スプリット・イメージ



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初公開日(参考)1993年03月
分類

長編小説

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スプリット・イメージ (創元推理文庫)

1993年03月31日 スプリット・イメージ (創元推理文庫)

男は人を殺してみたくてしようがなかった。金なら腐るほどあるし、容姿は映画スターなみ。地位や名声にも恵まれている。それでも男は歪んだ欲望に衝き動かされ、一人の悪徳刑事を抱きこんである殺人計画を実行に移そうとしていた。そんな彼らに、いま一人の刑事が疑惑の目を向けたとき…。ひねりの効いたウィット、そして絶妙な人間描写。まさにレナードの真骨頂を示す名品。 (「BOOK」データベースより)




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スプリット・イメージの総合評価:8.67/10点レビュー 3件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

アメリカの病いは治療不可能だな

1981年に発表された、レナードらしさがあふれた作品。どこか壊れた登場人物たちが繰り広げる救いのないドラマ、病めるアメリカを味わい深いエンターテイメント作品に仕上げた軽快なアクション・サスペンスである。
フロリダの豪邸で、ハイチ人移民の男が射殺された。大富豪である豪邸の持ち主・ロビーは物盗りに入った男が山刀で襲ってきたので射ったと言う。捜査を担当した刑事・ウォルターは、以前、デトロイト警察に勤務していた時に事件を起こしてフロリダに移住してきた悪徳警官だった。ガン・マニアのロビーはウォルターにある計画を持ちかけ、ウォルターを運転手兼ボディガードとして雇い入れた。
デトロイト時代の事件でウォルターが裁判を受けた時、法廷で彼に不利な証言をした刑事・ハードは、同じ法廷でジャーナリストのアンジェラと出会い、付き合い始めたのだが、アンジェラは富豪をテーマにした記事の取材でロビーと接触しており、射殺事件のときには豪邸に滞在していたのだった。さらに、ウォルターを訴えた男性がデトロイトで射殺される事件が発生。ロビー、ウォルター、ハード、アンジェラは、複雑で滑稽な追跡ゲームを繰り広げることになる。
どれだけ凄惨な乱射事件が起きようと、年間数万人単位で射殺事件が起きていようと、決して銃規制しようとしないアメリカ社会の宿痾というべきガン・カルチャーを浮き彫りにした作品である。しかも、スピーディーなストーリー展開、軽妙な会話、陰影に富んだ人物像など、エンターテイメント作品としての完成度が非常に高く、30年以上前の作品とは思えない現実感がある。
レナード作品のファン、ユーモアのあるハードボイルドのファンに、自信を持ってオススメする。

iisan
927253Y1
No.1:
(10pt)

レナードによるサイコキラー物の傑作

80年代後半から90年代前半にかけてサイコサスペンスが一世を風靡した。このブームはトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』に端を発したものだが、こぞってアメリカのミステリ作家はこの新しい分野にダイヤの原石を見出したかのように、みなサイコキラー物を書き出した。その影響は日本のミステリ界にも波及し、その中には傑作も少なくない。
が、それに先駆けて、レナードは81年の本書でサイコキラー物と著わしている。しかし同年、ハリスは『羊たちの沈黙』に繋がるレクター博士が初登場する『レッド・ドラゴン』を上梓しており、ここに何らかの符号があるのかもしれない。

金も権力もあり、地位も名声もあり、なおかつ女どもが振り向きたがる容姿も備えた男は、人を殺してみたくてしょうがなかった。そしてその欲望は日増しに肥大し、悪徳刑事を抱きこんである殺人計画を実行に移そうとしていた。しかしそんな2人に目を向ける1人の刑事がいた。

金持ちで権力もあって、しかも容姿端麗という、最強のサイコキラーだが、レナードが描く犯人像はいわゆる完璧な優等生タイプとして描かず、精神の歪んだ側面と成功した人間にありがちな失敗にもろい性格を前面に押し出し、この犯人をどんどん厭なヤツにしていく。
しかし『野獣の街』と共通するのはそれが決して滑稽ではなく、いつ実行に移すのか、じわりじわりと緊張感が飽和していく、その絶妙な筆致にある。
とにかくふとしたことで人を殺しそうなまでに肥大した彼の殺人願望が非常に怖く、ギリギリに引き絞られた矢がいつ放たれるのかという危うさに溢れている。
そして読者の予想を裏切らない殺戮シーン。起こるべくして起こるようにレナードはストーリーをキャラクターを動かしていく。いや、彼に云わせれば登場人物がそういう風に動いているのだろう。
この怒涛の展開にはカタルシスは得られる物の、しかし私は結末のある部分に呆気にとられてしまった。今になって思うとこれこそがレナードなりの味付け、つまり物語というものはそう絵に描いたようには上手く行かないのだという彼なりの皮肉なのだろうが、ちょっとこの結末は予想していなかっただけに大いに戸惑った。まあ、それぐらい物語に没入していたということだろうが。

とはいえ、読後には爽快感も得られたので、総合的に見てレナード作品群の中では上位に来る作品だ。後のレナード作品にはもっと呆気に取られる展開・結末の作品が出てくるのだから、まだまだ許容範囲と云える。
この頃のレナードは本当に面白かったなぁと思う。やはり収まるべきところに収まる面白さというのがあるのだ。これをレナードに求めるのはファンとしてご法度なんだろうか、やはり。


Tetchy
WHOKS60S
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No.1:
(4pt)

自分が何を望み、なにを望んでいないか、それはちゃんとわかっている

本作は「グリッツ」でブレイクする数年前の作品ですが、そのプロットなどからは「グリッツ」が生まれる前夜祭的な雰囲気と、円熟した文体の原型を感じさせます。
 登場するキャラクターらの存在感と、リアルなその会話のやり取りには思わずニヤリとしてしまうユーモア感覚が満載です。

 主人公はデトロイト警察殺人課のブライアン。
 フリールポライターのアンジェラは彼をこう評する。
「ブライアン。あなたはただ減らず口を叩くタイプとはちがうのね。ちゃんと目的を持って減らず口を叩くのよ。相手にしゃべらせるために、わざと急所に針を突っ込むんだわ」
 レナード作品でメインで登場する女性は、いずれも自分の考えをしっかり持つ自立した女性が多いが、本作のアンジェラも
「自分が何を望み、なにを望んでいないか、それはちゃんとわかっているつもりだから」
という魅力的な女性だ。
 
 そして他のレナード作品同様、本作でも悪役視点のやり取りが同時に進行する展開の巧さ。
 人を銃で撃ちたくてたまらない大富豪でガンマニアのロビーと彼に取り入る元刑事のウォルターという凸凹コンビのやり取りがなんとも可笑しい。
 たとえば、ロビーが標的に選んだドミニカの大使館監査官のチチの邸宅を偵察するためウォルターにビデオカメラを撮影させた映像をテレビで見る場面は最高です。
 撮影された映像は最初、手振れがひどく見れたものじゃなかったものの、チチの愛人がプールでヌードになった場面では手振れがピタリと止まる。それまで文句たれたれだったロビーが言う。
「だいぶ、画像が安定しているじゃないか。ウォルター、急に腕をあげたな」
 
 ラストのカタルシスという点では少し物足りなさを感じますが、本作はレナード作品の中でも上位に位置づけられる秀作だと思います。
スプリット・イメージ (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:スプリット・イメージ (創元推理文庫)より
4488241026



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