殺人にうってつけの日



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初公開日(参考)2007年09月
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長編小説

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殺人にうってつけの日 (新潮文庫)

2007年09月30日 殺人にうってつけの日 (新潮文庫)

協力者の元KGBスパイに裏切られ、妻まで奪われた末に逮捕。元CIA工作員メイソンは、獄中で15年ものあいだ、彼らに対して鉄壁の復讐計画を練り続けていた。ハッキング技術の習得、肉体の鍛錬、周倒な下準備。あらゆる手段を駆使して元妻の幸福な家庭に迫る復讐者が、照準を合わせた意外な人物とは。情報のプロ同士が繰り広げるすさまじい頭脳戦、巨匠による最高峰サスペンス。 (「BOOK」データベースより)




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殺人にうってつけの日の総合評価:7.67/10点レビュー 6件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

初フリーマントルにうってつけ?

上手い。実に上手い。

相手に嵌められ、妻まで奪われて刑務所に入れられた男が出所を機に全てを取り戻すため、復讐を企む。今まで何度も使い古されたプロットであるが、そこはフリーマントル、普通の設定にしない。

なぜなら復讐者ジャック・メイスンこそ、元妻の安定した生活を脅かす悪の存在だからだ。彼はCIA勤務中はロシアに情報を流す売国奴であり、私生活では女を買うのは勿論の事、公然と浮気をし、妻に暴力を振るっていた最低の男なのだ。
この通常ならば主人公の宿敵となるべく恐怖の存在を逆に主人公として設定したところにフリーマントルの作家としての一日の長がある。

また逆を云えば、かつて自らの手で刑務所に送った男が出所し、主人公に復讐するという話もあるが、本書の特異な点は物語をこの同情すべからぬ復讐鬼側から描いたところにあると云えよう。

そしてこの復讐鬼ジャック・メイスンが通常設定されるようなサイコパス、性格異常者ではなく、元CIA諜報員であり、模範囚として減刑され、刑期を5年も縮めて仮出所した男であるという社会的常識を備え、かつ特殊な訓練を受けた男という点に注目したい。

元○○工作員、元グリーンベレーといった殺人能力に長けた復讐者という設定も往々にしてあるが、ほとんどの物語はその特殊性のみ取り沙汰され、復讐鬼=モンスターのような扱い方をされていたように思う。しかしフリーマントルはジャックをそう描かず、15年も刑期を勤めた出所者からスタートし、そこから社会への順応、徐々に復讐の計画を積み上げる過程、そして復讐を成すために積み上げる男として、元諜報員としての自信の回復、そして一方ではいざ実施となった段に逡巡する心理状態などを細かく描く。つまり復讐鬼が社会的不適合者という異常者というような定型を採らないところに本書の読みどころがある。

そして今回復讐を受ける側、ドミートリイ・ソーベリことダニエル・スレイターとアン、そして息子のデイヴィッド一家側の設定もまた巧みだ。

ジャックが出所する段になって、突然彼らに幸運が紛れ込む。ダニエルは自らが経営する警備会社に新規契約と大きな取引が次々と来るようになり、アンは自分たちの住む地方都市フレデリックで営む自らの画廊に有名な画家の個展を開く話が舞い込み、それを成功させたことでメディアの取材に引っ張りだこになり、街の名士となりつつあり、息子のデイヴィッドもバスケットの才能を買われ、大学からスカウトが来る。
こういった人もうらやむサクセスストーリーが、復讐を恐れ、証人保護プログラムの庇護を受ける彼らには災厄の種でしかならない。この大きな幸運がさらに大きな不運を呼び込むストーリー展開の妙と、証人保護プログラムの盲点を付くこのフリーマントルの着想に思わず唸った。

主題がはっきりしているだけに、物語の行き着く所は実に明確だ。即ち復讐は成されるか、成されないかだ。
こういう単純な構造の物語はそのゼロ時間に向かうまでのプロセスに読みどころがあると云えるだろう。同じ復讐譚を扱ったP.D.ジェイムズの傑作『罪なき血』が正に好例と云える。
フリーマントルの場合はと云えば、云わずもがなで、復讐する側とされる側の双方を丹念に描き、全く飽きさせず、“その瞬間”まで双方を振り回す。

またフリーマントルはアメリカの証人保護プログラムに警鐘を鳴らしている。この堅牢と思われたシステムが、実はいくつもの欠点があり、その成功実績は薄氷の上に立つ危うさ、いや逆に情報が隠されているだけに絶対安心という虚像でしかないかもしれないのだ。
エルモア・レナードもこのプログラムには『キルショット』でかなり辛辣な評価を作中で下しており、アメリカ国民(フリーマントルは英国人だが)の中でもその信頼性を疑われているのが解る。

しかし本書を読んでいるときはそんなことは考える必要はない。CIA、KGBは出てくるものの、従来のフリーマントル作品と違い、政治的駆け引きが一切なく、物語がジャックの復讐のプロセス1点に絞られて進むのが非常に読みやすい。
彼のスパイ物に横溢するディベートの応酬も醍醐味だが、こういうシンプルな構成であるが故に、彼のストーリーテリングの素晴らしさが引き立つ。ぐいぐい引き込まれる物語に委ねるだけでいいのだ。

一般的に国際謀略小説の重鎮と呼ばれ、その格調の高さから敬遠されがちなフリーマントルの作品だが(それでも毎年コンスタントに訳出されているのは売れているからだろうが)、本書は彼の本を初めて読む人にはそういった意味ではまさに“うってつけの”一冊ではないだろうか。


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No.5:
(3pt)

巧みで緻密な心理描写がいきる、“復讐”のドラマ

ブライアン・フリーマントルの、“裏切りと復讐”をテーマとしたノン・シリーズ作品。
ジャック・メイソンはCIAの元敏腕工作員。彼はKGB部員ソーベリに自国の情報を流していたかどで15年間を獄中で過ごすことになった。
当のソーベリはKGBから足を洗い、ジャックの妻だったアンと結ばれ、「証人保護プログラム」に守られ、アメリカに亡命して名前もスレイターとかえて息子と3人で幸福に暮らしていた。
メイソンの恨みはつのり、コンピューターのハッキング技術の習得、肉体の鍛錬など出所後の復讐をひそかに誓う。そして、いよいよ刑務所から出た彼は計画を実行に移すのだった。
一方、もともと「売国奴」であり、家庭で肉体的、精神的な虐待を受けていたアンはメイソンの残忍さをよく知っており、釈放間近と聞いた時からおびえはじめる。
物語は、狙われるスレイター一家と、それをつけ狙うメイソンの行動が交互に描かれ、サスペンスを盛り上げて進行してゆく。
本書は、従来の“復讐”ものにひとひねりが加えられ、攻めるものと守るものの人物造形の妙と、巧みで緻密な心理描写とで、一気に読ませるページ・ターナーに仕上がっている。
殺人にうってつけの日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:殺人にうってつけの日 (新潮文庫)より
4102165576
No.4:
(4pt)

ある男の復習

ほかのフリーマントルの作品同様に、相変わらず心理描写が緻密で、女性たちを信用してはいけないという筋が通っています。最近の単発作品と同様に、意外性は少なかったですね。もっともっと裏切りや、駆け引きや罠を期待していたので、少々物足りなかったです。
日本語タイトルがないようにそぐわないように感じました。私が理解した内容では、「ようやく人を殺せる日」という感じです。ある男の復習へにかける執念を描いていますから。
殺人にうってつけの日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:殺人にうってつけの日 (新潮文庫)より
4102165576
No.3:
(4pt)

悪もんを描くのがうまいなぁ

いやぁ、もちろんフリーマントルでなければ☆は5つです。
あくまで、フリーマントルの作品として、のことで、文句なしに面白い作品であることは事実です。
とにかく、怖い。
フリーマントルは、本当に悪い人間の描き方が、とてつもなくうまい。
だから、ムチャクチャに怖い。その怖さがずーっと中盤まで続きます。
お願い、そうしないで、お願い、そうならないで、と祈ります。
でも、もちろんフリーマントルは容赦がありません。
本当に信じられないことにちゃんと導いてしまいます。
人間ではないような人間の、思いがかなってしまい、もちろんとんでもない非道が、通ります。
うそやろ、それはないやろ。。。
でも、それが人の持つ本質的な一面でもあるのでしょう。
話は容赦なく進みます。
あああああああああ、怖い。本当に容赦ない。
終盤、ちょっと疲れたか、ダダダダだ、っと結末に持っていったので☆一個減です。
でも考えようによれば、あのままの感じでずっといかれたら、正直投げ出していたかもしれない。
それくらい怖く、絶望感が満ちてきます。
いやぁ、やっぱフリーマントル。すごいですねぇ。
殺人にうってつけの日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:殺人にうってつけの日 (新潮文庫)より
4102165576
No.2:
(4pt)

フリーマントルのノンシリーズはお勧め!

著者のシリーズものはいくつか出ていますが、私はこのところノン・シリーズの作品を主に読んでいます。前回読んだのは「知りすぎた女」でした。
CIAの工作員ジャック・メイソンは協力者だったKGBのスパイ、ドミートリイ・ソーベリの裏切りに遭い、妻のアンまで寝取られ、逮捕、投獄されてしまう。獄中でジャックは彼らへの復讐計画を練り続けていた。一方、証人保護プログラムのもとでダニエル・スレーターと名を変え、アンと結婚し、幸せな家庭を築いていたソーベリ。ジャックの出獄を知らせる手紙が舞い込んだとき、彼らの生活は激しく揺れ動き出す。
あまり期待しないで読みはじめたのに、いつの間にかぐいぐい物語に引きこまれる一冊。ビターな結末もお見事でした。
殺人にうってつけの日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:殺人にうってつけの日 (新潮文庫)より
4102165576
No.1:
(4pt)

一筋縄ではいかないフリーマントル

ソ連に情報を流していた元CIAの二重スパイのメイソン。彼をコントロールしていたKGBに妻アンを奪われ、更に身分をばらされ逮捕される。15年の服役を終えた時、元KGBはアメリカに亡命し、セキュリティコンサルタントとして、アンと息子との幸せな家庭を築いていた。復讐心に燃えるメイソン。一見、メイソンに肩入れしたくなるシチュエーションだが、彼はかつて優秀な諜報員でありながら、国を売り、家庭ではDV亭主。性格的にも「嫌なヤツ」である。メイソンの復讐計画は着実に進行していく。彼の復讐に怯えるアンとその現夫である元KGB。しかしそこですんなり復讐を巡るシーソーゲームのような闘いとはならないのがフリーマントル。結末には、「う〜ん。やられた!」。結局、最後に勝つのは?本当に笑うのは誰か?何が「生き残る」ということなのか?いつの間にか、嫌なヤツと思いつつも、メイソンを応援したくなり、「善良な」「被害者」を憎らしく思えてくる。いつもながら、フリーマントルの絶妙な人物描写に感嘆だ。
殺人にうってつけの日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:殺人にうってつけの日 (新潮文庫)より
4102165576



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