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別れを告げに来た男
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別れを告げに来た男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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もう30年近く前に読んだ一冊。 冴えないスパイが主人公なのはフリーマントルの伝統ですね。 敵亡命者とのやりとり、ささいな一言からの推理。 そして題名。いまだにこのタイトルが英語でよく頭の中で流れます。 | ||||
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頼んでいる本が届くまで何か読もうとブライアン・フリーマントルの処女作(1973年)『別れを告げに来た男』(原題Goodbye to an Oldfriend)を読むことにした。 評者がこの本を購入したのが何時なのか知るために奥付を見たら昭和59年2月(1984年2月)十一冊と記してあった。 もう30年以上も前の古い本であり本書のテーマも古臭く東西冷戦時代の亡命ものである。 パリの英国大使館へ亡命してきたソビエトの指導的宇宙科学者ヴィクトル・パーヴェルが、英国内務省の属官で、亡命者の尋問を職務とするエィドリアン・ドッズが事情聴取することから物語は始まる。 エィドリアンは気弱で優しい性格なのだが、一つだけ誇れる能力の持ち主である。 その能力というのはオックスフォード大学の現代言語学で最高点をとった経歴の持ち主で語学力が抜群なのである。 その脳力を生かしてこの職務につき多くの亡命者の聴取に成果を上げてきた。 内気で押しの弱い性格なエィドリアンが、亡命者ソビエト宇宙科学の最高峰ヴィクトルを相手に尋問を始めると変幻自在に相手と渡り合えるところが本書の読みどころであろう。 読み始めてヴィクトルの亡命が何を意味するのかなど評者には解ってしまったから、退屈するかと思いきや、フォーサイが登場する人物の性格描写などの上手さとプロット構成の緻密さに舌を巻きながら夜更かして一気読みしてしまった。 ヴィクトルが帰国したあと家まで送られる車の中でソ連秘密委員長カガノフからエィドリアンの写真を見せられてもヴィクトルが白を切るエンディングは心憎い。 過日『戦士たちの挽歌』を再読したのだが、その内容をすべて忘れていたのが情けなかったが、本書『別れを告げに来た男』もその内容をすべて忘れてしまっていたから我が記憶力の劣化を再確認することになってしまった。 さすがに『ジャッカルの日』や『オデッサ・ファイル』の二作などは我が劣化した脳味噌の片隅に存在してはいるのだが・・・。 | ||||
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世評では「消されかけた男」を傑作とするけど、私はこれこそがフリーマントルの最高傑作と思います。読みやすい分量もグッド。 | ||||
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文庫にしても200ページ余りの長くない作品ではあるが、スパイサスペンスとしての醍醐味、人物描写の見事さ、そして筋書きの抜群の面白さがきっちりと詰まった秀作である。「消されかけた男」のチャーリー・マフインでもそうであったが、フリーマントルの人物描写の的確さには本当に感嘆させられる。エイドリアン・ドッズとエベッツ首相との会話の迫力、ドッズとパーペルとの心理的チェスゲームとも形容される会話、ドッズと妻や秘書たちとの生活臭い対話。この作品はそのような色々な会話が柱となって見事な交響楽を演奏しているようだ。訳者は後書きで、亡命を扱った作品の中でも「ルインターの亡命」「エスピオナージュ」と匹敵すると評しているが、その通りであり、そのコクの深さというか、緻密さにおいては、他を凌駕するといっても過言ではなかろう。 | ||||
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原書で読みました。 簡潔で余分な描写などなく、洗練された文体。 巧妙に練られたプロットと人物。 冒頭から中盤まで出てくる重要な伏線の数々。 その見事な回収。 素晴らしい。読め。 | ||||
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チャーリー・マフィンのシリーズを読んでいて,フリーマントルの初期の作品とあったので手に取った作品。 偽装された亡命という主題は大分前のピエール・ノールの名作「エスピオナージュ」以来の伝統的な題材と思いますが,フリーマントルはその筋を一ひねり,ふたひねりして差し出してきます。人間をしっかり描いたよい小説を読んだという喜びをしみじみ感じさせてくれた本でした。人間の誇りとは何か?プロフェッショナリズムとは何か?勝利とは何か?・・・そして愛情とはなんなのか?それらを考えさせてくれるこういう小説を,他にも読んでいきたいものですねー。 | ||||
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これを読んでから、あまりフリーマントルを読まなくなったように思う。これ以上のものはもう出ないだろうと思ったからですが。読んだのはもう20年以上も前になるかと思います。その良さを考えてみると訳文がすばらしいといえます。文章が非常にリリカルというか余韻のある訳文です。 訳者は中村能三(よしみと読む)で、フリーマントルはこれしか訳していません。あの田中小実昌氏の師匠とか、小実昌氏はナカムラノーゾーと言っていましたが。ストーリーのすばらしさと訳文が見事にマッチした作品と言えるでしょう。 | ||||
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本物のハードボイルド、フリーマントルの最高傑作、チャーリー・マフィン・シリーズの源泉の1つに数え上げられる濃厚な1冊です。 人物描写、屈折した内面、ストーリーテリング、中村能三さんの雰囲気ある硬い訳文、時代背景、と、エスピオナージュとして、もはや古典の域に入るでしょう。簡単には読めませんが、近代の探偵小説はそもそもそういうもので、ディケンズやポーの流れを汲み、蘇らせたイギリスの正統派の探偵小説であると僕は固く信じています。 原題は"Goodbye to an Old Friend"。いいですよね。「別れを告げに来た男」としたのも秀逸。思わず原著を買い求めて読みましたが、英語が実に硬い。難しくはないですが、余計な描写を省いて、ずいぶん削ったなあと思わせる。その雰囲気をそのままに訳した中村さんは、さすがにその道の第一人者です。 なお、他のレビュアーの方がドッズは自殺すると紹介されていますが、ドッズは自殺しません。ドッズは梅雨の合間に薄日が差すように、友情を取り戻すはずです。これ以上はこの本の性質上、記すことができません。 女子供が手に取るような軟弱な昨今の小説では飽き足りない、日本の自称ハードボイルドにも食傷気味、007も最近のものは...という男性は、ぜひお手にとってみることをお勧めします。 | ||||
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フリーマントルの最高傑作。ロシアから数ヶ月前に亡命した科学者。それを追うかのように、またロシアからの亡命科学者が。彼の目的は、先の亡命者の暗殺か、あるいは単なる亡命か ? 周囲が亡命説を押す中、数ヶ国語を操る語学の天才である捜査官ドッズは一人疑問を抱き、真相に迫って行くのだが...。 事件の進行と共に描かれるドッズの家庭生活が作品に陰影を与える。妻(=レズビアン)とは別居状態で、彼自身の内向的性格と相まって、暗い翳を落とすのだ。 亡命者は夜、目隠しされた状態で、先の亡命者が閉じ込められている場所に案内され、その場所を見ただけで帰国してしまう。ドッズの不安が的中した訳だ。しかし、どうやってその場所が特定できるというのだ ? そして最後に明かされる真相とは...。 このアイデアは想像を超えたもので脱帽させられた。亡命者が国へ帰って、複雑な感情を紛らわすかのように老妻と愛を交わすシーン、最後には自殺してしまうドッズと、ミステリ的アイデアと人物造詣の巧みさが光る傑作ミステリ。 | ||||
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