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秋の花



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【この小説が収録されている参考書籍】
秋の花 (創元推理文庫)

秋の花の評価: 7.33/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.33pt

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(8pt)

秋の花の感想

季節は秋。
20歳の「私」は卒論を芥川に決め、取り組みはじめた。
卒業まで残り一年半。
「時」の流れを感じる「私」であった。
ところで、最近「私」の周りに時が止まってしまった人がいた。
津田真理子。
「私」が小学生の頃から顔見知りの、3歳下の後輩。
彼女は文化祭準備の合宿の夜、屋上から転落死した。
「私」にはもう一人、顔見知りの後輩がいた。
和泉理恵。
津田さんの葬式の際の彼女は、まるで影のようであった。
「私」はというと、悲しみよりも驚きがまさった。
「私」より年下の少女の一生が「私」の人生の中にすっぽり収まってしまうという不思議な感覚。
ある日、「私」の郵便受けに奇妙な封筒が入っていた。
中身は多少落書きのある教科書見開きのコピー一枚。
そこでは何故かアダム・スミスの「見えざる手」にマーカーが引かれていた。
また別のある日、和泉さんが学校にも行かず、ぼんやりと痛ましく座っていた。
「私」の家から見える場所で、見つけてといわんばかりに。
彼女によると、コピーは津田さんの教科書のものだが、津田さんの政経の教科書は棺に入れ火葬した。
存在しないはずの教科書のコピーがなぜ存在するのか。
そもそもなぜそれが「私」のもとに送られてきたのか。
「私」と円紫さんシリーズ第3作目。
シリーズ初の長編であり、初の死者。
はたして事故の真相は。
「私」は何を思うのか―・・・

前2作は「私」の日常の謎を取り扱う、いわゆる「死なないミステリ」です。
短編集ですが一連の流れがあり、その中で「私」が「大人」になるため清濁受け入れていきます。
ミステリであり、「私」の成長記でもあります。
メッセージ性が強く、推理に関しては伏線ももちろんありますが、正直想像力で補う箇所も多いと思います。
今作はシリーズ初の長編であり、一人の少女の「死」からはじまるミステリです。
全2作と異なり「死」にまつわるため、前2作よりミステリの印象が強いです。
推理も割合前2作より想像力で補う箇所が少なく、しっかり伏線を回収し組み立てていけると思います。
犯人当てというより、事故の真相について考え、その流れで著者のメッセージが浮かんでくる感じです。
今作も前2作同様文学作品からの引用があります。
推理のための伏線であり、今作を理解するためのヒントやメッセージでもあります。
長編だからか、前2作より引用や語りがより多く感じます。
私が教養不足なだけかもしれませんが、馴染みがない作品の引用や語りが多いです。
文学少女な「私」はもとより、友だちとの文学談義。
前2作までは一つ賢くなった程度にしか思いませんでしたが、今作は諸所で評論を読んでるようで、少し疲れます。
友だちとの会話も高尚すぎて、女子大生の会話としては違和感があります。

今作はただの事故の真相を考えるミステリではありません。
明日を迎えることができなくなった少女の人物像。
残された者の苦しみ。
日常において転落死は身近ではありませんが、「死」に伴う喪失感や欠落感は誰しもが抱くものです。
「死」を通じて、「生きる」ことについて考えさせられます。
今作は死者がいるため、前2作のように甘酸っぱくとか、爽やかに締めるわけにはいきません。
生きること、そして救いについて考えさせられる、切ない一冊です。

▼以下、ネタバレ感想

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あんみつ
QVSFG7MB

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