ホット・キッド



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初公開日(参考)2008年01月
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長編小説

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ホット・キッド (小学館文庫)

2008年01月07日 ホット・キッド (小学館文庫)

元海兵隊員の父を誇りに、カール・ウェブスターは、早撃ち名手の連邦執行官になった。少年時代に強盗殺人事件を目撃し、牛泥棒を遠距離から仕留めた過去を持つ、自己顕示欲は強いが正義感も強い、“熱い”男である。一方、百万長者の息子ジャック・ベルモントは、悪の道に憧れる放蕩者。父を強請り、銀行を襲い、アメリカ一のアウトローを目指す。ともに裕福な家庭に育った二人の“キッド”は、やがて対決へと向かう―。禁酒法が施行され、銀行強盗が横行した時代のアメリカ。鬼才レナードのタッチが冴える、都会派犯罪小説の傑作。 (「BOOK」データベースより)




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ホット・キッドの総合評価:9.00/10点レビュー 2件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

老いてなお若き、レナードの筆致!

この前に読んだ『キューバ・リブレ』の時は歴史小説だったせいか、なんだか盛り上がりに欠け、正直期待外れだったが、今回は違う。
レナード節が冴え渡るレナードしか書けない男たちの物語、しかも自身の原点であるウェスタン小説である。
そして今回は早速レナード作品の最たる特徴であるレナード・サーガのリンクが冒頭から出てくる。『キューバ・リブレ』で登場したヴァージル・ウェブスターが、主人公の1人カール・ウェブスターの父親となって登場するのだ。

本作で彼は既に47歳に石油長者となって隠遁生活を送る身になっている。その余裕は死線を潜り抜けた男が見せる余裕だ。『キューバ・リブレ』では戦艦爆破に巻き込まれ、運命に翻弄されるがままだったウェブスターがこんなキャラクターになってお目見えするとはなんとも感慨深い物がある。
そしてそのヴァージルが神経の図太いヤツだと一目置くのが息子カーロスことカール・ウェブスターなのである。

このカール、レナードの作品では今までにないヒーローである。恐怖心という物が抜け落ちたかのように、どんな状況においても常に磐石な自信を湛え、冷静沈着に振舞える男だ。
そして悪党を前にして述べる言葉は
「おれが銃を抜くことになったら、必ず撃ち殺す」
さらに今回特徴的なのは実は彼が真っ当な正義漢ではなく、実は根っからのガンマンなのだという事。
作中でもそれは他者の言葉を借りて表現されている。曰く、
「あなたはなぜ執行官になって銃を携帯する道を選んだのか。人を撃つのが好きだからよ。人を撃つのが楽しいからなんだわ」
そしてカール自身、今度の犯人を撃てば、彼の戦果に加わる事を密かに愉しんでいることを認める。

ただ、ここで留意したいのは彼は血を好む殺人者ではないという事だ。まず先に立つのは正義感。犯罪者を彼は人とは思っていない。そして彼はそれを仕留めるのが自分の使命だと固く信じている。
そしてもう1つ。彼はあくまで他者と純粋に勝負し、勝つ事が好きな男だということ。で、彼が選んだその勝負の方法というのが銃撃戦だということだ。
撃つか撃たれるか、死と隣り合わせの命のやり取りであるが、カールはむしろそれをスポーツの対決のように感じている。それは彼が一種変わった精神構造を持っているからだろう。

上の台詞が出てくる場面のすぐ後で、彼は銃撃戦が終わったときに体の震えているのに気付いたと述べる。ここで注目したいのは、体が“震えた”と書いているのではなく、“気付いた”と書いてあることだ。
つまり何事に対しても、精神と身体を切り離して観ること、行動できる客観的な男なのだ。そうカールこそは根っからの勝負師であり、負ける事を考えない真のタフガイなのだ。

一方ジャック・ベルモントは小さい頃に実の妹を溺死寸前までさせ、脳に障害をもたらしたエピソードを軸に、親の手の付けられない悪童がそのまま大人になった男で、根っからのワルである。
しかし、ワルはワルでもこの男、どこか抜けており、また自覚的でないため、常に自分を大物に見せようと人を小馬鹿にしながら、その実、相手から見下されているという三文悪党として描かれている。

石油王として莫大な富を稼ぐ父親を何とか懲らしめてやりたいと、愛人の誘拐まで行うが、計画の甘さから失敗し、刑務所入りを余儀なくされる。
相棒として雇ったと思われた男からは、実は小物だと思わわれていたことを知り、銃撃戦に紛れて射殺するなど、嫉妬と虚栄心の塊だ。
いわゆる典型的な“俺リスペクト型”で、自分はもっと周囲から恐れられ、名前が売れていいはずだと思っている男、ジャック。

実はこの展開は意外だった。これは今までのレナード作品に出てきた、根っからのワルなんだけど、どこか抜けている悪党と何ら変わらないからだ。
主人公のカールのライバルにしてはどうしても見劣りする。実際作中、何度かジャックとカールは邂逅し、そしてあるときはカールに捕らえられ、刑務所に送られるように、カールはジャックを歯牙にもかけていない。むしろカールは自分に相応しい敵となるべく、その時を待っているかのようだ。

そしてようやく迎える二人の対決シーン。実はこれが意外だった。自分への協力者を容赦なく殺す事で、精神的にもタフとなり、カールのレベルまで登りつつあったジャック。しかし最後の最後まで彼は三文チンピラのままだった。
う~ん、結構難しい。安直に語れない深みがある。これについてはしばらく考えてみよう。

さて物語はこのジャックとカールを中心に語られるが、彼らに纏わる登場人物も今回は出色である。
まずカールとジャックの時代を描写する上で、実際的にはその姿を見せず、あくまで他者の言葉を通じて語られる実在の銀行強盗チャーリー“プリティ・ボーイ”フロイド。
そしてそのチャーリーの追っかけであり、チャーリー・ギャング・グループの仲間を射殺した逸話を持つルーリー・ブラウン。
元FBIで独善的な正義を振り回し、自ら連邦捜査局員を名乗り、KKK団を率いて、黒人やイタリア系移民を狩るネスター・ロット。
学校の教師で30年間に出来た恋人は2人。そしてその2人目の恋人が銀行強盗だった女性ヴニシア・マンソン。
レナードはこれらをトニー・アントネッリという駆け出しの記者がカールないし事件の関係者にインタビューする形で話を紡ぐ。
これがもう独立した短編のように面白い。

特にこのトニー・アントネッリという作中話者を設定したのは今回の大きな効果だと思う。
彼がカールの伝説を作り、無法者ども達の逸話の語り部となり、物語に厚みを持たせている。
そういえば、この前の『キューバ・リブレ』でもニーリー・タッカーなるルポライターが出ていたが、今回はその時よりもさらに発展させ、活用している(面白いのはニーリーとトニーともにハーディング・デイヴィスなる新聞記者の文体に心酔していることだ。実在の人物か知らないが、もしレナードの創作ならば、彼の登場する物語も読んでみたい)。

権力ある者が法律を作り、常にどこかで生き死にのやり取りが繰り広げられる無法の時代に生きるタフで、アブナイ奴らが縦横無尽に動き回るこの作品こそ、私が読みたかったレナードの小説だ。
2005年発表とあるから、当時御年なんと81歳!こんなトンでる老人、日本にはいないだろう!
ゴーストライターがいるかもしれないが、そんな下種な勘ぐりは抜きにして、レナードの若さに乾杯!


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Tetchy
WHOKS60S
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No.1:
(5pt)

ますます冴えるレナード節 現代からちょっと遡った舞台でも 快調、快調

 本当に最新作なんだろうか?80を超えてもあまりにも若い! どこを切り取ってもレナード節が炸裂しています。(翻訳も相変わらず快調だし)
 今回の舞台は、デリンジャーやボニーとクライドの禁酒法時代。大金持ちの御曹司の執行官と悪党の話というのも、レナードらしい意表を突いた設定。
 出来れば、前作のキューバ・リブレを先に読んだ方が楽しめます。ゲット・ショーティやビークールほどは売れ無いかもしれないけど、レナードが楽しんで書いた感じが伝わってきます。ぜひ多くの人に読んで欲しいです。
ホット・キッド (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ホット・キッド (小学館文庫)より
4094054774



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