城壁に手をかけた男



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    初公開日(参考)2004年03月
    分類

    長編小説

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    城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)

    2004年03月31日 城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)

    ミサイル防衛を凍結する条約に調印すべくロシアを訪問した合衆国大統領夫妻が、ロシア大統領夫妻とともに銃撃を受ける。取り押さえられた犯人は亡命イギリス人の息子。三国合同捜査が開始されることとなり、例によってチャーリーにお鉢が回ってくる。だが、高をくくっていた彼が調べを進めるうちに、尋常ならざる陰謀の構図が浮かび上がってきた…。好評シリーズ、注目の新展開。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

    城壁に手をかけた男の総合評価:8.64/10点レビュー 11件。Aランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (9pt)

    謎が謎を更に呼ぶ

    前作『待たれていた男』では永久凍土から出てきた死体がアメリカ人とイギリス人、そしてロシア人の第2次大戦当時の身元不明死体という設定でチャーリーに再び危機を齎したフリーマントルだったが、今回はモスクワで起きた米露大統領射殺事件―1つは未遂―の現行犯がなんとイギリスからの亡命者の息子だという設定でチャーリーを事件の渦中に巻き込む。いやはやよくもまあ斯くも多彩な設定を思いつくものである。

    そしてまたまたフリーマントルは素晴らしい手札を用意してくれている。
    亡命者を監理するKGBのベンドール一家に関する資料は一体どこへ消えたのか?
    ベンドールが火曜日と木曜日に会っていた連中とは誰か?
    ピーター・ベンドールの日記や書類を持ち去ったKGB職員とは一体誰なのか?
    ロシア軍に所属していたベンドールに背後に潜む存在が解らない中、発射された銃弾5発のうち、2発と3発は口径が違う事が判明し、他の狙撃手の存在が浮かび上がる。更には銃弾の旋条痕から実は5発ともベンドールが放った物ではない事が浮かび、更に混迷を極める。そして尋問として呼び出されたベンドールの母親が獄中自殺したと思われたのが実は他殺であった事、それを筆頭にベンドールを取り巻く連中が次々と殺されている事。そしてなかなか口を割らないベンドールが時折口ずさむハミングは何の象徴なのか?
    そもそも何故、軍に所属していた頃から奇行が目立っていたベンドールのような不安定な精神状態の男を敢えてこのような重大な暗殺事件に狙撃手として選んだのか?
    様々な事実が大きな組織、それもロシアの政治の一画を担う組織の翳をちらつかせるが、それが何なのかが新事実が解れば解るほど曖昧になっていく。

    どんどん複雑化する状況に読者は一体この先どうなるのだろうかと安心する事を保証されない。そしてこの複雑に絡み合った数々の要因が最後ある一つのシンボルを中心にするすると解けていき、最後に明かされる事件の裏に隠された壮大な計画が露わになってくる。
    特に冒頭で起きた狙撃手とTVカメラマンとの格闘の一部始終が、最後になって全く別の側面を持っていたことが明らかになるところはカタルシスを久々に感じてしまった。本格ミステリの謎解きそのものと云っていいだろう。そしてこの真相が解って初めて本書の原題”Kings Of Many Castles”の意味が見えてくる。

    そして今回もものすごい知能合戦の応酬だ。三国共同捜査という形を取りながらもいずれも自分の地位、自国の優位を得んがために、協力の微笑みの裏でナイフを隠し持つ危うさを持っている。無害かつ見返りとして自分の利益になりそうな情報や証拠は共有化するが、自らの取っておきの武器となりうるものは決して明かさない。
    そして各々がそれを隠し持っている事を三国捜査の代表者は笑顔や何気ない言動に隠された合図で知っているのだ。

    特に今回は現行犯逮捕されたベンドールの尋問とナターリヤが行う旧KGBの亡霊とも云うべき連邦保安局のトップとの尋問がスリリングだ。
    前者はなかなか突破口を見出せなかった尋問から、精神科医の助言を手掛かりにチャーリーが言葉巧みに相手の自尊心をくすぐり、徐々に有効な情報を引き出していくテクニックに感嘆する。
    後者はKGBというロシアの高官の誰もが恐れる存在の象徴ともいうべき連邦保安局の長官カレーリンを相手に自らもKGBに所属していたナターリヤが知略の限りを尽くして堅牢なガードを突き崩していく。特にカレーリンは旧KGBでも百戦錬磨の猛者であり、情報戦には長けており、尋問者を手玉に取るように、更にはテストを行うかのように冷徹な微笑を浮かべながら応対する。その自負心を見抜き、相手に誘導されている事を気付かせないように詰め将棋の如く尋問を行うナターリヤ。この尋問に彼女らが背負う大統領代行の威光というのがロシア的で面白い。
    ここで彼女らがこの連邦保安局の最高責任者に手玉に取られることは即ち彼女らをバックアップしている大統領代行の強さを挫く事になり、それは代行が大統領に選任された後、連邦保安局に対するその上下関係が継続される事を意味している。この2人のせめぎ合いは本書で最も息が詰まったパートだった。

    こういう高度な駆け引きを彼らが出来るのは一様に彼らが自分の感情を制御する訓練を受けているからだ。一番危険なのは感情に左右され、自分を見失うことだ。相手をよく観察し、言葉の抑揚に注意し、発言に隠された意味を嗅ぎ取らなければならない。彼らも人間であるから相手のテクニックに揺さぶられ、感情を露わにするがそれを冷静に観察する第三者の目を持っている。
    この辺のテクニックは私も仕事をする上で是非とも身に付けたい技術だ。

    そして哀しいかな、彼らはそのような訓練を受けているがために、男女関係の駆け引きにおいても第三者の目を行使し、無防備に相手に身を委ねない。ほとんどこれは職業病と云っていい。
    そしてチャーリーの私生活は前作に比べてあまり好ましくない状況にある。前作での事件でナターリヤ自身が彼との危うい均衡の中での生活に疲労を感じており、チャーリーとの心の触れ合いが減じている。例えば成長した二人の娘サーシャが学校で親の職業について友達同士で話すようになったことに過敏に神経をすり切らし、幾度となくチャーリーへの愛情と自分に向けられる愛情の有無を自問する。単にロシア側の情報源として自分との生活を続けているのではないかとあらぬ想像を掻き立てる。しかし常に先読みする能力に長けているチャーリーを頼りにしている自分がいることにも気付くのである。

    作中たびたび登場人物の口から出るように本作の事件はダラスで起きたケネディ大統領暗殺事件に酷似している。むしろダラス事件のロシア版といった趣きで、主犯と思われた人物が逮捕された後、それを暗殺する男が出てきて、またその人物も殺され、真相は闇の中、といった具合だ。
    ただフリーマントルは本作ではきちんと決着をつける。それはこの作者が私ならケネディ暗殺事件をこのように解決するだろうと声高に叫んでいるかのようだ。

    ただ1つ気になるのは、前作『待たれていた男』でも感じたが、もはやチャーリー・マフィンにもはやライバルはいないということ。今思えばナターリヤとの恋の宿敵であった『流出』で登場したポポフが最後のライバルだったように思う。
    最大の敵はもはや自分というのがこの2作で共通する事だろうか。イギリスの情報部員という危うい立場でロシア内務省の上級職でしかも民警を取りしきる高職にあるナターリヤとの生活を死守するためにドジを踏まないよう事に当るチャーリーはアメリカとロシアのライバルどもと共同戦線を張りながらもその実、いかに自分が上手く振舞うかに腐心している。
    前作と本作が似通っているのは米英露三国共同捜査という設定に加え、チャーリーの生活の維持というのが共通しているからだろう。悪く云えば本作は前作の数あるヴァリエーションのうちの1つとも云える。シリーズに新しい色を加えるためにも『亡命者はモスクワをめざす』で現れたエドウィン・サンプソンのような、一枚も二枚も上を行くライバルが欲しいところだ。



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    No.10:
    (5pt)

    城壁に手をかけた男(下)(新潮文庫)ブライアン フリーマントル

    状態等は、や大変満足です。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    suzu
    城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)より
    4102165487
    No.9:
    (5pt)

    面白い

    フリーマントル氏の他の作品へのコメントを参照して下さい。・・・・・・・・・・
    城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)より
    4102165479
    No.8:
    (5pt)

    面白い

    フリーマントル氏の他の作品へのコメントを参照して下さい。・・・・・・・・・・
    城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)より
    4102165487
    No.7:
    (3pt)

    珍しくちょっとバランスが悪い作品

    今回の舞台はモスクワ。おりしも訪問中の米国大統領夫人とロシア共和国大統領が狙撃される。ケネディ暗殺を彷彿させる
    筋書きの中で、浮かび上がってくる元KGBの陰謀。ロシア駐在中のチャーリー・マフインがその分析力で米国諜報部隊の
    協力を得ながら事件を解決する。この陰謀に愛人でロシア諜報局の中枢にいるナターリアが絡んでいるのでないかという
    彼の疑問。事件の鮮やかなる解決とは対極的な私生活の破綻。作者の筆力は流石と思わせる一方、やや筋書きが
    単調でかつ鮮やかなどんでん返しといった趣がなく、やや退屈とも言える。大統領暗殺というこのシリーズにはやや大きすぎる
    テーマが災いして、バランスの悪い作品になったかもしれない。
    城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城壁に手をかけた男〈上〉 (新潮文庫)より
    4102165479
    No.6:
    (4pt)

    飽きないねぇ

    飽きないシリーズだよなぁ。いったい何作目になるのかね、チャーリー・マフィンシリーズ。
    確かこれは、一冊も逃していないと思うね。
    いつもながら思うのは、チャーリーを、読み出しの時には、情けない、さえないおっちゃんとして読んでるのね(コロンボ警部の更にさえない、水虫野郎で)。ところがそのうちにどんどん、かっこよくなる。もちろん話の中では相変わらず、コケにされ、おもちゃにされ、相手にされないのに。
    気がつけば、美人の弁護士とできてしまうわで、実はむちゃくちゃ持てているではないか。
    シリーズ最初のころに比べ、スパイという個人のばかしあい、MI6/CIA/KGBという組織の化かしあい、そして国家としての化かしあい、の複雑に入り組んだ様は(今回もたいがい複雑かもしれないが)ちょっと影を潜め、回を追う毎にチャーリーとナターシャという修羅場を越えて結ばれた二人の人間模様、心のひだのようなものに重きが置かれてきているように思える。
    いや、それは今までも、この人の心、信頼と疑い、愛情と裏切り、の揺れ動くところが、実は国家間の陰謀にも大きな意味を持つんだ、という部分がこのシリーズの一つの流れとは思う。しかし、その「心」の部分は、どちらかというとあくまでチャーリーの心だけで、ほかの登場人物に対しては割に突き放した部分が、初期であればあるほど多かった気がする。
    それが、ここ数作は、ナターシャという人物像のみならず、彼女との「関係」が最重要キーとなってプロットが組まれている気がする。
    とにかくよくできている。初期のあの、最終数十ページ、もう決して席を立てない、というラッシュは見られないけど、それでもやはり重厚で、いかにも現代の「スパイ」モノらしい、実に面白いストーリーと思う。
    城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:城壁に手をかけた男〈下〉 (新潮文庫)より
    4102165487



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