名門ホテル乗っ取り工作



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    初公開日(参考)1989年04月
    分類

    長編小説

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    名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)

    1989年04月05日 名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)

    ハリー・ラッド―アメリカ最大の勢力を誇る新興ホテル・チェーン、〈ベスト・レスト〉会長。サー・イアン・バックランド―世界最高の格式を誇りながら、時代の波に乗り遅れ赤字企業に転落した名門ホテル・チェーン〈バックランド・ハウス〉当主。権謀術数の限りをつくした乗っ取り工作の結末は?ホテルに賭けた男たちの死闘をスピーディなタッチで描く、著者異色の本格企業小説。(「BOOK」データベースより)




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    No.1:
    (7pt)

    勝者のいないマネーゲーム

    フリーマントルがジョナサン・エヴァンス名義で発表した企業小説。新進気鋭のホテル・チェーンがイギリスの格調高い由緒ある豪華ホテル・チェーンの買収に乗り出すマネーゲーム小説だ。

    アメリカの新興ホテル・チェーン≪ベスト・レスト≫を取り仕切るのは若き会長ハリー・ラッド。妻を出産の事故で亡くしたことをきっかけにその哀しみを忘れるために仕事に没頭した結果、たった10年でボストンの取引高300万ドルのモーテル・チェーンを年商5億ドルの国際レジャー産業に仕立て上げた、ウォール街でも噂の男だ。

    一方イギリスの≪バックランド・ハウス≫は誰もがその名を知っている5ツ星の最高峰のホテル・チェーンだが、その経営は創始者一族にて代々引き継がれてきた一族経営で、内情は経営体制のない、伝統に胡坐をかいた経営母体で権威とブランドのみで運営しているような会社だ。
    その経営を担う現会長サー・イアン・バックランドは祖父と父親の遣り方を単にまねているだけの凡庸な経営者だとみなされており、その実ギャンブルと愛人との情事に耽り、会社の小切手で自身のギャンブルの借金を清算していたことを財務担当から糾弾されるほどのおぼっちゃんでもある。

    飛ぶ鳥を落とす勢いの新興ホテル・チェーンの会長というイメージから想起されるのは生気に溢れ、半ば強引な方法で欲しいものを手に入れてきた傲慢不遜を滲ませた辣腕経営者というイメージを抱くが、≪べスト・レスト≫会長のハリー・ラッドはむしろその逆だ。
    小柄で何事も慎重に事を運ぶ男でギャンブルはやらず女性には奥手で恋人はいるが身体の関係を特に望むわけではない。まだ若い頃に今の会社の社長であるハーバート・モリスンの1人娘と結婚したが、結婚を好ましく思わなかった義父の画策によって乗っ取りを仕掛けている≪バックランド・ハウス≫の象徴的存在ベリッジ・ホテルに修行に出されていた時に妊娠で妻と子供共々亡くしてしまうという苦い過去を持つ。それ以来その哀しみを忘れるために仕事に打ち込んできたような男で、仕事一筋の、どちらかと云えば一昔前の日本人ビジネスマンに近い人物像だと云える。

    億単位、いや数十億単位の金が動くマネーゲーム。誰もが甘い汁をすすろうと金のあるところに集る。

    有力な対抗馬が出た政治家は地元の票を集めるため、ホテルを誘致しようとすればそのついでに政治資金が欲しいと新興ホテル・チェーンの会長にせびる。

    由緒と伝統と格式のみが唯一の拠り所となった世界最高峰のホテル・チェーンの会長は愛人との情事とギャンブルに狂い、会社の金を使う放蕩ぶり。知らぬ間に会社の財政は火の車となっていることに気付かず、銀行が経営に介入するのを阻止するため、必死になって金策に走る。

    新興ホテル・チェーンの会長はその勢力を拡大しようとテキサス州の議員から持ち出された誘致の話を自分の有利な形に持ってこようと手練手管を駆使する。そしてサウジアラビアの王子に持ち込まれた名門ホテル乗っ取りを機に世界一のホテル王になる夢を抱く。

    あまり詳しく語られていないが、ハリーはかつて買収先の≪バックランド・ハウス≫の旗艦的ホテルであるベリッジ・ホテルで働いていたこともあり、その経験がいつかは自分もこのような由緒あるホテルのオーナーになりたいという原初的な欲求が今回の買収には働いていたのかもしれない。

    しかし今まで数々のプロジェクトを成功に導いてきたハリーに今回は様々な危難が降りかかる。


    そして女性に対して朴念仁であったハリー自身が予想外なことに買収先のホテル・チェーン会長の妻と不倫関係になってしまう。

    また買収工作が発覚すると取引銀行のハッファフォード銀行もカウンター・ビッドを画策する。

    そんな金の亡者の集まる魑魅魍魎と化した世界にラッドは文字通り身銭を切って破産寸前にまで追い込まれながら≪バックランド・ハウス≫株の買収を進めるが、最後の6パーセントの壁を超えることができない。そしてその最後の障害は意外な形で解決を見るが、それはネタバレ感想にて述べることにしよう。

    さてフリーマントル作品の醍醐味は目の覚めるようなアクションではなく、やはり知と知のぶつかり合いの高度なディベート合戦にある。企業小説である本書では役員会議や非公開の役員同士の密談などが多々挿入されているが、株主総会とラッドが仕掛ける会社登録法違反の裁判が本書の白眉であろう。

    まず株主総会ではギャンブルでの損失を会社の小切手で返金し、家族の友人を愛人として会社の所有する宿泊施設で囲っていることを暴かれた≪バックランド・ハウス≫会長イアン・バックランドの解任を求められるが、圧倒的な不利の中、完璧な理論武装と弁護士を同席させるというラッド提案の奇手によって有利に進め、見事提案を退ける。
    こういう議論のシーンが実にフリーマントルは上手い。ただそこには大口株主のファンド・マネージャーの支持が少なかったというスパイスも忘れない。ここに一流のジャーナリストだったフリーマントルのシビアな視点を感じる。このような茶番劇では海千山千の投資家の目はごまかせないと暗に示しているのだ。

    そしてそれを証明するかのように一転して乗っ取りを仕掛けたラッドによる会社登録法違反の疑義を申し立てる起訴裁判では株主総会で雄弁に切り抜けたバックランドの答弁はメッキが剥がれるが如く、次々と論破されていく。残されたのは由緒ある貴族階級の一族の裏に隠された数々のスキャンダルの山。伝統と格式に飾られたバックランド一族の装束は容易に剝ぎ取られ、ギャンブルと女遊びにうつつを抜かす一人の裸のお坊ちゃんがいるだけとなる。

    後半は株主総会、役員会議、裁判のオンパレードだ。企業小説であり、しかもやり手の若手会長が自社と買収先の株価の大幅下落というリスクを負いながらも血眼になって買収を成立させようと東奔西走する作品であるから仕方がないかもしれないが、ディベート合戦がフリーマントル作品の妙味だと云ってもこの繰り返しはいささか辟易した感じがある。

    本書のサイド・ストーリーとして仕事一辺倒だったラッドが買収先のホテルの会長の妻マーガレットと道ならぬ恋に落ちる物語が展開する。それは近い将来敵対的存在となる自分にとって決して取ってはならぬ選択肢だったが、若き頃に亡くした妻の面影を見たラッドにとってマーガレットは仕事だけに目をくれていた彼の目を向けさせる運命の女性だった。

    そして彼女との逢瀬はやがて彼女との安らかな生活を望むようになる。そんな背景を織り交ぜてフリーマントルがラッドに差し出した究極の選択は彼女を取るか最後の6パーセントの株を取るかだった。

    しかし己の上昇志向に任せて踏み切った今回の乗っ取り工作は実に不毛なものだった。彼は得たものもあるが、心の充足はなかったのではないか。
    勝者のいないマネー・ゲーム。やはり今回もフリーマントルは決して甘い夢を見させてはくれなかった。


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    No.2:
    (3pt)

    丁々発止のマネーゲームの結末は?

    フリーマントルがジョナサン・エヴァンス名義で発表した企業小説。新進気鋭のホテル・チェーンがイギリスの格調高い由緒ある豪華ホテル・チェーンの買収に乗り出すマネーゲーム小説だ。

    アメリカの新興ホテル・チェーン≪ベスト・レスト≫を取り仕切るのは若き会長ハリー・ラッド。妻を出産の事故で亡くしたことをきっかけにその哀しみを忘れるために仕事に没頭した結果、たった10年でボストンの取引高300万ドルのモーテル・チェーンを年商5億ドルの国際レジャー産業に仕立て上げた、ウォール街でも噂の男だ。
    一方イギリスの≪バックランド・ハウス≫は誰もがその名を知っている5ツ星の最高峰のホテル・チェーンだが、その経営は創始者一族にて代々引き継がれてきた一族経営で、内情は経営体制のない、伝統に胡坐をかいた経営母体で権威とブランドのみで運営しているような会社だ。その経営を担う現会長サー・イアン・バックランドは祖父と父親の遣り方を単にまねているだけの凡庸な経営者だとみなされており、その実ギャンブルと愛人との情事に耽り、会社の小切手で自身のギャンブルの借金を清算していたことを財務担当から糾弾されるほどのおぼっちゃんでもある。

    億単位、いや数十億単位の金が動くマネーゲーム。誰もが甘い汁をすすろうと金のあるところに集る。
    有力な対抗馬が出た政治家は地元の票を集めるため、ホテルを誘致しようとすればそのついでに政治資金が欲しいと新興ホテル・チェーンの会長にせびる。
    由緒と伝統と格式のみが唯一の拠り所となった世界最高峰のホテル・チェーンの会長は愛人との情事とギャンブルに狂い、会社の金を使う放蕩ぶり。知らぬ間に会社の財政は火の車となっていることに気付かず、銀行が経営に介入するのを阻止するため、必死になって金策に走る。
    新興ホテル・チェーンの会長はその勢力を拡大しようとテキサス州の議員から持ち出された誘致の話を自分の有利な形に持ってこようと手練手管を駆使する。そしてサウジアラビアの王子に持ち込まれた名門ホテル乗っ取りを機に世界一のホテル王になる夢を抱く。

    しかし今まで数々のプロジェクトを成功に導いてきたハリーに今回は様々な危難が降りかかる。

    さてフリーマントル作品の醍醐味は目の覚めるようなアクションではなく、やはり知と知のぶつかり合いの高度なディベート合戦にある。企業小説である本書では役員会議や非公開の役員同士の密談などが多々挿入されているが、株主総会とラッドが仕掛ける会社登録法違反の裁判が本書の白眉であろう。
    まず株主総会ではギャンブルでの損失を会社の小切手で返金し、家族の友人を愛人として会社の所有する宿泊施設で囲っていることを暴かれた≪バックランド・ハウス≫会長イアン・バックランドの解任を求められるが、圧倒的な不利の中、完璧な理論武装と弁護士を同席させるというラッド提案の奇手によって有利に進め、見事提案を退ける。こういう議論のシーンが実にフリーマントルは上手い。ただそこには大口株主のファンド・マネージャーの支持が少なかったというスパイスも忘れない。ここに一流のジャーナリストだったフリーマントルのシビアな視点を感じる。このような茶番劇では海千山千の投資家の目はごまかせないと暗に示しているのだ。
    そしてそれを証明するかのように一転して乗っ取りを仕掛けたラッドによる会社登録法違反の疑義を申し立てる起訴裁判では株主総会で雄弁に切り抜けたバックランドの答弁はメッキが剥がれるが如く、次々と論破されていく。残されたのは由緒ある貴族階級の一族の裏に隠された数々のスキャンダルの山。伝統と格式に飾られたバックランド一族の装束は容易に剝ぎ取られ、ギャンブルと女遊びにうつつを抜かす一人の裸のお坊ちゃんがいるだけとなる。
    後半は株主総会、役員会議、裁判のオンパレードだ。企業小説であり、しかもやり手の若手会長が自社と買収先の株価の大幅下落というリスクを負いながらも血眼になって買収を成立させようと東奔西走する作品であるから仕方がないかもしれないが、ディベート合戦がフリーマントル作品の妙味だと云ってもこの繰り返しはいささか辟易した感じがある。

    本書のサイド・ストーリーとして仕事一辺倒だったラッドが買収先のホテルの会長の妻マーガレットと道ならぬ恋に落ちる物語が展開する。それは近い将来敵対的存在となる自分にとって決して取ってはならぬ選択肢だったが、若き頃に亡くした妻の面影を見たラッドにとってマーガレットは仕事だけに目をくれていた彼の目を向けさせる運命の女性だった。

    物語の行き着く先は実にフリーマントルらしい皮肉に満ちている。どのような結末かは読んで確かめてほしい。
    名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)より
    4102165169
    No.1:
    (5pt)

    CHIKO

    今でも通じる内容が、訳の素晴らしさで、良く分かります。ビジネスの話なのに、ロマンあり、なので、女性にも飽きさせないと思います。一気読みしてしまうほどお面白かったです。
    名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:名門ホテル乗っ取り工作 (新潮文庫)より
    4102165169



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