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博士の愛した数式
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博士の愛した数式の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.32pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全704件 421~440 22/36ページ
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ルートと博士のほのぼのとした会話。その後ろ側にある設定の救いのなさ。静かな物語。生き生きと語られる数字たち。どれも魅力的です。そして不思議に色っぽい話でした。隠された過去とか弱いんです。博士は多分かつて罪を犯した。それが一般的に罪かはともかく、作中に出てくる彼は不器用なほどに清冽で、それが故に自分を許すことができなかったのではないかと思います。それでも本来ならばすべては時が解決したでしょう。けれど博士の時計は壊れてしまった。彼はもう、新しい友人を作ることはできない。思い出も作れない。時間という特効薬を彼は持たないのです。底知れない先行きのなさで、ルートが"成長する"子どもであることと比べると、その暗さや重さには軽く驚きます。二人の会話は微笑ましく暖かですが、それでもそれを大事に抱えてゆけるのはルートだけでしかない。博士にとっては、毎日ルートは「はじめまして」の人なのです。そんじょそこらの片思いより切ないです。それでも一つ救いがあるのは、博士が何時間もかけて問題を解くことができる、ということです。メモや計算式で、博士は持たない記憶を補える。「余白が足りない」と証明されなかった数式が、幾人もの学者の研究を経てついには証明されたように。神様に比べれば人の一生もまた80分くらいのものかもしれなくても、つなげることでその手帳に記された真実がのぞきみえる。博士は必ず記憶を失うけれど、それでも真実がそこにあり、努力を続けるのなら、いつか何かが残って奇跡が起きるかもしれないなぁと思うのです。願いや祈りもそこにはあるさ。絶望や痛みがやはりあるのと同じように。胸を打たれる作品でした。 | ||||
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完全数 (かんぜんすう) とは、その数自身を除く正の約数の和が、その数自身と等しい自然数のこと。6 = 1+2+3, 28=1+2+4+7+14 など。古代の人は、最初の完全数が6なのは「神が6日間で世界をつくったから」、次の完全数が28なのは「月の公転周期が28日」と関連があると考えていたとされる。常識ですよ、下のお方。 | ||||
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数学と野球という全く別々の話題、記憶が80分しかもたないという一見むりのある設定。こんな小説を破綻なく、しかもあっさりとした口当たりでまとめる事のできた作者の腕はすごいと思う。この作品をまとめられたのは、「博士」という強烈なキャラを中心にすえて、すべての話題やテーマを結び付けているからだ。不器用で、それでも一生懸命な博士の姿は、ほほえましく、応援したくなる。そんな博士の姿をおって、ついついページをめくってしまうのだ。ただ、博士は不器用だ。博士は、真髄なるものを「かぎ括弧」にくくった言葉にしていない。ヒントは、主人公からみえる彼の描写と、彼の残す数式だけだ。 そうした「読み取る」面白さが、この本の一つの見所ではないだろうか。最近ラブストーリーかちょっとハードなストーリーが人気を集めているが、これはまったく異色である。だから、あんまり本を読まない人(そんでもって話題の本しか読まない人)には、あまりおすすめしない。多分物足りないとかんじてしまうだろう。 文章を読むのが好きな人には、この哲学的な面白さがわかると思うので、ぜひよんでみてほしい。 | ||||
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世間で話題になっており、大学の恩師からも薦められ読みました。 登場する三人(博士、私そして√)が80分に制約された世界で織り成す人間模様は、日本の伝統である上質な私小説に久々に出会えたとい感じがしました。ただ明治期の私小説は異なり数式が人間関係のあやになるところが現代風であり、全く斬新な設定だと思う。 | ||||
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忙しくて映画を観にいくことは出来なかったのですがそれが悔やまれました。というのも温かいものを感じたくて読んでみたわけですが80分ごとに消えていく記憶というサイクルの中で80分しか保てないからこその数式を通して愛情というかそういったものを感じさせるところは作者の成せる業といえるのでしょうが、これで終わり??といった感が残ったのも事実でした。そこの部分を埋めてくれるのが映像なのかなあと少し期待してしまうのですが小説と映像作品を比べちゃうなんて少し間違ってますねwでもさらにイメージが高まるなら、もちろん逆に落ちてしまうこともあるけどもう一歩踏み込める!という感を持たせてくれる作品だったと思いました。 | ||||
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久しぶりにおもしろい小説を読んだ。高二の娘が借りてきた本を、イッキ読みした。80分しか記憶が続かない不思議な数学者。子供には無限の時間を惜しげもなく用意し、誉め、励まし、保護する純粋な博士。理想の父親像でもある。映画も是非見よう。 | ||||
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家政婦「私」と√の愛に感動し,博士の苦しさ,子供に対する愛に感動し.気づけば涙が出ていました.もし私が80分しか記憶がもたなかったら?日々何を思い,過去をどのように感じ,未来にどのような思いを抱くのか.とても考えさせられた1冊です. | ||||
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なんていい本なんだろう。 と、心の中で思い なんていい本なんだろう。 と、口に出したことか。 私には相性のいい本でした。 余韻を楽しみながら 何度も読み返してしまう。 読むほどに話に吸い込まれ 読むほどに切なくなる。 映画も期待したい。 | ||||
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すばらしい作品だと思いました。事故で記憶が80分しかもたない数学博士と家政婦。2人の関係は博士にとっては毎日初対面という状況の中で、はじめはいったいどのように話がすすんでいくのだろう?と思いましたが、家政婦の息子のルートがでてくることによって、話はどんどん美しく、深くなっていきます。シングルマザーで家に息子をおいてひとりで夜遅くまで働かなくてはいけない主人公。ただひたすら母をまっているけなげな息子。その息子が博士と短い期間であっても、一緒の時間をすごせたことは息子にとってとても有益であったはずです。息子をもつ母として、こんな純粋な先生が数学を教えてくれたら、子供はみんな数学がすきになるはず・・と思わずにはいられませんでした。義姉と博士の秘密にも注目です。 | ||||
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私の小川洋子デビュー作です。中途半端に理系をネタにした本ってあまり好きではないのですが、小川洋子さんはほんとに数学を丁寧にやさしく扱ってくれています。博士の数学に対する無邪気であり余るほどの誠実さは読んでいてほんと清清しい気分になります。最後は号泣してしまいましたが、心がほんのり温かくなりました。ルートとキャッチボールする博士の映像が目に焼きついています。 | ||||
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前行性健忘症、という病気をご存知だろうか。もし「聞いたことがない」という方がいらっしゃったら、是非とも本書を一読してみるべきだ。その切なさ、辛さが痛いほど伝わってくるはずだ。自分もこの病気になる可能性はゼロではない。この種の病気は、患う前にその存在を知っておかないと手遅れになる。また、ご家族の認知症でお悩みの方にもお勧めしたい。「記憶」について深く洞察する機会を与えてくれる本だと思う。陳腐な例えで申し訳ないけれど、作品の根底に流れるテーマは映画『レインマン』に似ているように感じた。本書の映画版は未だ見ていない。しかし、活字を辿った限り、私にはそう思えた。文章もまた巧い。数学と文学のように相反する題材を、巧みな人物設定と筆力で自然に取りまとめている。何といっても比喩がすばらしい。数学に関する会話が一篇の詩のように思えてくる。現実にはあり得ない程、善良な人物設定かもしれない。けれど、読みながら私は、介護、子育て、差別など、現代に蔓延する様々な問題にも思いを馳せることができた。本書は、実利の影に隠れて見失いがちな「大切なモノ」の感触を、私達に思い出させてくれる。 | ||||
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小川洋子さんと言えば、どうしても「妊娠カレンダー」のイメージが強く、今まで読んだことがありませんでした。題名のキッパリした感じに惹かれ、若きシングルマザーの家政婦、80分しか記憶の持たない数学者、設定のこの2点に興味を持ち文庫本になってすぐ買ってみました。博士の住む古い家、博士の黴臭い書斎、語り手の家政婦の作る料理のいい匂いがする台所、著者の巧みな描写が静かに、しかし、しっかりと博士の生きるそのひっそりとした世界を見せてくれます。ストーリーは、ひとつひとつがじっくりと静かに懐かしく、少し哀しい色を帯びて、小さな出来事、大きな事件を編みこみながら、ゆっくりと紡がれていきます。家政婦の小学生の息子と博士の友情の他に、博士の昔の恋物語の秘密、野球選手の江夏への博士のファンぶりなどが、スパイスになって効いています。久しぶりに、いい小説を読んだな・・という感想を持ちました。 | ||||
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物語は大きな振幅も無く、比較的淡々と進みます。ストーリーが波打っても、博士の記憶と同じく80分経つと元の”ゼロ”の位置に戻ってくるように、ひたすら静かに進んでいきます。 でも、博士が語る「日常に潜む数字にこめられた神の意思」はまるで小さな宝石のように美しいです。そして、わたしとルートと博士の小さなエピソードたちがとても温かく、幸せな気分になれます。 ハッピーなストーリーというわけでは無いのですが、温かみがあり読後感がとてもいい本でした。 | ||||
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この前読んだ「99.9%は仮説」という本で、世の中のほぼ全ては仮説であると書いてありました。つまり、真理など存在し得ない(常に科学は反証可能性を持つから)という話がありました。しかし、数学には「真理」があります。何故なら、人の頭の中で生まれて、人の頭の中で終わるものだからです。そう考えれば、数学はロマンそのものでだからこそ、主人公の「博士」は非常なロマンチストなのかもしれません。現実には、「数」というものは存在しておらず、あくまで人間の頭の中にしかない。だからこそ、それは美しいのだということを。「数」の「完全」な「真理」とは、静かに、ただそこにあるのだと。あくまで人間の頭の中にだけ、どこまでも美しくそこにあるのだと。小川洋子さんの文章は、その美しさを見事に描き出していました。 | ||||
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最後にはジーンとしてしまいました!!最初は博士のお義姉さんってなんて嫌なんだろうって思ってしまいましたが、最後にはこの人がいてくれて良かった…とさえ思ってしまいました。数次の流れもとてもキレイで、オススメの本です。 | ||||
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「ぼくの記憶は80分しかもたない」というフレーズから受ける印象は、悲しさ、哀れみ、いったいどれでしょうか? しかし、この物語は決してそのようなものを感じさせない。少なくとも僕はまったく感じませんでした。むしろまったく逆の、愛に満ちた温かい世界に包まれるかのようでした。そしてそれは、悲しい境遇に裏打ちされた温かさや哀れみを伴った温かさなどでは決してなく、博士、私、ルート、そして、博士の義姉の未亡人のまっすぐな愛情による温かさです。それぞれの人のこころの中身は誰もが思ったことのあることだからこそ、多くの人にこの物語が評価されているのではないでしょうか。 こんな物語に出会えてよかった、そう心から思える作品です。 | ||||
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楽しく、ためになる小説です。このようなタイプの小説は中々ないのではないでしょうか。もし、小説に楽しさのみを求めるならばそれまでですが、一歩踏み出してみませんか?本当にいい小説とは、私たちの人間性を豊かにしてくれます。多くの人生経験を仮想領域で体験できます。その経験は、私たちの想像力を豊かにしてくれます。実際に体験するのが一番いいですが、すべてを経験することは不可能です。ですから、小説のような形で多くの人と出会い、極端ではあるが強烈なキャラクターを理解することは、現実世界において他人への心の広さにつながると思います。数学の観点からも楽しめると思います。この点については小川洋子、藤原正彦著「世にも美しい数学入門」に詳しいです。小説は、それ自体としてはあまり役に立たなくても、理論的な側面を重ねることで大きな力を持つのではないでしょうか。その意味で、両所を読まれることを薦めます。 | ||||
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博士は数学の教授だった。事故に巻き込まれて脳に損傷を受け、博士の記憶は80分しか持たない・・・。出てくるのは「博士」、そこに通う家政婦の「私」と息子の「√(ルート)」、そして博士の「義姉」。最初は何のつながりも無かった「博士」と「私」。時間をかけ時間を重ねるうちに、何も無い空間に、幾重にも糸をかけていくように、少しずつ絆が生まれていく。そして、それぞれの深い愛が、いつしかレリーフのようにくっきりと浮き上がってくる。それぞれキャラクターの実名は出てこない。「博士」、「私」、「ルート」、「義姉」。あたかも、名前が雑音であるかのように。大正や昭和初期を思わせる博士の家の雰囲気さながら、ページをめくるたび、静かで緩やかな時間が流れていくのを感じます。映画化されたことがきっかけでこの本を読んだのですが、映画はきっと見ないと思います。ページをめくるたびに感じた心地良い静けさを、壊さずにずっと持っていたいから。 | ||||
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本書の舞台設定は、きわめてシンプルだ。「80分しか記憶を保持できない」老数学者と、彼の身の回りの世話をすることになったシングルマザーの家政婦とその息子の交流を描いている。無菌室にいるような静かな小説だ。殺人事件も起きなければ、運命的な恋の出会いもなく、ささやかな日常が進んでいく。その静けさは、私たちが見落としている暮らしの根本を思い出させてくれる。暮らしとは、ほんらい、つましく、奥ゆかしく、楽しいものなのだ。ぞうきんがけをして床が輝いたり、アイロンをかけてシャツがパリッとしたり、何の変哲もないハンバーグがごちそうだったりする喜びを、わたしたちは忘れてしまった。そして、人と向きあう楽しさも忘れてしまった。主人公の家政婦は、高齢化社会に生きる私たちに一つの道を提示する。80分しか記憶が保たない人、すなわち、「ちょっとちがった人」と、どう向きあえばいいのか。家政婦の解答は、シンプルで力強い。80分ごとの出会いを一つのルールとして引き受ける。80分しか記憶が保たないのは、その人の人格に関わることではなく、その人の生きている世界が、そのような「仕組み」になっていることを想像し、理解し、引き受けることなのだ。この小説は、人を敬うことの作法、ささやかな暮らしのなかに潜む楽しみをきちんと実感することを無菌室のなかで培養し、私たちに気づかせてくれる。そう、人の品位を高めてくれる物語だ。 | ||||
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一人の女性が父性を取り戻す瞬間をみているかのようだった。 家政婦はもともと父親のいない家庭で育ち、そしてまた自分も夫のいない環境で息子を育てた。父性の喪失である。 そこに博士が現れ、自分の息子を溺愛するというのは、出来過ぎている。なぜ博士が家政婦の息子を大切にするか疑問ではあったが、家政婦の父性を補完する存在が博士と考えると、自然である。 博士の無邪気さはもちろん、家政婦の冷静さの裏に見え隠れする感情を読み解くと、面白い作品である。 | ||||
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