館警備員。 少年の足は化膿しているのではなかろうか? 彼は代替行為として、靴屋にの靴に画鋲を入れるいたずらをすることによって、不安感を解消した。 数十年が経ち、定年間近になり…… ・「愛情」Liebe 彼女の背中をナイフで切ってしまった青年。 事故と証言するが、真実は…… ・「エチオピアの男」Der Athiopier 強盗直後に、逮捕された男。 彼はエチオピアの貧しい村を救った名士だというのだが…… 様々な犯罪、というより様々な人生の物語。そこには一つとして同じものは存在しない。シンプルな筆致なのに、そこに描き出されるのは、血肉を備えた犯罪者たちの人生。 個人的には京極堂シリーズとちょっと感触が近い印象。どんなに奇妙に見えても、彼らの人生、行動と思考を丹念に追うことにより、通常と異常(犯罪行為)の溝が埋まり、その奇妙さは納得出来る理由に落ち着く。 弁護士が作者だから被告側の視点なのは当然なんだけど、特徴的なのは、事件の真相やいわゆる正義が、ここでは求められないこと。事件そのものよりも、依頼人の権利を守り、最善をつくすことが大事。だから、解決しないまま終わる物語もある。 奇妙な味、トリック、悲劇、ハートウォーミング、謎、と短篇集としても多彩。 みんないいんだけど、あえて選ぶなら「ハリネズミ」「正当防衛」「緑」「棘」「エチオピアの男」かなぁ。う〜ん、「サマータイム」も…… 今年ベスト級の、オススメ! | ||||
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ドイツの現役弁護士シーラッハが2009年に著すや忽ち大ベストセラーとなり文学賞三冠の獲得や映画化等々、話題沸騰の衝撃のデビュー作の紹介です。本書の最大の魅力は著者の刑事事件弁護士としての豊富な経験が活かされたドキュメンタリーなのではと錯覚させるリアリティーに満ちた犯罪ドラマと嘘偽りの無い真実味溢れる人間性の描写にあるでしょう。各編はミステリー小説の様に結末の意外性を狙った物ではなく、ほぼ予想通りの展開に終始しますので少し物足りなさを感じる方もおられるでしょうが、それでも強引さや不自然さのない物語は完全に納得が出来て真実に触れられた感慨と深い満足感を得られるだろうと思います。 『フェーナー氏』地域社会で尊敬される老医師が最愛の妻に為した愛憎相半ばする凄惨な犯罪の顛末。『タナタ氏の茶碗』空き巣に入られ家宝の茶碗を盗まれた日本人富豪が警察とは別に闇で手荒な手段に訴える恐るべき裏社会の物語。『チェロ』富裕な父の愛を拒否した姉弟が不運続きの果てに迎える悲劇とあまりにも哀し過ぎる結末。『ハリネズミ』犯罪者一家の中で唯一人の真面目で利口な息子が兄を救おうと裁判で策略を巡らせる愉快な読み心地の一編。『幸運』戦争で故郷を追われベルリンに流れ着き娼婦となった女性が恋人と出逢い異常な犯罪ではあるがかけがえの無い体験をする。『サマータイム』娼婦殺人事件の謎を追う最もミステリーらしい一編ですが、鮮やかと感心しながらも検察側が不注意過ぎると思います。『正当防衛』暴漢二人を逆に殺害してしまった男が隠し通したヤバ過ぎる事情。『縁』羊の目玉をくり抜く異常な犯罪を執拗に続ける伯爵家の少年が心に抱える病の謎。『棘』博物館に勤める男が大理石像を見て偏執狂となり散々悩み抜いた揚句退職の日に思い切った行動に出る。『愛情』女性への愛が異常な欲望を生み出し遂に凶事を招いた青年の哀しい心の闇。『エチオピアの男』ドイツでの不幸な境遇から偶然エチオピアの寒村で幸せを掴んだ男が、やがて銀行強盗の罪を犯してしまい再び不幸に逆戻りかと思えたが・・・・。人間の善意を改めて信じ直させてくれる本書中最も感動的で私が一番大好きな一編です。 読後心を捉えて離さない理由あって罪を犯した人々の数奇な人生の物語を紡ぎ出す確かな才能と実力を感じさせる著者の2010年に刊行された第二作「Schuld」も早い機会に翻訳されて読める日が来る事を待ち望みたいと思います。 | ||||
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強烈だ。 世に多く出ているミステリーやサスペンスのように、あっと驚くトリックがあ るわけでも、犯人が誰かわからない緊張状態が続くわけでもない。 ただ犯罪が起こる。 全編とおして語られるのは「犯罪」であり、人の精神が軋んでいく音が聞こえ てくるような話もあれば、ごくふつうの人が犯罪を犯す、そのスイッチが入っ た瞬間に立ち会ってしまったような薄ら寒いものもある。 一編20ページぐらいなのだが、この衝撃はすさまじいものがある。 簡潔な文章は読みやすいだけでなく、一種独特の空気感を持っている。 決して多くは語られていないのに、逆にそれが想像力を刺激して、読んでいて かなり怖い。怖いのだが、なぜか目が離せなくなる。 行間から何か漂ってくるみたいで、はじめてカフカを読んだときや、 ヒッチコックの映画をみた時のような、いい知れない不安を思い出した。 と、ここまで褒めておいてなんだが、実は最初の三編くらいで、読むをやめ ようかと思った(笑) 犯罪を扱っている性質上、グロテスクなものや不快に感じる描写が少なくなく、 「ミステリーズ!」に先行掲載された「棘」のカンジが好きだった私としては 前半に続いた凄惨なものが、結構重たかった。 でも、同じように思われた方にあえて言いたい。最後まで読んでみてほしい。 事件はどれも異様で奇怪なものばかりだが、犯罪を通して語られるのは、さらけ 出された人間性であり、誰かの人生だ。不意の突風にあおられたリンゴの実が落 ちるように、犯罪へと落ちる危険性を誰もが持っている。 読み終わってみると、事件に対するおぞましさと共になぜか人へのいとおしさも 感じる不思議な短編集だ。 | ||||
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