(短編集)

フリーマントルの恐怖劇場



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フリーマントルの恐怖劇場 (新潮文庫)

1998年06月30日 フリーマントルの恐怖劇場 (新潮文庫)

「あの世」に入れず、失われし魂を求めて「この世」に戻ってみると…。かつて殺傷し合ったKGB部員の霊と皮肉にも現世で鉢合わせするCIA部員「魂を探せ」。生前コメディアンとして失敗した男が、「死後の世界」で才能を開花させる。現世に提供したネタが絶賛され、死後漸く売れっ子になった男「ゴーストライター」など、世にも不思議な幽霊物語12編。技巧の粋を凝らした名手の異色短編集。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

フリーマントルの恐怖劇場の総合評価:8.00/10点レビュー 3件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

実はホラーも書ける!

タイトルが示すように、エスピオナージュ作家フリーマントルが紡いだ怪奇短編集。これが実にヴァラエティーに富んだ短編集となった。

冒頭の「森」はどちらか云えばオーソドックスな怪奇譚だろう。ルーマニアの小さな集落を舞台にした残虐な領主の圧政に苦しむ村人が復讐を遂げた後に訪れる怪事である。

次の「遊び友だち」もオーソドックスな部類の怪奇譚だ。名声高いブロードウェイの脚本家が買った古い屋敷で起こる怪奇現象。屋根裏の子供部屋に大人には見えない子供がいるという話。

「ウェディング・ゲーム」は英国屈指の名門の2つの財閥のある結婚式の時に訪れた悲劇を扱っている。嫉妬に駆られた花婿の弟の犯行、最後のオチなど、目新しさは無いものの、演出効果は抜群だろう。最後のシーンは映像が目に浮かぶよう。
そして本編で語られる花嫁の惨劇は江戸川乱歩の「お勢登場」を想起させる。死にゆく者の生への執着と死の恐怖を濃密に描いた乱歩に対し、事象を語りつつ、その後の展開に見事なオチをつけたフリーマントルという2人の特徴が出て面白い。

更に続く「村」は第二次大戦にドイツ軍に所属していた主人公が名を変えて身を潜めて余生を暮らした末に、公式記録上で自分が大量虐殺を行ったとされるチェコの村を訪れる物語。

投資家夫婦と降霊術という相反する物を結びつけたのが「インサイダー取引」だ。インサイダー取引で巧みに財を成してきた投資家夫婦のうち、妻の突然死で失意に暮れた夫が霊媒師の力を借りて、亡き妻との交流を果たし、妻の助言で、どんどん投資を成功させ、億万長者となっていくという話。
これと「ゴーストライター」が個人的にはベスト。こちらの方はコメディアン志望の男が死後コメディライターとして名声を成すという話。特にこの2編はタイトルが秀逸で、最後に抜群の切れ味を放つ。
そして株式をテーマにホラーを書くという発想も斬新だが、もっと驚いたのはフリーマントルが「お笑い」をテーマに短編、しかも幽霊譚を書いたこと。まさに脱帽だ。

それに加えてこんなのも書けるのか、フリーマントル!と唸ったのが「ゾンビ」と「洞窟」。前者はカトリック宣教師が布教のために派遣された神父を奪還するためにゾンビを生み出す呪術が支配するカメルーンの奥地の村に乗り込むといった話。
後者はフランスにある世界最大の洞窟でガイドする一族の話。自らの子供と妻が洞窟に入ったまま行方知れずになった男が友人の子供の捜索に乗り出す。
この2編で驚かされるのが宗教や呪術、そして洞窟ガイドという職業の特徴を詳述しているところだろう。この作家の懐はどこまで深いのかと驚嘆した作品だ。

一風変った幽霊譚なのが「魂を探せ」。何しろベルリンでの任務中に暗殺されたCIAとKGBの工作員2人の幽霊が、死後のユートピア<あの世>に行くために自らの魂を探すという物語。しかしこのオチはブラック・ジョーク以外何物でもないな。

「愛情深い妻」、「デッド・エンド」はそれぞれ殺人事件を扱った恐怖譚。前者は病院の院長が不倫相手と再婚すべく妻を不治の病と見せかけて毒殺するが・・・といった話。
後者は場末の宿で発見された女性の刺殺死体の犯人を捜す物語。現場に残された指紋、遺物などから状況的に夫の犯罪と思われたのだが、当の夫は自信満々に自分の犯罪ではないといいきり、逆に警察に犯人のヒントを与え・・・という話。
どちらも幽霊を扱っているのが共通。特に前者は妻の幽霊に苛まれる主人公の苦悶がちょっと理解できなかった。元妻は愛人との交際を認めているのに、なぜ主人公は愛人と愛を交わせないのか?私なら・・・とここで止めておこう。

最後12編目「死体泥棒」はいつの間にか人殺しに加担していた善なる医師の話。生真面目すぎるが故に陥った狂気の領域を皮肉とユーモアを交えて語っている。

ざっと概要を上に書いてみたが、冒頭述べたように題材が実にヴァリエーション豊かである事が解ると思う。自分の得意分野だけで勝負していないところなんかはフリーマントルのストーリーメーカーとしての矜持を感じさせる。もしフリーマントルにお題を提供してホラーを書けと頼むと、何でも書けるのではないだろうか。
そしてこのようなホラー・ストーリーはもはや出尽くした感があり、確かにここに語られる恐怖譚の中には目新しさは無い物もある。では何が読者の興趣を誘うかというとやはりそれは作者の語り口にあるだろう。

そしてフリーマントルが筆巧者であり、その定型化した恐怖譚をコクのある料理に変身させる腕前を備えていることを再認識させられた。
正直云ってこれほどの短編集を絶版のまま埋もれさせるのは勿体無い。どうにか復刊ならないだろうか。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.2:
(3pt)

メリハリに欠け期待はずれ

原題が“The Ghost Stories”つまり「怪談集」。12話を収め1993年に出ている。
 同じ著者のチャーリー・マフィン・シリーズ第一作「消されかけた男」1977 を読んだとき“驚愕の結末”に仰天し、どんでん返しの面白さを初めて知った。その後、同シリーズをいろいろ読んだが、第一作を越えるものはなかった。短篇ならあのレベルのオチが楽しめるのではと期待して本書に手を出したが、外れだった。

 テーマは多彩だしプロットはどれも上手くできている。しかし複雑に作り過ぎて筋を淡々と追うしかなく、コクもなければオチも決まらない。山場でも淡々としているのでメリハリに欠け、怖さを強調することも出来ない。長篇のあらすじか新聞の報道記事を読む感じで、怖さはまったくない(そういえば、フリーマントルは記者出身だった)。
 それでも面白かったものを順に挙げれば・・・
 
 第6話「ゾンビ」。
 悪魔崇拝研究の権威である神父が、カメルーン奥地で消息不明になった宣教師の救出に向かう。たどり着いた村はブードゥ妖術師のゾンビ王国。神父は妖術師と対決し、幻覚剤や催眠剤の知識を駆使して勝利するが・・・ かなりの残酷味があり、皮肉な結末もそこそこ決まっている。

 第10話「洞窟」。
 フランスの大地下洞窟で三代にわたって有能なガイドをつとめた男が、息子と妻をその洞窟で失い、生きる気力も失ってしまう。友人のガイドの息子が同じように洞窟で行方不明になり、捜索に出た男は首尾よく息子を発見するが・・・ ちょっと悲しい結末だが、ジェントル・ゴースト・ストーリーとしてよい出来と思う。 

 第9話「ゴーストライター」も上質のジェントル・ゴーストもの。
 チャップリンやマルクス兄弟が出演するあの世のコメディ・クラブで、台本作家の腕を磨いた主人公。幽霊としてこの世に戻り、文字通りのゴーストライターになって売れない芸人を大スターにする。面白いのだが、メリハリがなく長い。半分にしてと大声で言いたくなる。

 第7話「魂を探せ」は著者らしいスパイもの。
 東ベルリンでKGBに殺されたCIA諜報員が、あの世の入り口から自分の魂を探しにベルリンへ舞い戻る。幽霊があの世の善し悪しを長々語るのがいいし、キャラ設定が皮肉っぽくて面白く、全体にコミカルなムードもいい。オチは一瞬、よい出来に思えたが、考えてみると「微妙」レベルだった。
フリーマントルの恐怖劇場Amazon書評・レビュー:フリーマントルの恐怖劇場より
4062064480
No.1:
(5pt)

寝る前のひと時に

12の怖い物語。ウィスキーの水割り片手に、毎晩一話づつ読むのがおすすめです。ホラーといってもおどろおどろしいものではなく、上質の短編映画を見ている気分にさせられます。特におすすめが第2話の「遊び友だち」と第8話の「愛情深い妻」。前者は母親の切ない心情にグッときて、後者は妻の怖い心情にゾクッときます。秋の夜長のお供にいかがでしょうか?
フリーマントルの恐怖劇場Amazon書評・レビュー:フリーマントルの恐怖劇場より
4062064480



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