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燕は戻ってこない



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【この小説が収録されている参考書籍】
燕は戻ってこない
燕は戻ってこない (集英社文庫)

燕は戻ってこないの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

これもまた、逃げ場がないけど逃げ出すお話

2019年から21年にかけて雑誌連載された長編小説。地方から出てきて東京で底辺の暮らしをする若い女性が自分が持つ最後の武器「子宮」を頼って人生を逆転させようとする、限りなくリアルな社会派ファンタジーである。
派遣の病院の事務職として働くリキは同僚のテルに「卵子提供」のアルバイトに誘われる。一回50万という高額に引かれて面接を受けたリキは代理母になることを提案される。10円単位で切り詰める生活に嫌気がさしていたリキが紹介されたのは、人工授精を試みながら結果が得られていない裕福な夫婦で、面談の結果、リキは代理母を受諾し、一千万の成功報酬を約束される。金のために自分の最後の武器を使うことを決心したリキだったが、いざ具体的なプロセスが始まると精神的に不安定になる。それでも妊娠に成功したリキは母になるのか、子を産む機械になるのか、悩みながら出産予定日を迎えることになる…。
地縁も血縁もバックアップもない都会で生きる若い女性の物質的な苦しさ、そこに否応なく生まれてくる精神的な苦境。大傑作「OUT」から続く、虐げられた女性たちの物語は、読むのがつらくなるほど重苦しい。底なし沼に捕らわれたような絶望感が漂うストーリーで、ヒロイン・リキの逃げ場のなさが痛々しい。その背景には、桐野夏生の激しい怒りが見えてくる。
最近は観念的すぎる作品が続いていた桐野夏生だが本作は情と熱を感じる傑作エンターテイメントであり、多くの方におススメしたい。

iisan
927253Y1

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