ネームドロッパー



※タグの編集はログイン後行えます

【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

10.00pt (10max) / 1件

10.00pt (10max) / 1件

Amazon平均点

2.67pt ( 5max) / 6件

楽天平均点

4.00pt ( 5max) / 2件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
1pt
サイト内ランク []A
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

58.00pt

60.00pt

0.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)2008年06月
分類

長編小説

閲覧回数2,793回
お気に入りにされた回数1
読書済みに登録された回数1

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)

2008年06月30日 ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)

ネット詐欺師がハメられた!?ジョーダンは他人の個人情報を盗み出しては本人になりすまし、ネット上から財産を騙し取って優雅に暮らすプロの詐欺師。ひと仕事終えてニースにヴァカンス、出会った人妻アリスとは甘いアバンチュール…。しかし、帰国した彼を待ち受けていたのは訴状、罪名は姦通罪!敵はいったい誰なのか?その真の狙いは?スリリングな知的攻防戦が始まる。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

ネームドロッパーの総合評価:6.00/10点レビュー 7件。Aランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

埋もれさすには惜しい傑作

旅先での一人旅の女性とのアヴァンチュール。そんな珍しくもない、誰にでも起こりそうな情事が思いもよらぬ災厄をもたらす。
そんなありきたりな設定に被害者を身分詐称を生業とする詐欺師に持ってきたところにフリーマントルのストーリーテラーとしての巧さがある。

特に今回はアメリカでももはや死滅状態であるクリミナル・カンヴァセーションという特殊な法律を持ってきたことが大きい。アメリカの州でもほとんどの州が既にこの法律を撤廃しているが、たまたま情事の相手の出生地がノースカロライナ州でそこにまだ現存していた事が主人公ハーヴェイに更なる災いをもたらしている。
よく他国の法律でこんな物を見つけたものだと感心した。

そして新聞であれば数行で済まされるような事件が当事者達には先進的苦痛を伴い、煩雑で不安な毎日を強いられる事をフリーマントルは事細かく書いていく。これこそ記事の裏側にある本当の事実なのだ。

そして法廷に突き出された者はそのプライヴェートが白日の下に晒され、何もかもが真っ裸にされる。私生活は無論の事、隠しておきたい過去、信条、既往症に他人に対する秘めたる思いまで、全てが暴露されていく。
特に本書で論点となっているのはクラジミアという性病である。どちらかといえばこれは密室で医者と患者のみで話されるべき内容であり公に開けっ広げに話されるようなことではない。しかし裁判では被告側の4人と原告側の4人、更には裁判官に陪審員に傍聴者らに自らの隠しておきたい恥ずべきプライヴェートを大の大人が誰がどのように性病を移したのかと熱弁が振るわれる。その様子は想像するだに滑稽である。こうなると裁判というのはもし勝訴したとしても、後に残るのは全てを世間に知られた個人であり、果たしてそれで何を得るのか、疑問に思ってしまう。
アメリカは訴訟王国と云われて久しいが、気に食わないことがあったからと云って、社会的制裁を加えるために容易に訴えを起こすより、それによって被る不利益、失う物を考えた方がいいのではないか、法廷ミステリではそう警鐘を鳴らしているようにも取れる。

しかし皮肉な事にその法廷シーンが実に面白い。下巻冒頭から繰り広げられる裁判シーンは本書の白眉と云えるだろう。
とどのつまり、一時期法廷ミステリが活況を呈したのは、一般人にはなじみが無い世界である珍しさもさることながら、他人のプライヴェートがどんどん暴露されてしまうことを知る読者の野次馬根性を大いに刺激している事も認めざるを得ないだろう。結局のところ、他人の不幸ほど面白い物はないということか。

本書でもその例に洩れず、法廷シーンで繰り広げられる原告側、被告側双方がやり取りする揚げ足の取り合い、トラップの仕掛け合いはものすごくスリリングである。言葉の戦争だとも云えよう。
元々フリーマントル作品には上級官僚が自らの保身、自国の保身のために行う高度なディベートが常に盛り込まれており、すごく定評がある。このフリーマントルのディベート力が裁判という舞台に活かされるのは当然であった。逆に云えばなぜ今までフリーマントルが法廷物を書かなかったのかが不思議なくらいだ。

さて読んでいて思ったのは、今回の主人公ハーヴェイ・ジョーダンはチャーリー・マフィンに非常に似ているということだ。身分窃盗という詐欺師を生業にしているが故に、公に顔を知られてはならないところはチャーリーがスパイであるという職業柄、同様の禁則を持っているのと同じだし、自ら保身のために自分が雇った弁護士以上の分析力を発揮し、逆に弁護士に突破口の糸口のアドバイスを送る。それは自分だけではなく、情事の相手アリスを守るためでもある。この点はチャーリーが英国のスパイでありながら、内縁の妻であり、ロシア民警の総元締め的立場にあるナターリアを同時に救うことに腐心するところを非常に似ている。
そして自らの生活を脅かす人物に必ず復讐を持って制裁することもチャーリーと非常に似ている。双方に共通するのは共に英国人であるということ。つまりこの自らの保身だけでなく、愛する女性を守らなけらばならないという騎士道精神が根底にあるからではないだろうか。

本書のタイトルであるネーム・ドロッパーとは有名人の名前を借りて、恰も自らが非常に親しい友人のように振舞う人を差す言葉らしく、ここでの意味は他人の名前を自分の名前のように使い、その存在を他者に認めさせるように使う人として使用されているようだと訳者は述べている。
ここで思い当たるのは果たして名前とはなんだろうかという事だ。
他人の名を借りて身分を偽り、それが偽造パスポートや偽造運転免許証、さらに社会保障番号を知ることで他人に成りすます事が出来る社会。しかしそれは結局他人の人生でしかなく、非常に空虚な物であると私は思う。なぜなら他人に成りすまし、それが社会で認められ、金融取引も出来てしまう反面、では一体本当の自分とは何なのだというアイデンティティが揺るぐような根本的な命題に行き着くからだ。
本書は身分窃盗であるジョーダンが本人であるハーヴェイ・ジョーダンとして訴えられることで、改めて借り物の人生を過ごしてきた自らについてアイデンティティの再認識が成される。だからこそのあの最後のセリフが活きるのであろう。
最近のフリーマントルは長く生きてきたせいか、人生に対して斜に構えた見方をしがちで、最後に英国人流の皮肉を以って物語を閉じる傾向があったが、本書は主人公が詐欺師という犯罪者にもかかわらず、非常に胸の空くエンディングが用意されている。
私はフリーマントルにこういう小説を書いて欲しかったのだ。
世間では全く俎上に上がることが無かった本書だが、それが不思議でならない。『殺人にうってつけの日』もフリーマントルを最初に手にするのに適していると書いたが、本書はこの結末も含めて、更にお勧めの1冊だ。近年のフリーマントル作品の中でもベストだとここに断言したい。

Tetchy
WHOKS60S
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.6:
(3pt)

癖があるけど、フリーマントルらしいといえば。。。

上巻を読み終えて、☆3の割に、すぐに下巻を読みたがっている。不思議な作品です。コンピュータハッキングの世界と、アメリカの特有の州に独特の離婚訴訟の話が微妙にそぐわずちょっと落ち着かない。それでもハッキングの世界というより、むしろこれは離婚訴訟の方がメインなんだと少し落ち着いてきた。ハッキングの方は正直余り面白みがないけど、この訴訟のことは(余りに日本の法と異なりこともあり)興味深い。弁護士と弁護士事務所がやたら出てくるし、名前だけでも結構混乱するけど、話の行方は面白くなってきた。変な言い方だけど、まだ下巻があることを考えると、フリーマントルらしいどんでん返しというか、人を食った展開が待っているに違いない。それを楽しみに、半ば耐えながら(フリーマントルフアンとしては、まぁ、だいたい後半第4コーナ回らないとすっきりしないことは覚悟しております)下巻を楽しみにしよう。
ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)より
4102165584
No.5:
(2pt)

現実味がない

他人の個人情報を盗み、その人になりすまし、金を稼いでいる男が美しい人妻に出会い、彼女の離婚訴訟に巻き込まれるという話。
主人公がハッキング能力を駆使して、窮地から逃れるっていうことだったので、どんなことするのかと思ったら、出てくるのはトロイの木馬だけ。そんなんで簡単に大企業のコンピュータなんかに侵入できるのかなぁ。あんまり現実感がない。
話も裁判の場面が長くて、ハラハラドキドキもしない。
ブライアン・フリーマントルって久しぶりに読んだんだけど、こんなもんだったかな。ちょっと残念。
ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)より
4102165584
No.4:
(1pt)

期待はずれ

虚々実々の騙し合い、というコンゲームかと思いきや、実際には法廷の駆け引きが中心の法廷小説に近い内容。詐欺師が騙された!という展開に期待すると見事に裏切られる。買わなきゃ良かった。
ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)より
4102165584
No.3:
(3pt)

高慢でうぬぼれ詐欺師が女にだまされた?

まだ上巻を読み終えたところですが、前作の『殺人にうってつけの日』のような軽い犯罪小説です。フリーマントルさんの小説では、自信過剰の男と弱そうな女性が出ると、女性が怪しいというパターンが多いです。この作品も、女性を信用していよいのか、詐欺師はうまく逃げ切れるのか、進行していきます。あいかわらず読み始めると止まりませんね。法廷が舞台なので、弁護士とのやり取りなど、興味津々です。
ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)より
4102165584
No.2:
(4pt)

意外と楽しめた法廷もの

タイトルもパッとしないし正直あまり期待せずに読んだのですが、予想以上に楽しめました。終盤のあれこれも予想出来てしまいますが、「どうだ!」という展開ではないのでありきたりな印象ではなく、好感が持てました。主人公の職業についても個人的にはあんまり良い印象を持ちませんが、ラストでうまいなと納得。★3.8
ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ネームドロッパー〈上〉 (新潮文庫)より
4102165584



その他、Amazon書評・レビューが 6件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク