別れを告げに来た男



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初公開日(参考)1979年09月
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長編小説

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別れを告げに来た男 (1979年) (新潮文庫)

1979年09月30日 別れを告げに来た男 (1979年) (新潮文庫)

またひとり亡命者が出た。ソ連から大物科学者が亡命して来て間もなく、今度は彼の上司であり、宇宙開発の指導的立場にある天才科学者が英国大使館に保護を求めてきた。息づまるサスペンス、意表をつく衝撃的結末。(「BOOK」データベースより)




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別れを告げに来た男の総合評価:9.45/10点レビュー 11件。Bランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

三つ子の魂百までのデビュー作

フリーマントルのデビュー作である本書はイギリスに亡命してきたソ連の宇宙科学者を尋問する聴取官の物語だ。

その主人公の聴取官エィドリアン・ドッズは決して魅力的な人物として描かれていない。

外見は痩せ気味のこれといって特徴のない男で35歳にして妻に愛想を尽かされた挙句、レズビアンの彼女の許に逃げられ、毎日のワイシャツとスーツのアイロンがけも儘ならず、しわくちゃのままに着用して秘書の眉を顰めさせ、その年配の秘書には手玉に取られ、遅刻や早退を思うが儘にされており、さらには完全に禿げ上がった頭髪を気にして周囲の人のみならず街ですれ違う人々のカツラを見破ることに専心しているという、およそ読者の共感を得られにくいキャラクターだ。

しかしこの男が尋問者として亡命者の前に立つと他に比肩する者がいないほどの洞察力と判断力を発揮する。12ヶ国語を話し、亡命者の専門とする分野の知識も身に着け、安易に会話の主導権を握らせない。

しかしアメリカ政府から早く2人の宇宙技術者を渡すよう圧力をかけられているイギリス政府内ではイギリス首相エベッツの巧みな話術に翻弄され、自らの地位を危うくしてしまう。

このうだつは上がらないが、仕事をすれば切れ者でありながら、自分の仕事に対する実力へのプライドが高いがゆえに、常に他者との駆け引きを重んじて自身の地位の安泰と出世のためにあらゆることを利用しようとする上層部からの受けが悪いエィドリアンの姿はどこか我々サラリーマンに通ずるところがある。

しかし我々日本人のサラリーマンと違うのはもはや最後通牒が突きつけられる段になっても自らの正当性を主張し、上司であれ首相であれ、反撃して説き伏せさせようとする根性だ。
1973年の作ではあり、当時の日本のサラリーマン社会には詳しくはないのだが、このエィドリアンの抵抗は当時も驚きだったのではないだろうか。

そして最新作『魂をなくした男』で終結した三部作でも描かれていたのはロシアのKGB高官の亡命劇なのだから、文体、プロットともフリーマントルは変わっていないことに気付かされた。

更には『魂をなくした男』でも亡命を目の前にぶら下げた人参として亡命先の国から逆に情報を得ようとする実に狡猾なロシアのブラフを驚愕のサプライズと共に読者の前に示してくれたが、デビュー作の本書でも旧ソ連一流のブラフを見せてくれる。

まさに想定の斜め上を行くソ連の描いたプランの恐ろしさと巧みさ。家族を大事に思うパーヴェルの性格を利用して、恐らくは家族を人質に強要されたのだろうが、それを微塵とも感じさせないパーヴェルの狡猾さ。

第1章から各章の終わりに挟まれる委員長カガノフを中心としたソ連の秘密委員会の怪しげな会話、真意が読めないパーヴェルの行動などの本当の意味が最後になって明かされる辺りに新人作家でありながら既にデビュー当時からミステリマインドを持った作家だったことが解る。

しかし三つ子の魂百までとはよく云ったもので、この主人公を主体にしたメインストーリーが繰り広げる中で章の終わりにインタールードのように挿入されるソ連の秘密委員会たちによる謎めいた会議の様子は本書ではサプライズのために実に有機的に機能しているが、これはフリーマントル作品ではお馴染みの構成で既に本書においてフリーマントルのスタイルとして確立されているのに驚いた。

さらにはチャーリー・マフィンシリーズを筆頭に描かれるイギリス人への痛烈なる皮肉。
上にも書いたが常にロシア人は物事の深淵を透徹した視野で物事を考え、イギリス人は目の前に駆引きに終始して、物事の本質を見極められないというイギリス政府蔑視の姿勢が既に本作で確立されているのには苦笑してしまった。

重ねて云えば先にも述べたように最新作『魂をなくした男』とデビュー作の本書が奇妙に題材が酷似していることもその裏付けだと云えるだろう。
そう考えれば自分の禿げ頭にコンプレックスを抱いてカツラ愛用者を見破ろうとしている奇妙な性格のエィドリアン・ドッズは危機を感知すると幅広な形の足が痛むチャーリー・マフィンの原型だったのかもしれない。

また本書は題名がいい。
原題は“Goodbye To An Old Friend”でこれが最後の1行として現れ、実に切ない余韻を残す。
そして邦題は『~した男』とフリーマントル翻訳作品の題名のフォーマットを踏襲しながら原題を活かし、読後にその真意に気付かされる、ミステリのお手本のような翻訳だ。

ただデビュー作ということもあってか、本書は珍しく皮肉屋のフリーマントルらしくなくサプライズと深い余韻を重視したエンディングになっている。正直に云えばいつもこのような形で終わればいいのにと思うのだが。

さて冒頭にも書いたが、本書はフリーマントルが37歳の時に「デイリー・メイル」紙の外報部長時代の頃に通勤中の車内で書いた物で、これが好評を以て迎えられた、フリーマントルの作家活動のきっかけとなった作品である。こういう物語を通勤中に書くことも凄いが(多分多少誇張も入っているだろうが)、37歳で部長職に就いていることだ。
日本の会社では一流の新聞社では恐らく考えられないことだが、実力主義のイギリスではこのような人事もあり得るのだろうが、現代の大作家は勤め人としても凄かったということか。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(7pt)

最後に唸りました

ずうっと淡々と話が進んでいきましたが最後で驚かされました。

わたろう
0BCEGGR4
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No.9:
(5pt)

題名が何度もリフレインします

もう30年近く前に読んだ一冊。
冴えないスパイが主人公なのはフリーマントルの伝統ですね。
敵亡命者とのやりとり、ささいな一言からの推理。
そして題名。いまだにこのタイトルが英語でよく頭の中で流れます。
別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)Amazon書評・レビュー:別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)より
4102165029
No.8:
(5pt)

三十年ぶりに読んでも面白いものは面白い。

頼んでいる本が届くまで何か読もうとブライアン・フリーマントルの処女作(1973年)『別れを告げに来た男』(原題Goodbye to an Oldfriend)を読むことにした。
 評者がこの本を購入したのが何時なのか知るために奥付を見たら昭和59年2月(1984年2月)十一冊と記してあった。
 もう30年以上も前の古い本であり本書のテーマも古臭く東西冷戦時代の亡命ものである。
 パリの英国大使館へ亡命してきたソビエトの指導的宇宙科学者ヴィクトル・パーヴェルが、英国内務省の属官で、亡命者の尋問を職務とするエィドリアン・ドッズが事情聴取することから物語は始まる。
 エィドリアンは気弱で優しい性格なのだが、一つだけ誇れる能力の持ち主である。 
 その能力というのはオックスフォード大学の現代言語学で最高点をとった経歴の持ち主で語学力が抜群なのである。
 その脳力を生かしてこの職務につき多くの亡命者の聴取に成果を上げてきた。
 内気で押しの弱い性格なエィドリアンが、亡命者ソビエト宇宙科学の最高峰ヴィクトルを相手に尋問を始めると変幻自在に相手と渡り合えるところが本書の読みどころであろう。
 読み始めてヴィクトルの亡命が何を意味するのかなど評者には解ってしまったから、退屈するかと思いきや、フォーサイが登場する人物の性格描写などの上手さとプロット構成の緻密さに舌を巻きながら夜更かして一気読みしてしまった。
 ヴィクトルが帰国したあと家まで送られる車の中でソ連秘密委員長カガノフからエィドリアンの写真を見せられてもヴィクトルが白を切るエンディングは心憎い。
 過日『戦士たちの挽歌』を再読したのだが、その内容をすべて忘れていたのが情けなかったが、本書『別れを告げに来た男』もその内容をすべて忘れてしまっていたから我が記憶力の劣化を再確認することになってしまった。
 さすがに『ジャッカルの日』や『オデッサ・ファイル』の二作などは我が劣化した脳味噌の片隅に存在してはいるのだが・・・。
別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)Amazon書評・レビュー:別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)より
4102165029
No.7:
(5pt)

これこそ傑作

世評では「消されかけた男」を傑作とするけど、私はこれこそがフリーマントルの最高傑作と思います。読みやすい分量もグッド。
別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)Amazon書評・レビュー:別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)より
4102165029
No.6:
(5pt)

フリーマントルの最高作

文庫にしても200ページ余りの長くない作品ではあるが、スパイサスペンスとしての醍醐味、人物描写の見事さ、そして筋書きの抜群の面白さがきっちりと詰まった秀作である。「消されかけた男」のチャーリー・マフインでもそうであったが、フリーマントルの人物描写の的確さには本当に感嘆させられる。エイドリアン・ドッズとエベッツ首相との会話の迫力、ドッズとパーペルとの心理的チェスゲームとも形容される会話、ドッズと妻や秘書たちとの生活臭い対話。この作品はそのような色々な会話が柱となって見事な交響楽を演奏しているようだ。訳者は後書きで、亡命を扱った作品の中でも「ルインターの亡命」「エスピオナージュ」と匹敵すると評しているが、その通りであり、そのコクの深さというか、緻密さにおいては、他を凌駕するといっても過言ではなかろう。
別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)Amazon書評・レビュー:別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)より
4102165029
No.5:
(5pt)

傑作

原書で読みました。
簡潔で余分な描写などなく、洗練された文体。
巧妙に練られたプロットと人物。
冒頭から中盤まで出てくる重要な伏線の数々。
その見事な回収。

素晴らしい。読め。
別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)Amazon書評・レビュー:別れを告げに来た男 (新潮文庫 フ 13-2)より
4102165029



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