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ムーンシャイン・ウォー



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【この小説が収録されている参考書籍】
ムーンシャイン・ウォー (扶桑社ミステリー)

ムーンシャイン・ウォーの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

レナードらしからぬストレートな語り口。しかし面白い!

レナードのデビューはクライムノヴェルではなく、実はウェスタン小説。本書はその頃に書いたウェスタン小説の一部だが、意外と、いやすごぶる面白い。

物語の舞台は禁酒法統治下のアメリカ。
幻の密造酒を巡って禁酒法取締官、密売人、そして禁酒製造者たちの戦争が始まる。

レナードの作品は読者が予想もしないストーリー展開と、実在するかのごとく「生きた」登場人物と彼ら・彼女らの会話の妙というところにある。これについては後々もっと詳しく語りたいと思う。
しかし初期の作品である本書はストーリーが一直線に進む。すなわち悪人登場、嫌がらせが行われ、彼らとの対決に向け、じわりじわりと雰囲気が盛り上がり、やがて闘争へ・・・。
登場人物たちは起こるであろうゼロ時間に向けて、それぞれの信条、恨み、怒りを募らせ、突っ走るだけだ。これが非常に小気味よかった。シンプルなだけに解りやすく、また初めて読んだウェスタン小説という珍しさも手伝って、予想外に面白く読めた。

さて本書の題名になっているムーンシャインだが、これは禁酒法取締官に見つからないように密造者が月明かりの下で蒸留酒を作っていたことから、そのお酒を称した呼び名である。そして密造者はムーンシャイナーと呼ぶ。なんとも詩的な表現ではないか。やっていることは当時の法律に照らし合わせれば犯罪なのだが、闇夜に紛れて作る酒という無骨な物にこんなにロマンチックな呼称を付けるアメリカ人の稚気と心意気に乾杯したくなる。

この評価はこの前に読んだ『マイアミ欲望海岸』、『ザ・スイッチ』が個人的には不評だったことで、レナードに対する期待値が下がった上での意外性というのも多分に加味されているだろうけれど、そんな西部時代の男のロマンがピリッと織り込まれた薀蓄も面白く、また酒好きにどんな味なのか想像を掻き立てさせるレナードの密造場面の描写も加え、本書は数あるレナード作品でもお気に入りの部類に入る。
数年後、レナードは『ホット・キッド』という新たなウェスタン小説を発表する。これも実に面白く読めたが、ラストはやはりクライムノヴェルのレナードらしく、予想もしない捻った結末だった。翻って初期の本書はラストも鮮やか。個人的には逆にこの頃のレナードを取り戻してほしいなぁと思ってしまった。

Tetchy
WHOKS60S

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