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絹の変容



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【この小説が収録されている参考書籍】
絹の変容
絹の変容 (集英社文庫)

絹の変容の評価: 6.00/10点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

絹の変容の感想

著者のデビュー作でした。僅か200ページ足らずの小編です。
タイトルはいいですね。タイトルに牽かれて手にしました。
序盤はいいんだけど、結局、「何んだよ、これ?!」ってなってしまいました。


▼以下、ネタバレ感想

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マッチマッチ
L6YVSIUN
No.2:
(7pt)

展開の速さが玉にキズ

篠田節子デビュー作。たった200ページにも満たないパニック小説であるが、中身は薄っぺらな物ではなく、仕上がりも堅実である。

一枚の絹織物から、その繭を作る蚕の養殖、そしてほんの小さな過ちから派生するパニックが、絹織物、養蚕、バイオテクノロジーの専門知識を読者の興味を損なわない程度に付け加えながら、必然性を持って発生するプロセスを淡々と描いていく。
特に蚕がどんどん怪物化していく過程は例えば、よくある怪物小説で放射線が当たって遺伝子に異常が起きた、特殊な薬品・ガスがこぼれて、それを吸ったがために進化した、などと理由にならない理由をつけて突然変異させる物が多い中、この小説では芳乃の独創的な改良手法を逐一述べることで読者に怪物が出来ていく様を知らせていくところが、非常に好ましい。蚕の糸が蛋白質で出来ていることから、餌を桑の葉から鶏肉に、そして豚の血を混ぜた餌を食べさせるなんて発想には驚いた。

そして登場人物も三人と非常に少ないのがこの本の特徴。これは映画『ザ・フライ』を思わせる。
虹のような光彩を放つ絹に魅せられ、それにかつての夢を賭けようとする主人公長谷康貴は、包帯工場の若旦那であり、また整った風貌から遊び人のように見られ、事実、そのような自堕落な生活を送っていた人物。とにかく包帯工場を継ぐのがいやで、何か華やかな仕事を始めたいと友人に持ちかけるが、その飽きっぽい性格ゆえ、一つとして物にならないまま、30手前まで来ているというよくある現代の若者の1人とも云える。
確かにこの康貴の考えはとても社会人であるとは思えないほど甘い。夢はでかいがそれを実現するために何をしなければならないかが全くわかっていない男である。

そして康貴の持ち込んだ絹織物に同様に魅せられ、閑職で燻っていた研究心を再燃する有田芳乃。とはいえ、この女性は専門に特化した女性として描かれ、人間味を感じさせない人物となっている。
しかし、それは自身の仕事に対するプライドの高さゆえと、それが及ぼす影響力を肌身で知っているからこその態度・姿勢であり、これをおぼっちゃんである康貴の甘さとの対比でそれが際立っているに過ぎないことが解ってくる。

そして康貴の持ち込んだ絹織物に新しい商売の匂いを嗅ぎつけ、金銭面と商業面で協力する大野。通常ならばこういう人物は金の亡者のような描き方をされるが、本作ではそうではなく、社会人である私の眼から見れば、真っ当な経営者である。
投資するに見合うだけのビジネスチャンスがあるかを算段し、それを成功させるためには金を惜しまない。ビジネスを世に公開すべきタイミングを嗅ぎ分ける嗅覚、そして不測の事態に対する迅速な処理も非常にそつが無い。もしこの本を学生のころに読んでいたらこの大野という人物に嫌悪を感じていたかもしれないが、社会人も10年を過ぎた今となっては、大野が非常にバランスの取れた経営者だと認められる。
特に育てた蚕が人体に悪影響を及ぼすことを妻の死で知った康貴が、何もしてやれなかった妻への罪滅ぼしというその感傷的な理由から事業の撤退を大野に告げた際の大野の反論は至極最もであり、康貴という人物の甘さに腹が立つくらいだった。

品種改良した蚕が人間を襲うパニック小説。それを発端から結末まできちんと描いているにもかかわらずコンパクトに纏め、総ページ200ページ弱と非常に薄い本書だが、やはり新人の若書きという感じがしないでもない。
確かに200ページで済むような内容を、色々贅肉を施して倍、もしくはそれ以上の分量にしたりして冗長を感じさせるのも困るが、あまりにあっさりしすぎるのも物足りない。
特に今回思ったのはその展開の速さである。シナリオを読んでいるかのごとく物語はとんとんと進み、時間経過も5年もの月日が流れているとは思えないほど早い。やはり小説には外連味や人物に厚みを持たせるエピソード、つまり味わいが必要である。そこに読者の心情は移り、共感や嫌悪感を得るのである。
特に本書では、やはり芳乃と康貴との心の揺れ、康貴と父親との確執についてもっと掘り下げて欲しかった。康貴が父親から栗林を譲り受けるシーンは親子の確執があるにしてはあっさりとしすぎだ。
まあ、後に直木賞を受賞する作家であるから、これからの小説にはその小説の旨みというのが加わるのだろう。

最後に1つ。タイトルはもう少しどうにかならなかったのだろうか?
品種改良され、化け物と化した蚕という意味でつけた題名だろうが、『絹の変容』という言葉からはとてもそんな内容は想起できない。呉服屋を舞台にした恋愛小説や群像小説のような感じがする。もう少し、熟考したらよかったと思うのだが。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

絹の変容の感想

蚕の品種改良が甚大な悲劇を引き起こしていくバイオホラーSF。ある意味では和製「フランケンシュタイン」。三者の考え方の差違が徐々に不協和音を生み出していく展開は短いながらもスリリングでした。幕引きはありがちとはいえ恐ろしい。

水生
89I2I7TQ

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