収容所から出された男



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初公開日(参考)1987年01月
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長編小説

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収容所から出された男 (新潮文庫)

1987年01月01日 収容所から出された男 (新潮文庫)

ソ連対外交渉専門家のブルトヴァは、一度失脚して強制収容所に入ったことがある。折しも、ソ連からノーベル文学賞候補が出た。文化相は選考委に授賞を迫り、作品の映画化権を売る口実で、作家に西側諸国の講演旅行をさせることにし、保護者役をブルトヴァに命じた。かつての仇敵の罠を感じとったブルトヴァの、生残り策とは?独特の雰囲気が遺憾なく発揮された、重厚な陰謀小説。(「BOOK」データベースより)




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No.1:
(7pt)

フリーマントルは初期からフリーマントルだった

本書が発表された1974年は冷戦状態にあった米ソ間がデタント、つまり緊張緩和の時代に入った頃だ。つまり国民が西側への接触を決して許さなかったソ連がその戒めを緩め、寧ろ世界へ国力を誇示する意向を示している。
フリーマントルはその様子をロシア人がノーベル賞を受賞するシチュエーションでその国威宣伝に携わる男の苦悩と危うい立場を描いている。

まずロシア人初のノーベル賞受賞者を出すという大役を任されるのが主人公のヨーゼフ・ブルトヴァ。かつて父の政敵だった現文化相ユーリ・デフゲニイによって父と共に失脚させられ、収容所生活を送っていたかつての対西側交渉のプロ。

その彼がノーベル賞を受賞させるために協力するのが片田舎出身の作家ニコライ・バルシェフ。このニコライは天才にありがちな社会不適合者の性格を持ち、多くの人々の前では萎縮し、酒に溺れて失態を演じる、世間知らずの文学青年だが、ジミー・エンデルマンというカメラマンを得て次第に尊大さを肥大させていく。

そしてヨーゼフの妻パメラはなんとイギリス人。イギリスへの帰国のチケットを持ち、夫不在の中、馴れないロシアでの生活に不安を募らせ、いつ帰国しようかと揺れている、精神的にも不安定な若き妻。

しかしノーベル賞作家と共にイギリスとアメリカの要人と会見し、駐在大使や文化省次官、そしてヨーゼフがそれぞれの思惑を孕みつつ、作家を餌にして失地回復や新たな出世の階段に上ろうとする丁々発止のやり取りはあるものの、題材がいかにも地味であることは否めない。
特に片田舎の在野の作家であったニコライ・バルシェフが突然得た名声の為に今までの質素な生活からは想像もできないセレブの世界に足を踏み入れ、自分を見失い、同性愛に目覚め、また麻薬に溺れるさまは典型的な成り上がり者の堕落物語である。
この政治的駆引きの嫌らしさとニコライと同行するカメラマン、エンデルマンが次第に傲慢ぶりを発揮し、倒錯の世界にどんどんのめり込んでいっては我儘を云ってヨーゼフを蚊帳の外に追いやる苦々しさを2つの軸だけで400ページ強もの物語を牽引しているかとは決して云えず、同じ話を交互に繰り返しているだけにしか思えなかった。ノーベル賞作家とカメラマンの傲慢な振る舞いに振り回されるヨーゼフが対峙すべき政敵との駆け引きに隠されたバックストーリーによるどんでん返しが最後に炸裂するのはフリーマントルならではだが、いきなり2作目にして400ページ強のボリュームで語るには題材に派手さがなく、小説巧者の彼でも“2作目のジンクス”があったのだなぁと感じ入ってしまった。

しかしデビュー作では爽快な読後感を与えてくれたのに、2作目にしてこの後味の悪さだとは。フリーマントルは初期からサディスティックな作家だったということが身に染み入るように解った。


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