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知りすぎた女



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【この小説が収録されている参考書籍】
知りすぎた女 (新潮文庫)

知りすぎた女の評価: 6.00/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

女の闘いはドライに書くほど怖さが引き立つ

父親が経営する会社―本書の場合は義理の父親だが―が悪事に加担しており、それを自分が引き継ぐ事になったら・・・という、クーンツ張りの巻き込まれ型サスペンスをフリーマントルが書くと斯くもこのように実に緻密な物語になるといった見本のような作品だ。

この、ある日突然自分の身に降りかかる災禍ほど恐ろしい物はなく、主人公と読者自身を同化させるとそれは尚更肌身に感じられてくるのだが、フリーマントルの場合はそれが一般の市井の人々のレベルではなく、ハイソサエティクラスの人物達の物語であるから、どうしても明日は我が身といった危機感を感じられないのが難点ではある。

物語は大きく分けて2つに分かれる。
まずいきなり人生最悪の状態に陥ってしまったウォール街一流会計事務所の後継者ジョン・カーヴァーの葛藤とマフィアとの戦いの決意をするまでの前半部。ここに絡んでくる2人の女性、妻のジェーンと愛人のアリスはまだ脇役と云っていい。どちらかと云えば独立した女性アリスの方が何かにつけジョンをサポートしており、パートナーの役割を担っている。

そして物語中盤、ジョンが亡くなってからはこの2人の女性の物語となる。ようやく原題の“Two Women”の出番だ。
この2人の立場は2人を追うマフィアの魔手をかいくぐりながら主客転倒して物語は流れていく。特に愛人であるアリスがその存在を知らないジェーンを半ば誘拐する形で連れ出す展開はツイストが効いている。

やがてアリスと亡き夫ジョンとの関係を知らされ、ジェーンにある種の芽生えが生まれてくる。これはお嬢様として育てられ、何不自由なく与えられた女性の自立がテーマになっていると述べたいところだが、どうもそう簡単に一言で済まされない読後感がある。

私が最後読んで思ったのは、女は怖いということだ。

女性は男性に比べて情理のバランスが取れているというのが通説だ。だから男は女には口では敵わないのだと云われるのだが、このジェーンとアリスも1人の男性を巡る正妻と愛人との関係なのだが、どうにもお互いを憎みきれない感情を持っている。それは一緒の男性をお互いに自分なりの方法で愛したからという理由から来ている。通常ならばここから2人お互いに手を組み、共同戦線を張ってマフィアから逃れ、FBIに協力するという形になるのだが、フリーマントルはそんな簡単には物語を運ばない。

こうして見ると本書のテーマとは、やっぱり女の恐ろしさではないかと思える。女性の微笑みの裏に隠された本当の思いとは誰も解らない。
フリーマントルがさほどドロドロとした女の戦いを描かなかっただけに、却ってうすら寒さを感じるのだった。


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Tetchy
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