片腕をなくした男

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種別
長編
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あらすじ

2009年11月28日 片腕をなくした男〈上〉 (新潮文庫)

モスクワの英国大使館内で男の遺体が発見された。顔面は後頭部からの銃弾で消失、右手の指紋も消されていた。そのうえ、左腕までもがない。ロシアへと飛んだチャーリー・マフィンは現地当局と捜査を開始するが、ロシア側はギャング間の抗争だとして事件を早々に終結させようとする。そんななか、大使館内で盗聴器が見つかった。もしや、二重スパイなのか?大好評シリーズ、完全復活。(「BOOK」データベースより)

評判

片腕をなくした男の評価:

7.00/10点 レビュー 1件。 B ランク

書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点7.00pt

片腕をなくした男の総合評価:

8.58/10点 レビュー 12件。

感想一覧

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全1件 1〜1 1/1ページ
No.1
(7pt)

急転直下のどんでん返しに戸惑い中

久々のチャーリー・マフィンシリーズ。前作『城壁に手をかけた男』でナターリヤとの結婚生活に終止符を打ったチャーリーがまたまたロシアを舞台に暗躍する。

騙し騙され、嵌め嵌められ。全く諜報活動の世界とは何が真実で何が虚構なのか全く予断を許さない。
最後まで読んだ今はそんな思いでいっぱいだ。

今までと一味違うと思ったのはチャーリーが嵌められて、いいようにあしらわれることだ。大使館内のスパイ潜入疑惑の捜査の一環としてチャーリーそのものが嘘発見器にかけられ、危うくナターリヤとの生活がばれてしまうのではないかと恐れを抱く。

また記者会見を開く直前にロシア民警捜査官で、チャーリーの協力者であるパヴロフの部屋に招かれた際の一部始終をVTRに撮られ、全国ニュースにその内容がロシア側に同情を誘うように編集され、世界中の笑い者になるなど、今までのチャーリーに比べるといささか精細さを欠く。
文中で時折挟まれる自身の技能の衰えの有無に関する独白から推定すると、本作では現場を離れた超一流スパイのブランクを描く事が1つの目的であったのではないだろうか。

例えば『待たれていた男』や『城壁に手をかけた男』などは身元不明の死体の正体捜しや暗殺の模様が映された映像の分析や容疑者の尋問など、謎の核心にチャーリーが関係する諸外国の機関との軋轢を乗り越えながら迫っていくものだったが、本作では身元不明の片腕の男の死体があるにもかかわらず、その身元を探るところから始まるのではなく、この死体が英国大使館内で殺されたか否かにまず腐心する。
まあ、大使館内で死体が発見されるというシチュエーションだからこの手続きは定石なのだろうが、どうにか探りを入れて事件に介入しようとするロシア側と事なかれ主義を貫こうとする大使館の面々からの妨害や横やりへ対処することばかりが語られ、一向に被害者の正体探し、犯人探しへ進まない。

まあ、これらはいわゆる役所仕事と揶揄されるずさんな仕事ぶりや1つのことにいろんな部署が介在してたらい回しにされるところも想起させられるのが面白いところではあるのだが、それでも謎解きの牽引力よりも状況の打開策に苦心する姿と、再会したナターリヤとの関係修復に苦悶する姿の繰り返しなのはちょっと引き延ばしているのでは?と上巻を読んでいるときは感じてしまった。

今回の話は物語の冒頭に引用されている2006年に起きた元KGBのアレクサンドル・リトヴィネンコをロンドンで暗殺した容疑者アンドレイ・ルゴヴォイ引渡しを当時のロシア大統領プーチンが拒否した事件をモチーフにしている。グラスノスチ以後、ペレストロイカで資本主義社会にシフトしていったロシアが今なお社会主義的秘密主義に覆われている事を世界に知らしめた事件だ。
フリーマントルはここにエスピオナージュの鉱床を見つけ、更にロシアの暗部と畏怖を掘り下げようとしている。その好敵手として選んだのがロシアで長年海千山千の強者どもを出し抜き、危機を脱して生き残ってきたチャーリー・マフィンだ。

しかしこの引用ですら、実はフリーマントルによるミスディレクションだった事に最後になって気付かされるのである。これについてはネタバレで述べよう。

しかし本当にこのシリーズは一流のエスピオナージュ小説でありながら世のサラリーマンの共感を得る、中間管理職の苦労を痛感させられる作りになっているのが面白い。
例えばチャーリーが派遣されるロシアの英国大使館の警備責任者を含む面々は、歴代の駐在員たちから見れば、信じられないほど楽天的で牧歌的な雰囲気を纏った人物ばかりだ。かつてのロシア駐在員たちはいつ謂れのない理由で民警に逮捕され、監禁されて拷問を受ける恐怖が常に付き纏っていたのに、彼らは壊れた監視カメラの修理でロシア人を何の疑問もなく大使館内に入れ、おまけに再び壊れた監視カメラを直さずに何日も放置しているという体たらくだ。しかもその行為に誰も疑問や危機感を感じない鈍感さも伴っている。しかもチャーリーは派閥争いで劣勢に立っている現部長の地位堅守のため、どうしてもこの事件を解決しなければならないのだ。

これをサラリーマンに照らし合わせると、万年赤字を抱えている地方支店に配属され、そのあまりにひどい現状に幻滅する姿が目に浮かぶではないか。派閥争いに巻き込まれるあたりはもうサラリーマンの苦悩そのままである。

そしてそんなチャーリーが最後の最後に誰もが信じて疑わなかった真実から開眼し、事件の裏に隠された真実を突き止める。

訳者あとがきによれば本作は新たな3部作の第1作目であるとのこと。恐らくチャーリーとナターリヤの関係もこの3部作で結着が着くことだろう。即ちようやくフリーマントルは長きに渡ったチャーリー・マフィンシリーズに終止符を打とうとしているのだ。
本書の評価は上に書いたとおり、個人的には全面的に受け入れ難いため、7ツ星評価に落ち着いたが、三部作の最後を読んだ後ではまた変わるかもしれない。
とにかくフリーマントルのライフワークとも云えるこのシリーズの恐らく掉尾を飾る三部作の最終作を愉しみにしよう。


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No.11
(5pt)

新品同様でした

新品同様でした
片腕をなくした男〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 片腕をなくした男〈上〉 (新潮文庫)より
4102165606
No.10
(4pt)

一気呵成、そして最後にどんでん返し

漸く事件の解決に向かって大きな一歩を踏み出します。うまく行き過ぎてい過信しないように気を付けているのは相変わらずです。モスクワでも地下鉄を乗り継いで尾行を巻く手順もお手の物です。いつものように、最後のどんでん返しがあるのですが、それが次回作の始まりにつながります。このシリーズは3部作ということで、後2つ予定されているようです。自開作にも期待しますが、なんとなくチャーリーは大仕事をして引退するんじゃないかと思いました。
片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫)より
4102165614
No.9
(5pt)

プロフェッショナルであり続けるチャーリー

「消されかけた男」から現在まで、常に「生き残る男」だったチャーリー・マフィン健在です。
例によって複線どころか複々線のようにからみ合うストーリーが秀逸です。
彼がなぜ生き残ってこれたのか。それは彼が「プロフェッショナル」だからでしょう。
チャーリーが突き止める事実は、本当なら彼が望む「幸せ」の道も絶つことですが、
それでも彼はそうせざるを得ないキャラクターなのです。
それは彼が常に誰よりも「プロ」だからなのだと思います。
チャーリーを読み続けてもう何十年経ったでしょうか。
彼のような「プロ」にはなれないことが、幸せだと思うのは年齢のせいかもしれません。
実社会でチャーリーであることは至難のことです。
片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫)より
4102165614
No.8
(5pt)

満足出来る出来栄えではないでしょうか?

フリーマントルの作品では、マフィン・シリーズよりもカウリ&ダニーロフ・シリーズ(爆魔・猟鬼・トリプルクロス)
の方が絶対に面白いと思っている。カウリ&ダニーロフ・シリーズの方が仕掛けが派手で、
アクションが楽しめるが、マフィン・シリーズの方は話が複雑で、その割りには最後のカタストロフィー
が楽しめない、というのがこれまでの私の判断(思い込み?)だった。
今回も、モスクワのロンドン大使館に放り込まれた死体の捜査、つーだけの話のはずが、
ロシア側の捜査権への異常なこだわり、何故か判らないアメリカCIAの執拗な介入、さらには
MI5とMI6の、不必要な身内の諍い等など、<あ〜、又 話し複雑にしている>
と思いながらも、それなりの面白さに読み進むうちに、とんでもないデカイ陰謀話に
発展、最後には、<単に話を複雑にみせるだけのもの>と思っていたピースが、スッキリと
落ち着くべきところに落ち着き、久々にマフィン・シリーズに満足出来た。
三部作だそうで、続編が楽しみになってきました。
片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 片腕をなくした男〈下〉 (新潮文庫)より
4102165614
No.7
(4pt)

久しぶりのフリーマントルの傑作

久しぶりにしっかりとしたプロットを持ったスパイ物を読んだ気がする。今回のチャーリーの任務はロシアの英国大使館に捨てられた男の死体についての捜査。ロシア側の非協力的な態度に加え、米国CIAの不可解な行動、そしていつものごとく自分の組織内での足の引っ張り合いが、彼の捜査を困難なものにしていく。ロシア側は本件をギャングの抗争の結果として事態の収拾に走るが、やがてチャーリーにかかってきたロシア人女性よりの一本の電話が事態を大きく変えていく。ここからは、何が真実で、誰が見方で誰が敵かわからなくなってくる。彼女が持ってきたストーリーが正しいのか、あるいはその裏にさらなる真実が隠されているのか。ロシアの新大統領候補がCIAの長年のスパイであったというヒストリーにまんまと騙されるCIA。実はその逆をとって米国大統領をロシアの言うがままに操るというのがロシアKGBの脚本であることが分かり、CIAは大いに面目を潰す。これは三部作の第一作目とのこと、次回作が楽しみである。
片腕をなくした男〈上〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 片腕をなくした男〈上〉 (新潮文庫)より
4102165606

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