身元不明者89号



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    初公開日(参考)2007年02月
    分類

    長編小説

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    身元不明者89号 (創元推理文庫)

    2007年02月28日 身元不明者89号 (創元推理文庫)

    ジャック・C・ライアンは令状送達人。裁判所の書類を、指定された相手に配るのが仕事だ。そんな彼がちょっとしたこづかい稼ぎのつもりで引き受けた、ロバート・リアリーなる男を探は一件。この、簡単に思えた人探しを、悪党どもや美女が引っかき回し、ライアンは窮地に追いこまれていく…。犯罪小説の巨匠が、デトロイトを舞台に“レナード・タッチ”で描く、食えない連中の物語。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    身元不明者89号の総合評価:7.67/10点レビュー 3件。Cランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    主人公を食う悪党たち

    長い間、東京創元社が翻訳権を取得しながらも発行しなかったのだが、21世紀も7年を過ぎてようやく日の目を見ることとなった。とにかく喜ばしいことだ。
    とはいえ、1977年発行の本書。レナード作品としては起承転結という小説の定型が守られているのが逆に目新しいと感じた。レナード作品といえば、登場人物たちの“生きた”会話、先の読めないストーリー展開というのが専らの特徴で、本作もその片鱗は覗かせるものの、まだその特徴は顕著に現れていないと思った。

    私の抱くレナード作品の最大の特徴というのは、いきなり物語の真っ只中に放り込まれ、主人公やその他脇役と共に街中を歩き回るかのような物語世界に没入させられることだ。一癖も二癖もある連中の中を一緒に歩くような臨場感を伴って逍遥する、それがレナード・タッチと呼ばれる彼独特の小説作法だと思っている。
    しかし、30年前に書かれた本書は、まず主人公となるライアンが令状送達人になった成り行きから、ライアンを取り巻く人間達を描き、そしてライアンが人生の転機となる出来事に遭遇するという至極真っ当な物語展開を繰り広げる。
    唯一、ライアンがひょんなことで捜索中の人物、デニーズをいきなり再会するシーンが、これこそレナードだ!と思わせられた。

    そしてレナード作品の特徴の一つであるどこか憎めない悪党たち。これについては正にこの時点で完成されていると思う。黒人の殺し屋ヴァージルをはじめ、レイモンド・ギダーなる食いしん坊の殺し屋。ムショに入って物事に対する性急さを抑えることを覚えた前者と、ムショに放り込まれながらも物云う前に手が出る正確が変わらなかった後者2人の対比がなかなか面白い。 
    しかし、今回主人公を務めたライアン。この登場人物に関して、レナードは決してヒーロー然と描いていない。むしろ、令状送達人という仕事に満足した男が、ある大金を掴むチャンスを得て、自分の能力以上の行動をしようとして、その都度、決断に逡巡する優柔不断な男として描いている。本作ではライアンが特に魅力的ではなく、その周囲の人間が魅力的であることに特徴があると思った。

    ライアンの友人で警察官であるディック・スピードはライアンに令状送達人の仕事を紹介した人物。ライアンの捜索人の前妻デニーズは、飲んだくれのあばずれから逆にライアンにとってかけがえの無い存在になるほどの魅力的な女性に転身する。
    先に述べたヴァージルとレイモンド。そしてライアンに捜索を依頼するペレス。
    これらの登場人物は自分の生き方に信念・信条を持っており、ゆるがない自信を持っている。

    翻ってライアンを見ると、ペレスに頼まれた仕事を完遂せずに、捜索人に繋がる重要な情報を敵にウッカリ漏らし、終いには捜索人の妻に惚れ、ペレスを出し抜こうとするがことごとく目論見が先方に見抜かれ、出し抜かれるといった役回りだ。
    本作ではむしろ敵役のペレスの方が一枚も二枚も役者が上である。最後、1セントの利益も得られずにライアンから屈辱を与えられながら、ライアンに仕事の依頼をする図太さ。あれこそ本当の男だろう。
    自分が何をすべきか解っている男なのだ。

    そういった意味で今回の主人公ライアンは私にとっては非常に物足りない。レナードは本作で描きたかったのはしがない男が1枚も2枚も上の人物と渡り合う駆け引きを描きたかったのか?その手法を以って、主人公ライアンを魅力的に描きたかったのか?
    恐らく最初の意図はそうであっただろうが、読了後の今、私には敵役のペレスが妙に引立つのを止められないのだった。

    他に、作中、白人の女性の旦那が黒人であった事に驚くシーンがあるが、これこそ時代を感じさせ、不自然に思った。こういう叙述を読むと、やはりこの本の発行が遅きに失した感は否めない。
    あと蛇足だが、本作においてレナードの恋愛に対する描写がところどころこちらの意中を射ており、非常に印象に残った。曰く・・・

    『“隣りの女の子”に隣りの家とはまた別の暮らしをさせると、もはや“隣りの女の子”ではなくなる』
    『彼女を抱きしめたいと思う。しかし、実際にそうすると、どれだけ触れても触れたりず、どんなに強く抱いても抱き足りないのだ』

    う~ん、正鵠を射てますな。上は恋の妄想が解けた瞬間、下は恋に恋焦がれ、求め合う気持ちが強い上のもどかしさ。いやあ、レナードの作品を読んで、こんな一文に出逢おうとは思わなかった。この作品を書いたとき、レナード御歳52歳。いやあ、若々しいね、感性が!

    そして本書のボーナス・トラックは直江明氏の解説だろう。最近『ミステリマガジン』誌上の連載でレナードの小説世界について微に入り、細を穿った解説を展開しているが、本作の解説でも同様で、レナードの小説世界を更に面白く読める内容になっている。レナード作品を連綿と読み続けた私でも新たに気付かされることがほとんどで、興味は尽きない。
    各出版社にお頼み申す。全レナード翻訳作品の解説を直江氏にしてもらえないだろうか?そうすることでもっとレナード作品のファンが増えると思うのだが、適わないかなぁ、やっぱり。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.2:
    (4pt)

    やはりレナードは面白い

    令状送達人という珍しい職業の男が主人公のクライムノヴェル。最初は普通の人探しから始まり、徐々に如何わしい人間が絡み始め、他のレナード作品のように話や人間関係が錯綜しまくる、典型的なレナード・タッチが楽しめる犯罪小説。レナードの最高傑作とは言えないまでも、価格に見合った面白さが十分堪能できます。読む喜びに満ちた佳作。解説によれば本書の主人公は他のレナードの作品にも登場していて、レナードの作品が緩いサークルになっているそうです。この直井氏の解説も色々調べてあってとても面白く為になりました。レナードの作品は西部小説を含めて全て翻訳してもらいたいですね。
    身元不明者89号 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:身元不明者89号 (創元推理文庫)より
    4488241034
    No.1:
    (4pt)

    レナード節は昔の作品でも

    書かれたのは1977年だから ちょいと昔
    でも 登場するのはあいかわらず 憎めない悪党ばかり
    このころの作品で比べると タッチは 52000ドルの罠 にも似ていますが
    主人公のジャック・ライアン(トム・クランシーより先ですね)はスワッグのレオンの友達という設定で、
    相変わらず上手いレナードおじさん
    かっこいいです
    身元不明者89号 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:身元不明者89号 (創元推理文庫)より
    4488241034



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