クラウド・テロリスト



※タグの編集はログイン後行えます

【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

4.00pt (10max) / 1件

4.00pt (10max) / 1件

Amazon平均点

3.40pt ( 5max) / 5件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
0pt
サイト内ランク []D
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

39.00pt

72.00pt

0.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)2017年07月
分類

長編小説

閲覧回数1,672回
お気に入りにされた回数0
読書済みに登録された回数1

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)

2017年07月28日 クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)

米国NSAの局員アーヴァインは暗号解読の専門家。中東のテロリストを炙り出すためのプロジェクト「サイバー・シェパード」を立ち上げた。その矢先に世界各地で同時多発テロが発生するが、被害は最小限に止まる。その立役者は英国MI5の諜報員サリーだった。次なるテロを阻むべく手を組んだ二人は、逃亡したテロリストの首魁アスワミーの行方を追ってサイバー空間を渉猟していくが…。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

クラウド・テロリストの総合評価:6.33/10点レビュー 6件。Dランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

三つ子の魂百まで。いや80まで?

御歳81歳のフリーマントルが2015年に発表したのはなんとサイバー空間を利用した対テロ工作を駆使するNSAのエリート局員ジャック・アーヴァインが率いる面々の活躍を描いた本作だ。当時79歳の高齢にもかかわらず、最先端の情報端末を駆使したこのような作品を書くフリーマントルの創作意欲の旺盛さにまず驚いた。

冒頭でも語られているがオサマ・ビン・ラディンが率いていたアルカイダが情報交換のツールとして使用していたのは今や誰もが利用しているSNSのフェイスブックだった。この全世界数億人が利用するSNSは彼らにとって絶好の隠れ蓑になっていたことが本書でも語られている。
なんとアメリカの一企業が、正確には一青年が開発したSNSが敵対者であるアラブ系テロリストにとってこの上ない便利な通信手段になっていたとはなんとも皮肉なことである。

さて今回の物語の中心人物はアメリカの若きエリートであり、コンピュータの天才でテロリスト同士を相討ちさせる<サイバー・シェパード作戦>の立案者であるジャック・アーヴァインと、ヨルダン人の母とイギリス人の父親との混血でアラビア語にも長けているMI5の切れ者でありながらモデル並みのスタイルと美貌を持つサリー・ハニングの2人だ。これら2人のエリートにありがちな高慢で不遜な性格を持ち、常に優位に立とうとしているところが共通で、今回の米英共同のテロ阻止計画を通じてお互いが魅かれ合うという、なんとも典型的な展開が繰り広げられる。

このありきたりな、いやセオリーにのっとり過ぎる展開はどうにかならなかったものだろうか。

しかしこの2人には意外な繋がりがあり、大使だったアーヴァインの父親はレバノン赴任時に強引な外交が基で部下をテロリストで死なせ、危うく中東戦争を引き起こしかけた過去を持ち、そしてサリーの両親もまた外交官で彼が死なせた部下だった。つまりアーヴァインは一種サリーの両親の仇の息子であるのだが、その辺についての微妙な心の揺れ動きについてはあまり言及が成されない。そういったことを割り切って考えられる人たちだとも云える。

さて物語の中心に据えられている<サイバー・シェパード作戦>。これはサイバー空間でテロリストの一味に成りすまし、テロリスト同士を情報操作によって戦わせて共食いさせるという、いわば現代版『血の収穫』である。しかしそのためには政府の職員であるNSA職員が隠密裏にハッカー行為をして他国のサーバーに侵入するという違法行為を犯すという実に危うい作戦であり、その事実が発覚すれば各国からの非難は免れない代物だ。
本書ではイランの諜報機関のサーバーに侵入してテロリストの動向を監視し、CIAが取り逃がしたテロリスト、アル・アスワミーの足取りを探っているが、これは実際に起きたCIA、NSA局員であったエドワード・スノーデン―ジャック・アーヴァインのモデル?―による2013年にNSAや英国のGCHQがマイクロソフト、グーグル、フェイスブックを監視していたことが発覚した<プリズム計画>、<テンポラ作戦>事件に着想を得ていることだろう。作中でもそのことについては言及されているが、それを踏まえながらも同様のことをしていることが結局米英政府は懲りていないということで、我々は今なお監視下に置かれていることが仄めかされている。

ただそれも致し方ないかなと思ったりもする。テロリストの足取りを追ってサイバー空間を逍遥するNSAの連中にアクセスするのは下位サイトに誘って武器の密売を促す者がいたり、自爆テロの志願者を募っていたりと不穏この上ない。実際、中国が日本政府の尖閣諸島を領土として主張してすぐにデモの呼びかけが成され、中国国内のデパートを破壊する煽情的な投稿が相次いだりした。
我々の知らないところで世界ではこんな恐ろしいやり取りが簡単に、気軽に行われているのだ。

しかしこんなにも短気な連中ばかりが出てくる小説だっただろうか、フリーマントルの作品は。
ディベートや会議のシーンでは常に自分の保身のために相手を罵倒し、責任転嫁の怒号が飛び交う。会話文にはエクスクラメーション・マークが散見され、心中で悪づく地の文が必ずと云って挟まれている。ほとんど建設的な意見が見られず、失敗が起きた時のために着かず離れずの状態にしておきたい連中ばかりだ。
それはアメリカ側のみならずイギリス側も同様で、自分を通さずに話が上に成されることに腹を立て、足を引っ張ろうと画策する。外部に敵あれば内部にも敵ありの状態。更にお決まりの如くCIA中心の捜査にFBIも介入してきて水を差し、更にCIAの面々の頭に血を登らせ、怒鳴り声が乱舞する。
そんな中、失敗の責任を取らされ、無能の烙印を押され、権力の座から落とされる者、有事の時の責任転嫁のためだけに事務屋として窓際にいることを強いられる者と落伍者たちが増えていく。

内部抗争と、ライバル視する国同士の争いに筆が注がれ、本来の敵であるアルカイダのリーダーはなかなか捕まらないという、なんとも不毛な展開が続く。
フリーマントルも歳を取って癇癪が過ぎるようになったのだろうか。とにかくページを捲ればケンカや諍いばかりで、正直読んでいて気分が良くなかった。

昔のスパイ行為として行われていたのが盗聴ならば現代ではサーバー内の情報を入手するスパイウェアである。冷戦時代からスパイ小説を書いてきた作者が時代の潮流に遅れずに最先端の諜報工作をきちんと描いていることに感服する。

しかし本書ではそんな最先端のスパイ技術を扱いながらも一方で冒頭で出てきた暗号の解読に難儀する様子が延々と描かれる。最初に現れ、スンニ派のテロリストと共食いさせられたシーア派のテロリスト、イスマイル・アル・アスワミーを取り逃がしてから、彼の足取りをイラクに仕込んだスパイウェアを手がかりに探るのだが、一向に足を出さず忸怩するNSAとCIA、そしてMI5とGCHQの、アメリカ側とイギリス側の情報争奪戦の様子がずっと描かれている。
そしてその暗号解読のとっかかりが判明するのが下巻の180ページ目辺り、つまり終盤に差し掛かった頃だ。これは私も物語の半ばで気付いていた。

さらに暗喩で繰り広げられるテロリストたちとのメールのやり取りについてもその内容については意に介さなかったことが解せない。
サリーがその内容に注目するのはサイバー空間で取り逃がしてしまうアスワミーの計画を暴くための最後の手段としてなのだ。そのメールの内容に計画の鍵があることが判明するのだが、裏返せば答えは既に出ていたことになる。これらことわざや警句に最終段階で注目するとは正直に云って米英の頭脳の精鋭たちが集う情報部員たちの頭も大したことないなと思ってしまった。

イギリスとアメリカとの間の優位性の天秤が左右に触れながらアメリカでのCIAとNSAの合同チームとFBIとの内部抗争、また自身の組織内での権力ゲームも繰り広げられながら、寄せては返す波のように一進一退するテロリストとの接触は上に書いたように最終的にアスワミーの奸智に長けた策略によって失敗するが、一連のメッセージと最後にアスワミーが残した嘲笑めいたメッセージからサリーはアラブ人の思考形態に即して、テロ実行の日を特定する。

題名の『クラウド・テロリスト』はクラウドコンピュータのあるサイバー空間を利用したテロリストであるという意味でありながら、最後にクラウドサーバーそのものを破壊するテロリストであるというダブルミーニングが解る辺り、巨匠の矜持を感じる。

行く行くはアメリカ政府の最高機関に上りつめるであろう若き天才の末路はなんとも遣る瀬無い。フリーマントルの皮肉は今回も一切揺るがない。

しかしサイバー空間での諜報活動とテロリストとの攻防を描きながらも、上に書いたように内部抗争の権謀詐術の数々に筆が割かれているのはいつもと同じである。いや逆に今回は情報戦であるがゆえにいつもよりも情報が多く、それに下らない抗争が上乗せされている分、かなり苦痛を強いられた。
敢えて苦言を呈するならば、やっていることは同じで題材と登場人物を替えただけであるとの思いが強く残ってしまった。

このサリー・ハニングとジャック・アーヴァインの2人、もしくはいずれか1人が今後新たなシリーズ・キャラクターとして登場するのかは解らないが―作者の年齢を考えるとほぼあり得ないと思うが―、若さゆえの融通の利かなさと、サリー自身が独白しているように何の根拠もなく、その明敏な頭脳で組み立てた論理をごり押ししようとする強引さとヒステリックな性格はあまり読者の、いや私の好感を得られなかった。

また色んな事が置き去りに、棚上げされたままのような読後感である。情報が多すぎて作中でも処理しきれなかった印象がある。

テロとの戦いには終わりがなく、本書の結末は長いテロとの戦いの単なる1章にしか過ぎない。

80歳を迎えて健筆を振るうフリーマントルの創作意欲には感服するが、もし次作があるなら、爽快な、もしくは少しは心温まる結末を迎える物語を読みたいものである。


▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

Tetchy
WHOKS60S
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.5:
(3pt)

意欲は買う

結局下巻も分かりにくさは変わらなかった。
著者の新しい分野への挑戦はすばらしいが、やっぱり古典的なスパイ小説のほうがはるかに良さが味わえる作家だと認識する結果に。
クラウド・テロリスト(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:クラウド・テロリスト(下) (新潮文庫)より
4102165673
No.4:
(3pt)

分かりにくい

フリーマントルは好きな作家のひとりだけど、どうもこの話は無駄な登場人物が多くてややこしい。
テロの首謀者たちだけでなく、内部の足の引っ張り合いにも気を使い…という展開はわかるのだけど、単純な構成のわりにわざわざ話をややこしくしているわりに、話は進まず。
下巻に期待
クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)より
4102165665
No.3:
(1pt)

意味不明

ダークウェブ等に関する専門知識が不足している当方が悪いと言ってしまえばそれまでだが、状況そのものの理解が困難。文字面を追うだけで、なんの面白さも感じなかった。こんなことはフリーマントルの作品で初めて。
クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)より
4102165665
No.2:
(5pt)

敵はテロリストだけではなかった

アメリカの厄介者同士を殺し合わせる作戦が、一見成功したかに思えたが、実はもっとも危険なテロリストが無傷で逃げてしまった。
その結果起こる、諜報機関どうしの壮絶な責任擦り合い合戦。その擦り合い合戦が凄くて、捜査が全然先に進みません。
という内容で、下巻に続きます。
クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:クラウド・テロリスト(上) (新潮文庫)より
4102165665
No.1:
(5pt)

先の展開が読めない、フィッシングの戦い

これまでのスパイ小説は、敵を探し出して狩るというハンティングの戦いでしたので、残りページ数で続きの展開がおよそ想像出来ましたが、この小説については、全く予測がつきません。
映画化された時には、多分違った結末になるような気がします。
クラウド・テロリスト(下) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:クラウド・テロリスト(下) (新潮文庫)より
4102165673



その他、Amazon書評・レビューが 5件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク